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雑誌目次

雑誌文献

病院57巻5号

1998年05月発行

雑誌目次

特集 医療法人の今後

医療法人に期待すること

著者: 谷修一

ページ範囲:P.402 - P.405

 現在,医療提供施設の開設主体中に占める医療法人の割合は,全病院の過半数を超えるに至り,診療所に占める割合が1割を超え,老人保健施設に至っては7割を超えており,医療法人数の増加の状況も毎年2千前後で順調に推移している(1996年10月現在で病院の51%,診療所の16%,老人保健施設の73%).
 医療法人が,今後ますます多くの役割を果たすことが期待される時代になってきたわけであるが,そもそもの成り立ちからまず話をすすめてみたい.

医療法人の将来

著者: 藤原恒弘

ページ範囲:P.406 - P.410

 医療制度,医療保険制度,医療供給体制は大変革の時代を迎えようとしている.医療法人制度は1950年,医療法上に規定された.その趣旨は,医療事業の非営利性を損なうことなく法人格を取得することにより①資金の集積を容易にし,②経営の永続性を確保することであった.しかし組織変更の規定が定められていないなど,当初から事業法人としては多くの矛盾を抱えた制度であった.制定以来約50年,制度の改正なしには,初期の目的の達成はもちろん法人病院の存続も危ぶまれている.今や,社会経済の変動に伴い,疾病構造も大きく変容している.わが国の保健・医療・福祉の大部分を担う医療法人の将来について検討する.

医療法人理事長の要件について

著者: 中佳一

ページ範囲:P.411 - P.413

 規制緩和の流れの中で医療法人の理事長に医師でない者がなることの是非とか1),営利企業の医療界への参入について現在いろいろ各方面から提案2)がなされている.しかしながらその議論は,医療の本質の議論より現実をそのまま追認し,また国民に広く討論を求め解決策を探る立場よりはむしろ財源論に集中した,いわゆる数字論者と現場を知らない評論者の合作合唱であるといえば暴論であろうか.筆者の立場は,医療の目標,目的が担保されれば,企業および非医師が医療界に参入することは歓迎はしないが事実として受け入れるというものである.もちろん少なくとも以下に述べることが守られればである.
 例えば企業の利益最大追求の自己増殖の運動をどう医療の場でリーズナブルに制御作用が働くしくみがなされるか.またよくいわれるオリンピックでの選手が広告媒体として使われるように,医療が企業の広告塔として使用されると思われるが,その非営利・営利の内実を公正な競争を保証するものとしてのチェック機構をどうするのか.一方,医療法人に禁じられている剰余金の適正な分配とか市場での資金調達の道などが整合性を持って保証されることが必要である.

医療法人における承継について

著者: 内藤聰

ページ範囲:P.414 - P.417

 私的な医療施設における事業承継は大きく二つに分類される.一つは事業規模が比較的に小さいので,法人化されていても同族により持ち分を定めた出資形態が大半を占めていることから,家族または縁戚筋といった同族による承継が一般的である.親子関係以外の縁戚による承継も考えられるが,娘婿や養子縁組はあってもその他の承継は相談されたことすらない.
 それに対して親族に適当な承継者がいない場合は,第三者による承継の選択がある.一般企業であれば組織内部の昇格によって経営を引き継ぐ形がみられるが,私的な医療施設においては皆無といってよいほど遭遇したことがない.経営を存続させ発展させてゆくために,安全性の高い内部昇格を何度か提案したこともあるが実現したことはない.

医療法人制度を検証する

医療法改正と医療法人

著者: 石井暎禧

ページ範囲:P.418 - P.418

 医療法人は,医療機関を経営する種々の法人の中にあって,税法上極めて中途半端な性格を持っている.営利法人でもなく公益法人でもない,中間法人といわれるように,その法人形態は矛盾に満ちたものである.これは税法の問題だけではなく,わが国における医療のあり方にも関係する本質的な問題(公益性と収益性)をはらんでいる.医療法人は,医療法を根拠法とする法人形態としては唯一のものであり,医療組織の基本形態とさえいえる.わが国の医療が公共性と企業性のはざまで惑う姿を,そのまま法人制度化したといえる.
 今回の医療法改正において,第2種の社会事業が可能になったことと特別医療法人の制度が創設されたという2点のみが変化である.

医療法人の悩み

著者: 関健

ページ範囲:P.419 - P.419

 1991年4月1日,筆者は父より医療法人城西医療財団理事長の席を譲られた.父自身が決めていた定年制(理事定年75歳)による移行であったが,何人かの遠くの知人からは「御父様はいつ亡くなられたのですか.」と尋ねられた.私どもの医療法人は1951年に医療法人制度ができて間もなく,筆者の祖父および父の寄付により財団法人として発足している.父の場合は,1966年に祖父の死に伴い理事長に就任しており,理事長職の承継が前任者の死を機に親子間で行われる日本では一般的なあり方であった.この世襲傾向は私どものような財団法人よりも,持ち分のある社団法人において強く,その原因が税法上の問題にあることはいまさらいうまでもない.理事長職が,父子伝承といった秘伝めいたものではないにもかかわらず,親子間で承継されてゆくことの是非についてここで多くの紙数を費やすつもりはないが,財団法人,持ち分のあるなしを問わず,社団法人,また特定医療法人にあっても世襲されてゆく現実があることをまず指摘しておきたい.
 さて,筆者の理事長就任に際し,外国の知人らから「CEO就任おめでとうございます.責任は重大ですね.」といった趣旨の手紙を何通かもらった.CEO (chief excutive offi-cer)は,日本語では最高経営責任者と訳され,株式会社でいえば代表取締役社長(もしくは代表権のある会長)職ということになろう.

特定医療法人制度を検証する

著者: 大道道大

ページ範囲:P.420 - P.421

 当法人は,今年で創立44年目を迎えた.昨年4月には,かねてから希望していた特定医療法人の承認をいただくことができた.
 特定医療法人になると,法人税が軽減されることから特定医療法人への変更を考えるものの,現実には二の足を踏む医療法人が多いようだ.クリアしなければいけない条件が多いこともあるが,病院経営を「事業」と考えた場合,決して最善の選択とはいえないからだ.

医療法人制度の抱える問題—ある医療法人の理事長

ページ範囲:P.421 - P.421

 医療法人制度の趣旨は,医療の公益性より準公益法人として規制,義務を受け,病院のように人的,物的に厳格な規制を受けているものを個人経営で行うについて困難が伴うので,法人格を取ることにより資金集積,経営永続性の確保をすることで医療機関の経営困難を緩和することにあった.その上で経営管理は自己責任と負担で行うことである.
 この制度下で病院経営を行っていて矛盾を感じた点が二つある.

医療法人制度を検証する/現存病院の民間活力を生かせる関係法の改定を望む

著者: 渡邉浩一郎 ,   中村哲也

ページ範囲:P.422 - P.423

 一臨床医でありながら小病院を経営し,その経営上のメリットのみを考慮して法人化したもので,制度そのものについて関心を抱いたことはなかった.今回この原稿を依頼されて一度お断りしたのであるが,この際,かねてより抱く,臨床医の素朴なもしくはナイーヴな感想をまとめてみた.
 それまでの個人病院の法人化を計画したのは1991年である.税金が安くなる,当院の経営方針を永続化させうるといった理由からであった.

資料

改正医療法に係る省令及び告示要綱—3月10日に医療審議会に諮問された内容付・医療法人の理事長要件について

ページ範囲:P.424 - P.428

第1 趣旨
 医療法の一部を改正する法律(平成9年法律第125号)の一部の施行に関し,その円滑な実施を図り,国民に良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保するため,医療計画に関する事項及び特別医療法人に関する事項につき,厚生省令,厚生省告示等の規定の整備を行うこと.

グラフ

手厚い地域医療の先駆けを住民との協力共同で実践—特定医療法人財団健和会柳原病院/柳原診療所老人保健施設千寿の郷/北千住・太郎山訪問看護ステーション

ページ範囲:P.393 - P.398

■大都市の下町に各機能を整備
 東京都足立区は,東京23区では最東北の区である.南は隅田川で荒川区と,葛飾区と埼玉県八潮市とは中川となど,多くの川で区切られる.区南部は隅田川,荒川に挟まれて東西に細長く,最東南の千住地域は,鉄道4社の5駅が集中する.
 隅田川は蛇行し,流れが何度か荒川と急接近し,水路,水門でつながる.その一つの堀切水門と堀切駅がすぐ近くにみえる下町に,柳原病院は真新しい姿をみせる.

日本病院会 諸橋会長第6期執行部がスタート

著者: 依田忠雄 ,   八木保

ページ範囲:P.400 - P.400

 社団法人日本病院会は本年3月末現在,国・公・私立病院を合わせて2,644病院(病床数70,900床)を傘下に擁し,日本の代表的病院団体として目覚ましい発展を続けている.その中には,東京大学病院,慶應義塾大学病院をはじめ国立大学5,私立大学27,公立大学4のそれぞれの附属病院が含まれている.その新執行部が去る3月28日の役員改選で選出された.
 新会長には諸橋芳夫氏(国保旭中央病院院長,79歳)が6選された.氏の過虫5期にわたる輝かしい実績,氏の素晴らしい人間的魅力,卓越した指導力と行動力および政治力,そのいずれをとっても氏の右に出づる者はいないというのが衆目の一致した見解である.これらのことは会長の3冊の著書『医を拓く』,『日月無私照』,『為善最楽』の内容によリ首肯される.特に奥野誠亮衆議院議員は「こんな経歴の人は二度と生まれてこない」と『為善最楽』の序に述べておられる.しかし数えて齢80歳,誠に大変なことと申し訳なく思うが,いずれも一騎当千の4人の副会長,中山耕作氏(聖隷浜松病院総長,4期目),大道学氏(大道病院,2期目),藤澤正清氏(福井済生会病院,2期目),奈良昌治氏(足利赤十字病院,2期目)か股肱の大役に任ぜられ,第6次組閣を完了した.

主張

診療報酬改定にどう取り組むか

著者:

ページ範囲:P.401 - P.401

 昨年秋,医療構造改革案が日医,厚生省,与党協から相次いで発表され,12月には介護保険法と第三次医療法改正法案が成立した.これらに示された方向は次世紀に向けての医療提供体制の大きな変革を示唆するものである.これを受けた形での平成10年4月からの社会保険診療報酬改定が行われた.
 もう既に各地でその影響率は具体化されていると思われるが,病院経営にとっては従来の発想の転換を求められた改定といっても過言ではない.特に次回予定されている平成12年改定では介護保険の施行と相まって,今回改定の方向性が加速することも想定される.

インタビュー

在宅ケアをサポートする日本で一番小さな緩和ケア病棟を—鎌田 實 諏訪中央病院院長に聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.429 - P.434

 諏訪中央病院(235床)は現在,この夏の竣工を目指して新病棟(現在の分院病床91床プラス増床許可40床を合わせて131床)を建築中である.新病棟は地下1階,地上4階建てで,この2階の病棟の一角に,八ヶ岳が眺望できる緩和ケア病床6床が設置される.この病棟には隣接の八ープガーデンで散策できるよう独立した階段が設置される.諏訪中央病院の,これまでの在宅ケアおよび在宅緩和ケアの実績を踏まえ,緩和ケア病棟という新しい施設で緩和ケアをどう展開しようとしてされるのか,鎌田院長におうかがいした.

MQIの実践—練馬総合病院・3

MQI活動を省みて・MQIと看護

著者: 大石洋司 ,   川畑公子

ページ範囲:P.435 - P.437

MQI活動を省みて
職員による情報発信
 昨年の第2回MQI発表大会も,練馬区長,練馬区医師会長や近隣の町会長など地域の方々の参加を得て,練馬区役所地下の多言的ホールで開催された.
 発表大会は,地域の方々に練馬総合病院の職員自らが,自分たちの活動と努力を,肉声で伝えることができる点が画期的である.また病院全体で組織横断的に,業務改善活動に正面から取り組めることも大きな成果である.2年目のジンクスといわれないようにと内心不安があった.

癒しの環境

脅かされない私の空間

著者: 松崎直子

ページ範囲:P.438 - P.439

 ひと口に「入院患者のプライバシー」といってもその定義付けは難しい.当然患者側には多くの個別的・社会背景的要素があり,一方では,与えられたカーテン1枚が唯一の境界線というような病院環境の物理的な制約が絡んでいる.入院生活が集団生活である以上,各個人の慣れ親しんだ日常をそのまま持ち込むことは不可能であろう.まして日本社会において入院とは,加療・検査・教育などのための選択の余地のない,回避できないものであり,退院までの限られた期間と割り切って医療者側の都合を受け入れて過ごさざるを得ないのが現実のように思う.

病院管理フォーラム 診療情報管理はいま・9

聖路加国際病院の診療情報管理

著者: 鳥羽克子

ページ範囲:P.440 - P.441

はじめに
 わが国の医療を取り巻く環境は経済的・技術的・内容的に著しい変化を示している.医療経済の置かれている深刻な環境立て直し策として,最近その導入計画が話題となっているDRG/PPS (Diagnosis Related Groups/Prospective Payment Sys-tem)の出現もその一つである.
 今は病院管理者自身が経営戦略を真剣に考えていかねばならない時期にきている.その一手段として効果が望めそうな道具と見直され始めたのが医療情報提供システムであり,診療情報管理運用そのものである.

リエンジニアリング—PFFCの展開・5

中央薬剤部へのPFFCの導入

著者: 立花秀之

ページ範囲:P.442 - P.443

 聖マリア病院では,外来診療に関するアンケート調査を行った際に,外来患者さんから待ち時間の長さを指摘する御意見が多数寄せられたため,新聞・マスコミでも「3時間待ちの3分診療」などとよく椰楡される病院滞在時間の実態調査を行った.その結果,病院滞在時間124分中,診療および検査に要した時間はわずかに14分(11%)に過ぎず,残りの110分間(89%)は待ち時間であるという実態が明らかになった.
 また,さらに各部署の仕事のプロセスをよく理解するため追加調査を行い,特に薬剤部では,調剤室の詳細な調査を行った.その結果,図1に示すように1人分の薬を調剤する作業を追いかけると,そのトータルの経過時間24分34秒中,実際に薬剤師が直接手を加えている時間は19%の4分41秒に過ぎないことがわかった.

看護管理・3

病院の理念を組織にどう生かすか

著者: 竹谷美穂

ページ範囲:P.444 - P.445

 最近の病院では,理念や方針を持っているところがほとんどであると思える.しかし,その理念が病院の現場サイドに具体的に理解されているかどうかについてはいかがであろうか.職員募集のパンフレットに書かれていたり,採用時のオリエンテーションで触れられるのみで,一部の経営者だけが理解しているという状態のスローガン的存在となっている病院が多いのではないかと考えている.
 一般の会社では,会社の理念はその年ごとの戦略に確実に反映され,部署または個人にはその戦略目標に応じた結果責任が求められている.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・4

不知火病院—ストレスケアセンターの試みを中心に

著者: 徳永雄一郎

ページ範囲:P.446 - P.449

 当不知火病院は1989年にこれまでの単科の精神科病院199床に加え,38床のうつ病・神経症を主体とした病棟として,ストレスケアセンター「海の病棟」を開設した.開設初期は精神分裂病者の入院も認められたが,次第にうつ病者の占有率が高まり,1995年,日本精神神経学会発表時点にて63.1%にまでなり,うつ病病棟としての位置づけが固まったと考えている.今回は不知火病院ストレスケアセンターでの治療構造を中心に紹介したい.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第43回

岩手県立胆沢病院

著者: 岩堀幸司

ページ範囲:P.450 - P.455

県南の中核病院として充実すべく移転新築
 岩手県立胆沢病院は,水沢市を中心とする県南の中核医療拠点として1997年3月1日に開院した.市内中心部に近い旧病院が老朽化し,敷地も狭いことから,駐車場確保・交通状況改善などのために,市街地のはずれに県蚕業試験場の跡地約5万平方メートルの土地を得て,移転新築したものである.
 延べ床面積約23,600平方メートル(1.9倍),駐車台数671台(2.1倍),病床数は全351床.旧病院の385床より34床減ったが,これは結核病床が60床から20床に,伝染病床14床が廃止されたためで,一般病床は331床となり20床増えている.

報告

アメリカの健康教育と健康・医療情報サービスの実際を見学して

著者: 菊池佑

ページ範囲:P.456 - P.459

 昨年の夏に12年ぶり3回目のアメリカの病院図書館の見学をしてきた.前回の1985年のアメリカ経済はバブル崩壊後の緊縮財政の最中であり,病院予算も大幅な削減をしていた.その一方で巷や職場には極端な肥満者が目についた.しかし,今回のアメリカ訪問では極端な肥満者はほとんど目にしなかった.これは一体何を意味するのであろうか.

寄稿

カンファレンスのすすめ

著者: 本松研一

ページ範囲:P.460 - P.463

 現在,筆者は日本医療機能評価機構のサーベイヤーとして,審査のため,病院を訪問している.訪れた病院は,公私,大小の違いはあるが,いずれも積極的に申し出て評価を受ける病院で,診療面にも,看護面にも,日ごろの努力がうかがわれ,むしろ学ばせていただくことが多い.ただ,院内における医師の教育・研修体制は他部門に比べ,遅れているように思われてならない.毎週の症例検討会はあるものの,治療方針を立てるにとどまり,それ以上の討議には及んでいない.活動的な病院ほど,医師がそろって勉強会を開く暇はないという.
 しかし,米国の病院の忙しさは周知のごとくわが国の比ではないが,それでもきちんとカンファレンスが行われている.要は,その重要性を認識して,時間を設定して,確実に行うか否かにかかっている.

提言

看護大学校,看護専門学校,ならびにその看護教育のあり方についての提言

著者: 下山正徳 ,   櫻美武彦

ページ範囲:P.464 - P.466

はじめに
 医療は時代とともに変化し,その時代の要求に応えていく必要がある.医療の分野でも量の時代が去って,質の時代が到来しているのはいうまでもない.看護婦の問題も,看護婦が足りないという時代は過ぎて,質の時代に入ってきた.医療技術も高度化し,看護についても各分野の専門職や研究職のほか,全人的ケアの必要性が叫ばれている.一般国民も高学歴化が進んでおり,看護婦も医療の場面では高学歴化した一般国民を指導するという立場になるのであるから,当然看護婦も高学歴化していないのはおかしいということになる.
 このような単純なことからいっても,また医療技術が高度化し,各種の専門看護師,認定看護師,研究看護師(リサーチ・ナース)が必要になる時代になっているということからいっても,これらの看護師は大学院(修士)を出ていることと,一般教養,看護の専門的知識や技術,十分な実務経験などが必要条件になる.一方,国立病院・療養所では,医療の分野における国家の危機管理や積極的国際貢献,国が定める政策医療の分野で戦略的な高度先駆的医療や重要な医療政策を実践する必要があり,政策医療や医療政策の各分野で高度先駆的医療の知識を持ち,優れた臨床看護実践能力を備えた看護職員を自ら育成していくことが必要である.したがって,厚生省の管轄下の看護大学校を設立することは,極めて急務であると考えてよい.

シンポジウム パス法の原理と経験の交流・4

循環器専門病院におけるクリティカル・パスへの取組

著者: 山口悦子

ページ範囲:P.469 - P.473

 榊原記念病院では看護業務の改善に取り組んできた一つの到達点として,記録の合理化からパス法に行き着いたということを,まず報告させていただきます.

青梅市立総合病院におけるパス法の導入とその成果

著者: 村松勝美

ページ範囲:P.474 - P.478

パス法導入の動機
 青梅市立総合病院では2年前に日本医療機能評価機構によるサーベイヤーの実習が実施されました.そのさいに,「患者から看護に対する満足もある.よい看護を実施しているようだがその記録がない.今の記録から何を実施し,結果がどう出て患者がどのように反応したかが全くみえない」との看護部門の評価がなされました.そこで,看護記録を改善しようという動きが始まりました.医師と看護婦との信頼関係のよい外科病棟において,今実践している医療内容,処置,与薬,指導内容,ケアなどすべてを書き出し,しかもスタンダードなケアで経過するものについて一覧表にしました.その結果,出来上がったものがパス法に近いものでした.

医学ごよみ

5月—May 皐月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.479 - P.479

□4日 手首の腱鞘炎
 1868年のこの日に,手首の腱鞘炎にその名を残すデ・クエルヴェン(Fritz de Quervain,1868〜1940)が,スイスはアルプスの麓町ズィッテン(Sitten)に生まれた.彼の父は新教の牧師であり,彼の家族は後にベルン(Bern)に移り,後にベルン大学で医学を学んだ.
 卒業後はベルン大学の病理学教授ラングハンス(Theodor Langh-ans,1839〜1915)の下で,1892年から1894年までの2年間病理学を修め,その後,有名な外科医コッヘル(Emil T Kocher,1841〜1917)の下で研修し助手に就任した.コッヘルの下では16年間外科学を修め,1910年にバーゼル(Basel)大学に教授として栄転した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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