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雑誌目次

雑誌文献

病院58巻6号

1999年06月発行

雑誌目次

特集 病院として介護保険にいかに対処すべきか

病院として介護保険にいかに対処すべきか—地域の基幹病院の立場から

著者: 貴田岡博史

ページ範囲:P.514 - P.517

 介護保険の導入に備え,各地方自治体はサービス提供のための基盤整備に躍起になっている.しかも,介護保険における基盤は個々に整備されるのではなく,医療・福祉・保健の各セクションの密なる連携,あるいは一体化のもとに,各種サービスが提供されることが重要である.
 また,介護保険の実施に備え,実際に現場でサービスを提供する者の教育や質の向上も急務となっている.

病院として介護保険にいかに対処すべきか—ケアミックスの民間病院の立場から

著者: 山上久

ページ範囲:P.518 - P.523

 介護保険制度のスタートに向けケアミックスに対する関心が高まっているようです.当院も介護保険制度の中でケアミックスをどのように再構成するのがよいか検討を重ねています.同じような検討をされている医療機関に少しでも参考になればとこの場を借りて述べさせていただきます.

病院として介護保険にいかに対処すべきか—介護療養型医療施設の立場から

著者: 日野頌三

ページ範囲:P.524 - P.527

 標題によると筆者が介護療養型医療施設を介護保険のもとで運営していく方針であるかのように思われるだろうが,決してそうではなく,むしろ介護保険には乗らない方向で考えているのだが,どうしてそう考えているのか,その理由を以下に書き記していきたい.内容には対処方法のヒントも含まれてはいるが,もちろん「介護保険入門」のハウツーものではない.
 断っておくが,筆者は「介護保険」が旗揚げの時期に説明されていたように,一貫性を持ったスッキリしたものに仕上がってきていたら,当初のまま,もろ手を上げて賛成しようと考えていた者の1人である.医療保険制度が制度疲労を起こしていることは理解しているし,高齢者に,不必要な「医療」が提供されているという「むだ」もよく知っている.しかし,度重なる介護保険のスタンスの変更の中で,ついに,といってもいいような「医療法上」の「長期慢性病棟」が現れたのにはあきれてしまった.「社会的入院」を廉価で認めようという苦肉の策か療養型病床群の廉価版なのかわからない.医療保険のままで生き延びる道も開かれたという意味では医療界には朗報ととる施設もある.

療養型病床群の将来像

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.528 - P.532

 介護保険の施行まであと10か月足らずとなったが,本稿の執筆時点でも,介護保険制度の運用上の詳細がまだ明らかにされていない部分が多い.特に,「療養型病床群」についてははなはだ不透明であり,医療法改正など今後の議論の成り行きによっては,本稿の内容とかなり異なる状況が生ずる可能性もある.したがって,原稿執筆段階において筆者が知り得る状況に基づきながら,あくまで個人的な見解を多く含む内容で書かれていることを最初にお断りしておきたい.
 さて,来春の介護保険法の施行を睨みながら,療養型病床群を「介護保険適用施設」とすべく,現在準備を進めているところも多いと聞いている.しかし,その一方で次期の医療法改正が盛んに議論されており,その中で病院の一般病床を「急性期(短期)病床」と「慢性期(長期)病床」に区分することが検討されている.そして,この慢性期(長期)病床と療養型病床群との関係については今もって明確な方針が示されておらず,関係者の疑心暗鬼を生みかねない状況にある.そのようなことを踏まえながら,「療養型病床群」の今後について,今までの経緯を振り返りながら検討してみたい.

リハビリテーション病床の機能分化と地域リハビリテーション広域支援センター

著者: 石川誠

ページ範囲:P.533 - P.537

 介護保険の基本的理念に「要介護状態の予防とリハビリテーションの重視」と掲げられているにもかかわらず,介護保険の議論の中でリハビリテーションに関しては最も遅れた分野といっても過言ではない.この理由には,介護保険全体の枠組みでは,衣食住などの基本サービスの基盤を整えることが優先されるため,リハビリテーションに関しては先送りとなっていたこと,介護保険関連の審議会などにリハビリテーションの専門家が参加していないことが上げられる.
 しかし,介護保険創設が叫ばれる以前にはリハビリテーションの専門家が厚生省と協力し,精力的な検討が行われていた.例えば1989年の厚生省大臣官房老人保健福祉部老人保健課監修の「寝たきりゼロをめざして」,1990年の日本医師会・厚生省大臣官房老人保健福祉部老人保健課監修の「脳卒中リハビリテーションマニュアル」,1991年の日本医師会・厚生省大臣官房老人保健福祉部老人保健課監修の「機能維持期リハビリテーションマニュアル」などがその代表である.

保健・医療・福祉複合体の功罪

著者: 二木立

ページ範囲:P.538 - P.542

 「保健・医療・福祉複合体」(以下,「複合体」)とは,単独法人または関連・系列法人とともに,医療施設(病院・診療所)となんらかの保健・福祉施設の両方を開設し,保健・医療・福祉サービスを一体的に提供しているグループであり,その大半は私的病院・診療所が設立母体となっている.
 「複合体」は1990年前後に初めて登場し,その後急成長し続けている.しかも,2000年度に創設される介護保険制度が医療施設の「複合体」化の流れを加速することは確実である.それだけに,21世紀の保健・医療・福祉システムを予測するうえでも,あるべきシステムを考えるうえでも,「複合体」の詳細な実態調査と医療経済学的分析が不可欠である.筆者は1996〜1998年の3年間この研究に専念し,その成果は本誌連載および最近著として発表した1,2)

介護保険への取り組み—包括的地域ケア支援体制の構築を目指して

著者: 中根惟武

ページ範囲:P.543 - P.545

地域ケアに取り組む足跡
 医療法人寿量会熊本機能病院は80床の整形外科,形成外科を中心とした病院として熊本市北部に1981年4月開設された.開設時,病院の基本理念は「救急からリハビリテーションまでの一貫した医療を行うこと」を掲げた.その後順次,病棟を410床に増床し,ドーム型のリハビリテーションセンターを建設した.当法人は1988年には老人保健施設清雅苑を,1989年には熊本体力研究所を同一敷地内に併設し,医療,保健,福祉が連携しサービスを提供する組織が確立した.
 さらに在宅療養者に対する種々のサービス業務(内容:訪問看護,訪問リハビリテーション,ホームヘルパー派遣,ふれあいランチ配食,老人保険法に基づく機能訓練,在宅介護支援センター,テクノエイドセンター)をきめ細かく実施する体制を整備してきた.1995年にはこれらの事業をすべて統合し,地域ケア支援センターを当法人建物群の中央部に設置した.現在,この地域ケア支援センターが中心となって地域ケアサポートシステム(図)を構築している.そして総合的,効率的に,質の高い在宅支援サービスが24時間提供できる体制とした.ここには医療ソーシャルワーカ(MSW),保健婦,社会福祉士,相談指導員,訪問看護ステーションの管理者などが常勤している.

介護保険への取り組み—介護保険時代に第一線病院として生き抜くために

著者: 守山泰生

ページ範囲:P.546 - P.547

 人口25万人の診療圏で病院群輪番制に参加し,年間1,000名余の救急車搬入患者を受け入れ,主に急性期医療を担っている当院にとって,2000年4月からスタートする介護保険への対応は,第一線病院としての生き残りをかけた重要なテーマであります.
 介護保険実施に向けての政・省令,条例が出揃っていないこと,特に介護報酬の決定がスタート直前になること,改善を求めなければならない問題点も多くあることなど,対応を具体化するための条件がまだ整っていませんが,当院の現時点での取り組みについて,個人的な見解も含めて述べることにします.

介護保険への取り組み—高齢社会をすでに迎えている中規模公立病院では

著者: 田畑正久

ページ範囲:P.548 - P.549

 大分県下には10の医療圏があり,その一つ東国東医療圏(人口約4万人)の中核病院として295床を有するのが当院(東国東郡の4町1村の広域連合の経営)である.平成8年に50床の増床を行い,すべての診療科をそろえて地域の「2次医療の完結」を目指して整備してきた歴史がある.増床時に老人保健施設か一般病床の増床かの議論はあったが総合的に判断して一般病床の増床を行った経緯がある.しかし時代の流れとして自己完結から地域完結へと病院機能の地域での役割(病診連携)が求められている.
 現在,東国東郡は高齢化率30%を超え,当院は高齢者の在宅療養の支援として訪問看護ステーション,在宅介護支援センターを有している.一方,この4年間で地域における老人保健施設,特別養護老人ホームの数は地域基準を満たすように整備されてきている.

介護保険への取り組み—介護保険制度導入に対する懸念と当院の対応

著者: 近藤泰正

ページ範囲:P.550 - P.551

介護保険制度について
 介護保険制度導入まで,後1年たらずとなった.介護が社会問題となって久しい.この数年,介護を家族だけで考えるのではなく,社会全体で支えていこうという気運が生まれている.介護保険制度に関する議論がこれに拍車をかけ,「介護は家族介護から社会介護に」転換しようという国民的コンセンサスができあがりつっある.筆者はこの点ではこの制度を前向きに評価している.
 しかし,昨年度の要介護認定モデル事業などで,保険制度の内容が明らかになるにつれて,制度導入に対し様々な不安を抱かざるを得なくなっている.この制度導入によって,かえって現在の医療の質や介護サービスが後退するのではないかとの不安である.以下に懸念される点を列挙してみる.

介護保険への取り組み—行政・JA(農協)と連携して

著者: 松島松翠 ,   朔哲洋 ,   飯島郁夫

ページ範囲:P.552 - P.553

佐久地域における地域ケアの現状
 佐久総合病院では,現在訪問看護ステーションを6か所,町村から委託を受けた在宅介護支援センターを3か所有している.その他に老人保健施設(94床,昭和62年開設),療養型病床群(40床,平成10年開設)がある.
 昭和63年度より訪問診療・訪問看護に力を入れてきたが,特に後者のほうは順調な伸びを示している(図).しかし登録患者の死亡場所統計では,在宅死の割合は平成3,4年度の80%が最高で,以後はしだいに後退し,平成10年度では48%となった.この原因として,一つは介護者の介護力の低下,もう一つは在宅ケアの対象者の広がりの中での施設ケア適応患者の増加という,二つの点が考えられる.

介護保険への取り組み—療養型病床群における退院援助計画

著者: 渡邊芳美

ページ範囲:P.554 - P.555

 「退院援助」は,療養型病床群にとって今や重要課題となっている.一生活者として社会(地域)に復帰する自信がない,もしくは家にいるよりは病院のほうが何か起きた時に安心という理由で,できるだけ長く「置いてもらいたい」という社会的入院の要請には無視し得ないものがあった.しかし,入院期間の短縮を求められている事実に,介護保険制度の実施という未曾有のできごとが加わり,多くの病院が退院計画の見直しを迫られている.

グラフ

県民に信頼される病院づくり—富山県立中央病院

ページ範囲:P.505 - P.510

富山県立中央病院は将来の医療需要の増大に対応するために,「21世紀の病院,患者本位と高機能の両立」をテーマに平成元年に改築工事を開始.4年に中央病棟が,7年に診療棟が完成.翌8年に母子医療センターを開設して全面改築工事を終了,病床数810床で新たなスタートをきった.↑外来診療棟(向かって右)および中央診療棟 ⇒10階建ての中央病棟,その右手に診療棟

HOSPITAL INDEX

災害拠点病院(地域災害医療センター)一覧・3

ページ範囲:P.512 - P.512

主張

営利・非営利に関する議論の仕方

著者:

ページ範囲:P.513 - P.513

 営利企業体が病院経営に参加することを認めるかどうかということが規制緩和の中でしばしば議論されている.参入に賛成する意見は営利企業体の経営手法を導入することにより医療サービスの質が向上し,利用者に期待されるサービス内容となり,さらに,経済的効率性が達成されるということである.反対意見は,医療提供においては営利という考えそのものが悪であり,医療には営利という概念はそぐわず,さらに,利益が確実とみられる一部の分野のみ営利事業の対象となってしまい,その結果,全体の医療が「食い物」にされるという考えのようである.この双方の意見は両者とも極めて稚拙で,一方的で,断片的な意見であり,かつ,精神論としての非営利の概念と組織体の経営の概念が混在していて社会的に納得できるものではない.
 営利と非営利という概念を明確に組織論と位置づけ,お互いに排除することなく,おのおのの役割を考えてみる必要がある.例えば,社会保障制度の基本的役割の一つに所得再配分機能がある.この所得再配分は,営利組織が納める税金で制度として行うのか,あるいは非営利組織が非課税の事業として福祉や教育などの分野を含めて実践することが期待できる.このことは社会的な存在として営利,非営利の組織体がそれぞれの役割に応じて共存できることを示している.

レポート

病院ボランティアは病院を活性化する

著者: 石垣靖子

ページ範囲:P.556 - P.558

チーム医療を基盤とした医療の実践
 東札幌病院は1983年,ホスピスケアの実践とクオリティオブライフ(QOL)の研究を2本の柱として創設された.中心となったのは大学のがん専門内科で,10年以上基礎と臨床を学んできた医師たちである.がん専門医として,生物医学モデルとして扱われているがん医療の限界を知り尽くしていた彼らは,非生物医学モデル,すなわち社会科学の視点からがんをみようと決意し,新しい冒険に出発したのである.社会科学を実践するということは,「自分たちの社会に対して適切な位置を取り,適切な言説を吐けるスタンスとか能力とか決意とかすべて自分で供給するスタイルを作ること1)」である.患者の病巣だけをみるのではなく,社会生活を営む一人の人間としてQOLを重視したアプローチは,チーム医療が原点になることはいうまでもない.
 東札幌病院は開院当初から組織の運営管理を,「病院の基本理念,及び医療の場がコミュニティであることを,職員および地域社会に浸透させること,医療を行うことは教育と学習に支えられるものであり,その継続が重要であること」におき実践を重ねてきた.その基本理念を「医療の本質はやさしさにある.この実践が最も良く遂行される形態がターミナルケアであり,ホスピスはその象徴である」と規定した.

病院の広報

著者: 平間好弘

ページ範囲:P.559 - P.560

 激しく変化する医療経営環境下にあって,医療機関の広報活動の必要性が叫ばれている.医療機関の広告規制(医療法第96条)は,1987年に国民医療対策本部が中間報告で緩和を検討すると発表.医療審議会でも,患者に対する情報提供の推進が重要課題の一つとされ,広告規制が徐々に緩和されている.
 医療機関の広報活動は,「公共性・公益性」が高く,医療に関する内容を一般住民に知らせることは広報活動の重要な手段であり,情報を提供することは双方にとって大変役立つ方法で,顧客である患者はもちろんのこと,すべての住民を対象とすべきである.

連載 医療事故・医事紛争防止とリスクマネージメント・9

リスクマネージメントの構築(1)

著者: 川村治子

ページ範囲:P.562 - P.565

 今年初めの横浜市立大学病院の手術患者誤認事故は医療に対する信頼を根底から揺がすショッキングな事件であった.しかし,時が経った今考えてみると実に学ぶことが多かった.それは,かつて医療事故に関してこれほど詳細な調査がなされ,報道や報告書という形で情報が公開されたことはなかったという点にある.当初は看護婦間の引継における患者情報の連携エラーと報道されたが,その後様々な組織上,システム上の問題が明らかになった.医療事故も産業界における事故と同様,「システムとヒューマンエラー」に関する学際的研究の対象として積極的に委ねられるべきではないかと思われた.
 ところで,日本の労働災害の発生率は世界最低だそうだ1).わが国の産業事故対策にかけた英知は大きな成果を生んでいる.彼らから多くのものを学べるはずと思っていたが,今回の事故をきっかけに航空や鉄道の安全担当の責任者と話をする機会を持てた.両者は産業界の中でも特に事故の社会的影響の多い領域で,安全運行にかける努力を垣間見た思いがした.また,誤認と産業事故に関して研究している認知心理学の学者は今回の事故報道を聞き,「異常な情報」を判断ミスしていくところは分野は違っても共通していると驚いていた.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第56回 療養型病床群3題

療養型病床群の動向

著者: 高橋公雄

ページ範囲:P.574 - P.575

療養型病床群の許可病床数と整備目標
 療養型病床群は平成4年の医療法改正に基づいて制度化され,また,平成9年の同法改正により有床診療所にも設けられるようになって,平成11年1月1日現在158,401床の許可病床がある.昨年末での各都道府県の介護療養型医療施設としての整備目標の合計では,厚生省の当初目標の19万床を約3万床弱超過した219,721床となっている.北海道と中国・四国・九州などのいくつかの県の合計11県ではすでに開設許可病床数が整備目標を上回っていて,超過県における超過病床数の合計が2万床に達している.
 現在,介護力強化病院からの転換が急速に促進されているとともに,いま進められている医療法改正による急性期・慢性期の病床区分を見越した一般病床からの転換が加速している.いずれ多くの県で介護保険対応の整備目標病床数を上回ることは間違いない.

湖東病院

著者: 猿原孝行

ページ範囲:P.575 - P.577

 湖東病院は昭和56年に当初は68床の一般病院として開設された.その後急速に進む高齢化という時代を背景に昭和57年に116床に増床し,昭和62年にトータル305床の特例許可老人病院となった.現在の内訳は,236床の療養型完全型と改築を控えている42床の介護力強化型になっている.
 療養型病床という考え方が明示されたのは平成5年のことであった.その当時は305すべてが特例許可老人病院の介護力強化型の(I)を選択していたが,日頃より昭和23年に制定された病院法に根拠を置く既存の病室の面積は高齢者の看護,介護に手狭であると感じていた筆者にとって,この法案が提示されたことは,渡りに船という感じであった.

社会福祉法人信愛報恩会信愛病院

著者: 町田守彦

ページ範囲:P.577 - P.579

 社会福祉法人信愛報恩会の信愛病院は,戦前から戦後にわたり,生活困窮者の結核治療に専念し社会に貢献した後,昭和30年代前半から約20年かけて成人病病院に転換し,施設の不燃化も同時に達成した.
 同時期に構内では特別養護老人ホーム,デイケアセンター,在宅介護支援センターおよび有料老人ホームなどの諸施設を併設し,高齢化社会における医療・福祉の融合化を目指す総合的施設となり,当初の目標の第1段階が実現された.

真正会霞ケ関南病院

著者: 佐野賢司

ページ範囲:P.579 - P.581

構想
 従来からあった100床の老人医療施設(介護力強化病院)を4床室を基本とした199床の療養型病床群(完全型)に増改築する.その際には,基準(4床部屋で1床当たり6.4m2)以上の面積を確保することにより患者さんの個々のプライバシーを確保することはもちろん,1)自宅での動線に近い環境を病院内に創出できること,2)生活に根ざしたリハビリテーションを展開し,早期家庭復帰に力をおく施設に相応しい造りとすること,3)地域医療サービスの拠点として,デイホスピタル(老人デイケア)棟,住宅介護支援センターを新設すること,4)1階は保健,予防のゾーンとして広く地域に開放するスペースを併せ持つこと,以上の4点を特に考慮した.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道・6

経営安定のために常に内外にアンテナを

著者: 秋山俊二

ページ範囲:P.566 - P.567

蘇生会総合病院の概要
 蘇生会総合病院の原点は,1952年に遡り,創設者である津田天与が京都の酒処である伏見に診療所を開設したことに始まる.
 以来,その時々の社会的ニーズに応える形で規模の拡充と同時に,先端のME機器の導入を積極的に進め,他方医療従事者の医療知識・技術の研鑽を図り,ハイレベルの医療システムを実現した.地域の中核病院として,医師会をはじめ各関係機関からの評価は高い.

看護管理・15

院内教育—2.自己教育力と自己評価能力を高める

著者: 増子ひさ江

ページ範囲:P.568 - P.569

生涯教育の中の継続教育
 人は充実した人生を送ることを目指し,各人が自発的意思で,必要に応じ,自分に適した方法を選んで,生涯にわたって学習していくことを求めている.それを助けていくこと,そして学習を助けるすべての教育を統合していこうとするのが生涯教育の考え方である.
 当院では,専門能力の向上,質の高い看護の提供,そして自己を限りなく成長させていくという目標に向かって,職場内教育,段階別集合教育,個別のニーズを支援する院外教育を組み合わせて構造化している.当院の継続教育そのものは生涯教育の一部分であるとみなすことができる.

Principle 病院経営・6

ハイリスク・ローリターン経営

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.570 - P.571

 経営戦略とは,過去と現在を踏まえつつ,未来における病院の姿を具体的にイメージすることである.したがって,経営戦略策定とは,過去と現在だけを扱う経営分析でもなければ,希望や理想だけを並べたてるものでもない.その病院が所在する地域で築き上げてきた住民との信頼関係,施設や人材といった内部資源,それらが複雑に作用しあって醸し出される組織風土や組織文化,そして,地域人口や産業の移り変わりや医療制度の将来像などの外部環境に関する事柄,それら諸々の要因を勘案して将来のビジョンを策定するのが経営戦略というものである.
 しかしながら,上記に掲げたような要因を一つ一つ吟味し,さらにそれらを統合して将来のビジョンを形作ることは極めて困難な作業といっても過言ではない.おそらく,院内にこの作業を遂行できるだけの能力を持つ人材のいる医療機関はわずかしかないであろう.いきおい,将来の病院の盛衰は院長の直感や志向によるところとなる.バブル以前であれば,病院に対する規制や枠組みが比較的緩やかであったため,病院の経営リスク(経営に失敗する確率)は小さかった.

癒しの環境

気づいてキャッチボール

著者: 奥富恵美子

ページ範囲:P.572 - P.572

 歯科開業当初から,つくづく患者さんとのコミュニケーションがとれていないと,お口の中がしっくりいかない気がしておりました.患者さんにいきなりいろいろ伺うのは難しく,なかなか本音でお話しできるものではありません.そこでなごやかな食卓を囲むため,ちょっとした小物を飾り,会話のきっかけとするconversation pieceを思い出し,小さい,かわいい,センスがよい,珍しい,季節感のある,全体として調和のとれた小物を置くことにしました.話題性もとりいれると探すのも楽しく,反応があるとますますうれしく,結局私どもが楽しませていただいていると気づきます.

民間精神病院はいま—21世紀への展開・17

戸田病院—精神科医療の高次化を目指して

著者: 髙橋正和

ページ範囲:P.582 - P.586

 当院は埼玉県の南部,荒川を隔てて東京都に接する戸田市にある.東京オリンピックの舞台となった戸田ボートコースの河畔に位置し,西に富士の麗峰を望み,四季折々の変化に富む風景に恵まれ,気候温暖で,精神疾患の療養には絶好の土地である(図1,2).

短期連載 病院マネージメントからみた平均在院日数短縮法・4

平均在院日数と看護業務量の関係

著者: 加藤尚子 ,   堀口裕正 ,   長谷川敏彦

ページ範囲:P.587 - P.590

 これまで数回にわたり,「平均在院日数を短縮する」というテーマに沿って,短縮対策の重要性,短縮への取り組みステップ,戦略決定支援の数値モデルなどを提示してきた.日本の病院でも現在は,在院日数を短縮する強いインセンティブが働いており,様々な手段が講じられていることはすでに述べたとおりである.
 在院日数が短縮すると,それに伴い労働力の集約性も高まるであろうことが予想される.インタビューを行った病院においても異口同音に,診療機能や看護力の強化が短縮の要であると強調している.しかし実際には,平均在院日数と医療従事者数とはどのように,どこまで関連しているのだろうか.さらには,日本の病院の在院日数は,現状の労働力でもってどこまで短縮が可能なのだろうか.例えば,病院の主要な労働力となる看護婦数については,現在でもOECD諸国の平均数に達していないのである.

特別企画 『介護保険時代』における地域リハビリテーション・2

〈シンポジウム〉地域リハビリテーションと介護保険—われわれは何をするべきか

著者: 石川誠 ,   早田英子 ,   山本和儀 ,   米田睦男 ,   村上重紀 ,   大田仁史

ページ範囲:P.593 - P.605

 大田(司会) まず,今日のシンポジウムの大枠を申し上げます.最初に,介護保険のからみでリハビリテーション(以下,リハと略)がなぜ大切か,どう位置づけられるか,を議論します.次に,介護保険制度が始まりますと,いうならばご本人,ご家族が申請して調査云々へと流れますが,その流れのそれぞれの段階でリハがどうかかわっていくのか,あるいはそこにどういう問題があるか,などを話し合っていただきます.そして,最後に問題点を整理したいと思います.
 地域リハ活動の大きな枠組みとしては,直接的支援活動,組織化活動,教育啓発活動などがありますので,介護保険もこの枠組みの中で議論ができます(表1).

医学ごよみ

6月—June 水無月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.607 - P.607

今月も特別な日を3日選び,その日に関する歴史的なことを述べる

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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