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雑誌目次

雑誌文献

病院58巻9号

1999年09月発行

雑誌目次

特集 改めて癒しの環境を問う

【座談会】改めて癒しの環境を問う

著者: 髙柳和江 ,   長澤泰 ,   星和夫 ,   広井良典

ページ範囲:P.818 - P.824

 広井(司会) 本日は「改めて癒しの環境を問う」というテーマで,医療界を越えて多くの方が関心を持っている「癒しの環境」についての座談会を始めさせていただきます.
 まず髙柳先生から,最初に全般的な一言をお願いします.

癒しの環境の評価と改善—施設環境評価マニュアルについて

著者: 筧淳夫

ページ範囲:P.825 - P.828

「施設環境評価マニュアル」作成までの経緯
 医療施設の施設基準については,医療法をはじめとして医療法施行規則,通知,診療報酬,補助基準など様々なもので示されている.例えば,一般病院の病室の面積基準は医療法において,多床室の場合に1床当たり4.3m2以上と定められている.また,療養型病床群の場合の病室面積は6.4m2以上必要であると決められている.
 しかし,これらの面積に関する基準は諸外国の施設基準と比較しても,決して広いといえるものではなく,また実際に医療の現場においても,例えば現状の面積基準どおりでは十分な医療や看護・介護を提供することはできないとの声が数多く聞かれる.すなわち,これらの基準はほとんどの場合minimum standardとして最低限の基準を定めたものであり,本来その医療施設が提供するべき機能を十分に発揮できるだけの性能を保証するための基準を定めたものとはなっていない.

環境デザインと癒しの環境

著者: 清水忠男

ページ範囲:P.829 - P.831

環境デザインの考え方
 「環境」は私たちを取り巻く状況のことだ.地球という自然はもちろんのこと,社会や文化も私たちにとっての環境であるし,住居や都市のように人間が自ら計画し,作り上げる空間状況も環境に他ならない.「デザイン」のほうは,与えられた条件を基に目的の達成を目指して計画し,設計することである.したがって,「環境デザイン」とは,自然や社会などの様々な状況を勘案しながら,人間のための空間状況を計画し設計することになる.
 環境デザインには,次のような段階があると考えられる.1)健康に生きられる持続可能な環境の確保を目指す,2)障害のない便利で快適な環境づくりを目指す,3)心の交流の図れる環境づくりを目指す,4)楽しむことのできる環境づくりを目指す.これらのすべてに配慮してデザインが進められれば理想だが,実際のところはなかなか難しい.そこで,規模の大きい対象の場合には,それぞれの段階に焦点を当てた専門家によるコラボレーションによってプロジェクトを進行させることが多い.

癒しの環境と遊び

著者: 多田千尋

ページ範囲:P.832 - P.834

環境からみた遊びの栄養失調
 客船は,心の癒しの場といってもよいかもしれない.ゆっくりと流れる時間の中で,デッキやライブラリー,レストラン,ラウンジなど,至る所に癒しのスペースが満載だ.
 客船によく設置されているジグソーパズルコーナーも興味深い.お客が行き交う場にジグソーパズルを置くと,何気なく足を止めて,しばしパズルに興じるようになり,一人,二人と自然に人が集まる.挨拶が始まり,会話が生まれ,「今晩よかったらバーでお目にかかりましょう」などと,別れ際に約束を交わすことにもなる.船上で友をつくるための「装置」であったことを船長から聞かされて,その心憎い演出に驚かされた.客船ほど遊びのアメニティに気を使うところはないといえるかもしれない.

光による癒し

著者: 手塚昌宏

ページ範囲:P.835 - P.839

 最近,気持ちを癒す方法として,アロマセラピーやミュージックセラピーの有効性が取り上げられています.また,カラーセラピーも実際に多くの施設で行われています.光が心を癒す(図1)こととしての認識は一般的には低いようですが,実は古代から,世界中で光を使用して身体を癒すことを行っていたようです.
 古代エジプト,ギリシア,ローマなどの古代文明では,光の医学的利用が重要視されていました.はじめて色を治療に使ったのはエジプト人で,日光を使った治療を実証したのはギリシア人だといわれています.ギリシアの太陽神信仰の中心地ヘリオポリスには名高い癒しの宮殿があり,日光が分光され個々の色のスペクトルが特定の治療に使われたとされています.

癒しの音環境デザイン

著者: 上原和夫

ページ範囲:P.840 - P.842

 音は人類の歴史の中で時代や地域を問わず人々の暮らしと密接にかかわり,時として超自然的な存在として魔力をも感じさせ,同時に精神的な安らぎをもたらしてきた.古代社会における治療的儀式には,呪術者の存在とともに音は欠かすことのできないものであったようだ.太鼓を打ち鳴らすことによって痛みを忘れさせるといったペインクリニックのような行為も行われていたと考えられる.このように音は元来癒しとしての役割を持ち,人々の健康とかかわる重要な位置を占めていたことが想像できる.
 われわれ現代人にとって癒しを感じさせる音は,やはり大自然の様々な営みがもたらす渓流の音や鳥のさえずりなどの自然音であり,また伝統的な文化が育んできた寺の梵鐘などの精神性を持つ響きなどであろう.しかしながら今日では,われわれを取り巻く音の環境は機械文明全盛の中で大きく変化し,もはや自然音や伝統的な音を明瞭に聴き取ることは極めて困難な状況にある.とりわけ無数の人工音に取り囲まれた大都市の音環境は,人々に精神的にも生理的にも過度の負担を強いており,音の存在が重大なストレス要因にもなっている.

色彩がもたらす癒し—色彩ワークショップによるメンタルケアの試み

著者: 末永蒼生

ページ範囲:P.843 - P.844

「色彩療法」の試み
 筆者は30年にわたり「子どものアトリエ」を開いてきたが,何より嬉しいのは作品を仕上げた時の子どもの表情が晴々としていることだ.一切,課題も押しつけなければ口出しもしないから,子どもたちの表現は直截だ.その結果,筆者は子どもの色彩嗜好とその心理状態がどのような結びつきを持っているかをじっくりと観察することができたのである.
 このような色彩とメンタリティの関連を研究する分野は海外でも50年ほど前から始まり,現在「色彩心理」という言葉で知られるようになった.筆者自身の調査とこれまでの研究データと突き合わせても,ほぼ共通した結果がみられる.詳細は他の機会に譲るが,例えば色相に関しては赤や黄色などの暖色系は外向的で発散的な心理状態と対応して選ばれる傾向があるし,青などの寒色系であれば集中的な心理状態を反映することが多い.

元気の出る癒しの環境

著者: 朝日俊彦

ページ範囲:P.845 - P.847

 病院で生活をしている患者や家族にとって,どのような環境が望ましいのであろうか.ソフト面では,当然のことながらマンパワーが問題になってくる.そこで,最大の焦点はインフォームドコンセントをどのように実施しているかである.また,医療者がチームとしてどのような変化ある対応をしているかも大切になってくる.以下に筆者たちの取り組みについて述べてみたいと思う.

精神病院における癒し

著者: 徳永雄一郎

ページ範囲:P.848 - P.850

 今日,急速に「癒し」なる言葉が頻繁に聞かれるようになってきた.そのことは,各個人個人が「癒し」を強調せずにおれないほどの「癒しのない日常」にさらされていることを示しているのであろう.
 では何が癒されて,何が癒されていないのか? それは個々で異なる問題であり,そのことを明らかにすることから始められなくてはならない.例えば,Aさんは母親との関係でお互いが理解しあえないまま,その隙間を埋めることができない問題を引きずっていたり,Bさんは職場における狭い職場環境からくる問題を抱えていたりと,各自の問題は大きく異なっている.それだけに,各個人が自分のこの「非癒し」の体験を考えていき,個人の問題点を明らかにしていくことが大切であると,筆者自身は考えている.

諸外国における癒しの環境づくり

著者: 野村みどり

ページ範囲:P.851 - P.853

こどもの病院——癒しの環境づくりに関する国際的動向
 1950年代以降,スウェーデンでは保母のイヴォンニー・リーンドクヴィストによるプレイセラピー,アメリカ合衆国では心理学を専門とするエンマ・プランクによるチャイルドライフなどの子ども支援プログラムが発達してきた.北米ACCH(Association for the Care of Chil-dren's Health,子どものヘルスケア協会,1965年設立),北欧NOBAB(Nordic Children Needs in the Hospital,北欧病院における子どものニーズ協会,1979年設立),欧州EACH (European Association for Children in Hospital,欧州病院のこども協会,1988年設立)などの活動によって,総合的な子どものための支援プログラムや病院環境の整備が,多分野の連携の下推進されてきたことは注目される.
 特に,1977年スウェーデンにおいて,小児医療にプレイセラピーは不可欠なものとして確立したこと,また欧州EACHの設立と同時に,国連子どもの権利条約に基づいて,子どもの病院環境が具備すべき条件を10か条にまとめたEACH憲章が作成されたことは注目される(図).本年は,第6回EACH会議(1999年11月11日〜14日,ミラノ,イタリア)が開催される.

グラフ

総合周産期母子医療センターとして機能を強化—総合母子保健センター愛育病院

ページ範囲:P.809 - P.814

■周産期医療の整備に向けて
 愛育病院は,平成ll年4月,東京都から「総合周産期母子医療センター」に指定された.「総合周産期母子医療センター」は,原則として3次医療圏に1か所整備するとされ,周産期医療での中核的機能が期待されているもの.本年6月1日時点で,全国で17か所,指定を受けている.
 東京都では,周産期医療の拡充,強化を図るために,平成8年の厚生省から示された「周産期医療対策事業実施要綱」に沿い,昭和53年10月から実施してきた「新生児・未熟児特殊救急医療事業」を発展させ,平成9年10月から「東京都周産期医療対策事業」を開始した.現在も,周産期医療の整備を展開しており,本年4月に愛育病院,6月に東京都立墨東病院を総合周産期母子医療センターに指定している.本年6月現在は,地域周産期母子医療センターを含め19施設,NICU病床数は162床になっている.

HOSPITAL INDEX

救命救急センター設置状況・1

ページ範囲:P.816 - P.816

主張

「地域」が動く

著者:

ページ範囲:P.817 - P.817

 来年4月より実施される介護保険の導入に伴う動きが活発化してきている.7月31日に発表された総務庁の「高齢者の日常生活に関する意識調査」によれば,60歳以上の63%が将来の生活に不安を抱いている.不安を感じる理由であるが,「自分や配偶者の健康や病気」が68%,「寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること」が52%,「生活のための収入」が26%であった.今後の高齢社会対策としては,「収入の保障問題」と「健康・介護問題」が政治的にも社会的にも急激にクローズアップされてくる.
 介護保険制度の導入は,現在の低迷している経済界にも大きなインパクトを与えている.シルバー産業の周辺事業としての各種開発,また直接的な介護サービス事業体としての大手異業種の参入などは驚くべきことである.また,現在通常議会が開催されている各市町村においては,介護保険料の問題,また介護サービスの提供など,住民の最も身近な問題として真剣に議論されている.介護保険の実施に伴う介護給付費が10月に厚生省より示されるが,介護給付費が示されたとたん「地域」が大きく変化してくるであろう.

レポート

在宅総合ケアセンターの機能と活動

著者: 高橋紀子

ページ範囲:P.854 - P.858

 1周年を迎えた「在宅総合ケアセンター近森(以下センター)」(図1)は,高齢者および障害者の総合的な在宅ケア支援を目的として,平成10年5月に開設された.
 構想から7年,本格的準備期間2年余を経て実現した当センターの開設は,「医療サービスと福祉サービスの統合」による「一元的なサービス提供」を実践するためであった.1年を経過し,しかもかなりあわただしい1年間であったが,開設目的にかなった活動の第一歩を踏み出せたかどうかを振り返り,これからの方向性を探っていきたい.

病院ボランティアの提案—東札幌病院・3

共に過ごす・3

著者: 斉藤悦子 ,   石垣靖子

ページ範囲:P.859 - P.859

病院の長い夜—ナイトシアターは最も小さな映画館
 当院のボランティア活動に,大学生や仕事を持った人の参加が増えてきたのは平成8年頃からである.彼らの活動は必然的に夜間が中心となり,当初は夕暮れの人恋しくなる頃に患者の傍らにいて大きな慰めを運んでいた.その中で病院の長い夜に気づいた彼らはビデオ上映会を企画し,この会はナイトシアターとして4年目を迎えている.
 最初はテレビ画面を使用していたが,多人数で見るには画面に制限があり迫力にも欠けるため,ビデオプロジェクターに切り替え,現在に至っている.今や月2回のナイトシアターは患者たちにとって夕食後のかけがえのない交流と娯楽の場になっており,時には家族や面会者とともに涙や笑いを共有している.担当のボランティアにとっては作品選びが悩みどころだが,参加した患者に希望を聞いたり,反応をみながら選択しているようだ.洋画では人生ドラマのようなものや,ストーリーが明確なハリウッド的エンターテイメント,邦画では寅さんのような人間味溢れるものが好評だという.

病院管理フォーラム リスクマネジメントの実践・2

武蔵野赤十字病院におけるメディカルリスクマネジメント(2)

著者: 三宅祥三

ページ範囲:P.860 - P.861

(8月号より続く)
リスクマネジメント体制をどのように構築するか(承前)
 インシデントレポートは原則として自主的に提出してもらうことにしているが,各科の部長をリスクマネージャと位置づけて,問題のある医療行為については部長が医局員にレポートを書くように促して欲しいと依頼した.しかし,最初の3か月はほとんど提出がなかった.そこで,筆者が部長会で「インシデントレポートの提出がなくて,患者からクレームがきた場合には,担当部長の管理責任を問います.ですから,各科の部長は医局員の医療行為を十分に把握して,問題がある場合はレポートを書かせるように指導して欲しい」と依頼した.また,個人を責めないことも強調した.さらに,いろいろなルートから筆者に情報が入ると,筆者が直接担当医に連絡し,インシデントレポートを提出するように依頼した.そのような状況のなかで,少しずつレポートが提出されるようになっていった.とりわけ,一つの科のリスクマネージメント委員会のメンバーが熱心にレポートの提出を促してくれた.これが呼び水のような働きをしたのか,次第にレポートの提出量が増えてきた.これは医師たちの医療事故防止に対する意識が少しずつ高まってきた証拠であろうが,レポートを書くことの意義を理解してくれてきている証でもあり,レポートを書く心理的負担が少しずつ軽くなってきたのではないかとも思い,スタッフ各位に感謝しているところである.

看護管理・18

カンファレンスの持ち方—3.在宅ケアに関するカンファレンス

著者: 山内恵美子

ページ範囲:P.866 - P.867

 武蔵野赤十字病院では15年前より,訪問看護を開始している.ここ数年,医療施設の機能分化が進み,在院日数短縮の取り組みは,厳しさを増している.そして,在院日数短縮を目指す医療提供者側と,「退院は治ってから」と考える患者・家族との間にはギャップが生じている.患者・家族が納得し,安心して在宅でのケアを受けられるようにするためには,患者を取り巻く専門職のそれぞれが意志疎通を図り,協力体制を高め,患者・家族を支援していくことが求められている.
 現在,当病棟で在宅ケアに移行していく患者には,図に示すように「病棟カンファレンス」,「専門職による在宅ケアに関するカンファレンス」,「退院面談」を設け,スムーズに退院できるよう努めている.以下に各カンファレンスを紹介し,その運営方法,今後の方向性を考えてみたい.

病院管理フオーラム Hospital Administratorへの道・9

病院マネジメントのリエンジニアリング

著者: 山本展夫

ページ範囲:P.862 - P.864

北摂病院の概要
 医療法人仙養会北摂病院は大阪府北東部・高槻市に位置する.人口約77万人の大阪府三島2次保健診療圏において,自院の役割をコミュニティ病院と位置付け,自己完結ではなく連携により,この地に理想の診療圏を構築することを目的に病院活動を展開している.故初代院長が医師会長として当地域へ3次救命救急施設を創設するため尽力した経緯から,当地域の救命救急センターおよび医師会との関係も深く,さらに約3kmの距離にある大阪医科大学とも,臨床研修を受け持つなど密接な関係にある.
 許可病床数は217床,標榜診療科目9,新看護2.5:1(A)看護補助10:1,平均在院日数14日と名実ともに一般急性期医療に特化した病院である.さらに,平成9年8月には開放型病院の承認を受け,現在登録医300名を超えるまでに発展した.内部的には病院長の提唱するチーム医療の実践をとおし,グローバルスタンダードの評価に耐え得る医療の質を確保すること,また先進性とオリジナリティを信条とし,教育研究活動も積極的に行っている.

Principle 病院経営・9

レントゲングラフ法(3)

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.868 - P.869

 前回は,レントゲングラフ法(以下RGという)の最もプリミティブな利用法として,期間比較法について説明した.期間比較法はどんな病院でもやる気になりさえすれば利用可能なRG利用法である.しかし,それだけではRG本来の利用価値を十分に生かしきれているとはいえない.RG本来の利用価値は,他の医療機関とその形状を比較してはじめて見いだすことができるのである.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第59回

国立がんセンター中央病院

著者: 柳下敏男 ,   佐藤精二 ,   今田栄二 ,   勝畑良一 ,   高橋敏行

ページ範囲:P.870 - P.876

基本計画の経緯
 国立がんセンターは,築地(東京都)キャンパスの中央病院(写真1)に病床数600床,柏(千葉県)キャンパスの東病院に病床数425床の規模を持つ,国内のみならず広く世界にも知られたナショナルセンターである.
 1962年開設以来,診療,研究,教育の面で治療成績の飛躍的向上,新しい診療・治療法の開発と普及,発がん機構の解明など,数々の成果を上げてきた.また,わが国のがんをめぐる情勢は,この間医学的にも社会的にも大きく変化を遂げてきている.

院内感染対策・3

聖路加国際病院における院内感染管理システム—感染管理看護婦(ICN)の立場から

著者: 柴田清

ページ範囲:P.881 - P.884

 前号までに,聖路加国際病院の感染対策について述べられたので,今回は病院の感染防止の方針の中で感染管理看護婦としてどのような活動をし,院内での位置づけと役割について述べ,感染管理看護婦が活動していくための環境にも言及したい.

癒しの環境

より高いクオリティ・オブ・トイレット(QOT)

著者: 岩澤晶彦

ページ範囲:P.877 - P.877

癒されるトイレ
 最近トイレに関する話題が多くなってきている.それは誰もが毎日使用するトイレに関して,なんとかクオリティの高いものに持っていこうとする証だと思われる.そこで,どのように,より質の高いトイレづくりをしていくかに関しては,5W(when, where, who, why, what)を考えなければならない.
 さて,医療において「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」はよくいわれているが,筆者は「クオリティ・オブ・トイレット(QOT)」を提言したい.病院のトイレに関して,患者は体のみならず心が病んでいるので,癒されるトイレでなければいけない.そういう面では当然ハードの面とソフト面の両方,そしてヒーリングというファクターを大切にして,よりクオリティの高いトイレづくりが必要となってくる(図1).

早期退院計画・14

さらなる患者サービスの向上を求めて—入退院計画の明確化と経営改善への取り組み

著者: 岡井清士 ,   福島勝二郎

ページ範囲:P.878 - P.880

 東京都立広尾病院は,都立14の病院の中でも百有余年の伝統を有する屈指の病院の一つである.現在500床で総合診療基盤の上に3次救命救急医療,心臓病医療,公害など呼吸器医療および伊豆・小笠原諸島の島嶼医療の4分野を中心とする高度専門医療を提供している.
 当院は,東京都渋谷区に位置し,東京区部の西南地域の中核たる病院である.その運営理念は,第1に医療の原点ともいうべき,救急医療に最重点を置く.第2に患者中心の医療を推進する.すなわち診療の質はもちろんのこと,病院の居住性,職員の接遇態度などの人的・物的環境にも配慮する.第3に医療ニーズの本質を的確に把握し,その変化に適切に対応する.第4に地域医療との連携を強化する.第5に厳しい社会経済環境のもとで病院運営に求められている経営努力を推進し,収益の向上,経費の削減などを図り,健全な経営に努める.第6に現代の医療はチームワークによっている.各職種との総合力を発揮させる.といったものである.

特別企画 『介護保険時代』における地域リハビリテーション・5

介護保険と保健・福祉

著者: 浜村明徳 ,   大川嘉子

ページ範囲:P.885 - P.891

 大川(司会) 私は県の保健婦としていろいろと地域保健活動に携わってきました.昭和58年(1983)の老人保健法施行当初は,市町村の保健,福祉,医療関係者とともに老人保健関係の各種の事業を展開してきました.事業開始当初は機能訓練や脳卒中の障害のある寝たきりの高齢者の訪問指導など,障害を抱えている人たちにどう対応するか,生活や家族の問題まで抱え込まなければならない大変な活動で,大いに戸惑いました.そこでは,福祉や医療関係者,市町村関係者と時間をかけて議論し,活動を展開してきました.
 この老人保健法に先立つ昭和53年(1978)に,長崎県リハビリテーション協議会(以下,長崎リハ協議会)が発足し,高齢者や障害者に対する地域リハビリテーションやケア活動のありようが模索されはじめていました.県としても老人保健事業を全県下に進めるに当たり,長崎リハ協議会に指導をお願いして平成9年度まで事業を実施し,当然のように事業の進め方や,高齢者および障害者へのかかわり方なども含め県内の地域リハ活動を長崎リハ協議会とともに進めてきました.

データファイル

「抑制」についての考え方とその現状・2—「老人の専門医療を考える会」全国アンケート結果の分析より

著者: 中川翼 ,   大塚宣夫 ,   吉岡充 ,   平井基陽

ページ範囲:P.892 - P.894

 質問7)車いすから立ち上がらないように腰にベルト(ひも)をつける
〔回答〕

医学ごよみ

9月—September 長月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.895 - P.895

□19日 蘭方医たちの愛した外科医
 蘭医学を学んだ江戸時代の医師たちは,パレ(Ambroise Paré,1510〜1590)の外科学より一段と進んだハイステル外科学を学んでいた.これはハイステル(Lorenz Heister,1683〜1758)の外科学教科書が,19世紀前半に数多く(約20冊)日本語に翻訳されていたためである.
 ハイステルは1683年9月19日,ドイツのフランクフルトに生まれ,ギーセン(Giessen)大学に入学し,後にヴェツラー(Wetzlar)大学に移って医学部を1706年に卒業した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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