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雑誌目次

雑誌文献

病院58巻4号

1999年04月発行

雑誌目次

特集 看護新時代

【てい談】新たな時代の看護の機能と質を展望する

著者: 岡谷恵子 ,   野村陽子 ,   山内豊明

ページ範囲:P.306 - P.313

 山内(司会) 看護が医療におけるプロフェッションの一つとして認知されて久しいですが,時代とともに看護職に期待されることや,その占める位置は変わりつつあります.特に最近では,介護福祉士やソーシャルワーカの活躍の場が広がる中で,看護職はいかにidentityを大事にしていくかを常に問われていると思います.
 中でも重要なことは,まず第1に何をするかという役割の問題,すなわち看護の質や機能といったものがどうあったらよいかということ.また看護の質を含めた量や業務の内容をいかに評価するかということ,診療報酬などはこういった評価の一つの現れであるともいえます.

看護大学卒看護職の増加と病院

著者: 樋口康子 ,   吉田みつ子

ページ範囲:P.314 - P.317

 21世紀を目前にして,ハイテクノロジー化,超高齢化や少子化など,医療をめぐる社会状況はますます複雑な様相を呈し,保健・医療・福祉にかかわる専門職者への期待が大きくなっている.中でも看護職は,国民のニーズに応え,質の高いケアを提供することが期待されている.これを受け,近年,資質の高い看護職を育成するための看護基礎教育の大学化が急速に進展している.1999年4月からは看護専門学校卒業者の大学への編入も可能となる.本稿では,今後増え続けるであろう大卒看護職者の動向および彼らの受け入れ先となる病院に焦点を当て,その現状と課題について述べてみよう.

看護職をめぐる労働市場はどうなる

著者: 奥村元子

ページ範囲:P.318 - P.322

 厚生省健康政策局看護課が公表している統計によれば,看護職(保健婦・士,助産婦,看護婦・士,准看護婦・士)として就業する者の総数は1996年に1,033,244人となり,初めて100万人を超えた1).1960年の就業者数を「100」とすると1996年は「402」と約4倍に,人口10万人対就業者数でも1960年の261.3人から1996年の820.9人へと3倍強に増加したことになる.
 職種別就業者数は,保健婦・士35,566人,助産婦24,129人,看護婦・士565,918人,准看護婦・士407,631人(いずれも1996年)である.看護婦・士数は1979年に准看護婦・士を上回り,以来その差は拡大を続けている.

看護の経済評価

著者: 竹谷英子

ページ範囲:P.323 - P.327

 2000年4月からの介護保険制度開始を目前に,今までの保健・医療・福祉システム改革を伴う,看護新時代を迎えようとしている.
 看護界では,看護をサービスとして捉え,その経済的評価について論じられるようになってからまだ日が浅い.それは,経済学の対象が市場で交換され取り引きされる財・サービスであり,それに該当する看護サービスといえば,助産所と民間経営の訪問看護サービスの場に限られるという状況,診療報酬における看護サービスの経済的分析が困難な現状,そして看護サービスの経済的評価について漠然とした拒否感があることなどに起因しよう.

看護職と介護福祉士の連携のあり方

著者: 工藤禎子

ページ範囲:P.328 - P.332

 筆者は「社会福祉士及び介護福祉士法」が制定された前後,老人福祉の現場で看護職として介護職とともに働いた経験を持つ.当時の老人福祉の現場では新しい資格に対する戸惑いと期待の中で,いずれの職種もよりよい援助を目指していることや,その役割と連携のあり方が語られていた.近年,保健・医療・福祉をとりまく状況がさらに変化し,多職種間の連携がますます重要になっているが,看護職と介護福祉士の相互理解と協働については,当初の戸惑いが解消されたとは言い難いように思われる.
 筆者は,現在は地域看護の研究教育の場に身をおき医療現場における介護福祉士の詳細を把握しているわけではないが,これまでの動向を踏まえながら,新しい時代の看護職と介護福祉士のあり方を考える機会としたい.なお本稿では,保健婦(士),助産婦,看護婦(士)を合わせて看護職と呼ばせていただく.

競争激化時代の病院と看護管理

著者: 髙嶋妙子

ページ範囲:P.333 - P.336

 「病院が潰れる」という言葉を耳にするようになって久しくなるが,この間にこの言葉の背景が大きく変化したことを実感している.少なくとも私の認識は大きく変わった.はじめの頃は自分の病院には無関係のことと思っていた.潰れる原因が,杜撰な経営計画か悪徳医療にあると考えたからである.
 診療報酬改訂のたびに,「氷河期に向かう医療経営」と盛んに取り沙汰されるのを聞きながらも最近までは,「良心的でむだのない医療」を行なっている病院が潰れるはずがないと信じていた.長い間当院は運営方針として,「患者中心に,よりよい医療をやさしく安全に」と「ムリ・ムダ・ムラの排除」を掲げ,これを合い言葉に職員たちは実によく働いたからである.その実践をとおして当院には,「経済を考えない質は寝言であり,質を考えない経済は罪悪である」という名言が思想として根付いた.

グラフ

病院機能を全方位に展開する—財団法人筑波メディカルセンター病院

ページ範囲:P.297 - P.302

救命救急センターを軸に高実績
 当院は,茨城県の「県南・県西地域における救急医療体制の整備」という医療計画によって立案された.折しも開催されようとしていた科学万博の開催期間中の救急患者への対応をどうするかという課題もあった.当初は医師会立病院にしようという動きもあったが,結局財団方式で設立された.財団法人は,県・県医師会・筑波大学・土浦市医師会・筑波郡医師会(現つくば市医師会)の5者で構成され,1985年に140床で開設された(現在218床).開院当初から30床の救命救急センターが認可され,県内で二番目の救命救急センターとして発足した.当院の柱の一つは,地域の医療に貢献するための病診連携である.一般病院や診療所との緊密な連携を図ることを使命に,実効をあげ,今日に至っている.一日平均の外来患者数389.6人,入院患者数201.6人である.

HOSPITAL INDEX

災害拠点病院(地域災害医療センター)一覧・1

ページ範囲:P.304 - P.304

主張

病床の機能区分と新たな病院の姿

著者:

ページ範囲:P.305 - P.305

 これまでの病床は,結核・精神・伝染など,疾患の特性に応じて区分され,制度的な対応がなされてきた.しかし,疾病構造が変化するにしたがって,その他の一般病床の割合が過半を占めるようになり,かなりの時間が経過した.そして,医療の高度化や高齢化が進む中で,急性期・慢性期という傷病の経過の特質に応じて,あるいは効果的な医療の提供期間の観点から,短期・長期と病床を区分することが必要な時代を迎えたということができる.
 病床機能を区分することの必要性は大方が認めるところであるが,その区分方法や具体的な諸基準の設定については,様々な医療提供の立場から議論が分かれざるを得ない.当初,標準となる平均在院日数によって区分するとされたが,その後最長3か月程度まで患者が在院する病床を急性期病床,あるいは短期病床とする考え方が示されている.いずれも在院期間を区分の方法とすることに変わりはなく,一般病床の現状を踏まえれば,3か月までの在院とすると,その平均在院日数はおおむね21日程度となる.

特別寄稿

医療の効率化と疾病管理

著者: 坂巻弘之 ,   池田俊也

ページ範囲:P.343 - P.347

 先進諸国と同様,わが国においても,医療費の高騰は大きな社会問題として認識されており,今後も高齢化や医療技術の進歩など増加要因が存在している.一方で,大きな経済成長が期待できない社会においては,現状の医療において非効率な部分を改善したり,一定のコストでより大きな成果が得られる医療技術を採用するなど,医療資源の有限性を前提として医療の効率化を追求することが重要な課題といえる.
 本稿では,医療の効率化の手段の一つとして欧米で導入が進み,わが国においても注目されつつある疾病管理(disease management,注1)について,その概念と取り組みの現状をもとに,わが国における今後の課題について検討する.

マネージドケアと米国医療の変容

7.マネージドケアの今後(その1)

著者: 田村誠

ページ範囲:P.337 - P.342

 本連載の最後に,米国の「マネージドケアの今後」について論じてみたい.これには,患者や医療供給者からの反発など,主にマネージドケアの興隆により噴出した問題への対応という側面もあれば,マネージドケアの優れた特性をさらに生かそうという側面もある.全体を整理したのが,表1である.以下順次,論じていく.
 なお,ここで論じるものは,「今後」といっても,既に変わりつつあるものも多い.そうした変化の途上にあるもので,将来その変化の方向が継続する,あるいはいっそう強化されると考えられるものを中心に取り上げる.

レポート

大病院における「レセプト電算処理システム」の使用経験—日本の医療における意義について

著者: 開原成允

ページ範囲:P.348 - P.351

 国立大蔵病院は,1998年10月から,診療報酬請求を「レセプト電算処理システム」に移行した.これは,大病院が「レセプト電算処理システム」を採用した最初の例であったため,多くの人々が関心を示し質問も多かった.したがって,その経験を若干のコメントとともに記しておくことは意味があることと思い,この小論を発表することにした.

資料

大学病院における転院援助困難の事例調査—神奈川県内7大学13病院の調査報告より

著者: 神奈川県大学病院ソーシャルワーカー連絡会

ページ範囲:P.352 - P.354

 「神奈川県大学病院ソーシャルワーカー連絡会」(代表:東海大学病院大本和子.以下,連絡会)は,1997年4月に県内7大学13病院(図1)に勤務する医療ソーシャルワーカー36名(現在は37名)により,大学病院での効果的な業務展開の促進を目的に発足した.
 連絡会では,急性期を脱した重度患者の転院援助を困難にしている要因を調査した.その報告書(「神奈川県内大学病院における転院援助最困難事例調査報告書」,1999年1月20日)から抜粋,その概要を紹介する.

連載 医療事故・医事紛争防止とリスクマネージメント・8

医療事故/紛争事例から学ぶ(6)

著者: 川村治子

ページ範囲:P.355 - P.357

 病院は十数の国家免許職種が集う極めて珍しく,かつ難しい組織である.このうちチーム医療の主要メンバーである7〜8職種は「部門」を構成し,これら部門間の密接な連携は医療の質を左右する重要な要素の一つである.
 さて,医療事故の発生には直接的,および間接的に複数の部門がかかわることが多い.「なぜ起きたか」という原因追及は往々にして誰に,あるいはどの部門に問題があったかという結論に至りやすい.問題の所在を指摘された部門の事故防止への決意は悲壮感を帯び,一方,その他の部門はほっと胸をなで下ろす.しかし,一部門単独の原因であるかのように見える事故でも,「どうすれば防げたか」,「事故防止のために何ができるか」と考えると,おのずと各部門の役割が見えてくる.一つの部門のエラーを吸収する,あるいはエラーを発生させにくくする他部門のシステムやルールづくりが,結果として病院全体に大きな事故防止効果をもたらす.そこで今回の事故事例は,栄養,理学療法,検査の三つのコメディカル部門が間接的にかかわっている事例を取り上げ,それぞれの部門の事故防止に果たす役割について考えたい.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第54回

米国における小児向け医療施設について

著者: 今井正次

ページ範囲:P.367 - P.371

 今回の日本医療福祉建築協会の海外研修で,アメリカのフィラデルフィア,タンパ,オーランド,サンアントニオ,サンディエゴで,11の医療・福祉施設を視察してきたので,その一端を報告する.
 まず,全体的な印象をいくつか述べさせてもらうと,どの施設も経営の安定化のために,大規模化あるいは系列ネットワーク化を熱心に行っていること,2床室の個室化などのダウンサイジングを伴う改造が病棟単位で行われており,その結果看護単位の規模は幅があり,運営上相当柔軟に対応していること,改築のために最初から相応の建築的配慮がなされていること,また,経営優先とはいえ,都市計画や都市政策と関連して立地・経営方針が行われていること,さらに,ターゲットを限定した民間施設の生き方,ボランティア主体の運営施設の存在し得る社会的ゆとりなどの印象が残ったが,今回は子どものための三つの施設に限って報告する.

病院管理フォーラム 院内トータルシステムにおける物品管理・5

薬剤部門の管理について

著者: 神野正博

ページ範囲:P.358 - P.359

 当院で診療材料の院外SPD (sup-ply processing distribution)管理を導入した時点(本誌2月号参照)で,同じような管理手法が薬品においても可能であろうと判断した.特に薬剤費は病院における材料購入の第1位を占め,院外処方率が約33%の当院において,月間購入額が1億2〜3千万円に達していた.また,薬剤はあくまでも薬剤師による管理という性格上,薬局という中央管理部門が存在する.したがって,薬局における出入りを管理することで病院全体の管理が可能となる部門と判断された.

Hospital Administratorへの道・4

弛まぬ目標設定(innovation)で発展を目指す

著者: 江原正恭

ページ範囲:P.360 - P.361

 3年前,現職の病院事務部長職についた時,理事長・院長・本部管理部長(常務理事)が,常に先を見据えて,組織をどう方向付けるかを必死に考え続けている姿を目の当たりにしたことが,自分自身の変革を迫られる転機となった.事務部長としてわずか3年の経験だが,administra-torを目指す者として今日まで心掛けてきたこと,これからも心掛けていきたいことを述べてみたい.立場上,主に経営トップを補佐する視点からの意見になったこと,当法人の理事長以下経営トップの姿勢に学び感化させられたことが内容の中心になったことをご了承願いたい.

看護管理・13

シフトワーク・マネージメント—2.諸外国の実態から日本の勤務体制を考える

著者: 嶋森好子

ページ範囲:P.362 - P.363

 前回で述べたように,われわれは1997年度に,医療制度の異なる看護の先進国および環太平洋の諸国から,イギリス,ドイツ,アメリカ,オーストラリア,韓国,日本の6か国の公立またはそれに準ずる大都市圏に近い300〜1,000床の病院で,看護婦の勤務の実態について調査した1).看護部長から郵送してもらった看護婦のアンケートの結果と勤務表の実態を表1,2に,また,聞き取りまたは文献から得た各国の平均在院日数と週労働時間について表3に示した.これらの表から,諸外国と日本の看護婦の勤務の実態を比較し,今後の課題を考えてみたい.

Principle 病院経営・4

病院事業とは?

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.364 - P.365

 本稿は病院経営について論じるものである.前回までは経営の健全化の考え方を説いてきた.今回は,病院事業とは何かを確認してみることにしよう.
 近年,政治家や官僚はもとより,病院関係者も病院はサービス業であるという言葉を口にするようになった.その論理展開はこうである.病院はサービス業であり,患者はお客様である.サービス業という商売にあって,お客様は神様である.したがって,神様の意志は絶対であり,サービス提供者はお客様に対しては,常に従順でなければならない.というのである.本当にそのような考え方は正しいといえるのだろうか.

癒しの環境

ウンチのできる快感と癒し

著者: 国本正雄

ページ範囲:P.366 - P.366

万人が認める事実
 ほんの少しの忍耐の後に訪れる安息のひととき.ウンチをする瞬間は,わずかな時間とはいえ,現実から切り離された幸福感・充実感・達成感の極みといえます.「ウンチをすると気持ちがいい」,万人が認めるこの事実はみんな幼い頃から知っています.
 肛門には排泄と保持をめぐって快感を発生させる機能が備わっています.この機能は,精神分析学によれば,身体体験に根ざした自体愛を基盤にしているそうです.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・15

こだまホスピタル—精神医療のフィールドを拡げて

著者: 樹神學

ページ範囲:P.372 - P.376

 病院が誕生してからその後の経過はまさにそれぞれの時代を乗り越え,地域の要請に応え,また病院側の考え方を投影し,それらが渾然一体となって病院像を作り上げる.だからどの病院も長い歳月の経過の中で熟成されて,今の姿を現している.
 1950〜1960年にかけて創立された精神科病院は,全国ほとんど均質な病院像であったが,時を経てそれぞれが時代のニーズに,地域のニーズに応えて年輪を重ねていくうちに,精神科病院と一口にいっても様々な個性を持った病院へと成長していった.こうなると全国の病院をひとくくりにしてその平均値を出しても,それは個々の病院とかけ離れた虚像に近く,それほど意味のないものとなった.だからこそ本誌のシリーズ「民間精神病院はいま−21世紀への展開」という企画もされたのであろうし,今まで掲載された病院はそれぞれ特有の個性を持ち,これからの力点の置き方が様々で興味深かった.当病院も平均的な病院としてスタートしたが,今となればかなり特徴を持った病院へと変貌してきた.

短期連載 病院マネージメントからみた平均在院日数短縮法・2

短縮化のステップ

著者: 加藤尚子 ,   長谷川敏彦

ページ範囲:P.377 - P.382

 平均在院日数短縮の重要性はすでにいろいろなところで論じられており,短縮の方策についても様々な手段が講じられている.病院ごとに短縮の取り組みはそう変わらないし,最も効果的な手段を探し得たかどうかはともかく,そのノウハウについてはおおよそ知られていることが多いものだ.それでもうまくいかないとしたらそれは,やり方はわかっていても,だれがいつどのように決断し,なにを実行するか,の短縮化のステップに問題があるのではないだろうか.さらにその根底にある問題は,組織全体としての長期ビジョンを踏まえた経営戦略がないために,診療報酬改定につられた後手後手の対応になっているからではないだろうか.
 今回は,事例から在院日数短縮のプロセスをたどり,さらに短縮化のステップを体系化して,取り組みの最善策のモデルを提示する.

医学ごよみ

4月—April 卯月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.383 - P.383

□21日 細胞分裂像・最初の観察
 細胞分裂を初めて顕微鏡下で観察したフレミング(Walther Flem-ming,1843〜1905)が,ドイツのメクレンブルグ(Mecklenburg)に誕生した日である.
 彼の父はこの町の精神病院の院長であったため,医学部に進学したという.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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