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雑誌目次

雑誌文献

病院58巻2号

1999年02月発行

雑誌目次

特集 在院日数と病院経営

【対談】医療提供体制と在院日数

著者: 岩﨑榮 ,   竹内實

ページ範囲:P.114 - P.119

わが国における在院日数
 竹内 今月号の特集テーマが「在院日数と病院経営」ということですが,岩﨑先生には「医療提供体制と在院日数」についてお話を伺いたいと思います.
 現在,医療提供体制は変革の時期を迎えております.その先駆けとして診療報酬上で平均在院日数に関する制限などが様々なところで導入されており,それによって提供体制自体が少しずつ変わりつつあります.これが介護保険導入などに伴い今後さらにどのようになっていくのか,もう一つは,病院の経営がどうなるかということもさておいて,国民が望む医療,特に提供体制の中における病院がどうあるべきかを中心にお伺いしたいと思います.

日本の病院の平均在院日数—どうして,どのように,どこまで短縮できるのか

著者: 長谷川敏彦

ページ範囲:P.120 - P.126

 最もよく使われる平均寿命や乳幼児死亡率で測ると,日本は1980年代の後半から「健康結果」において世界一の実績を示すに至っている1).ところが,最もよく使われる「医療の質」の指標である平均在院日数は,先進国の間で近年世界最低の実績を示すに至っている.本論文では,まず,日本の平均在院日数が本当に長いのかを検証し,その理由を分析し,さらにいかにすれば短くできるかを追求してみたい.

診療管理とクリティカルパス

著者: 椎貝達夫 ,   吉田公代 ,   江連とし子 ,   藤澤忠光

ページ範囲:P.127 - P.129

 筆者はクリティカルパスという言葉はあまり好きではない.クリティカルには「必要最低限の」とか,「損をしないギリギリの線」といった意味がありそうで,筆者は医療をもう少しゆとりのあるものととらえていきたいからである.ほとんど同義語として用いられる「クリニカルパス」あるいは,「クリニカルパスウェイ」は,「診療手順」,「診療の流れ」といった意味であり,こちらのほうが切実さが伝わってこないだけ筆者としては好きである.いずれにせよ略するとCPとなるが,後者的な意味合いで用いることをご了解いただきたい.

看護度と在院日数の短縮

著者: 飯田裕子

ページ範囲:P.130 - P.132

 在院日数の短縮は,わが国の医療経済の健全化を図るために推し進められている.その政策誘導を受けて各病院・施設では,病院経営の安定化を模索しつつ様々な取り組みが行われている.
 看護管理者の役割として,在院日数の短縮化に看護部として積極的に努力するとともに,看護の量や質がどのように影響を受けるのかを予測し,対処することが大きな課題になっている.在院日数の短縮によって病床利用率が低下した場合,余剰人員を抱えることは病院経済にとってマイナスになり,患者数が変わらなかった場合は人員不足から質の低下を招きかねない.

在院日数と病床管理

著者: 武藤正樹

ページ範囲:P.133 - P.136

 1998年4月の診療報酬改定でもみられるように平均在院日数短縮のプレッシャーが,ますます強くなってきている.入院時医学管理料と看護料の平均在院日数しばりがきつくなる一方で,短縮に成功すれば増収も期待できるというわけで,病院経営者の目は毎月の自院の平均在院日数の動向に集まっている.さて,この診療報酬算定で使っている平均在院日数の式(表1)をもう一度見直してみよう.この式をよく見れば,分子の入院患者延べ数は病床利用率が一定値とすれば定数であるので,平均在院日数は分母の入退院患者数の平均の逆数に比例していることがわかる.これをグラフ化すると図1のようになる.
 このグラフをみればわかることだが,平均在院日数を短縮するのに必要な入退院患者数は,平均在院日数が短くなればなるほど急峻なカーブで上昇することになる.つまり,平均在院日数を短縮させるということは,病院への患者出入りのスピードを増加させるということなのだ.

在院日数短縮と病院経営—日帰り手術と在院日数短縮

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.137 - P.138

 本稿では,日帰り手術と今後の病院経営における課題について述べてみたい.

在院日数短縮と病院経営—地域医療ネットワークの構築による在院日数の短縮

著者: 松村耕三

ページ範囲:P.139 - P.140

 急性期病院の在院日数短縮のためには急性期医療から慢性期医療,そして在宅医療へと続く病状,病期に従った施設体系(continum care)を作り,的確に流れに乗せることが必要になる.この体系化されたネットワークシステムの構築には二つの方法が考えられる.これを縦のネットワークと横のネットワークと呼ぶことにする.
 縦のネットワークとは同一法人内で病状,病期による施設の体系を完結させる方法である(図1).医療の被提供者は矢印の方向に流れに乗って運ばれることになる.地域でリーダーシップをとることが望まれ,力のある医療機関はこの方式の選択ができる.

在院日数短縮と病院経営—在宅総合ケアセンター設立と在院日数短縮化

著者: 高尾武男

ページ範囲:P.141 - P.142

 当院は脳神経疾患を専門として昭和63年1月に開院以来「救急から在宅までいついかなる時でも対応できる病院」を理念に掲げ,地域に根ざした医療を展開してきた.具体的には,24時間救急医療体制を整備することと並行して,継続ケアの提供を目的に「全仁会トータルヘルスケアシステム(図1)」として,介護力強化病床・老人保健施設・訪問看護ステーション・在宅介護支援センターなどを整備してきた.
 当院の専門とする脳卒中・パーキンソン病などの脳神経疾患は,高齢者に多く,平成9年度入院患者の60%が70歳以上であった.また,これらの治療にリハビリテーションは欠かせないが,高齢者でリハビリテーション目的の入院は長期化しがちである.当院の急性期病床156床(新看護体系2:1看護A加算)の平均在院日数は,28日前後で推移(平成10年4月〜8月平均)していたが,平成10年10月からの改定に向け何らかの打開策を打たねばならなかった.

在院日数短縮と病院経営—在院日数短縮と病院経営の実情

著者: 楢崎幹雄

ページ範囲:P.143 - P.144

 平均在院日数を減らすために当院でも一般的な努力はしているのですが,実のところ成績は36日とよくありません.最近筆者は,なぜ平均在院日数の短縮をしなければならないのか,非常に疑問に思っています.適切な医療の提供のため? 医療経済の効率化のため? どのような理由によるものなのでしょう.全科まとめて入院日数をうんぬん言うのは誠に乱暴で理屈に合わないことです.

在院日数短縮と病院経営—病院のオープン化による影響

著者: 木野昌也

ページ範囲:P.145 - P.146

 わが国の医療供給体制を供給側からみると,急性期,慢性期病院に長期療養施設,地域医療支援病院,一般病院や大学病院などの種類があるが,それぞれの役割分担は不明瞭で多くの課題がある.しかし,医療の提供を受ける患者側からすれば,受診する医療機関が上記のどの種類の施設であっても,求めるのは唯一,医療の質と効率性である.
 筆者は,1986年4月に病院長に就任以来,質の高い医療をより効率的に提供することを目標に,病院を挙げて努力してきた.しかし,一民間病院が独力でこの目標を達成することは至難の業である.

グラフ

—千葉県循環器病センター—千葉県の循環器系疾患対策の最前線として開院より1年

ページ範囲:P.105 - P.110

 わが国の高齢化はますます進み,それに伴い,わが国の国民病といっても過言ではなくなっている生活習慣病,特に心臓病・脳卒中などの循環器病の発症の増加が予想される.新興の住宅地などが多く,比較的若い県といわれてきた千葉県も例外ではなく,押し寄せる高齢化の波は避け難いものとなり,循環器病に関する高度かつ専門的な医療を提供することのできる医療機関の整備が急務となっていた.こうしたなか千葉県循環器病センターが昨年2月に開院し,循環器疾患に対する高度な医療を展開することになった.

主張

閉塞感は深まるばかり

著者:

ページ範囲:P.113 - P.113

 うつ病患者に対して,「トンネルの先に必ず明かりがある」,というムンテラがよく行われる.しかし,日本全体を覆う閉塞感には出口が見えず,ますます闇の中に落ち込んでいくようである.これまで世界の羨望の的であった日本的経営は色褪せ,優秀であるといわれてきた官僚組織も自己増殖と自己保身に邁進する単なる利益集団として評価が改められつつある.
 経済不況による勤労者所得の低下や歳入の落ち込みによって,保険料と税の範囲で医療サービスを賄うことが難しくなってきている.また,病院に対して金融不安は銀行の貸し渋り,返済の強要でという形で直接的に影響しており,唯一の明るい材料は賃上げ圧力が弱まり,人材確保が容易になった点であろう.

特別寄稿

老人病院の変遷—2.縛らない医療からグループホームケアへ

著者: 吉岡充

ページ範囲:P.153 - P.157

 前回(1999年1月号参照)では,この国の老人医療が,安かろう悪かろうの特例許可老人病院から,人手を多くした介護力強化病院,そして,入院生活を生活の視点で考えていくために建物も考えようという療養型病床群へと制度が進展し,単なる治療優先からQOL (quality of life)を重視したケアの時代となっていく話をした.
 今回は,上川病院での老人医療の具体的なケースレポートをしたい.

マネージドケアと米国医療の変容

5.マネージドケアと米国医療の変容(その2)

著者: 田村誠

ページ範囲:P.147 - P.152

個々の患者重視から集団全体の健康重視へ(承前)
2.「資源配分」の考え方の導入——「配給」を中心に
 マネージドケアの興隆により,「個々の患者重視」から,「集団全体の健康重視」に変容するときに必要となるのが「資源配分(resource allocation)」の考え方の導入である.全体の医療資源の配分に配慮し,費用対効果の低い医療をなるべく行わないようにし,費用対効果の高い医療を中心に行うようにする.

レポート

セカンドオピニオンの勧め—自己決定を育てる医療

著者: 新居昭紀

ページ範囲:P.158 - P.162

セカンドオピニオンの勧め—自己決定を育てる医療
 筆者が聖隷三方原病院において院長就任以来一貫して取り組んできたことは,インフォームドコンセントを基本的前提にする医療の定着であった.この7年間にわたる様々な取り組みの中で次第に明らかになってきたのは,インフォームドコンセントは病院側医療者のみで推進していけるものでなく,患者の自己決定がなければインフォームドコンセントに基づく医療はそもそも成立しえず,そしてそれが全く新たな患者-医療者関係作りを目指していることにもなるということであった.したがって,私たちは患者の自己決定を促し,育てていきながらインフォームドコンセントを進めていくしかないと思うに至った.そのための一つのアプローチがセカンドオピニオンの勧めである.ここに至る経過をまず述べてみる.

連載 医療事故・医事紛争防止とリスクマネージメント・7

医療事故/紛争事例から学ぶ(5)

著者: 川村治子

ページ範囲:P.163 - P.166

 ヒューマンエラーに基づく医療事故のほとんどは確認さえ怠らなければ,あるいは指示が正確に伝達されてさえいれば起こらなかった事故である.なぜ確認をしなかったのかと悔み,再発防止として「確認の徹底」を誓う.ところがしばらくするとまた似たような問題が起きる.
 工程が自動化された業種では確認こそが人間の業務である.確認のポイントは明確でマニュアル化も可能である.しかし,医療ではサービスの種類がまず多種である.また,医師の指示から患者への提供まで複数のスタッフが介在する.確認ポイントは例えば注射一つとっても患者名,薬剤名,量,投与方法や速度,投与時刻と多様である.さらに注射部位の安全性,注射前後の病態確認もある.しかも確認は危機的な状況や,煩雑な業務の中で行われる.つまり,確認もまた専門知識に基づく応用力とスピーディさが要求され,業務の流れの中に無意識的に組み入れられている行為である.電車の発車や通過を確認する駅員のような行動を期待することは所詮無理である.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第52回

稲城市立病院

著者: 藤橋和光

ページ範囲:P.178 - P.183

沿革
 稲城市立病院の前身は,東京第二陸軍造兵廠多摩製造所多摩病院として設立された.1940年のことである.その後,幾多の変遷を経て,1968年4月には名称を町立国民健康保険稲城中央病院と改称,1971年2月には今回の改築まで利用されてきたRC地下1階地上6階の新病院を完成させている.その後も小刻みに増築を続けて今回の改築に至っているが,その間,動線の複雑化,建物の老朽化あるいは機能の陳腐化などにより,もはや最新の医療を提供するには器としての建物に限界を生じ,今回の改築に至ったわけである.なお,1971年11月には市制施行に伴い,現在の呼称である稲城市立病院と改称している.

癒しの環境

お地蔵様と癒し

著者: 井野節子

ページ範囲:P.167 - P.167

お地蔵様を置いた経緯
 筆者の老人保健施設「しおさきヴィラ」にお地蔵様がある.筆者の尊敬する医師から,「あなた,お地蔵様を癒しの環境にしてるのね」といわれた.はてさて,はたしてそのような効果があったのだろうか?
 お地蔵様を置いた経緯は以下のようであった.

病院管理フォーラム 院内トータルシステムにおける物品管理・3

診療材料の管理について—その2・当院における実践例

著者: 神野正博

ページ範囲:P.168 - P.169

 前号で当院が診療材料の院外SPD (supply processing distribu-tion)導入までにいたる数々の失敗事例を提示した.これから材料管理を導入される医療機関にとって,先例として検討していただきたい.ここで改めて診療材料管理における問題点を列記する.特に「誰が」がキーワードであるように思われる.
 1)在庫管理を誰が行うか
 2)適正在庫の設定を誰が行うか
 3)期限切れの把握を誰が行うか
 4)誰が配送するか
 5)医事請求との連動を誰が行うか
 6)材料の選定を誰が行うか
 7)在庫管理経費を誰が支払うか

看護管理・11

人事・労務管理(2)—人事考課の定義とその問題点

著者: 竹谷美穂

ページ範囲:P.170 - P.171

 前回は,人事・労務管理の基本的な考え方に触れ,体系図をとおして病院の理念・方針に基づいた組織の特徴,条件によりその病院に応じた人事・労務管理があることを述べた.
 今回は人事・労務管理の中で,人事考課について考えていきたい.

Hospital Administratorへの道・2

Administratorに求められる資質

著者: 佐合茂樹

ページ範囲:P.172 - P.173

木沢記念病院の概況
 木沢記念病院は岐阜県美濃加茂市に位置し,中濃地区二次医療圏の中心的な役割を担う急性期主体の一般病院である.1998年,地域医療計画の見直しにより,70床の増床が認められ,現在402床.救急医療体制整備を目的としてICU,手術室,救急室などを含めた免震構造による増築を実施,1999年3月に竣工の予定である.
 当院は,1997年7月に病院長が交替,山田實紘が新しく病院長に就任した.新体制のもとに「患者の立場に立った医療,地域から求められる新しい医療サービスの提供」を経営理念とし,理念を具現化する基本方針の一つに,医療・福祉・保健の連携を掲げている.関連施設として病院長が理事長を兼務する特定医療法人清仁会,社会福祉法人慈恵会があり,複合体としての機能を活かして患者サービスの提供を実践している.

リエンジニアリング—PFFCの展開・12

PFFCの評価と成果・問題点と課題(1)

著者: 三枝匡

ページ範囲:P.174 - P.175

 過去約1年にわたって聖マリア病院の経営革新PFFCの概要を連載してきたが,これら一連の出来事は2年足らずの間に起きたことである.
 この連載の初めに解説したとおり,PFFCはもともとトヨタ自動車のカンバン方式が米国に渡り,米国の「情報技術」や「価値連鎖」の考え方と結合することでリエンジニアリングとよばれる手法に敷衍され,それが経営コンサルタントの手を経て米国企業から米国の病院に持ち込まれたものである.もとが日本発の経営手法であるから,日本の病院への適用ができないはずはないとの確信をもって導入への取り組みを始めたが,一応の成果を見るまでには多くの壁を乗り越えなければならなかった.

Principle 病院経営・2

健全経営とは何か(1)

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.176 - P.177

 医療を取り巻く経営環境の変化が著しい昨今,経営者あるいは開設者は病院の収支について相当敏感になっているようだ.特に国公立病院の開設者に至っては,自らの病院の使命に優先して収支を問うといったケースがよくみられる.医療機関経営を院長に一任することで開設者としての役割を果たしてこなかったことのつけが今になって回ってきたという感じである.仕事柄,国公立病院の経営陣と接することが多いのだが,十人中八九の人が採算性,効率性,経済性というカネの呪縛に苛まれているようだ.
 その一方で,地域の情勢を見極めながら,戦略的に事業を展開している民間病院が存在している.そのような病院の経営者や開設者は確かに採算性,効率性,経済性といった言葉を使うが,必ずしもそれらが第一優先順位となってはいない.彼らは常に顧客としての患者,すなわち地域住民のほうを向いており,住民たちが制度改革の中でどのような行動を起こすのかを必死になって見極めようとしている.さらに,限られた,本当に限られた資金や人的資源を駆使して,自らの夢と現実との摺り合わせをしようとしている.そのような民間病院と接するにつけ,どちらが公でどちらが民か理解に苦しむ.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・13

愛光病院—精神病院のイメージチェンジと地域との連携をめざして

著者: 竹内知夫

ページ範囲:P.184 - P.189

 一般的な精神病院としてスタートした愛光病院も,筆者が病院創立25周年を機に院長に就任(1980年5月)して以来,精神疾患の中核たる精神分裂病を中心とした精神科医療を前面に打ち出し,看護の人的充足と質の向上,作業療法・レクリェーション療法の充実に励み,「自分および自分の家族・知人が入院できる病院づくり」を目標に今日まで展開してきた.1981年以降常に入院患者の85%が精神分裂病という状況が続いたが,建物の老朽化が進んだことと,これまでの構造が時代とともに,精神医療をやりにくくしてきたこともあり,1992年に新病棟建築を決意し,1995年7月に新病棟をオープンさせた.3年近い期間構想を練り,その間全国各地のいろいろな病院を見学させていただいたり,設計士に代わりに見学して来てもらったりもした.新病棟には,思春期病棟,静養病棟など今盛んにいわれている機能分化を先取り導入し,デイケア,ナイトケア,作業療法室なども充実させた.既に1990年には社会復帰福祉ホームも設立しており,入院から退院,社会復帰までの一連のメニューは揃えたつもりである.また,思春期病棟開設を前に地元の教育関係者,関係機関との連携ネットワーク作りも立ち上げ,今日も継続している.図1,2に当院の全景を示す.

医学ごよみ

2月—February 如月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.191 - P.191

□7日 日本最初の人体解剖
 宝暦4年(1754)のこの日,山脇東洋は,京都の刑場で断首された罪人の死体を,日本で最初に解剖を行った.その17年後の明和8年(1771)3月には,杉田玄白と前野良澤らが江戸の骨ケ原で死体解剖を観察し,これがきっかけで,『解体新書』が完成したことはすでに本シリーズで紹介している.
 山脇東洋は,それまでたくさんの獺(かわうそ)の解剖を行い,ぜひ人間の解剖をしてみたいと,念願していた.獺の身体構造は人間と似ているといわれているが,歴史的にみても紀元後2世紀のローマの医師ガレノスが,獺の解剖を行い,それを人間と同じだとして発表している.しかし1543年にヴェサリウスが人体解剖を行い,ガレノスの間違いを正したことも,たいへんに有名なことである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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