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雑誌目次

雑誌文献

病院56巻9号

1997年09月発行

雑誌目次

特集 ケアマネジメントと病院

〔座談会〕介護保険におけるケアマネジメント

著者: 青柳俊 ,   香取照幸 ,   白澤政和 ,   池上直己

ページ範囲:P.786 - P.793

ケアマネジメントとは
 池上 まず,ケアマネジメントの定義ですが,それぞれ人によって解釈が違います.特に統一する必要はありませんが,ご自分がどういう意味でケアマネジメントを使っているかということを最初にお話しください.
 まずは白澤先生,いかがでしょうか.

ケアマネジメントにおける医学的管理

著者: 小澤利男

ページ範囲:P.794 - P.798

 ケアマネジメントとは聞き慣れない用語である.おそらくほとんどの臨床医は,この言葉を知らないであろう.私自身にもあまりなじみがない.医学用語集には掲載されていないから,定義も明らかとはいい難い.
 臨床に携わる医師の主たる仕事は,診断と治療である.ケアということになると,それは看護あるいは介護を意味するから,医師の視野から外されるのである.ただ英語でいうcareは,広い意味の医療を含んでいるといわれる.

ケアマネジメントにおけるリハビリテーション

著者: 竹内孝仁

ページ範囲:P.799 - P.804

リハビリテーションとリハビリテーション医療
 ケアマネジメントとの関係をみるために,まずリハビリテーションとリハビリテーション医療について整理しておくこととする.
 リハビリテーションの理念(定義)については,時代とともにいくらかの変化はあるものの,かいつまんでいえばこの時代と社会において多くの人々が営んでいる「ふつうの生活」を手にすることだといえる1).現代では医学的な意味での障害を有する人々を対象として考えられているが,かつては犯罪者や信仰上の問題から市民権を剥奪された人々も含まれていた2).ここから市民としての権利の回復や人権の回復という意味が生まれてくるが,要は「ふつうの生活」を理念的到達点としたときにそれにかかわるすべての問題が対象となってくるわけである.

ケアマネジメントにおける生活とは何か

著者: 橋本泰子

ページ範囲:P.805 - P.809

 「ケアマネジメントの概念については,いくつもの意見がある」という人が少なからずいる.本当にいくつもの概念があるのだろうか.本来のケアマネジメントとは違うものまでケアマネジメントといっている,というようなことはないだろうか.
 ケアマネジメントのキーワードは,サービス利用者主体,在宅ケア,複合的サービスニーズ,サービス利用援助,チームアプローチなどである.ケアマネジメントとは,日常生活の維持に支障がある人々のその生活が,サービスを有効・適切に利用することによって安定し,より自律的に(より自分らしく)自宅で維持できるよう,彼らのためのケア体制をマネジメントすることである.すなわち,ケアマネジメントのターゲットは,もともと一人ひとりが求めている「生活」なのである.もちろん,この「生活」は包括的なものであるから,医療も包含されるのはいうまでもない.

施設ではケアマネジメントがどう展開されているか

著者: 鎌田ケイ子

ページ範囲:P.810 - P.814

ケアマネジメントとケアプラン
 施設におけるケアマネジメントは同一機関におけるものなので,地域に比べればマネジメント機能は単純で,関連職種の合意も得られやすい状況にある.施設内のサービスの組合せは同一機関であれば,それほど問題となることもないので,そのケアマネジメントは,利用者にあらゆる関連職種が共有化できるきめ細かい,具体的な計画をいかに立てるかに重点が置かれる.すなわち,施設内での各職種が合意した結果としての「ケアプラン」の作成がケアマネジメントに当たると言い換えてもよいであろう.
 ここでいう「ケアプラン」は単なる利用者の個別援助計画でもないし,また各々の職種が独自に立案する援助計画としての看護計画や介護計画,業務計画ではない,1人の利用者に対して,かかわるあらゆる職種が共有化する計画のことである.

在宅におけるケアマネジメントの現状と課題

著者: 新津ふみ子

ページ範囲:P.815 - P.820

ケアマネジメントの目標
 ケアマネジメントの目指すところは,利用者の支援ネットワークの形成である.サービスを単に紹介するとか,それぞれのサービスが自由に活動するといったものではなく,サービスは利用者の生活を支援するという目的のためにネットワークされているということである.すなわち,それぞれのサービスは,自分のポジショニングと役割を理解し,お互いを友好的に利用し,有機的な連携ができているという状況である.
 ディビット・D・マクスクーはケース・マネジメント(ケア・マネジメント)の定義を「多様なニーズを持った人々が自分の機能を最大限に発揮して健康に過ごすことを目的として,フォーマルおよびインフォーマルに支援と活動のネットワークを組織し,調整し,維持することを計画する人(もしくはチーム)の活動」と述べている.そして,ケース・マネジャーは次のような目的の実現に努めるとしている.

世界に広がるケアマネジメント

著者: ,   池上直己

ページ範囲:P.821 - P.824

 医療と福祉の支払い方法や提供方法は国によって様々に異なるが,共通したトレンドが現在みられる.それは,施設を中心としたケアから,コーディネーションやケアマネジメントへの動きである[Challis, et al,1994].こうした変化はヨーロッパやアジアの様々な社会において共通にみられる.オーストラリアは1980年代中期以降の高齢者ケア改革(aged care reforms)からそれが起こっているし,日本ではゴールドプランが示されている.一方,スウェーデンは医療と福祉の違いを取り払い,急性期ケアと長期ケアの分け方に変えている.イギリスにおいても地域ケアの改革が行われ,1989年に示さた「人々にケアをする」(Caring For People)という白書の中の中心的な目標となっている.これらに共通してみられるテーマは,介護者への支援,多様なサービスの開発による在宅ケアの推進,そしてアセスメントやケアマネジメントの確立である.
 しかしながら,このように様々な国における社会政策や社会開発にケアマネジメントが重要な役割をするのであれば,その意味するところや目標とすることをより明確にする必要がある.ケアマネジメントは個人のニーズに対してサービスを合わせることであるが,その様々な解釈については,イギリスの保健省が提示している[DoH, 1991].

グラフ

PFFHの理念を生かした療養群病棟が竣工—特定医療法人雪ノ聖母会総合病院聖マリア病院

ページ範囲:P.777 - P.782

 聖マリア病院は昭和28年の病院開設以来,「カトリックの愛の精神に基づいた適正な医療活動を行う」ことを目的に,救急医療の取り組みをはじめ地域の医療ニーズにいち早く応え,高機能化を推進するとともに,先駆的に医療活動を展開してきた.
 しかし,疾病構造や人口構造の変化,医療環境の激変に即応しうる抜本的な見直しの必要性が生じた.聖マリア病院は,わが国の病院のなかで積極的に経営問題と取り組んでいる病院の一つであるが,さらに,もう一歩突き進めた構想で病院医療を改善しようということである.

第52回国立病院療養所 総合医学会学会長を務める 国立療養所香川小児病院 松村長生院長

著者: 玉木芳郎 ,   八木保

ページ範囲:P.784 - P.784

 天性としか言いようのない見事なリーダシップを持った院長である.国立療養所香川小児病院を具体的に構想し,周到な準備の過程で自ら小児外科の鬼に変身し,臨床の先頭に立ってここまで病院を引っ張ってきた.このところは,厚生省や大学,自治体の関係者はいやというほどご存じのことであろう.
 徳島大学田北外科に入局早々,彼がリーダで教室の宿題報告の下請け実験を一緒にやっていたとき,「日曜はダメよ」といいつつ毎土曜日の夜中過ぎまで2日分の仕事に付き合わされた.後で知ったが,同級の才媛を射止める過程だったらしい.メルナ・メルクリ主演の映画をもじった洒落た作戦は成功した.畏友松村長生にも人並み以上の青春があったことを,わたしは知っているのです.

主張

民間病院の連帯を!

著者:

ページ範囲:P.785 - P.785

 超高齢化社会に向けてのわが国社会保障の問題は,国民の大きな関心事となっている.老後の生活,老後の健康問題などへの不安は,消費税のアップもなんの抵抗もなく受け入れる結果となったが,果たして国民は納得しているのであろうか.一昨年以来の薬害エイズ問題,厚生官僚による不祥事は,今後展開される種々の政策も不信の目で監視されるであろう.国民的な不信感の払拭のためにも医療にかかわるすべての機関が連帯し行動を起こさなくてはならない時期にきていると思われる.
 さて,超高齢化社会に向けて,介護保険法の導入,医療法の改正,医療保険制度改革などが論議されているが,今後の医療も地域の第一線で診療を提供している民間病院が中心とならざるを得ないであろう.これまで,民間病院は自由開業医制度の下に,社会ニーズの変革に適切に対応した運営を行ってきた.しかしながら,高齢化社会に伴う疾病構造の変化,また近年における社会保険診療報酬の改訂は,病院の機能分化を生じさせる結果となった.急性期医療を展開する病院,慢性期医療を展開する病院,在宅医療の展開,保健部門の展開と種々多様な地域の医療ニーズに対応しているが,今後の民間病院は確実に経営が維持できるのであろうか.おそらく地域における病院の護送船団的な経営の維持は,国民医療費の増高,また社会保険診療報酬上からも不可能であろう.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・11

第5報 その1 私的医療機関を「母体」とする看護・医療技術系・介護福祉士学校の全国調査

著者: 二木立

ページ範囲:P.825 - P.829

 今後21世紀に向けて,医療機関(特に病院)の医療の質を引き上げるために,優秀な人材(専門職)の確保が決定的に重要なことはいうまでもない.この面で,医療専門職の養成施設を直接または間接に開設している医療機関は,特別に有利な位置にあるといえる.しかし意外なことに,このような医療機関の全国調査・実証的研究は,筆者が調べた範囲では,全く存在しない.
 そこで,今回,各種の学校名簿と電話調査などにより,私的医療機関が設立母体となっている医療・福祉系専門職養成施設とその母体医療機関の全国調査を行った.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第35回

病院を中心とした精神障善者・高齢者施設群平和病院およびその併設施設

著者: 小渡敬 ,   越智史郎

ページ範囲:P.851 - P.856

今後の精神科病院と高齢者施設のあり方
1.医療・福祉の総合化とアメニティの追求
 精神科病院と高齢者施設のあり方を一括りに論じることに意義があるとすれば,その背景には医療と福祉の総合へと向かう新しい時代の流れがある.そのことを療養者の立場からとらえるとアメニティの追求ということになるだろう.アメニティといっても看護者にかかわるソフト面と施設に関係するハード面とがあるが今回は後者について述べたい.

インタビュー

環境の変化に対応するリエンジニアリングPFFC (patient and family focused care)の推進—井手 道雄 特定医療法人雪ノ聖母会理事長に聞く

著者: 編集室

ページ範囲:P.830 - P.833

 ●聖マリア病院は先生の御尊父,一郎先生が昭和28年に結核主体の病院として79床で開院されました.その後,昭和39年より,他の病院に先駆けて24時間365日の救急医療体制をとられましたが,これが今日の約1,400近くのベッドを有する国内有数の民間病院に成長する礎となったと思います.現在では,1次から3次までの救急医療を中心に,急性期の医療からリハビリテーションまで一貫した医療を展開されています.
 このような流れの下で,数年前から,環境の変化に対応し得る体制の構築に向けて,PFFC (patient and family focused care)と銘打つ戦略=リエンジニアリングを推進されているとうかがいましたが,なぜリエンジニアリングなのでしょうか.

レポート

フランスの医療改革の最近の動向と医師の抵抗

著者: 木戸友幸 ,   奥田七峰子

ページ範囲:P.834 - P.835

フランスの医療改革の最近の動向
 第二次大戦後長らくの間,わが国では社会医療の見本のようにいわれ続けてきたイギリスや北欧の医療も近年大幅に改革され,国の経済的負担の軽減化にある程度の成功を収めつつある.ところがフランスでは1980年代がミッテランによる社会主義政権であったという理由によりこの医療改革が進まなかった.したがって1995年に政権をとった中道右派のシラク大統領/ジュペ首相のコンビに課せられた最大の国内問題の課題の一つが,ミッテランが生涯手を付けることのなかった医療改革であった.
 シラク/ジュペの決断は迅速で,1995年12月にはフランスの国鉄改革案などの様々な脱社会主義的な改革案とともにこの医療改革案も発表され,これらのすべてを含む改革案が巷ではジュペ案(plan Juppe)と呼ばれた.しかしこのジュペ案に対する各種の労働組合からの反対も極めて迅速かつ強力に実行に移された.1995年末に1か月にわたりフランス各地でジュペ案に反対しゼネストが打たれたことはいまだわれわれの記憶に新しい.このとき,医師以外の看護婦など医療職のスト参加はかなりの数であったようであるが,インターンを含めて医師の参加はほとんどみられなかった.

病院管理フォーラム 広がる病院患者用図書館・6

東京慈恵会医科大学附属病院小児病棟図書館ボランティア

著者: 菊池佑

ページ範囲:P.836 - P.837

 親による虐待,学校でのいじめ,不登校,知識の詰め込み優先の早期教育,外遊び時間の減少など,子どもを取り巻く環境は悪化し続けている.戦後の貧困と感染症がほぼ克服され物質的には豊かになった今の日本は精神的問題を抱え込んでいる.

診療情報管理はいま・3

永久保存の方法(媒体)と問題点

著者: 大津淑子

ページ範囲:P.838 - P.839

 前回,保管期限を過ぎた診療録の問題を述べたが,最近の社会現象となっている診療録の開示要求が今後の診療録の保管管理,利用の仕方に大きくかかわってくるであろう.
 最近まで診療録の中に書かれた情報を利用しようとするとき,診療録が存在しなければ前に進めなかったが,最近では診療情報の管理に目が向けられ,紙に記録されている診療録からコンピュータに記憶される電子カルテの研究,実用化が話題となっている.しかし現実には実体のある診療録をいかに残すかということが問題であることに変わりはない.

経営管理・3

新たな日常性の構築「かわらなきゃ」—職種別損益計算の試み(3)

著者: 塩谷泰一

ページ範囲:P.840 - P.841

 前号では内科入院収益を例として,職種別診療収益配賦表の作成方法について述べた.すなわち,診療収益を投薬・注射・処置・検査など診療行為別にとらえ,技術料と材料料(薬剤料を含む)に分類し,設定した按分率をもとに各職種に収益を配賦するのである.
 本稿では,この方法により作成された病院全体の職種別収益計算書について従来の診療科別収益計算書との比較を含め解説する.

癒しの環境

光とロビー

著者: 堤洋城

ページ範囲:P.842 - P.843

ホテルの顧客サービス
 ホテルでの顧客サービスの基本的考え方はまず,お客さまの信頼を得ることです.そのためにはお客さまの個々の気持ちをどう受け止めるかに尽きます.お客さまのニーズをつかみ,それに応えてはじめて信頼関係が生まれます.
 たとえれば,お客さまのニーズとそれに対応する実際のサービス(品質)がどうであったか,それによって生まれる信頼(満足度)の関係は正三角形のようなものです(図).お客さまのいろいろなニーズにどう応えられるかということです.この対応が少しでも崩れると正三角形がゆがみます.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

三枝病院

著者: 三枝一雄

ページ範囲:P.844 - P.845

病院建て替えに至る背景
 三枝病院は1968年9月千葉県富津市に21床の個人病院として出発した.3年後に2階を増築して36床となったが,それ以後は沈黙していた.厳しい医療経済環境にあって増改築のめどが立たなかったのと筆者が開業医として実子がなく後継者の期待も持たなかったからである.筆者はやがてモラロジーという人間学に目覚め,診療一筋から社会の道徳活動に熱心になると次第に運命が変わってきた.よい事務長,よい後継者が現れ病院の継続を考えるようになったのである.地域は30年の間に大きく変わり,創立のころは病院の前から海が近くにみえたのに,埋め立てによって工業地帯となった.病院のすぐ前に南房総最大級の「ジャスコ」ができて,田んぼは住宅地になった.さらに東京湾に横断橋がかかる時代となった.後継者となった倅は学位を取得して結婚,そろそろ勤務医を辞めて三枝病院の副院長に収まってもいい年ごろとなった.しかし老朽化した親父の病院に連れ戻すのは気の毒だと思うものの,近代化するだけの資金がない.いくらなんでも少しは手直しをしなければと思案をしていたときに,ふと近代化設備事業の募集が目にとまったのである.

保健・医療・福祉政策ウオッチング

厚生省の組織改革で何が変わるか

著者: 病院問題研究会

ページ範囲:P.846 - P.847

 今年の7月,厚生省は局の廃止を伴う大がかりな組織改革を行った.今回は病院に関係する部分について検討をすることとする.

いま,小児専門病院・小児科部門の運営は・8

静岡県立こども病院

著者: 北條博厚

ページ範囲:P.848 - P.850

●病院の沿革ならびに地域的背景
 1973年1月,医療問題懇談会が知事の諮問に対して「県中部に小児専門病院を新設することが妥当」と答申した結果を受けて本院の開設が決定された.全国でもこども病院の数は少なかった当時である.先進の国立小児病院や神奈川,兵庫のこども病院を参考にして,ベッド数200床の独立型小児専門病院として建設する計画が進められ,1977年4月に開院の運びになった.小児専門病院としては全国で6番目であった.当時はもとより現在も,静岡県で紹介予約制度を敷いている病院はほとんどなく,開院当初は果たして患者さんがどれくらい来るか心配であったが,幸いなことに県民および地域の医療機関の理解を得て,小児の専門病院として,また地域における小児疾患の最終病院として評価を得て現在に至っている.
 1995年の静岡県の人口は373万人,出生数は35,345人,乳児死亡率は4.3である.第1次ベビーブームの1948年の出生数は83,065人(乳児死亡率53.4),本院開院の1977年は53,117人(同8.0)であった.少産少死の傾向は本県の場合もはっきりと統計上の数字の上に現れている.

特別寄稿

病院管理学から病院経営学へ—情報と内部組織の経済学はマネジドケア革命をどうみるか・2

著者: 髙原亮治

ページ範囲:P.857 - P.862

医療における情報の非対称性と不確実性
 従来,医療経済学では,医療という領域が通常の競争市場論やその前提となる完全情報市場とどのように異なっているかの解明が行われてきた.その帰結として,医療においては患者と医療提供者の間に著しい情報の非対称性があることなどが解明されてきた.また,医療行為の地域的変異(スタンダードな治療方法がないこと)などが解明されてきた.(注12)
 さらに近年進展の著しい不完全情報の経済学の適用により,より精密な分析が可能となってきている(注2,8号731頁参照).とくに米国のような医師と病院が区分されており,保険者を選択できるシステムを前提とすると,次のことがいい得る.

データファイル

21世紀の医療保険制度(厚生省案)—医療保険及び医療提供体制の抜本的改革の方向〈抄〉

ページ範囲:P.865 - P.869

・我が国は,国民すべてが医療保険制度に加入し,誰もが安心して医療を受けることができる,世界でも有数の医療制度を確立してきた./しかし,急速な人口の高齢化,医療の高度化等により医療費は増大を続ける一方,経済基調の変化に伴い,医療費の伸びと経済成長との間の不均衡が拡大し,このままでは国民皆保険制度そのものが崩壊の途を辿ることにもなりかねない.
・21世紀の本格的な少子高齢社会においても,すべての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができるような医療制度を,我々の子どもや孫たちに引き継いでいくために,国民皆保険制度を堅持し,新しい時代を見据えながら,医療保険及び医療提供体制について抜本的な改革を実現させる.

医学ごよみ

9月—september 長月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.871 - P.871

□9日 近代皮膚科学の祖
 19世紀の中葉に,皮膚疾患に対して従来の体液病理説を排して,皮膚病の成因は局所刺激や寄生虫の付着によって起こるという新しい説を発表したヘブラ(Ferdinand von Hebra, 1816〜1880)が生まれた日である.彼は現在のチェコのモラヴィア(Moravia)のブリュン(BrUnn)に生まれた.1841年にウィーン大学の医学部を卒業し,当時の著名な病理学者ロキタンスキー(Karl Rokitam-sky, 1804〜1878)に師事した.ロキタンスキーの病理学から新しい皮膚疾患の成因などの分類のヒントを得たという.後にウィーン大学の皮膚科学教授に就任し,ウィーン学派の創立者の1人でもある.
 彼は1845年に最初に彼の新しい分類法を発表し,多くの医家が新分類法を認めた.この基本的分類法は現在の皮膚科学においても踏襲されているという.1860年に出版した皮膚科学教科書(Lehrbuch der Haut-krankheiten)は現在でも名著と讃えられている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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