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雑誌目次

雑誌文献

病院58巻5号

1999年05月発行

雑誌目次

特集 岐路に立つ中小病院

中小病院の将来像—求められる理念の再確認と厳密な経営管理

著者: 徳田禎久

ページ範囲:P.402 - P.407

 1998年の診療報酬改定の際の患者自己負担増による受診抑制をベースとして医療費は,伸びの停滞ないし減少から,最新のデータでは増加へと転じ,厚生省は結局医療費の伸びを抑制しきれなかったと判断している.1997年の国会決議を楯に,医療制度改革についての「医療審議会」,「医療保険福祉審議会」における審議はわれわれの予想を明らかに超えるスピードでなされているが,日本医師会をはじめとした医療提供側の代表の必死の抵抗にもかかわらず,与党医療制度改革協議会の基本構想を引き継ぐ形での診療報酬体系抜本改革のたたき台が示され,病床数削減を意図した入院医療の適正化の議論とも合わせ,残念ながら医療制度改革は厚生省のペースで着々と進んでいると総括せざるを得ない.
 1998年9月,筆者が所属する全日本病院協会(以下,全日病)の「中小病院のあり方に関するプロジェクト委員会」が報告書の中で急性期・慢性期病院の要件や診療報酬支払制度のあり方を提示したが(表1,2),その後出された「医療審議会」,「医療保険福祉審議会」の報告書(図1,表3)と大変相関が高いので,これらをまとめて中小病院の将来像を論じてみたい.ここ数年間の厚生省による医療にかかわる種々の改革は,その善し悪しにかかわらず,この方針に従って行動した病院に有利に展開したことは事実である.

介護保険への中小病院の対応—療養型病床群に転換した経験から

著者: 小笠原真澄

ページ範囲:P.408 - P.411

 医療提供体制の抜本的見直しの中で,急性期病床と慢性期病床の区分が盛んに取り上げられ,必要病床数の検討が進んでいる.現在すでに慢性期病床としての位置付けのなかにある療養型病床群は,医療保険適用部分と介護保険適用部分の振り分けをどうするかに揺れている.
 しかし2000年施行の介護保険制度は目前に迫っているにもかかわらず,医療保険給付と介護保険給付の区分がある程度は示されているとはいうもののなお審議継続中であり,介護報酬の内容も明確に提示されていない.中小医療機関は今後の医療の展望が開けず,財源の裏付けのないままに舵取りをせまられ,困惑することが多い.

中小病院の専門化の現状と課題—甲状腺疾患専門病院の立場から

著者: 野口志郎

ページ範囲:P.412 - P.414

 専門病院は経営上に有利なのかどうかを尋ねられることが多いが,正直にいってどちらともいえないというのが正解ではないかと思っている.経営問題に入る前に筆者が考えている専門病院の定義,必要性,患者の意識などについて述べたい.

中小病院の専門化の現状と課題—脳神経外科専門病院の立場から

著者: 清水鴻一郎

ページ範囲:P.415 - P.417

 現在,医療の再編成が加速しているのは周知のとおりであるが,そのことはようやく最近になって実感としてとらえはじめられたといってもよいほど,現場の感覚はのんびりしたものだった.
 特に,中小病院では「医療法の改正」と「診療報酬の改定」が混同され,最近の一連の厚生行政の流れを,単なる「点数改正」と勘違いしている病院も多々見受けられるほどであった.頭では理解できても日々の診療に追われるなかで,正確な状況判断をするのは確かに困難であり,それは公的介護保険を例にとっても不明瞭,不明確な点が多いことから明らかであろう.

【てい談】中小病院は将来展望をどう見いだすか

著者: 西澤寛俊 ,   梶原優 ,   大道久

ページ範囲:P.418 - P.425

病院団体としての基本姿勢
 大道(司会) 医療制度改革のただ中ですけれども,中小規模の病院,特に民間の中小病院には具体的に判断すべき様々な課題が目の前に出てきています.この改革の流れは当分続くと思いますが,その中から主要な問題点をお話し合いをいただきたいと思います.
 病床機能の区分や新たな診療報酬のあり方の方向が見えてきたところです.大きく転換しようとしている医療体制の中で,民間の中小病院の今後のあり方は,大いに議論をしなくてはならないと思います.それでは最初に西澤先生からお願いします.

中小病院の医療と経営の新戦略—自院の役割,職員の士気,病病連携

著者: 花岡和明

ページ範囲:P.426 - P.427

 当院はこの4年間で,外来で2.5倍,入院で2.8倍,ドック・健康診断で4割,受診者数が増加した.同期間に年間総収入は約2.6倍増加している(11.7億円→31億円).土地を処分し,医療施設近代化施設整備事業の援助を受け全面的に改築したことがきっかけであり,政令指定都市の中心という恵まれた立地条件からすれば当然の成長と思うが,この間の院長としての基本経営方針と今後の課題を集約すれば表題のごとくになる.この方針のもと,さらに外来数を増やし,90%以上の病床稼働率を維持し,経費節減をするということに何の目新しさもないが,表題の意味を筆者なりに説明して執筆の責を果たしたい.

中小病院の医療と経営の新戦略—B型肝炎,C型肝炎のキャリアクリニック

著者: 清川勉 ,   一ノ木裕

ページ範囲:P.428 - P.429

 中小病院は子細にみれば,いずれもなんらかの専門病院である.専門病院とするには,それを意識できるかどうかにある.われわれの病院が,専門病院と意識するようになったのは,十数年前であろうか.それは,医療にとって大切なテーマであるが,長期間のフォローと多くの通院回数を要するため,大学病院,大病院では手軽に通院するのには困難であるという理由で,われわれの病院がB型肝炎のキャリアクリニックを始めたことにある.
 その後,このクリニックに持ち込まれた仕事は,当時,検査結果だけでは簡単に判定のつかない非A型非B型肝炎の確定診断である.まだC型肝炎のウイルスマーカーが確定しない時代で,トランスアミナーゼが一定の数値以上の方が紹介されてきた.日本赤十字社の献血者に献血時の検査結果を報告するサービスが行われた結果でもあった.この紹介による初診患者が月に40〜50名はあり,さらに,日本赤十字血液センターを柱に紹介を受ける先も次々と広がった.

中小病院の医療と経営の新戦略—成熟社会で「がんじがらめの経営」

著者: 平井純

ページ範囲:P.430 - P.431

 当院は,家業兼務のために1962年県内某公立病院長を辞した父により,1963年外科・整形外科専門80床で開設され,1975年頃まで活発な医療を行っていた.院長が病気療養のため1986年内科医師の筆者が院長代行として運営を後継した.交通の便のよい場所に敷地が約20,000m2あったが,1965年前後の1次産業離れの時期に父がより高値で買入れしていった結果である.筆者が任務を負った時の病院の姿は,老朽化した建物,時代遅れの設備機器,そして士気の低下した34名の職員(常勤医ゼロ)だった.大和三山に囲まれ,明日香村を眺望する田園の中にあってのどかで,くつろげる環境だったが,ベッドは社会的入院の患者で占められ,外来は1日20人程度.地域に部分的に貢献していたが,晩年の院長の諸事情を反映していた.筆者はこれは致し方なかったとの感想を持つ.
 30歳代後半で何も知らず,充実拡大か診療所化の選択だったが,病床数規制もなく,地域の医療環境(図1)などを鑑みて父に相談のうえ拡大を選んだが,10年間は一線で耐え得る病院作りをしようと思った.1988年に全面改築し,内科・神経内科・放射線科を新設し,149床に増床した.地元大学から常勤医を派遣していただき,10年経った現在は20名である(内科,神経内科,外科,整形外科,眼科,耳鼻咽喉科,放射線科).

中小病院の医療と経営の新戦略—良質の医療提供こそ経営安定のカギ

著者: 谷尚

ページ範囲:P.432 - P.433

 病院が冬の時代に入って経営が厳しくなったことは数年前からいわれてきたが,1997年9月から老人医療の投薬の一部負担や98年4月から健康保険被保険者本人の2割負担と診療報酬点数の引き下げなどにより,医療費の伸びも1997年度は前年比プラス1.5%,1998年度はマイナスになると予測されている.医療制度の抜本的改革もすすめられ,全国の2次医療圏ごとに病床数の見直しが始まり,まず急性期病床を決めたあとの病床は慢性期病床(療養型病床)にするようである.結果として9,600の病院は約6,000になるというのである.在院日数も20日を切って14日くらいが目標ともいわれている.こうなれば当然,病院の再編成が起こり,生き残る病院と消えていく病院が出るだろう.各病院も生き残りをかけた戦略が要求されるがどんな対策があるのだろうか.
 当院のように過疎地にある公的病院(一般359床,結核24床,合計383床)が歩んできたことと,今後新たに取り組むことなどを述べたい.結論的には今日までやってきたことと大きく変わることは少ないと思う.当院は今後も保健,医療,福祉を一体化してやっていく.地域に密着した医療と救急医療や高度医療を行うことは当然であるが,都会と地域では立地条件が違うので実行していくことが難しい.よい結果を出すためには立派な医師を集めることできるかどうかで決まる.

中小病院の医療と経営の新戦略—地域から支持される医療の実践と継続

著者: 中島康雄

ページ範囲:P.434 - P.435

医療の激戦区の中で
 北海道旭川市(人口36万人)には大学病院が1,公立の総合病院が4,民間病院が37,診療所が253あり,許可病床は一般6,957床,療養型1,105床となっており,医療の激戦区となっている.
 この地にあって当院は外科,胃腸科,整形外科,婦人科,肛門科,麻酔科を標榜する許可病床110床の一般急性期病院(救急告示病院)である.開設は1955年と比較的古く,地域の人々からは外科系救急病院として認識され,自らもその一翼を担っているという認識で医療を展開していた.

中小病院の医療と経営の新戦略—病院の機能強化策としての病診連携,共生の理念の確立

著者: 野村秀洋

ページ範囲:P.436 - P.438

 1999年になり次々に2000年の医療提供体制の改革案が報告されて,医療界に激震をもたらしている.いよいよ医療ビッグバンの到来である.特に民間の中小病院にとっては厳しい時代を迎えることになる.
 本院は内科,外科,産婦人科を主たる診療科とする153床の典型的な都市型中小病院の一つである(表1).中小病院が診療所と大病院の狭間で患者自己負担増の時代に,今後その存在意義を確立して生き残ることは極めて難しいといわざるを得ない.しかしここで重要なことは今診療所や大病院が患者ニーズに完壁に対応しているかということである.大きな問題点を同様に抱えていることも事実である.すなわち診療所も中小病院も大病院も新しいスタートラインに立っているということを認識することがまず大切である.その中において自病院の理念を明確にして「患者主体の医療」を展開することが21世紀の医療を担う医療機関となり得る道である.そのためには誰でもない医師自身が意識改革をすることが第一条件である.

病院経営に関する緊急アンケート調査報告—北海道私的病院協会病院経営改善支援事業

著者: 竹内實

ページ範囲:P.439 - P.441

 国の医療費抑制政策が続き,さらには1997年9月健康保険法改正で患者負担増が図られた.この結果,全国的に受診率が低下し,病院の経営を直撃している.最近発表された公私病院連盟のアンケート調査では全国の70%を超える病院が赤字に転落している.このような情勢の中,1998年度診療報酬改正が行われた.特に10月に実施された長期入院患者に対する新しい評価が病院経営にどのように影響したか,またそれに各病院がどう対応したかを知るべく,北海道内全病院に対し緊急アンケート調査を実施した.対象644病院中回答数338病院,回収率は52.5%であった.
 設立母体別の回収率を表1,病床規模別の回収率を表2に示す.ほぼバランスが取れた回収率であり,病床規模別にも大きな偏りがなく検証に値するものと判断した.

グラフ

一般診療・介護・看取りを三本の柱に—川崎市立井田病院/かわさき総合ケアセンター「ぬくもり」

ページ範囲:P.393 - P.398

 東急東横線日吉駅から徒歩5分,閑静な住宅街が広がる高台に川崎市立井田病院はある.同院は1949年に50床の病院としてスタート,開院当初は当時国民病ともいわれた結核に,各地で公害病が猖獗を極めた1960〜70年代は小児ぜん息に取り組むなど,疾病構造の変化に伴い,その時々のニーズに応える医療を積極的に展開してきた.
 80年代に入り,超高齢化社会の兆しが現れ始めた1982年に在宅ケアへの取り組みを開始,また癌が日本人の死亡原因のトップとなってから4年後の1985年には緩和ケアに関する取り組みも始まった.今回の総合ケアセンターの開設は,それらの地道な取り組みが実を結んだものといえるだろう.

主張

療養型病床群への対応が急務

著者:

ページ範囲:P.401 - P.401

 介護保険によるサービス開始まであと1年を切った,介護保険の施設サービスを行う場として「介護老人福祉施設」,「介護老人保健施設」,「介護療養型医療施設」の三つが示されている.前二者はおのおのの現在の特別養護老人ホームと老人保健施設がそのまま移行するものと思われるので問題は少ないが,介護療養型医療施設のイメージが明確でないための混乱が少なからず起きている.
 恐らく現在の療養型病床群の一部,第3次医療法改正で参入した有床診療所の療養型病床群,そして時期を限られたうえでの特例許可老人病院の介護力強化病棟が受け持つことになりそうである.しかし介護保険サービスを行う療養型病床群整備のためには当然施設基準が求められるため増改築などが必要になり,すぐには転換が難しい.さらには介護報酬が示されていないため介護保険適用施設として認定を受けるべきかどうかの判断に戸惑いが生じている.

特別寄稿 マネージドケアと米国医療の変容

8.マネージドケアの今後(その2)

著者: 田村誠

ページ範囲:P.442 - P.449

マネージドケアの特性の活用
1.公的医療保障へのいっそうの漫透(メディケアおよびメディケイド)
 ここまで論じてきたのは,大半が民間医療保障分野に導入されたマネージドケアに関してである.ところが,マネージドケアは公的医療保障分野(メディケア,メディケイド)でも古くから導入されており,そして近年,民間医療保障分野においてマネージドケアが急速に浸透したのに歩調を合わせるかのように,急速に拡大しつつある.そして,政府(連邦政府,州政府)がマネージドケアをメディケア,メディケイドの医療費抑制策の切り札にしようと考えていることもあり,今後ますます公的医療保障分野におけるマネージドケアの成長が確実視されている.
 公的医療保険が確立されているわが国においてマネージドケアを導入する際には,このメディケア,メディケイドにおけるマネージドケアの導入の仕組みが参考になると筆者は考える.

病院管理フォーラム 看護管理・14

院内教育—1.継続(院内)教育の構造

著者: 増子ひさ江

ページ範囲:P.450 - P.451

 変化の著しい現代は,日常生活の中でさえ好むと好まざるとにかかわらず,覚えたり学んだりしなければ生きられない時代といって過言ではない.いわんや医療現場では,医学の高度化・専門化,加えて人口の高齢化などで,人々の医療ニーズは増大かつ多様化してきている.当然看護婦に期待されるものは,変化する医療や多様なニーズをもつ人々に対応できる専門的な能力であり,看護基礎教育に続く院内教育は,重要な意味を持つことになる.
 本稿では当院における院内教育について紹介したい.

院内トータルシステムにおける物品管理・6(最終回)

すべての業務を統合する情報システム—ナレッジマネジメントへ

著者: 神野正博

ページ範囲:P.452 - P.454

 昨年の12月号よりの連載で診療材料,臨床検査,薬剤管理にバーコードの使用という新しい切り口を用いて院内のシステムを見直した事例を紹介してきた.宅配便やコンビニエンスストアなどの流通業・小売業をベンチマーキングすれば当然の流れであり,さらにこれらの医療以外の産業で好況を呈している業種からすれば,その流れはまだまだ遅れていると感じざるを得ない現状であろう.
 当院において各々別個に進め,一応成功させることができた院内の管理システムをさらに効率化するためには,医療そのものの情報にこれら管理情報に加えた統合システムの必要性が発生してきた.それは,一貫して行ってきた「質とやる気を落とさないリエンジニアリング」の流れの最終章となるものと位置づけられるように思われた.

Hospital Administratorへの道・5

今,必要なのは経営改善計画とその実践

著者: 正木義博

ページ範囲:P.455 - P.457

済生会熊本病院の概要
 済生会は全国41都道府県に支部をおき病院73か所,診療所13か所他を有し,無料低額診療,各種医療福祉事業を推進している.済生会熊本病院は熊本県支部下唯一の施設で診療科9科,許可病床数400の一般病院で1995年4月に熊本市の南部に新築移転をした.
 病院の理念として「医療を通じて地域社会に貢献する」を掲げ,臓器別診療体制を敷き,救急医療を積極的に推進し,急性期病院を目指している.現在の平均在院日数は14.5日,病床利用率96.2%,紹介率36.5%であり,地域との病診連携に力を入れ,現在380施設の医療機関とネットワークを作っている.

Principle 病院経営・5

病院は何を売る?

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.458 - P.459

 病院は一体何を売っているのだろうか? 素朴な質問である.前号では,病院という事業を技術提供業,材料販売業,施設提供業という三つの事業の複合体であるという筆者の意見を述べた.それぞれの事業には基本的サービスなるものが考えられるとも述べたが,では具体的に病院は何を売っているのかと改めて問うてみると,その答えを出すのは案外と難しいように思う.
 何気なく考えれば,医療行為を売っているといえそうだ.患者を初めて診察すると初診料2,500円.胃カメラをしたら11,400円.薬を処方したら処方箋料810円.といった具合である.そのように考えてしまうのは,診療報酬が医療行為ごとに設定されているからに他ならない.

癒しの環境

笑いと便秘

著者: 国本正雄

ページ範囲:P.460 - P.460

 「先生どうですか.この笑顔,すてきでしょ」.最近,筆者の医院で取り入れた「笑顔療法」の一環として看護婦やスタッフは今,鏡を見ながら笑顔をつくる練習に励んでいます.
 筆者の医院では,便秘ケアにおける身体的アプローチとして五感へのアプローチをしてきました.ヒーリングアート(視覚),アロマテラピー(嗅覚),でるでるマッサージ(触感),すいすいセレナーデ(聴覚),ファイバー食品の開発や食事療法(味覚)などです.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第55回

熊本中央病院

著者: 國廣禎男 ,   白石真也

ページ範囲:P.461 - P.465

病院の概要
 熊本中央病院は国家公務員共済組合連合会(KKR)直営病院として1951年より熊本市新屋敷の地で医療活動を行ってきた.近年の医療の進歩と医療行政の変化の中で,施設の老朽化,狭隘化が意識されるようになり,病院の将来像をどのようなものとしていくかという議論の中で施設の計画がスタートした.計画は全国37か所のKKRの病院として初の全面移転新築で,今後予想される系列病院の施設更新の先駆けとして注目を集めることとなった.
 新敷地は熊本市の南東部で,郊外を環状に通る国道57号線東バイパスの沿道に位置する(図1〜3).この沿道には熊本中央病院を含め近年大病院の移転新築が相次ぎ,結果として東バイパス沿いに約2kmごとに四つの大型病院が並ぶ状況となった.

短期連載 病院マネージメントからみた平均在院日数短縮法・3

平均在院日数短縮の意思決定支援モデル

著者: 堀口裕正 ,   長谷川敏彦

ページ範囲:P.466 - P.469

 本連載では,平均在院日数の短縮の必要性,長期化の原因,実際の取り組みとそこから考えられる方法論の検討を行ってきた.だが,一般論としては理解できても,実際に各病院で運営戦略の見直しをする段になったり,実際の活動の中にそれを反映させていく際に,いろいろな問題が出てくることは容易に想像できる.
 平均在院日数の数値を良くしようとなんらかの手を打つと別の部分が悪くなるといったことは日常的に起こることである.その中でも平均在院日数の短縮を実現しなければならないのならば,その副作用もきちんと把握したうえで,それなりの覚悟と周到な準備が必要となってくる.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・16

ハートランドしぎさん—誰もが気軽に受診できる精神科病院

著者: 竹林和彦

ページ範囲:P.471 - P.475

 「常に患者様と向き合い,患者様の立場に立ち,その場,その時に応じた最良の医療サービスを提供する」という理念のもと「ハートランドしぎさん」は1998年5月,前身の信貴山病院より,リニューアルオープンした(図1).
 「ハートランドしぎさん」は外来診療,デイケアセンター,在宅介護支援センター,老人性痴呆疾患センターからなる総合医療福祉施設.老人性痴呆疾患のケアを中心とした医療ネットワークの確立を目的とし,これからの高齢社会のニーズに応えていくため,地域に密着した精神科医療を展開している.

早期退院計画・12

平均在院日数短縮と健全経営

著者: 中西昌美

ページ範囲:P.476 - P.480

 札幌市における医療施設は,高度医療研究機関,医師養成機関である二つの大学附属病院をはじめ,多くの高度専門機関が立地しており,北海道における高度,先進的医療の中核的役割を担っている.
 市立札幌病院は,明治2年北海道開拓使によって設置され,県立,庁立,区立などの変遷を経て大正11年の市制施行により市立札幌病院となった.

特別企画 『介護保険時代』における地域リハビリテーション・1

21世紀の地域リハビリテーション考

著者: 澤村誠志

ページ範囲:P.481 - P.489

 私どもの兵庫県リハビリテーション協議会は今年で29年目になります.長崎ほどうまくいっておりませんが,いつも長崎県の協議会には元気づけられており,その活動には大変敬意を抱いております.今日はバックグラウンドを広げ,21世紀の地域リハビリテーションのあり方を考えていきたいと思います.
 私は28歳の時,義肢装具の勉強をしようと米国のUCLAに参りました.帰国後,兵庫県下で障害者の巡回相談を行い,四肢切断の方々から,たくさんのことを学びました.例えば,高齢の大腿切断の障害者がどのようにして玄関で靴をぬぐのか?トイレでは? 屋外ではどういう動きをしているかなどを,自宅での動作のなかで学びました.そこで,私のリハビリテーション(以下,リハ)の教科書は地域にあると確信し,そのニーズから,総合的なリハセンターが必要だという強い信念を抱きました.

データファイル

診療情報の適切な提供を実践するための指針について(中間報告),他

ページ範囲:P.490 - P.493

 前文(略)
 1.基本理念
 1-1 この指針の目的
 日本医師会は,医師が診療情報を積極的に提供することにより,患者が疾病と診療の内容を十分に理解し医療の担い手である医師と医療を受ける患者とが相互に信頼関係を保ちながら,共同して疾病を克服することを目的として,会員の倫理規範の一つとして,この指針を制定する.
 日本医師会のすべての会員は,この目的を達成するために,この指針の趣旨に沿って患者への診療情報の提供に努めるものとする.

医学ごよみ

5月—May 皐月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.495 - P.495

□21日 白血球食菌作用の発見
 免疫学の発展に貢献した功績によりノーベル生理学医学賞を受賞したメチニコフ(Elie Metchinikoff,1845〜1916)が,ロシア皇帝ニコライ1世の治世下のこの日に,カルコフ(Kharkov)地方に生まれた.彼は経済的に非常に恵まれた環境に育ち,小さいころから昆虫の観察が好きであった.
 19世紀の終わりから20世紀初頭は,免疫学の台頭の時期であった.ドイツ学派の北里柴三郎やベーリングが発見した破傷風やジフテリアの血清療法,エールリッヒの抗原抗体反応説が確立されようとしていた.そのとき,ロシア人のメチニコフは,パリのパスツール研究所から,白血球が体内に入った細菌を食べるという全く異なった免疫説を発表し,ドイツ学派と真向から対立することになった.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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