icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院57巻7号

1998年07月発行

雑誌目次

特集 急性期包括払い方式の可能性

日本に診断群別包括支払い方式(DRG/PPS)はなじむのか

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.594 - P.602

変革が求められる日本の診療報酬体系
 わが国の診療報酬体系が全国一律の公定価格となっていることによる長所は大きい.しかしその一方で,弊害が生じていることも否めない.具体的には,現行の診療報酬体系がもたらしている弊害として次の2点が考えられる.
 まず第1は,原価主義からの乖離という現象が起こっている.一般に診療報酬体系には,①「医療費の分配表」と,②「医療サービスの価格表」という二つの性格が存すると考えるが,わが国の診療報酬は前者ばかりが強調されたために,現行の診療報酬が診療原価からずいぶん乖離したものになっているのである.しかし,ここで留意すべきは何を真実の原価(適正な原価)とするかである.

急性期包括払い方式における患者区分法

著者: 梅里良正

ページ範囲:P.603 - P.607

 わが国においては俗に日本型DRGs (diagnosis related groups)と称される疾患別定額支払い方式の検討が進められているが,果たしてDRGをベースとした患者区分は,急性期の医療費の支払いに用いることが適切なのだろうか.この問題は,1)急性期医療費の支払いを包括払いとすることの是非,2)包括払いとする場合に,その患者区分として,DRGsが適当であるかどうか,の二つの部分に分けて考えることができる.本稿の主眼は後者であるが,患者区分が必要となる前提としての包括払い方式について若干の議論を行ったのち,患者区分法について考察する.

診断群別包括支払い方式(DRG/PPS)の実施を阻むもの

著者: 池田俊也 ,   池上直己

ページ範囲:P.608 - P.613

 現在,診断群別包括支払い方式(diagnosis related groups/prospec-tive payment system,以下DRG/PPSと略)という急性期入院医療についての新しい支払い方式が注目を集めている.1997年8月に示された与党医療保険制度改革協議会「21世紀の国民医療—良質な医療と皆保険制度への指針」においても,DRG/PPSについて「基礎調査を進め,その導入を検討する」ことが示されている.しかしながら,わが国ではDRGという言葉が先行し,その中に関係者の思い入れが入り,必ずしも正しい姿が伝わっていないように思われる.DRG/PPSの導入を検討するに当たっては,まずDRGとは何かという点について正しく理解する必要がある.
 そこで本稿では,まずDRGとは何か,具体的に疾病を分類していくにはどうしたらいいか,について述べる.次に,実際にDRGを日本で導入するための条件としてはどんなことを整備する必要があるか,その際の課題は何か,について述べることとする.

[座談会]日本で急性期包括支払い方式は運用可能か

著者: 村田恒有 ,   瀬戸山元一 ,   井上裕司 ,   大道久

ページ範囲:P.614 - P.621

 大道(司会) 昨今の医療改革の流れの中で,診療報酬の支払い方式を見直すことが重要な課題となっています.
 一般的に急性期の医療というのは予測できないこともあるので出来高払いで,長期療養では定額的な支払い方式が十分対応可能であり,両者を適切に組み合わせることが大事だという考え方で支払い方式が見直されているわけです.

[資料]急性期医療の定額支払いに関する調査研究

著者: 井上裕司

ページ範囲:P.622 - P.625

 わが国の診療報酬体系は,1958年(昭和33年)から現在のような出来高払い制を基本としてきた.この間,医療技術の著しい進歩などにより,医療は国際的にみても同水準の医療を国民が享受できるようになってきている.今後はさらに質の高い医療や「ゆとり」のある医療の確保のための診療報酬体系の構築が必要である.
 そこで,上記視点に立ったわが国の将来の診療報酬体系をどのようにすべきか検討するため,慢性期以外の急性期についても入院医療の定額制を試行し,
 1)診療内容の効率化に有効か.
 2)病院経営の合理化に役立つか.
 か.
 3)医療の質への影響はどの程度 4)事務の簡素合理化の観点からどのように評価できるか.
 などについて必要なデータを収集するとともに,当該医療機関の在院期間の短縮や,わが国における急性期入院医療の定額支払のあり方を検討するため,以下のように作業を進めた.

グラフ

市民のための開かれた病院づくりを推進する—埼玉県・越谷市立病院

ページ範囲:P.585 - P.590

●地域のニーズに合わせて増改築が完成
 越谷市は,埼玉県の南東部に位置し,東武鉄道伊勢崎線に沿って発展した町である.1962年地下鉄日比谷線と東武鉄道が相互乗り入れされ,人口が急増し1996年末に30万人を越えた.今回の増改築はこの人口増加により,地元で高度医療が受けられるという,市民のニーズに応えようとしたことが第1の理由となっている.
 当院は順天堂大学と深いつながりを持っている.初代市長の大塚伴鹿氏が越谷市内にあった順天堂大学精神医学研究所所長の懸田克巳氏(後の第4代同大学理事長)に相談して病院作りを始めた.現在も,順天堂大学出身の医師がほとんどである.開院は1976年(昭和51年),1982年(昭和57年)に311床の総合病院となり,さらに今回の170床の増床となったのである.

第24回日本診療録管理学会会長を務める 慶應義塾大学医学部精神神経科学教室 浅井昌弘教授

著者: 山本修三 ,   八木保

ページ範囲:P.592 - P.592

 最近,診療録(カルテ)を管理する職種の名称が診療録管理士から診療情報管理士に変わった.診療情報管理士はカルテの保管,管理とともにその中に含まれる医療の質や病院経営などの管理に必要な情報を分析・提供することを重要な業務としている.また,カルテの開示という問題にもかかわりが深い.
 そんな背景の中で,この秋(9月3日〜4日)に第24回日本診療録管理学会総会が東京,日本青年館で開かれる.その会長を務めるのが慶應義塾大学医学部精神神経科学教室の浅井昌弘教授である.この学会長を臨床精神医学を専門とする医師が務めるのは初めてで,大きな意義がある.

主張

医療技術政策の必要性

著者:

ページ範囲:P.593 - P.593

 昨今医療保険改革に関する議論が活発に進んでいるが,わが国の医療政策においてもっとも欠落しているのは,「医療技術政策」ともいうべき政策分野ではないだろうか.
 医療技術政策とは,医療技術ないし医学・生命科学の研究開発や評価,あるいは社会におけるそのコントロールに関する政策をいう.一方でそれは,「基礎研究—臨床研究—普及・標準化」という,基礎から臨床までの技術開発のフローの各段階にかかわるものであり,他方では,医療技術の「推進(研究支援)」,「評価」,「規制」といつた異なる側面にかかわる政策である.

特別企画 シリーズ・ISO9000sの医療への導入を検討する・1

ISO9000sとは何か—その概要と医療への導入

著者: 福田敬

ページ範囲:P.626 - P.631

医療の質の評価とISO
 日本では医療供給体制が充実し,医療の質が問われるようになってきている.必要な人に十分な医療が行き渡ることは重要であるが,それと同時に,そこで提供される医療の質が高いものであることも重要である.様々な医療機関で提供されている医療の質にはばらつきがあるものと考えられる.病院などで提供される医療の質は患者からは評価しにくいところが多く,そのため,諸外国においては医療を専門家が評価する活動が進められてきた.わが国においても,医療機能評価として,提供される医療の質を評価する方法が検討されてきた.従来は,病院における医療提供のあり方について評価基準を設けて,それを自己評価する形で質の保証に努めてきた.しかし,この場合には評価基準に対する判定が曖昧である可能性があるため,近年では,医療の専門家が第三者的に評価する活動が始まっている.東京都私立病院会青年部会によるJCAHO研究会や医療の質に関する研究会などの第三者評価の方法に関する活動実績を踏まえ,平成7年に日本医療機能評価機構が発足し,病院医療の評価と認定活動が開始されている.また医療関連業務については,これに先がけて平成2年に医療関連サービス振興会が設立され,院内清掃や衛生検査所などの委託による業務について評価および認定活動を行っている.

病院管理フォーラム 診療情報管理はいま・11

キャリア形成に向けた新たなプログラム・2

著者: 鳥羽克子

ページ範囲:P.632 - P.633

キャリア形成への具体的作業
(前号よりつづく)
 3.職能要件書の作成
 この他,職務調査を基に医療情報管理科が組織として科員に要求すべき職務遂行のための必要能力の基準(習熟要件,習得要件,研修・能力開発プランなど当科職員としての知識や技能,作業経験,自己啓発などを基準化した内容)を洗い出し,「職能要件書」としてそれぞれのレベルごとにまとめていった(表).これは,科業の中で与えられている科員としての作業遂行能力度,発揮度,達成度を面接という形で見ていくための基準とするもので,以後これに沿った指導・援助を科として行っていくことになる.

リエンジニアリング—PFFCの展開・7

循環器病棟へのPFFCの導入・2

著者: 塚本篤

ページ範囲:P.634 - P.635

 前回に引き続き,循環器病棟PFFCの取り組みについて報告する.

看護管理・4

看護部組織の目標の立て方

著者: 竹谷美穂

ページ範囲:P.636 - P.637

 前回(本誌57巻5号)で病院理念を組織に生かすことの基本的な考え方について述べた.今回は厚生中央病院(以下当院)での,病院の理念をもとにした看護部組織の目標の立て方と,その実践について1997年度の事例を通して報告していきたい.

癒しの環境

心地よい音

著者: 出田節子

ページ範囲:P.638 - P.639

声なき声
 視覚,聴覚,触覚,嗅覚,味覚を五感と称し,その枠を超えるものを第六感という.想像力による五感への補完機能もこの第六感の要素となる機能である.
 これらの感覚はお互いに相関を持ち,その一つが欠けるとその他の感覚も通常と異なる機能をするようになる.

MQIの実践—練馬総合病院・5

接遇委員会におけるMQI活動

著者: 吉田義一

ページ範囲:P.640 - P.642

接遇委員会の意義
 「職員が,働きたい働いてよかった,患者さんが,かかりたいかかってよかった」と思える医療を行うことが練馬総合病院の理念である.それには働く人にも患者さんにとっても信頼できる病院でなければならない.医療も量から質が求められる今日,顧客である患者さんの要望にどう応えるか,顧客満足をどう満たすかが大切である.一人ひとりの対応のよしあしが全体の評価にもつながるので,接遇の向上は,病院の信頼を高めるうえで重要なことである.
 接遇委員会は1992年12月,病院全体で接遇について考えるために設置された.院内各部署から1名ずつ委員が選出されて,医師も看護婦も事務員も職種を越えて,接遇を共通の問題とする.委員会の趣旨は「一人ひとりが病院(職場)の代表であるという自覚と誇りをもってする接遇を,自分たちで事例を出し合いながら切磋琢磨して信頼できる病院づくりをする」ことである.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第45回 民間病院2題

熱川温泉病院/真網代くじら病院

著者: 小林眞人 ,   丸野道明

ページ範囲:P.645 - P.652

立地と病院の性格
 伊豆の東海岸沿いには,あちこちに温泉が湧き出で,また,風光明媚な土地でもあるため,多くのリゾート温泉地が開かれている.熱海より約1時間ほど行った熱川は,その中でも屈指の温泉地である.病院敷地は,白い湯煙の立ち上る温泉櫓が林立する駅前から南に下った白田川沿いの明るい谷状平地にあり,南東には,真近に伊豆大島の浮かぶ相模湾が,また,北西の谷間奥には,天城の山並みがはるかに望まれる.
 本病院は,健育会グループ(他に三つの病院や,いくつかの老人施設や診療所を運営している)の中核的な一翼を担う温泉利用のリハビリテーションに重点を置いた病院である.既存建物は,何度か増築に増築を重ね,その結果,蛸足状となっており,極めて使いにくい状況であり,また,老朽化も激しかった.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・6

西川病院—精神医療のモデルを目指して

著者: 西川正 ,   内田又功

ページ範囲:P.654 - P.657

当院の沿革と現状
 当院は人口約5万の水産業を主とする浜田市にある.当市には国立浜田病院に精神科外来(常勤医師1名)があるのみで,入院施設を有する精神病院は他にはない.最も近い精神病院は40km離れた益田市にある松ケ丘病院であり,当院の診療圏は浜田市を中心とした約50km半径の地域である.したがってこの広大な診療圏のありとあらゆる精神疾患が受診し,外来や入院治療に至る.
 筆者の父である故西川正勝による西川医院が1933年に私立精神病院設置許可を受け精神病室が設置された.1952年には38床の個人病院,1956年に医療法人化し,以後表1に示したように現在に至っているが,県下では現存する最古の病院である.

早期退院計画・8

平均在院日数の短縮対策

著者: 広瀬周平 ,   田淵正登

ページ範囲:P.658 - P.660

 当院では,病床の有効利用を図り,新入院患者の入院を円滑に行い,併せて,長期にわたる入院の防止に努めることを課題として協議する病床利用検討委員会が1988年以来設置されている.この委員会の使命は,平均在院日数の短縮にほかならない.
 岡山市は人口62万人の中核都市で,当院はこの北西部に所在する,結核病床20床を含む563床の公的病院である.疾患別の特徴としては,消化器疾患が多いのと,悪性疾患が多いことである.高齢者は年々増加し,また再発癌例も少なくなく,納得のいく診療を行いつつ入院期間を短縮するには相当の困難を伴うことが多い.ここでは1989年度以来の約9年間における平均在院日数短縮の状態と,今後の課題について述べてみる.

医学ごよみ

7月—July 文月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.661 - P.661

 今月も医学史上に著名なイベントが起こった日を三つ選んで述べることにする.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?