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雑誌目次

雑誌文献

病院57巻10号

1998年10月発行

雑誌目次

特集 地域医療支援病院はどうなる

地域医療支援病院と今後の医療提供体制の展開

著者: 竹内實

ページ範囲:P.866 - P.869

 昭和36年からの国民皆保険とともに全国各地で増加してきた病院病床数は,高齢化の進展と老人医療費無料化政策に乗って徐々に入院患者の形を変えながらさらに増加を続けた.昭和60年第一次医療法改正が行われ,病院から在宅への流れを促す意味での「老人保健施設」が登場し,さらには「地域医療計画」の策定が都道府県に義務付けられ,その中に必要的記載事項として第二次医療圏ごとの病床規制が図られた.しかし,これがかえって駆け込み増床を助長し全国の病院数は1万を超え,病床数も170万床近くまで増加した.
 平成4年に行われた第二次医療法改正では病院機能を区分する目的で,まず「特定機能病院」と「療養型病床群」が規定された.特定機能病院は平成5年9月に二つの国立病院が承認されたのを皮切りに,それから約3年半の年月を経て予定された82病院のすべてが承認されている.一方,療養型病床群は平成10年2月現在,全国820病院で6万5千床が届出を行っている.

「地域医療支援病院」をこう考える—望まれる中小病院を重視した地域医療支援網

著者: 鈴木篤

ページ範囲:P.870 - P.871

 第三次医療法改正により「地域医療支援病院」がスタートしたが,東京東部およびその近郊で地域医療を進める立場から,地域医療支援病院に対する考えを述べたい.

「地域医療支援病院」をこう考える—地域特性に配慮を

著者: 野元域弘

ページ範囲:P.872 - P.873

「地域医療支援病院」の制度化について
 特定機能病院,療養型病床群の中間に位置づけて,現在最も地域医療と深くかかわっているであろう「かかりつけ医」や「市井の中小病院」の機能を強化する一つの手段として,地域医療支援病院構想の制度化は非常に意義があることと考える.
 しかし,どのような立派な構想でも,運営がしっかりしてないと疑義・問題点にぶつかるのは致し方ないことであろう.

「地域医療支援病院」をこう考える—紹介率の数値規制がネック—手を挙げたくても挙げられない

著者: 松波英一

ページ範囲:P.874 - P.875

 現在のわが国の経済は破綻しつつあり,21世紀にかけての医療費はますます厳しい状況に陥ることは必至であります.したがって不必要な医療機関・病棟を廃止し,医師の数を減らし,供給面からも医療費の節減を推し進めざるを得なくなったものと考えます.しかし国民に良質かつ最新の医療を提供することが大前提であり,効率化を図る手段が「地域医療支援病院」となるであろうという認識はあります.
 ご承知のように「地域医療支援病院」の要件のなかで,今年の3月27日から開設者の資格に医療法人が加えられました(厚生省告示第105号).それまで特別医療法人であることが条件であったので,私どものような出資持ち分のある私的医療法人は諦めざるを得なかったわけです.

「地域医療支援病院」をこう考える—制度化は必要—だが,あまりにも多い不確定要素

著者: 白石恒雄

ページ範囲:P.876 - P.877

地域医療支援病院の制度化について
 わが国の医療の流れからすれば,地域医療支援病院の制度化そのものは当然の成り行きであると考えられる.なぜなら,わが国では20床以上の医療機関はすべて病院という同一概念の中に包括されており,20床から1,000床以上の病院まで,すべて同じように取扱われてきたことの矛盾があり,その矛盾は地域社会の中でそれぞれの病院に求められる医療の機能を考えるとより明確となる.
 わが国の医療機関には診療所と病院の2種類があり,その基準となっているのは単に病床の数のみであり,そこには医療の機能的な要件への配慮がまったく欠けている.一方,その矛盾は近年の医学・医療における診断・治療法の著しい進歩への対応の仕方から考えても,同じように病院という医療機関でも置かれている立場や規模によりその対応の仕方が異なってくるのは当然であり,病院自らがそれぞれの地域が求めるニーズに対して果たしうる役目を,病院機能という形で分担して対応していかねばならなくなってくることは当然であると考える.

「地域医療支援病院」をこう考える—現実に即し承認要件の再検討を

著者: 世古口務

ページ範囲:P.878 - P.879

 1998年4月1日,第三次医療法改正の中で最も大きなポイントは「地域医療支援病院」の制度化である.その背景には「かかりつけ医」によるプライマリケアや,在宅医療,訪問看護といった新しい形態の医療を後方から支援するという狙いがあり,地域の医療機関の機能分担,連携の推進を一層進めていくための切り札的な存在と考えられる.
 この「地域医療支援病院」の承認要件のうち,患者紹介率については「全初診患者のうち紹介患者と入院した救急患者の合計が80%以上」と非常に高く設定された.ただし特例措置で,「紹介率が60%以上〜80%未満の病院であっても2年間で80%にまで高める具体的な計画を策定し,その達成がみこまれる病院」については都道府県知事の判断で弾力的に承認できるほか,さらに1年間の計画の延長が認められている.

「地域医療支援病院」をこう考える—地域の現実に密着した形の地域医療支援病院を

著者: 下沢英二

ページ範囲:P.880 - P.881

地域医療支援病院の制度化について
 当院は1985年11月5日に設立された医師会立の高次先進医療を担う開放型共同利用施設である.完全紹介型外来と240床の入院ベッドを有し,内科,外科,麻酔科,放射線科,健診科を22名の常勤医と非常勤の病理医1名,計23名で担当している.
 当院の位置する函館市は,約30万の人口を有する北海道最南端の拠点都市で,三次医療圏の中核である.北海道は各医療圏が広く,自給度の低い市町村が多く,交通のアクセスでいくつかの中核都市に集中する傾向があり1),特に道南では,ほとんどが函館に集中しているが,他地区と異なり道央・札幌に転送することなく医療が完結している(図).

「地域医療支援病院」をこう考える—中規模国保直診病院の機能をどう考えるか

著者: 青木洋三

ページ範囲:P.882 - P.884

 国保橋本市民病院は,和歌山県の地域医療計画でいう橋本医療圏にあって,和歌山県立医科大学紀北分院とならび中核病院としての機能を担っている.北は大阪府,東は奈良県に接する和歌山県で最も東に位置する橋本市の人口は,平成10年6月末現在で55,319人,医療圏全体でのそれは約10万人である.平成7年の国勢調査による橋本市の産業別人口は第一次,第二次,第三次,分類不能の順にそれぞれ8.2,26.3,65.2,0.3%で,具体的には田園都市といえるが,市の北部は宅地開発が今なお盛んに行われており,平成17年の人口は約85,000人,平成22年には95,000人と見込まれている.
 当病院は許可病床数255,稼働病床数229,13診療科からなり,橋本市の在宅介護支援センターと訪問看護ステーションを併設している.病床稼働率は過去3年間平均で91.2%である.このような状況で,第三次医療法改定で生まれた「地域医療支援病院」をどう受け止めたかを,私見を交え述べてみたい.

医療施設経営改善支援事業・フォーラム函館より フォーラム・3年後の病院はどうなる

医療制度の現状をみる

著者: 河北博文

ページ範囲:P.885 - P.885

 話をはじめる前に私が最近非常に関心を持っていることを一つお話しいたします.現在ヨーロッパでは,EU (European Union:欧州連合)という一つの大きな経済圏が作られつつあります.北米やアジアの経済圏と対等以上に競争ができるような経済圏を構築するというのがその根底にあります.当然その中で経済などが様々に変化しているわけですが,通貨統合だけではなく,大きく欧州連合を作っていく中でいくつか試みられていることがあります.
 その中の大きな一つが社会保障の統一です.これはとても難しいことだと思います.ただ単に数字合わせだけではなく,社会生活,あるいは文化,宗教,経済,政治といったすべてのものが社会保障制度にはかかわってきます.それを統一するという大変な試みが,現在ヨーロッパでは行われています.

病院医療の将来

著者: 宮坂雄平

ページ範囲:P.886 - P.889

 今日は北海道の医療施設経営改善支援事業ですので,お集まりいただいている先生方の多くは病院の先生ではないかと思っております.今,河北先生がお話しになりました「社会保障はいかにあるべきか」という議論は後の機会にゆずるとして,今回の医療法改正と今後の医療施設体系の方向についてお話ししたいと思います.
 まず医療法の改正ですが,一番大きな点は,有床診療所への療養型病床群の設置ということです.21世紀の少子・高齢化社会が目前に迫っており,介護が必要な状態になる高齢者は,平成12年(2000年)に280万人,平成22年(2010年)には390万人に増加すると予測されています.増加する高齢者への処遇が,今後の重要な課題であり,対策として在宅医療や在宅介護など,在宅でのケアの推進とともに,要介護者を受け入れる体制,すなわち高齢者が医療施設に入院した状況での医療や介護の体制整備を図る必要があります.そこで療養型病床群は19万床,老人保健施設28万床,特別養護老人ホームの29万床と,目標を定めて整備しているところです.

地域医療支援病院の役割

著者: 関山昌人

ページ範囲:P.890 - P.893

 「地域医療支援病院」は,今般施行された改正医療法で創設されました.今回の改正は,要介護者の増大への対応を契機としたものですが,国民に良質な医療を効率的に提供できるよう地域医療の構築を図ることについても狙いとしています.
 具体的には,医療計画の見直し,地域医療支援病院の制度化による医療機関間の連携と地域医療のシステム化の推進,特別医療法人制度という新たな医療法人などがあげられます.

社会保障制度の変革と病院

著者: 広井良典

ページ範囲:P.894 - P.897

 すでに地域医療支援病院の具体的な話については,お二人の先生からかなり立ち入った話がありましたので,私からは目本の医療の問題をこれから考えていくうえで,医療と切っても切れない社会保障の問題,また日本経済全体との関係での日本の医療,そういった流れの中での病院について少し広い視野からお話をさせていただきます.
 低成長の時代ですので,「これからの」や,「将来の」という話は概して悲観的な話が多いわけですが,少なくとも他分野との比較においては,医療は非常に大きな成長分野,成長産業であるといえます.

【討論】3年後の病院はどうなるか

著者: 宮坂雄平 ,   関山昌人 ,   広井良典 ,   河北博文

ページ範囲:P.898 - P.902

 河北 現在,いろいろな場で競争原理を導入しようといわれています.そこでは生き残るものと消えていくものがあるということで,私たちの病院は地域の医療提供体制のなかにどう位置づけられるでしょうか.
 まず参加者の皆さんに,次の点をぜひ念頭においていただきたいと思います.それは,仮に人口10万〜15万人の地域があり,そこに同規模・機能の国公立病院と赤十字病院,医療法人あるいは個人病院があるとします.患者さんは各医療機関に同じように5分程度で通えるというとき,この地域の人たちは一体どの病院を選ぶでしょうか.

資料

地域医療支援病院について

ページ範囲:P.903 - P.907

地域医療支援病院に関する事項
(平成10年5月19日:健政発第639号「医療法の一部を改正する法律の施行について」より)
1.趣旨
 地域医療支援病院制度は,医療施設機能の体系化の一環として,紹介患者に対する医療提供,医療機器等の共同利用の実施等を通じてかかりつけ医,かかりつけ歯科医等を支援する能力を備え,かかる病院としてふさわしい構造設備等を有するものについて,都道府県知事が地域医療支援病院の名称を承認するものであること.

グラフ

地域になじむ病院を目指して—社会福祉法人信愛報恩会信愛病院

ページ範囲:P.857 - P.862

病院の超過密地域の中で
 信愛病院がある東京都清瀬市は,全国でも有数の病院の過密地域として有名である.人口29人に対して一般病床が1という数字になったのは,もともと清瀬市地域にあった多くの結核病床が一般病床に転換した経緯による.最近はさらに当院の近くに老人保健施設が二つでき,さらに過密地域となっている.診療圏は,清瀬市のほか,所沢市など近隣の5市および東京都練馬区にも及ぶ.このような地域の中で当院はどのような特色を持っているのだろうか.
 当院は,社会福祉法人信愛報恩会が運営する.病院のほかに,特別養護老人ホーム,デイケアセンター,在宅介護支援センター,特定有料老人ホーム,訪問看護ステーションをもつ.社会福祉法人信愛報恩会は,明治末期のキリスト教社会福祉運動に端を発する.当時不治の病であった結核患者のために病院を開設し,戦中・戦後を通して結核医療福祉に取り組み,昭和27年の社会事業法制定と同時に社会福祉法人となった.

第37回全国自治体病院学会会長を務める 岐阜県立岐阜病院院長 村瀬恭一氏

著者: 高井哲 ,   八木保

ページ範囲:P.864 - P.864

 第37回全国自治体病院学会は平成10年11月5,6日の両日,岐阜市で開催されます.私も分科会長の1人ですが,学会長の村瀬恭一岐阜県立岐阜病院長はじめ,各分科会は会員の皆さんにすばらしい学会の場を提供すべく準備中であります.
 さて,学会長を務められる村瀬恭一先生の人柄について触れることにします.お仕えしたのは平成7年4月から平成10年3月までの3年間の短い期間でしたが,村瀬院長は病院管理者としての卓越した能力をもち,管理・運営のノウハウを心得た方で,副院長として得をしたのは私だけだろうとの自負もあります.

主張

病院機能評価における改善支援事業

著者:

ページ範囲:P.865 - P.865

 初年度の病院機能評価事業が終了し,その実績が公表されるとともに,今年度の事業計画も明らかにされた.当初,240病院の受審を見込んでいたところを,最終的には130余の病院が審査を終了したに留まった.初年度のことで,根拠のある目標数を設定することが難しかったとはいえ,受審を希望する病院が決して多くはなかったことの背景要因について,改めて検討しておく必要があろう.
 当初から病院機能評価に取り組んできた先駆的病院が初年度に受審した病院の多くを占めたことは当然と思われるが,この事業に関心を持ちながらも,なお評価を受けるに至らない病院が少なくないことが確認されている.評価によって格付けされ,認定が受けられなければ病院にとってきわめて不都合であり,よほど自信がなければ受けられるものではないという感覚がなお残っているようにも見受けられる.これは,この事業が病院団体などの出資により,自らの改善支援のために実施されているという基本的な趣旨が理解されていないということであり,評価機構はその徹底のための広報に一層努めるべきである.

特別寄稿 マネージドケアと米国医療の変容

1.マネージドケアの仕組みと興隆の背景

著者: 田村誠

ページ範囲:P.908 - P.912

はじめに
1.マネージドケア(managed care)とは
 いつ,どのような治療を行うかは,従来,「医師(主治医)」の裁量に大部分が委ねられてきた.そうした決定権の多くの部分が,「医師(主治医)」から「支払者(保険者)」に移り,医師(主治医)以外の人によって「医療が管理化」されたもの,それがマネージドケアである(注1).「医療が管理化」されることにより,医師が治療内容を決定するよりも,「効率的に質の保証された医療を包括的に提供できる」というのがマネージドケアの企図するところである(注2).一般に,HMO (health maintenance organization)と呼ばれる組織など(注3)により提供されている(注4).

特別企画 シリーズ・ISO9000sの医療への導入を検討する・4

英国の保健福祉分野でのISO9000シリーズの導入

著者: 北村彰

ページ範囲:P.913 - P.915

背景事情
 英国では米国と異なり,1990年までは保健福祉分野の施設の活動評価の動きは少なかった(注1).しかし,1990年にサッチャー政権が,保健福祉制度を抜本的に改革し,税方式を維持しながら,緊縮財政下で民活原理や競争原理を制度的に組み込み,さらに競争・民活によるサービスの質の低下を招かないようにサービス提供者に質の保証を求めたため,状況が一変した.
 サッチャー改革により新しい監査制度が導入され,保健福祉分野におけるサービスの質の保証のため,独立監査部門による監査制度が実施されている.また,公的サービスの提供に当たっては,費用支払い側とサービス提供者(施設)側で競争を前提とした事前契約方式が導入されたため,費用支払い側が提供されるサービスの質の保証を条件として求める動きが出てきた.

連載 医療事故・医事紛争防止とリスクマネージメント・5

医療事故/紛争事例から学ぶ(3)

著者: 川村治子

ページ範囲:P.916 - P.919

 医療事故を看護婦との関係で考えるとき三種の事故が存在する.一つは看護婦としての知識不足や不注意に基づく事故,次に看護婦に過失はあるが,その背景には医師や他の医療従事者および管理上の問題をはらむ事故,最後に看護婦に過失はないが,観察や知識が高ければ防ぎ得た医療事故だ.前二者はいわゆる看護過誤に類し,責任の所在としての看護婦が,一方,後者は事故防止に果たす看護婦の役割が問題となる.
 さて,看護事故で多いものに転倒と注射事故がある.両者とも看護事故全体の約17%を占めている1).そこで,今回は注射事故を例として日常の看護業務での事故防止と,事故防止に果たす看護婦の役割を向上させるための院内教育のありかたについて考えたい.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第48回 健康の森2題

とちぎ健康の森

著者: 柳雅夫

ページ範囲:P.932 - P.935

 建設地はJR宇都宮駅から,大谷街道を西へ車で約20分ほどのところにある.自然の豊かに残されたこの敷地は,もともと国立療養所宇都宮病院の所在地であり,21haの敷地の中に低い建物が点在していた.
 21世紀にかけて,日本が高齢社会に移行する中で,栃木県では明るく活力に満ちた長寿社会の実現というテーマを掲げる.この施設には,そうしたテーマに呼応するように,「健康」と「生きがい」という,人々が豊かな生活を送るうえで欠かせない目標のための拠点づくりという使命が与えられた.施設の内容は複合的で多様であるが,それらの拠点をイメージした名称がある二つの部門に,大きく分けることができる.すなわち,「健康づくりセンター」と「生きがいづくりセンター」である.

あいち健康プラザ

著者: 「病院」編集室

ページ範囲:P.936 - P.938

 愛知県では平成元年3月に,これからの長寿社会を健康と生きがいに満ちたものとするために,「人生80年を心身ともに健康で」という願いに応える21世紀へ向けた大規模プロジェクト「あいち健康の森基本計画」を策定した.
 場所は名古屋の南東部,大府市と知多郡東浦町にまたがる約100ヘクタールの地域に位置しており,「あいち健康の森」の中心施設である「あいち健康プラザ(あいち健康の森健康科学総合センター)」内の健康開発館および健康情報館が平成9年10月にオープン,また健康科学館および健康宿泊館が平成10年6月にオープンし,一応,第1期事業の区切りとなった.

病院管理フォーラム 看護管理・7

感染管理・1—新しい感染症の考え方と経済的問題点

著者: 嶋森好子

ページ範囲:P.920 - P.921

 新潟県の特別養護老人ホームの職員を含む入所者27人への結核の集団感染や(1998年7月29日朝日新聞),厚生省生活衛生局食品保健課長通知(8月17日付け)による,イタリアからの輸入食品「グリーンオリーブ」に由来するボツリヌス食中毒に関する「ボツリヌス食中毒の発生について」の通知,また,世界最大となった腸管出血性大腸菌O157の集団発生など,制圧されたはずの急性伝染病が,日常生活の中で新たな脅威となっている.厚生省は,1997年伝染病予防法の改正案を国会に提出し,現在継続審議中である.
 このような現状において,病院における感染防止対策の重要性も増してきた.それは感染防止対策が,患者の苦痛を少なくすることだけに止まらず,ケアをする看護婦の負担を軽くすることや,患者や家族からの医療訴訟を避けるという意味からも重要な課題であるからである.

リエンジニアリング—PFFCの展開・10

PFFCによる病院建築療養群棟と緩和ケア棟

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.922 - P.924

 本院ではPFFCを遂行中に慢性部門の病棟(聖母病棟)を建設したが,病棟の建設にあたっては,それまでに行ってきたPPFCの実験成果を取り入れて設計施工したので,設計の考え方とその内容について述べる.

癒しの環境

何でも聞きたくなるような環境

著者: 木村ひろみ

ページ範囲:P.925 - P.925

 患者さんにとって心配なことやちょっと聞きたいと思ったことを何でも気安く口に出せる環境.患者さんは,痛かったり,苦しかったり,そのために不安の固まりになっているのですから,そういうことができるような雰囲気のある病院でしたら,とても安心して療養することができるのではないでしょうか.
 私が患者サービス部長として働いています木村病院では,患者さんを「医療消費者」として位置づけ,「支払に合った満足」を得ていただこうと努力しているところです.そのために,患者さんが不満に思われたことを患者さんに教えていただいて改善していこうとしています.

MQIの実践—練馬総合病院・8

病棟採血にかかる時間を短くする

著者: 篠崎峯子

ページ範囲:P.926 - P.928

 当院では平成8年度からMQI活動を開始した.病院の理念を実践するためには職員の意識改革が求められていた.MQI活動は当院独自のものであり医療の質の向上を目的とした業務の一環として行った.検査科チームの活動「病棟採血にかかる時間を短くする」について紹介する.

ナースステーション考・8 「ナースステーション考」総括

1)ナースステーションの構造と機能

著者: 井部俊子

ページ範囲:P.929 - P.930

 看護を提供するうえで病院の構造は基礎的条件であり,看護の質に直接影響を及ぼす.しかしながら看護職にとって病院の建物はいわば与件であり,構造を変えることは容易ではなかった.病院で働く看護職の多くは,病院の建物や設備といった構造上の問題で,看護を効率よく提供できないという不自由さを体験している.
 建物の構造と機能は密接に関連しており,看護提供システムを決定づける重要な因子である.建物の構造と機能はまた,働く者のモラルやセルフエスティーム(自己評価)にも関連している.風格と品位を備えた建物は人々に自信と意欲をもたらす.

2)ナースステーション機能の見直しと再構築

著者: 筧淳夫

ページ範囲:P.930 - P.931

 病棟の中にすべての機能を集中して1か所にナースステーションがつくられ,そこに看護で利用するために必要なすべての物が置かれ,また看護の準備,片づけや記録などに必要なすべてのスペースが設えられるような病棟建物が何の疑問もなくつくられ続けている.果たしてこれで良いのであろうか.看護婦の動線短縮が病棟計画の第1の命題のようにいわれ続け,病室をどうしたら病棟内でコンパクトに配置できるのかといったことに腐心していた病棟建築の中で,ナースステーションの機能自体を見直す必要はないのであろうか.こんな疑問からこのナースステーションに関する研究が始まった.
 既に,この研究の目的およびそれぞれの調査結果の概要については,今までの「ナースステーション考」において述べているので,ここでは調査の結果としてまとめられたナースステーションの機能について考えてみたい.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・9

ときわ病院—機能分化の現状と問題点

著者: 花井忠雄

ページ範囲:P.939 - P.942

 日本の精神科病院は今大きな様変わりを見せている.ひとつは,入院治療を中心とした精神科病院から,外来治療・デイケアによる退院者のリハビリテーション・社会復帰施設の設置や退院者の地域生活への援助など,地域医療・地域ケアへと,病院の役割の幅を広げていることである.もうひとつは,入院医療の質を高めようとする動きである.それは一方では,狭い・暗い・汚いなどの精神科病院の陰性イメージを刷新し,鉄格子が外され明るく快適な療養環境を整えるなど,イメージアップが進められていることに象徴されている.他方では,看護婦だけでなく精神科ソーシャルワーカ(PSW)・臨床心理士(CP)や作業療法士などのコメディカルスタッフを配置してチーム医療を推進し,また,急性期治療病棟や精神療養病棟など病棟を機能的に分化して精神科入院医療の質と効率を高め,社会復帰の促進と入院期間の短縮をさらに図ろうとする動きに示されている.
 ここでは精神科入院医療に限って,当院の現状を一例として紹介し,今後の課題について二,三触れてみたい.

医学ごよみ

10月—October 神無月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.943 - P.943

 21日 ブロディ骨膿瘍
 骨膿瘍のことを述べた英国の著名な外科医,ブロディー(Sir Benjamin C Brodie, 1783〜1862)の命日である.
 彼は1783年6月8日,イングランドの南西部のウィルトシア(Wilt-shire)州のウインタスロー(Winter-slow)という小さな村で生まれた.ブロディーの祖先はスコットランドの名門であったが,1649年にイングランドに移ってきた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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