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雑誌目次

雑誌文献

病院57巻8号

1998年08月発行

雑誌目次

特集 入院診療計画

入院診療計画の背景と将来方向

著者: 池上直己

ページ範囲:P.682 - P.687

 「入院診療計画」は1994年の診療報酬改定時に,「入院治療計画」として医学管理料の加算として初めて収載された.請求上の条件として,「新看護または基本看護料を算定する看護を行う病院である保険医療機関において,入院中の患者に対して,入院の際に当該患者に係る治療計画を作成し,病状,入院期間などについて文書により説明を行った場合に,当該入院中1回に限り,所定の点数に200点を加算する」と記された1).これにより,患者への説明に対して,病院として直接収入を得る道が初めて開かれた.
 「入院治療計画」は1997年の診療報酬改定で,現在の「入院診療計画」に名称が変わり,350点に点数が上がるとともに,「入院の際に,医師,看護婦,その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定し,病名,症状,検査内容,手術内容,入院期間等について」という新たな条件が設けられた2).すなわち,医師だけで策定する「治療計画」から,「看護婦,その他必要に応じて関係職種」が共同で策定する「診療計画」に拡大し,それとともに記載するべき内容が検査内容や手術内容に広がった.

入院診療計画を中心とした患者さんへの情報提供のあり方—河北総合病院での取り組み

著者: 泉哲郎 ,   田所昌夫

ページ範囲:P.688 - P.693

 現行の入院診療計画加算は,1996年4月の診療報酬改定で初めてインフォームドコンセントが診療行為として点数化され,その後2度の改定で名称,要件,点数の変革がなされて現在に至っている.制度化されてから丸2年が経過し,既に大部分の患者さんの認知も得ている.
 また,昨年末に成立した第3次改正医療法では「医師をはじめとする医療の担い手は,医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない」という規定が明文化された.さらにはカルテやレセプト開示についても受療者側の強い要望があり,患者さんへの情報提供を十分に行い,同意を得たうえで診療を行うことは必須の流れになってきている.

民間病院における入院診療

著者: 森功

ページ範囲:P.694 - P.697

 人口28万人の八尾市を中心として,対象50万人の大阪市近郊における民間病院での入院診療のあり方について述べる.

精神科医療における入院診療計画の事例

著者: 牧武 ,   牧聡

ページ範囲:P.698 - P.701

 最近の医療環境の変化は急激なものがある.このように急激に変化する国民への要求に応え得る医療機関であるためには,インフォームドコンセントが重要である.
 郡司1)は,患者もまた病気を治す協働者であると位置づけることにより,インフォームドコンセントも正しい目標「協働意志の形成」を持っことができる,と述べている.その「協働意志の形成」を持つことが極めて困難であるのが精神科医療におけるインフォームドコンセントの特徴であるといえよう.

入院診療計画と臨床検査

著者: 運天政五郎

ページ範囲:P.702 - P.705

 当院では,1996年4月より入院診療を計画的に行うために入院診療計画書に基づいて診療を実施している.1997年度の病棟別入院診療計画の実施状況は表1に示すとおり1年間の平均実施率は78.4%であり,入院診療計画日数の予測と実際の入院日数とのずれは,表2に示したように,誤差が3日以内でほぼ計画どおりだったのは,内科病棟56.4%,外科病棟62.3%,眼科病棟78.5%,全体では62.3%と十分とはいえず,まだ内容を検討する必要性がある.
 病院全体で入院診療計画書の活用方法を検討している中,技術部門も積極的に入院診療計画に参加する動きがある.理学療法や薬剤部,栄養科のような治療に直接かかわる部門と違い,検査部門が入院診療計画にかかわり,チーム医療を進めていくのは生理検査の一部を除いて難しく,どの施設においても苦慮していると思われる.そこで,臨床検査科における入院診療計画へのかかわりについて,当院でプランニングしていることについて述べようと思う.

上川病院におけるチームアプローチと入院診療計画

著者: 飯島夕雁

ページ範囲:P.706 - P.710

 上川病院は,長期療養型病床群48床,老人性痴呆疾患療養病棟35床,71床,合計119床の入院設備を拠点に,デイケア,訪問診療・看護・リハビリテーション,地域入浴サービスの在宅支援機能を有している.
 また,特徴として,理学療法士(以下,PT)4名,作業療法士(以下,OT)3名の計7名の常勤スタッフからなるリハビリテーション室を持ち,痴呆性老人に対するセラピーとしてグループホーム的なケアに取り組んでいる.

グラフ

上越地域における広域基幹病院—新潟県立中央病院

ページ範囲:P.673 - P.678

 JR長野新幹線の終着駅長野から各駅停車に乗り換えて1時間半あまり,高田駅で下車しバスで10分ほどの妙高山を望む頸城野と呼ばれる平野に新潟県立中央病院がある.
 新潟県立中央病院は明治8年に高田病院として創設され,その後,頸城郡高田病院,中頸城病院と改称.昭和20年に日本医療団に統合され新潟県中央病院となり,昭和25年に現在の新潟県立中央病院という名称となった.

介護療養型医療施設連絡協議会会長を務める 医療法人渓仁会 加藤隆正理事長

著者: 竹内實 ,   八木保

ページ範囲:P.680 - P.680

 加藤隆正先生はまさに医療界の風雲児といえよう.終戦直前に生まれ,学園紛争の真っ只中に北海道大学医学部を卒業している.それからの30年弱の年月の間に全くの裸一貫から現在の組織を作り上げてしまったが,まだ53歳の若さである.
 彼が慧眼であったのは,来るべき高齢化社会における老人医療を誰よりも早く手掛けたことであろう.昭和54年の西円山病院の開院である.当初146床であった病床は現在完全型療養病床群942床の病院となり,その他366床の完全型療養型病院を傘下に加えている.

主張

薬価制度改革の問題点

著者:

ページ範囲:P.681 - P.681

 薬剤費を削減するためには,「給付基準額(日本型参照価格)制度」の導入が提唱されている.今までは一つ一つの医薬品に対してそれぞれ「薬価」が設定されていたが,新しい制度では,同じような薬効を持った医薬品をグループ化し,このグループに分類された薬に対しては,保険として支払う「基準額(参照価格)」が設定されるようになる.そして,医療機関がこの基準額以下で購入した場合には,その金額を保険から補償することによって,薬価差をなくすことが最大の目的である.また医療機関が基準額以上で購入した場合には,その差額分は患者の自己負担とすることで,一方では保険者の負担を減らし,他方では製薬会社に対して価格を引き下げる圧力がかかることが期待されている.
 ところが,改革案にはいくつか問題がある.第1に,類似の薬効の医薬品に対して同じ給付基準額を設けることになっているが,どこまでを「類似の薬効」とするかによって制度が大きく変わる.「類似」であっても薬効は微妙に異なり,薬効に違いがあるからこそ新たに新薬として認可されている.したがって,例えば副作用の現れやすい患者では,同じ薬効に分類された医薬品の中で,高価なものを使わざると得ない場合もあり,その際に差額分を患者に負担させることは大きな問題である.

シンポジウム 看護の経済的評価・1

なぜ,看護の経済的評価か

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.711 - P.711

 日本病院管理学会は,大学の病院管理・医療管理学教室などが持ち回りで担当する月例研究会を15年以上開催しております.
 病院管理学の名前も,最近は医療管理学とか医療・病院管理学などと称しておりますが,当然いろいろなアプローチがあってしかるべきと思っております.ただ,目指すところは病院あるいは医療がよくなるための研究を進めることです.そのためには.できるだけ実践的な課題を取り上げるべきと考えております.

看護からみた院内感染の経済性

著者: 大友陽子

ページ範囲:P.712 - P.715

 本日のテーマにつきましては私の専門とするところでもなく浅学の身で大変恐縮ですが,日ごろ院内感染対策を推進していくうえで,経済的な面も深く考えざるを得ない立場ですので,実践を通して考えてきたことをお話させていただきます.
 まず初めに,院内感染対策の必要性がいわれ始めて以来,医療現場では試行錯誤を繰り返しつつ様々な取り組みが行われてきました.

私の看護経済学への歩み

著者: 竹谷英子

ページ範囲:P.716 - P.718

 司会の紀伊國先生からある日,聖路加国際病院副院長の井部俊子様からのご紹介で,この例会で話をするようにというお電話をいただきました.両先生とも文献ではよく存じ上げておりますが,恐れ多くお断りする術もなく,勇気を出してこの会場にまいりました.与えられた時間で,看護の経済学について,私の歩みをお話しさせていただきます.
 私は名古屋市立大学看護短期大学部で基礎看護学の教員をしております.当初,私の研究テーマは看護技術,看護教育,看護管理でした.しかし,自己流の研究でよいのだろうかという不安があり,ライフ・ワークとなる研究をしようと考えました.テーマは何がよいか,心理学か健康科学か,何か勉強しようと通学可能な大学院を探しました.悶々として時が過ぎるうちに身近な人の中から大学院に入り,研究を始める人たちが出始めました.もう後には引けないと,自分の真剣さも増してまいりました.

特別寄稿

リハビリテーション専門病床群の制度化に向けて—都市型リハの実践を通じて

著者: 皆川晃慶

ページ範囲:P.719 - P.723

 平成10年度診療報酬改定の内容は公的介護保険の導入をはじめとする今後の医療制度改革の厚生省の基本方針を示している.全体としては国家財政の破綻に伴う構造改革の見直しを受けて,過去20年間に例のないマイナス改定という厳しいものになっている.
 リハビリテーション(以下,リハ)部門でみると,老人総合計画評価料の新設や,寝たきり老人在宅総合診療科,24時間連携体制加算の新設など,今後の高齢化社会の到来に向けた改善策も組み入れられている.しかしながら,長期入院の是正を図るため,新看護料の届け出要件である平均在院日数に新たな制限がつけられている.これは,脳卒中や脊髄損傷のような長期の入院期間を必要とするリハを一般病院で行うことを困難にするものであり,また,一般病院としてリハ専門医療を展開してきたいわゆるリハ専門病院に対し,療養型病床群への転換を迫るものである.療養型病床群はハード面に限ればリハにとって理想的な基準となっている.しかし,看護,介護,理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語療法士(ST),医療ソーシャルワーカー(MSW)の必要人員など,良質のリハの提供には必須のソフト面においては十分な条件を満たしていない.

連載 医療事故・医事紛争防止とリスクマネージメント・4

医療事故/紛争事例から学ぶ(2)

著者: 川村治子

ページ範囲:P.724 - P.727

 医療への不満に関する世論調査をみると,きまって上位にランクされるものに説明に対する不満がある.その不満は「説明が少ない」という単に量的側面のとどまらない.「説明がわかりにくい」,「もっと詳しい説明をしてほしい」など質的側面にも及ぶ.いずれにしても,説明に対する不満もまた予期せぬ不幸な結果と結びついた時,紛争化の重要な背景因子となりうる.
 さて,説明にもいろいろある.侵襲行為に対する同意を得るための説明から,入院時のオリエンテーション,退院勧告や退院時の指導,検査後の結果説明,治療内容や予後の説明と日常診療のあらゆる場面でなんらかの説明が行われている.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第46回

八戸市立市民病院/使ってみてひと言

著者: 佐藤基一

ページ範囲:P.745 - P.750

計画の主旨
 本病院は,八戸市を中心とする八戸地域保健医療圏における中核病院,青森県南地域の三次救急医療を担う基幹病院を目指し,救命救急センターの設置および,周産期センターの設置も併せて進められた611床の市立病院である.
 計画おいては,患者の受療環境と職員の執務環境の向上,外部動線および内部動線のわかりやすさという点を重視した.

特別企画 シリーズ・ISO9000sの医療への導入を検討する・2

病院給食部門でのISO9000の取得

著者: 児玉博行 ,   石橋浩

ページ範囲:P.728 - P.732

ISO 9000取り組みの背景
 医療法人行陵会は三千院で有名な京都大原を中心に大原記念病院(約200床),老人保健施設「博寿苑」(約150床)と特別養護老人ホーム「大原ホーム」(約120床)を一つの敷地内に有し,その他,診療所(2か所),デイケアセンター(3か所),在宅介護支援センター,訪問看護ステーション(4か所)を運営しています.
 一方,ソデックスヘルスケアは三菱商事,東京三菱銀行と世界最大の給食会社で,約70か国以上で食事サービスを展開するソデクソ社(フランス)により平成8年9月に設立され,病院・高齢者施設などで食事サービスを提供しています.

病院管理フォーラム 診療情報管理はいま・12

第三者評価としての「医療機能評価」受審

著者: 鳥羽克子

ページ範囲:P.733 - P.735

 昨年(1997年)聖路加国際病院は「日本医療機能評価機構」の審査を受けた.評価の目的は,患者診療に対する機能や,病院の組織・構造がどの程度明確にされており,かつ健全に機能しているかを第三者の目を通して審査することにある.受審に先立ち,同年8月,院内で医師・看護・薬剤・コメディカル・事務の各部門の代表者からなる医療機能評価機構受審プロジェクトチームが組まれ,そのメンバーにコメディカル部門の一人として加わることになった.受審までの約4か月間に,計17回の定例会を開き,準備を進めていった.また問題と思われることについてはワーキンググループが組まれ,平行して具体的な解決のための作業が進められていった.
 この中で改めて病院の全体像とともに,私の部署「医療情報管理科」の実態を客観的な立場で見ることができた.そこで今回は,その時に得た感想も含めて第三者評価が求めている「診療情報管理」について述べる.

リエンジニアリング—PFFCの展開・8

循環器病棟へのPFFCの導入・3

著者: 大濱京子

ページ範囲:P.736 - P.737

 病棟におけるPFFCコンセプトの一つであるクリティカルパス(以下パスと略す)が目指すものは,治療と看護の標準化,ケアの質の向上で,結果として在院日数の短縮,コストの削減である.パスの効果は表1に示すとおりである.今まで経験的に行われてきたケアを大幅に見直し,特定の患者集団に対し,特定の時間枠の中で,あらかじめ設定した目標を実行していく.これにより統一した一定のレベルのケアが提供でき,継続性を保つことも可能となる.
 また,最短時間で最善のケアを行うためには,患者にかかわるすべての人たちによる検討が必要になってくる.これは患者の満足度を高め,ひいてはコストの削減にもつながっていくと考えられる.今回は本院の循環器病棟におけるパスの作成および使用に至る経過について述べる.

看護管理・5

看護の質の保証と看護事故・1

著者: 増子ひさ江

ページ範囲:P.738 - P.739

 医療事故とは,「医療従事者が,業務を行うにあたって,業務上必要とされる注意を怠り,他人の権利を侵害し,損害をこうむらせること」1)をいう.
 災害理論で「ハインリッヒの法則」と呼ばれるものがある.労働現場で330件の事故が起きたとすると,300件はけがはなかったがヒヤッとした体験を持ち,29件は軽傷を負う.1件は重傷か死亡事故であるというものである.このハインリッヒの法則を医療の場に置き換えると,1件の死亡事故が発生すると,その周辺には29件の傷害事故があり,さらにその陰には,300件のニアミスがあるという.逆に考えれば,ニアミスが多発するところには,傷害事故や死亡事故発生の危険が潜んでいるということになる.

癒しの環境

病院に歌声を

著者: 根本靖彦

ページ範囲:P.740 - P.741

 さて,このページを開いた皆さん.私のお話を読んで,ホッと一息入れて下さい.この文章が掲載されるころには,まるで季節はずれのお話となってしまっているでしょうが,当院内で行われたクリスマスのイベントを中心に,ベッドサイドでの癒しについて紹介したいと思います.

MQIの実践—練馬総合病院・6

「至急」処方箋を見直そう

著者: 金内幸子

ページ範囲:P.742 - P.744

 練馬総合病院では,1994年8月より院外処方箋に全面移行した.それに伴い外来調剤業務がなくなり,業務内容も大幅に変更された.毎日が業務改善の試行錯誤の連続であった.1996年よりMQI活動を始めるにあたり,薬剤科では内科医師1名をメンバーに迎え,チーム名を「クリニカル・ファーマシスト」とし,全組織をあげての医療の質向上を目指す業務改善活動に参加した.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・7

平和病院—新しい精神科病院医療の実践と試み

著者: 小渡敬

ページ範囲:P.751 - P.754

 わが国の精神障害者や精神科医療に対する国民の認識は,おおむね否定的,拒絶的ないし無関心な傾向にあり,精神障害者を病者としてとらえようとせず,単に異常者として自分たちには無縁のものであると考え,それを治療する精神科病院に対しても,近づき難く,怖いところであると考えている人が少なくない.そして,精神科医療に対しても,間違った認識を持っている場合が多く,いわゆる精神障害に対して根強い偏見があるのが現状である.
 しかし,これはわが国だけではなく,世界各国でも同じような認識(偏見)を持っているようである.そのため1981年よりWHOにおいて「国際障害者年」が設定され,その後1983年から1992年まで「国連・障害者の10年」が策定され,精神障害も含め障害者に対するノーマライゼーションの思想が国際的に,急速に普及しつつある.わが国においても,1995年12月に「障害者プラン」(ノーマライゼーション7か年戦略)が策定され,障害者の生活の質(QOL)の向上を図り,地域で共に生活ができ,障害に対する心のバリアフリー化を促進するなどの取り組みが,現在行われつつある.

早期退院計画・9

入院患者の平均在院日数短縮への諸問題

著者: 西本昭二

ページ範囲:P.755 - P.758

 現在日本経済は昭和初期の経済恐慌以上のデフレ不況といわれている.さらに財政改革の一端として,国民医療費を含めて社会保障費の増加を強力に抑制している.
 国の財政改革もわからぬではないが,高齢少子化の時代になれば,当然高齢者は病める人の比率も高くなるし,治癒する日数,社会復帰する日時も延長するだろう.したがって医療福祉費を建設や,その他の産業などに同率に抑制する考え方には基本的には賛成できない.

医学ごよみ

8月—August 葉月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.759 - P.759

 今月も医史学に関係した日を三つ選んで紹介する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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