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雑誌目次

雑誌文献

病院57巻4号

1998年04月発行

雑誌目次

特集 看護の質の評価

看護の質から看護サービスの品質へ

著者: 井部俊子

ページ範囲:P.306 - P.309

はじめに
 現代はサービス化社会といわれる.サービス化社会とは次の三つの現象を指して,経済がサービス化したという1)
 第1は,国全体として生産する富の中で,サービス活動が生産する富の割合が半分以上になることである.わが国では広義のサービス産業といわれる第3次産業は64.2%(1993年)となっている.

病院機能評価における看護の質の評価

著者: 内田卿子

ページ範囲:P.310 - P.313

はじめに
 日本は高齢化社会から高齢社会に変わり医療の需要も,その内容が大きく変化してきた.そのうえ少子社会への変化により,ライフサイクルも当然変化をきたし,高齢者の面倒を家族がすべてみる形は崩れ,社会福祉に頼らざるを得ない状況が多くなってきた.医療施設も医療法の改正により社会的理由による長期入院が減り,特別養護老人ホームをはじめ老人福祉施設が増加し,病院としてのあり方が問われるようになった.
 病院の類型化は病院の機能による新しい医療の病病連携や病診連携への動きを起こし,個々の医療施設の質が問われるようになってきた.また患者の権利である自分の疾病に対する情報の開示がいわれるようになり,病院も選ばれる時代になった.そのような社会的変化に対応し患者のニーズに合った医療の提供が求められる時代となっている.

看護機能と診療報酬上の評価方法—業務量調査の試行によって得られた看護内容とその量を手がかりとして

著者: 筒井孝子

ページ範囲:P.323 - P.327

看護行為別の直接経費の算出方法
 多くの看護職にとって「自らが努力して実践している看護行為を正当な方法で経済評価して欲しい」という要請は,専門職種として当然あると思う.これまでの基準看護方式,平均在院日数を加味した特3種の新設,そして療養型病床群の看護・介護体系,1994年10月からの新看護・看護補助体系の新設や夜勤加算の算定という一連の看護料にかかわる診療報酬上の改定は,病院における看護をそれ以前の状況よりも改善するという方向で進んできたと評価することができる.しかし,急性期病床における平均在院日数短縮化の大きな波や完全週休2日制の導入は,病棟看護実践における看護実践を高度化させ「人は増えてもより多忙になる」という結果となっている場合が少なくないといえよう.これは,最近の受療率や1件当たりの受診日数が減少ないし横ばい傾向がみられる一方,1人1日当たりの医療費は増加する傾向になるものである.このような傾向は,わが国だけの問題ではなく先進国共通の課題となっている.
 現在,厚生省では,医療保険制度の構造の見直しに着手している.見直しの視点としては,①人件費,施設関連コストの比重の増大に際して,適切な人件費および施設関連コスト算定の評価方法の確立や②適正化された場合においての医療の質の評価手法という2点が示されている.

機能評価をどう活用するか

大改築への示唆をメインに多くの部署が本気で取り組み

著者: 高嶋妙子

ページ範囲:P.314 - P.316

はじめに
 看護の質の向上を目指すということはplan, do, seeを繰り返すということである.よって評価というステップは日常茶飯のこととして踏んでいるが,これはあくまでも自己評価である.
 自分なりに精一杯の力を注ぐと,人間は客観的評価が欲しくなるらしい.当部のスタッフが第三者評価を求めたのはまさしくこの理由からであった.

小規模病院での医療機能評価—地域専門病院の機能を評価しレベルに確信を持ちたい

著者: 池田五十鈴

ページ範囲:P.316 - P.318

はじめに
 当院は創立以来28年の,消化器科専門病院である.これまで地域に密着し,「小さくともエクセレントな病院作りを」との思いから,質の高い医療と看護を提供すべく努力してきた.しかし,この20数年間に医療を取り巻く環境は激変し,患者様の医療や看護に対するニーズも大きく変化してきた.当院は,こういう社会状況の変化と患者様の要望に真剣に対応してきたと自負しているが,小規模病院なるがゆえの様々な困難性もあり,積み残している課題も少なくない.
 当院が激動する社会の中で今後も発展していくためには,まず現状の正しい把握と院外的評価が必要不可欠と考えていた折,(財)日本医療機能評価機構による病院評価の開始を知った.

病院の理念,経営方針の実現を目指し現場に即した方法で

著者: 梶原和歌

ページ範囲:P.318 - P.320

はじめに
 医療法人近森会の中心となる近森病院は1997年5月13日,訪問審査を受け8月1日付で一般病院種別Bで全国では3番目,高知県では初めて「地域が必要とする各領域の医療において基幹的・中心的な役割を担い,高次の医療にも対応しうる病院」として認定をもらった.看護の改革に取り組んだこの10年は普通看護から基準看護,新看護2:1(A)と県に申請書類が提出されなかった年がないほど申請→実地調査→認可の推進を繰り返してきた.それは高齢社会への対応として国の保健医療福祉施策の変革と医療費抑制政策の嵐をくぐり抜け,きたるべき21世紀への受け皿作りのための変革の始動でもあった.
 特に当院は表のように近森外科からスタートし,高知市の3分の1の救急患者を受け入れて,急性期医療を中心に,空床があればどんな状態の患者でも受け入れる対応を40年近く行っていたので,当然医師の権
 限が強く,看護は診療の補助で手いっぱい,という様々の問題を抱えていた.

新病院づくりに匹敵する一体感と向上心が得られた

著者: 岡光幸代

ページ範囲:P.321 - P.322

はじめに
 1995年に(財)日本医療機能評価機構が設立されたときは,いよいよ日本の病院もオープンで質を問われる時代となり,看護部としても近い将来の受審に備えておかねばと考えていた.しかし,医療環境が大きく変化する中,患者ニーズへの積極的な対応がいっそう求められる時代になってきたとはいえ,今後は,限られた条件や資源で病院運営や経営を行っていかねばならない.したがって効率化を進めながらも医療,看護の質の保証を維持し,患者・家族から選ばれる病院であるうえで,第三者による医療機能評価は意義があると考える.
 今回,新病院としての移転改築と新しいシステムを軌道にのせるまでのプロセスを客観的に評価すべく機能評価を受けるまでの準備と,評価結果の今後の活用について述べてみたい.

看護の質は評価できるか

異なる背景を同じ価値観を持つ集団へと教育して—萩原中央病院の場合

著者: 竹隈清美

ページ範囲:P.328 - P.330

はじめに
 インフォームド・コンセントの充実や患者の権利意識の高まりも含め,現代の社会的ニーズがますます多様化している中で,医療・看護の質が問われ,患者から病院が評価され・選ばれる時代が到来したといっても過言ではない.
 当院は,北九州市に位置する,内科120床の民間病院である.近隣には,大学病院や高機能総合病院が配しているが,その環境の中で,開院以来,「患者さんに喜ばれるサービス」を目指し,様々な業務改善を行ってきた.医療全体の質の中で,看護が占める割合は大きいと考え,中小・民間病院らしいこだわりを持った看護を振り返り,質の評価について検討したい.

欲しい,共通の評価基準—現場からの報告

著者: 大原与志子

ページ範囲:P.330 - P.332

はじめに
 私たちは「看護」という仕事をしている.仕事をすると成果が出る.「成果」には「質」があり,「質」と「評価」は切り離せないものである.
 患者が病院を選ぶ場合,「有名な医師がいる」とか「大きくて設備が整っている」とか,いろいろある中で,「看護婦がやさしい」という理由がある.そこには,少なくとも患者の目を通した「看護の質」があり,「評価」がある.医師からみた「看護の質の評価」もあり,他部門からみた「看護の質の評価」もある.そして何より,看護に携わる者自身が自分の仕事の成果を「自己評価」している.
 重要なことは,その評価をどのようにとらえ,次の看護の質の向上のために,どのように活かすかということである.

患者との対応を評価した独自の調査に,看護婦の行っている行動に基づいた評価項目を

著者: 野村勝子

ページ範囲:P.333 - P.334

はじめに
 看護の質とは何か? どのような尺度で評価するのか? 看護の質を数値化できるのか? これらは本稿で挑戦する課題であるが,看護ケアのプロセス1)は看護婦個人が患者に対して起こしている行動であり,その良否を評価することは難しい.
 日常,あの病棟は患者にきめ細やかな対応をし,よい看護をしているとか,あの病棟は指導的役割をとれる人材が手薄なので,看護計画に関する記録が十分でないとか,また某診療科外来の看護婦は患者対応がよく,信頼できるなど感覚的に評価しているのが現状である.感覚的に捉えている評価を,客観的に数値化する試みはいまだ成功していない.

看護の質を上げる土台として,看護教育に必要なもの

著者: 土屋紀子

ページ範囲:P.335 - P.337

はじめに
 人々は今以上の何かを求めて生き,希望を明日に託しているものであるが,それは畢竟,生活の思想と言動における質の向上を目指しているのであり,時間的,人材的,予算的,物質環境的のいずれかの問題の改善を必要としている.それらの問題点の要因分析によって繰り返しの改善が図られ,質の向上をみるのである.この連続的な努力なしには希望を成就させ難い.
 この過程でむだ,むら,無理が存在すれば質は低下していく.看護教育問題も同様のプロセスにより教育の質を阻む問題を取り去り改善していかねばならない.

グラフ

甲状腺専門病院としての機能をさらに充実 新築なった伊藤病院

ページ範囲:P.297 - P.302

 着工から2年5か月,昨年秋に地下2階地上8階からなる新病院が完成した伊藤病院.渋谷区神宮前という都心での限られた敷地を最大限に生かすよう設計されている.
 JR原宿駅から徒歩10分,地下鉄表参道駅A2出口の目の前,という好条件に位置している.

第10回人事院総裁賞を受賞 北海道大学医学部附属病院看護部長 大田すみ子氏

著者: 金井一薫 ,   八木保

ページ範囲:P.304 - P.304

 北海道大学病院看護部には,札幌という風土と北大という学風に培われてきた独特の雰囲気がある.そこは私が知っている全国のどの国立病院にもみられない,豊かなまとまりと開拓精神に満ち溢れた職場である.
 大田さんは,13年にわたる副看護部長時代を経て,部長として今日に至っているが,彼女には,看護部長にありがちな管理的(監視的)態度は微塵も感じられない。おおらかで賢く,人の気持ちや立場を瞬時に察知してしまう能力があるためか,周囲の人々(病院長や事務部長などの人々も)をすっかり手の内に入れてしまう,すごい手腕の持ち主である.

主張

病床の機能区分と在院日数

著者:

ページ範囲:P.305 - P.305

 急性期医療と,慢性期医療または長期療養とを区分しようとする論議が盛んである.従来のわが国の入院医療では両者が一体として機能してきたが,近年は高齢者の増加で入院が長期化する一方で,医療の高度化によりいっそう高密度の医学的管理が必要となっている.今後は両者が混在したまま医療を提供するよりは,機能を区分してそれぞれに相応した人員を配置し,施設・設備を整備することが適当であると考えられるようになったからである.
 もう一つの背景には,医療費の支払い方式の問題がある.すなわち,今後は出来高払いと定額払いとを適切に組み合わせて,むだのない合理的な医療費の支払い方式とすることが必要とされ,当面は急性期の医療に対しては出来高払いを,慢性期の医療に対しては定額払いを適用することが適当であるということになったからである.

連載 医療事故・医事紛争防止とリスクマネージメント・2

総論(2) 訴訟化防止と訴訟対策としての法律知識について

著者: 川村治子

ページ範囲:P.338 - P.341

 結果がよければ説明が不十分でも,自己決定権の侵害などと問題にされることはない.結果が悪ければ,それほど危険だと知っていれば受けさせなかったと家族は悔やむ.たとえ,危険性を説明されていても,確率としての危険性と事実としての危険性は異なる.そして,危険性に対する説明が理解できるものではなかったと医療側に反論したくなる.
 侵襲的行為に伴うインフォームドコンセントは,患者の自己決定権の尊重という意味で最近最も重視されている医師の義務の一つである.医療側もこれを行えば,紛争から開放されるかのような錯覚を持つ.しかし,患者は説明を聞いて医師の勧める治療に同意はしても,納得しているとは限らない.「納得」とはその必要性とリスクを理解し,そして「リスクをも含めてこの病院,この医師に委ねたい」と思うことだ.信頼関係に裏打ちされた真の意味での「納得」がなければ,紛争は起こる.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第42回

ドイツにおける病院建築の今日化—ダウンサイズの促進と介護保険の導入

著者: 中山茂樹 ,   高杉多恵子

ページ範囲:P.351 - P.357

はじめに
 ドイツの病院を訪ね,ここ20年ほどの建築計画の流れを探る機会を得た.病院病床数の削減が議論されている今日,ドイツの病院建築の系譜をかいまみることで,今後の動向を探りたい.折しも公的介護保険の導入が間近に迫っている時期である.既に1995年から介護保険制度がスタートしているドイツでのようすを知るよい機会でもあった.本稿はそこで得た知見の一端を紹介する.

病院の広報

せきしん/みどり

著者: 市川尚

ページ範囲:P.342 - P.342

 赤心堂病院は198床の病院と人工透析施設2診療所・健診センターの四つの施設でグループとしての活動を行っているが,4施設の医療提供体制,施設内の医療機能を知ってもらうため,広報活動としては院外広報誌「せきしん」を発行し,そしてインターネットのホームページを開設しています.
 院外広報誌「せきしん」は1993年より日経メディカル開発の共通ページ「メディPR」をドッキングしました.当院が担当するのは8ページです.このオリジナルページでは各科の医師の紹介,新しい医療機器の紹介や病院理念・方針などを患者さんに理解してもらえるようにしています.

病院管理フォーラム 診療情報管理はいま・8

登録業務の重要性と他病院との連携

著者: 五十嵐よしゑ ,   細川治

ページ範囲:P.343 - P.345

はじめに
 病歴室を開設して診療録管理を始め,26年が経過しようとしている.この間に社会環境も医療情勢も大きく変化してきた.医療資源の有効利用に対する関心が高まり,病院機能評価を行う第三者機関もスタートした.
 これらのことは病歴室業務の再構築も促している.「物」の管理から情報の管理へと業務内容の発展が要求されている.患者側に立った情報を発信することが肝要であり,その一つとして,がん登録,痴呆登録や各種の疾病登録などの登録業務も病歴室の主要な仕事になったと考える.とりわけ規模が大きく,しかも地域がん登録や他医療施設と円滑な連携を有しているがん登録業務について報告を行う.

リエンジニアリング—PFFCの展開・4

外来医事部門へのPFFCの導入

著者: 大槻雅博

ページ範囲:P.346 - P.347

 今回よりPFFC活動の具体的な内容を報告する.
 アメリカでのPFCの現状視察の後,聖マリア病院としてどのように具体化していくかを検討したが,PFFC導入実験の効果の評価がしやすい外来部門を最初のターゲットとした.以下,具体的な調査から現状分析,アクションプラン,最終的な成果までを順を追って述べる.

MQIの実践—練馬総合病院・2

MQIの推進委員長として

著者: 高原哲也

ページ範囲:P.348 - P.350

 筆者が一医師,かつ委員長として,MQI活動を推進した立場から本稿を展開することにする.
 1995年4月,まだ当院のMQI活動は始まっていなかった.医学関係の学会しか参加していなかった筆者は,少数ながらも,既に他病院でQCやTQM活動が行われている事実への驚嘆と,発表会場で覚えた新鮮な感動を,「患者さんから素敵な医師といわれたい—練馬総合病院勤務後の私の意識改革」と題して発表した1)

シンポジウム パス法の原理と経験の交流・3

マサチュセッツ総合病院におけるパス法の現状

著者: 深谷卓

ページ範囲:P.358 - P.363

 1997年の3月末から北米の病院を視察し,MGH (Massachusetts General Hospital,マサチュセッツ総合病院)でのパス法の実際を見学しました.その目的は3年後に電子カルテを導入したいということ,もう一つは医療の質の向上と効率化を図るためにパス法を導入しようということで,パス法の現実を知ることでした.

東京都済生会中央病院におけるパス法の導入

著者: 古瀬敬子

ページ範囲:P.364 - P.368

 当院では,平成7年からクリティカル・パス(以下,CPと略)に取り組み,その過程では幾多の問題に労を費やし今日に至っています.現在は,集積してきたものを実際に使いながら内容を見直している段階で,CP本来の目的「医療チームによる質保証」が成就できる日を目指しています.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・3

くじら病院—病床減から療養環境の向上を実現

著者: 上村神一郎

ページ範囲:P.369 - P.372

活動の実践と試み
 医療法人青峰会くじら病院は,人口35,000人のみかんと水産業の第一次産業を主とする高齢化,過疎化の進む愛媛県八幡浜市にあり,市内に規模を同じくする医師会立の180床の単科精神病院がある.
 診療圏は半径約70キロメートルの地域で,1959年1月,父弘光が八幡浜市双岩で開設,社会復帰活動については,父の代より大きな関心があり,1978年にはPSW (psychiatric social worker)を採用し訪問看護を開始しており,またそれまでに農耕作業を積極的に入院治療に取り入れている.父は,精神病院の開放化に,あまり興味がなかったようであるが,1981年以降筆者が父と共同で経営するようになり筆者の最大の関心事は開放化であり,そしてその後の病院のスリム化と在宅支援である.筆者は性格的に短気であり性急に結果を求めたがる傾向にあるが,1981年以降の17年間は,事故を起こさないように慎重に,常に前に前に走り続ける毎日だった.

早期退院計画・6

在宅介護支援センター・訪問看護の活用

著者: 新谷周三 ,   椎貝達夫

ページ範囲:P.373 - P.376

はじめに
 当院は,茨城県県南部(取手市・藤代町・利根町・竜ヶ崎市・守谷町)と千葉県我孫子市を医療圏とする406床の地域中核病院である.1日平均患者は1245.0人(1996年度)を数え,時間外救急患者数も1日平均53.5人(1996年度)と多い.24時間の救急受け入れ体制を敷いており,重症患者の搬入も日常的で,入院加療後,一命はとりとめたものの寝たきりになったり植物状態に陥いる患者も多い.
 とりわけ,老人・高齢者の場合は退院後の受け皿がないことが多く,転院先が見つかるまで長期間当院に在院する例も多い.

レポート

急速に普及しつつあるわが国の病院ボランティアの現状

著者: 中山博文

ページ範囲:P.377 - P.378

はじめに
 わが国の病院ボランティアは,歴史的には1962年の淀川キリスト教病院におけるボランティア受け入れに遡ることができるが,その置かれている社会的状況は,昨今大きな変化を迎えていると思われる.まず第1に,阪神大震災によりボランティア活動に対する社会的認識が高まり,ボランティア活動を希望する人が増えた.第2に,ボランティアを受け入れる病院の置かれている状況が変化しつつあり,それが病院のボランティア観の変化を起こしつっあると思われるのである.近年患者は,医療に対してより高度な医療技術のみならず,よりよいアメニティを求めるようになってきた.ところが,経済的に追いつめられている病院は,その要求に答えるための人員増を実現することができず,猫の手も借りたい状況にあると思われ,当然無償のボランティアは大歓迎される.第3に,企業戦士といわれる日本のサラリーマンが,社会参加のひとつのあり方として,病院ボランティアに取り組み始めたのである.その典型は,百貨店協会がバックアップして開始された東京大学医学部附属病院におけるボランティア活動である.
 このような社会的状況の変化に直面している病院ボランティアの現状について,日本病院ボランティア協会の資料に頼るしかないが,1996年5月現在で,日本病院ボランティア協会への加盟病院は89病院にすぎず,わが国における病院ボランティアの全体像を捉えることができない.

データファイル

人事考課実施病院のアンケート調査結果報告/病院給与・労働条件実態調査平成9年7月の職種別給与

著者: 菊井達也

ページ範囲:P.379 - P.382

 専門職種の集団である病院では人事考課制度の運用は難しいとされている.そこで,全国病院経営管理学会賃金部会では,平成9年の検討課題に病院における人事考課制度を選定した.会員病院に対し人事考課についての実態調査を依頼した.そのアンケート調査結果については平成9年11月18日の全国病院経営管理学会において報告した.本稿ではその概要を報告する.
 アンケート予備調査によれば,学会会員病院448のうち人事考課を実施していると回答した病院は41であり,その41病院に対して,人事考課制度に対する考え方や導入の経緯,運用方法,課題など,および何の目的で人事考課を実施するのか,人事考課に何を期待するのか,病院における人事考課制度のあり方を検討する目的で再度詳細なアンケート調査を依頼した.

医学ごよみ

4月—April 卯月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.383 - P.383

□17日 血液循環説の芽生え
 ハーヴェイ(Wi11iam Harvey,1578〜1657)は血液循環説を1628年に発表した.彼は1598年に医学のメッカであったイタリアのパドア大学に留学したが,そのとき恩師ハブリチオ(Girolarno Fabrizio abAquapendente, 1533〜1619)から静脈弁のことを学び,血液が循環しているのではないかと疑問を持ったという.
 1602年にイタリアから帰国後,この疑問に対しいろいろの動物を使って,心臓の鼓動や脈拍,血液の流れに対する実験を始めた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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