icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院57巻9号

1998年09月発行

雑誌目次

特集 薬価基準制度の行方

薬価基準制度の変遷

著者: 田中信朗

ページ範囲:P.778 - P.783

 現在,医療保険制度改革の一環として,現行薬価基準制度の廃止と日本型参照価格制度の導入が検討されている.医療費の25.9%(平成8年度)を占める薬剤費の削減(薬剤費の適正化)に加え,現行薬価基準制度における薬価差の解消が,医薬品に関する制度改革の大きな目的となっている.日本型参照価格制度は,この薬価差が発生しないシステムとして導入が検討されている.
 このような流れのなか,平成9年9月に施行された健康保険法の一部改正では,医療費の自己負担率の変更に合わせて,外来薬剤に対する一部自己負担が設置されたことは記憶に新しい.しかしながら,この制度改正は構造的な改革ではなく,平成12年に予定されている薬価基準制度の廃止,日本型参照価格制度の導入という抜本的な改革までのいわば財政調整的な改革との理解が正しいであろう.

新しい薬価基準制度の課題—参照価格制度をめぐる議論の問題

著者: 姉川知史

ページ範囲:P.784 - P.788

 筆者が編集部より与えられた主題は流通の近代化と薬価制度である.流通とは狭義には取引慣行,流通構造を意味するが,その分析は医薬品の薬価,薬価差,医薬品使用量,保険からの償還制度などの分析によって初めて可能となる.
 本稿では現在検討が行われている「参照価格制度」をめぐるこれまでの論点を整理して,その制度が薬価差を理論的には完全に解消するものの,薬価と薬剤費を低下させることは保証しないことを明らかにする.さらに参照価格制度に代わる新しい薬価制度として,「自由薬価」,保険から医療機関,薬局に対する「購入価給付制度」,保険者による需要管理政策である「総枠予算制(定額制)」の3者の組み合わせが,有力な選択肢となりうることを示す.

諸外国の薬価基準制度—とくにドイツの参照価格制度について

著者: 柏木隆

ページ範囲:P.789 - P.793

 現在,医療保険福祉審議会(金平輝子会長,以下医福審と略)において医療保険制度の抜本改革が議論されているところである.薬価基準制度改革については,医福審の制度企画部会(金平部会長)において与党医療保険制度改革協議会(丹羽雄哉座長)が取りまとめた「薬の償還限度額を定める制度(日本型参照価格制度)」の導入について議論が重ねられている.
 口本における薬の公定価格を定める薬価基準の設定は,1950年(昭和25年)10月24日厚生省告示第279号および11月1日厚生省告示第284号をもって行われ,2,267品目が初めて収載された.以後,約50年近く採用されてきた制度である.

薬価の国際比較—医療用医薬品の内外価格差をどう考えるか

著者: 池田俊也

ページ範囲:P.794 - P.797

 国民医療費の高騰は先進諸国に共通した問題であるが,特にわが国では薬剤比率が高いとの指摘がある.この要因の一つとして,わが国における医療用医薬品の価格水準が諸外国に比して高いのではないかとの声が聞かれる.こうしたことから,医療用医薬品の内外価格差に関心が寄せられており,薬価の国際比較を行った研究結果はこれまでしばしば報告されてきている.しかしながら,分析年次,分析手法,調査対象品目の違いなどにより,各報告における結論が必ずしも一致しているわけではない.
 そこで本稿では,まず,薬価の国際比較研究において,結果に影響を与える可能性のある研究方法や前提条件につき整理を行う.次に,筆者らが行った,わが国の売上高上位品目を対象とした薬価の国際比較の分析結果を紹介する.最後に,他の研究結果との比較のもとで,考察を行うこととする.

〔座談会〕薬価基準制度改革の論点

著者: 池上直己 ,   南部鶴彦 ,   渡辺徹 ,   秋山孝二

ページ範囲:P.798 - P.805

 南部(司会) はじめに,改革議論が盛んに行われている薬価基準制度の問題点をまとめました(表1).

グラフ

山間の村に家庭医療の確立を—揖斐郡北西部地域医療センター・かすがモリモリ村/坂内村診療所/藤橋村診療所

ページ範囲:P.769 - P.774

 岐阜県大垣市から近鉄揖斐線の終点,揖斐駅でバスに乗り継ぎ約1時間,揖斐川中流沿いの集落,久瀬村に到着する.揖斐郡北西部地域医療センターは久瀬村の中ほどにある役場裏に今年4月にオープンした.
 「揖斐郡北西部地域医療センター山びこの郷」は岐阜県の北西部に位置する久瀬村(高橋 昭村長),春日村(樋口直嗣村長),坂内村(田中正敏村長),藤橋村(島中敏朗村長)の4か村の負担により設立された.運営管理は自治医科大学の卒業生を中心に設立された社団法人地域医療振興協会に委託されている.

第27回日本病院設備学会会長を務める 北里大学教授・医療衛生学部長 渡辺敏氏

著者: 都築正和 ,   八木保

ページ範囲:P.776 - P.776

 渡辺敏教授は信念の人である.一方では,だれとでも気軽に付き合って信頼を得ていく人柄で,たくさんのファンを呼び込み多くの業績をあげてこられた.先生はもともと麻酔科のご出身であり,東京大学から昭和46年(1971)に北里大学医学部,同附属病院に赴任された.
 麻酔科医は医療にさいし安全問題を常に考え,必要に応じて迅速に対応する必要がある.また日常多くの医用機器・設備に囲まれて仕事をしている.したがって,医用機器・設備などの安全確保に関心が深い人が多い.このような環境から,先生は日本エム・イー学会,日本医科器械学会,日本病院設備協会などで重要な役割を担ってこられた.そして,次第に医用工学,なかでも医用機器の安全管理を中心とした分野に関連した仕事を多くこなされるようになったが,この間,日本エム・イー学会のCE安全研究会を主催されたこともあった.

主張

保健医療行政の緊急な確立を

著者:

ページ範囲:P.777 - P.777

 高齢社会の進行に伴う疾病構造の急激な変化は,今後のわが国の政治的問題の一つとして国民の関心を高めている.年金問題,医療保険制度抜本改革など緊急の課題が山積しており,高齢化に伴う増大する医療費をどのように効率的に運用し,医療政策を展開するかが重要である.
 厚生省は,2000年以降「健康日本21」として生活習慣病対策などの保健事業の施策の検討を行っているが,今後の国民の健康を維持・増進することがわが国における利益となること,また健康は個人で管理することが原則であるが,社会政策上これらの健康を維持・増進するためのより効果的な施策を行うことが,行政の責任であることを認識すべきである.

シンポジウム 看護の経済的評価・2

看護診療報酬の考え方

著者: 小田清一

ページ範囲:P.806 - P.809

 私は日本病院管理学会会員として20年ほどになりますが,例会に参加しましたのは今回が初めてです.
 ご紹介いただきましたように,岐阜県の衛生部長時代に看護サミットを開かせていただきましたが,そのときに全国の病院で21番目でしたが,看護婦職の副院長を県立病院で初めてつくりました.そうしましたら,今年の4月の異動で,岐阜県の県立病院3か所すべてで看護部長さんが副院長に就かれました.これは大変よいことですが,ただ,薬剤師さんをはじめ他のコメディカルの方にも気をつかって欲しかったと思っております.

質の高い看護の評価

著者: 川島みどり

ページ範囲:P.810 - P.812

 私は40数年の経験から看護についてはわかっているつもりですが,「経済」のことについては素人です.ただ,看護職が「経済」にあまり関心がなかった時代にも,看護婦は「経済」に関心を持たなければならないと,発言してまいりました.ただ,最近のようにすべてが経済中心のようなご時世では,私の生来のへそ曲がりなところから,「それでいいの?」といいたくなります.そういったことで今日は,日ごろ考えている看護の質を中心にお話いたします.
 私は長年の看護婦生活の中で臨床看護に価値を置いてきました.看護の専門性は臨床看護のレベルを高くすることにあると思い続け,その考えは今も変わっていません.具体的には対象となる人々の尊厳を守り,すべてのプロセスが安全である看護提供システムを整え,個々の看護婦の技術レベルを高め,チームとしての技術水準を高くしていくということにかかっています.

〔ディスカッション〕看護の経済的評価をめぐって

著者: 大友陽子 ,   竹谷英子 ,   小田清一 ,   川島みどり ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.813 - P.818

 紀伊國 4人の方々の発表はそれぞれ個性がありユニークな会になったと思います.
 まず,先ほどからお名前が上がりました東京女子医科大学病院の森山看護部長をご紹介します.東京女子医科大学では今年の4月から藤枝看護部長が新設された看護学部長になられ,東京大学におられた森山弘子先生が附属病院の看護部長に就かれました.

特別企画 シリーズ・ISO9000sの医療への導入を検討する・3

武田病病健診センターにおけるISO9001の導入

著者: 武田隆久

ページ範囲:P.820 - P.822

取得の目的と意義
 今回,ISOを取得した武田病院健診センターは,武田病院グループのなかの健診事業を担う施設である.武田病院グループは京都市内を中心に,病院,リハビリテーション施設,老人保健施設など併せて15施設,職員1,400名を擁している.
 当時,急速に発展する高齢者福祉施設の増加によってグループ全体の職員が1,000名を超えるに至って,長年,培ってきた医療技術の伝承と共有化のための業務の標準化,システム化の充実が差し迫った経営課題となり,対策として標準化のベースとなるマニュアルづくりに取り組んだものの,思うよに進まない壁に突き当たっていた.閉塞感が漂うなかで,理事長が他産業でISOが注目されているという情報を得て,課題解決の実験的取り組み手段としてISOに着目した.

病院管理フォーラム 診療情報管理はいま・13

診療情報管理の将来に向けて

著者: 烏羽克子

ページ範囲:P.823 - P.826

 1973年,病院は創立70周年を記念して,現在の基礎となる将来ビジョンを打ち出した.さらに1979年には具体的な新病院建設計画が組まれ,「病院設備の近代化計画」と「健全経営を目的とした体質の改善」という2本の柱を軸に長期計画委員会を発足させた.これが医療・福祉・予防医学という医療構想へと受け継がれ,その集大成を記念すべく今年5月,「聖路加国際病院再開発計画事業完成記念行事」を開催するに至った.
 これは大きなプロジェクトの完成であると同時に,21世紀医療を目指した新たな出発点でもある.病院が目指す21世紀医療の具体的内容には患者およびその周辺社会と医療とのかかわり,医療経済など医療環境の問題,医療者の姿勢と将来への意識・意志・行動など医療提供者自身の問題なども含まれる.こうした課題を総括的に捉えたうえで,今は一病院という単位を超えて,これからの医療・福祉・予防医学全体を見据えていかなければならない時にきていると思う.

リエンジニアリング—PFFCの展開・9

診療科別・部門別収支分析

著者: 弘島敬一

ページ範囲:P.828 - P.829

 リエンジニアリングの展開により,業務プロセスが改善されていく一方で経営状況の悪化を招いては本末転倒である.また,展開に伴う改善結果を客観的に評価する指標の必要性も高い.そして,これまでの「出来高払い」から「包括化」へと医療情勢が大きく変化していく中で利益率を維持し病院を存続させるには,より厳密なコストコントロールが不可欠である.そのために部門別損益分析の導入が決定された.

看護管理・6

看護の質の保証と看護事故・2

著者: 増子ひさ江

ページ範囲:P.830 - P.831

 看護婦の誰かにニアミスや事故の経験を聞くと,誰もが一度や二度,経験があるという答えが返ってくる.看護婦の行為が明らかに患者に害を与えた場合は事故と認識する.が,例えば「応対が悪く患者に不快感を与えた」,「点滴が予定時間より1時間早く終了した」,「患者が転んだがけがはなかった」などを,事故の範疇と考えるか否か,個人の認識は意外にまちまちである.前号に述べたようにハインリッヒの法則から考えても,問題にしなければならないのは,日常的に起こるこまごまとしたニアミスや事故である.
 当院は在院日数が短く,医療・看護の密度が濃い.加えて患者の高齢化によって,事故発生の条件が急増している.事故報告を受けるにつけ,看護の質を守る最低条件として,意識化された丁寧な看護を実施して,患者に対し安全を保証する,つまり最低限「事故のない」看護を提供することが大切であると痛感していた.平成8年度,私どもは事故の実態を知ることから取り組みを始めた.

MQIの実践—練馬総合病院・7

患者さんに浴室利用時間を明らかにしよう

著者: 井原尚子

ページ範囲:P.832 - P.834

テーマ選定理由
 当病棟での浴室利用方法は,予定者名をカーデックスから白板に転記し,浴室が空いていることに気付いた看護婦が患者さんを呼び出し,浴室を利用してもらっている.この方法では,患者さんはいつ呼び出されるかわからず,病室に拘束されている.また,看護婦が浴室が空いたことに気付かず,むだな空き時間があったり,呼び出しから入浴までの準備に時間がかかったりしている.これらの問題を解決するためには,患者さんに浴室利用時間を明らかにすることが必要であると考えた.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第47回

医療法人有恒会こだまホスピタル/使ってみてひと言

著者: 飯塚直人

ページ範囲:P.836 - P.841

 新こだまホスピタルは,旧こだまホスピタルの病棟の老朽化に伴い,新たに道路を隔てた用地に移転新築されたものである.
 新病院建設にあたっては,敷地の効果的な利用と,21世紀にたつ新しい精神科病院の姿の構築が求められ,その中でこだまホスピタルにふさわしいイメージづくりや,精神病院としての機能を満たすディテールの考察などが主要なテーマとなった.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・8

浅井病院—医療も,看護も,介護も,患者さんごとにふさわしく

著者: 浅井邦彦

ページ範囲:P.842 - P.846

 地域に開かれた開放的病院として,浅井病院は積極的な精神医療を展開してきた.PICU (精神科集中治療室)を持つ急性期治療病棟群と,リハビリテーションを積極的に行うリハビリ病棟群の機能分化をすすめ,社会復帰施設としてグループホーム群(3棟),ショートステイ付きの生活訓練施設を運営し,家族会による小規模共同作業所も近くにある(図1).夜間・休日も精神保健指定医と非指定医のペアで2人以上が365日24時間体制で精神科救急に対応している.また内科病棟では,身体合併症はじめ高齢者の神経内科,内科的治療とケアを行っている.
 外来体制の充実,精神科デイケア,デイ・ナイトケア,アウトリーチ(精神科訪問支援),訪問看護そして精神障害者地域支援センターの活動を豊富なコメディカルスタッフのリハビリ部で積極的に行っている.痴呆を主とした老人保健施設,そして大規模デイケア,また社会福祉法人による特別養護老人ホーム,ケアハウス,在宅介護支援センター,訪問看護ステーションの運営など,地域医療から福祉まで治療とケアの連続性を重視した活動を展開している.

医学ごよみ

9月—September 長月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.847 - P.847

 3人の偉大な医学者の誕生日を紹介する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?