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雑誌目次

雑誌文献

病院59巻11号

2000年11月発行

雑誌目次

特集 医療専門職の需要と供給

医療技術職の需要と供給—臨床検査技師/理学療法士/作業療法士/栄養士・管理栄養士/視能訓練士/臨床心理士/臨床工学技士

著者: 原文子 ,   中屋久長 ,   荻原喜茂 ,   有馬克彦 ,   小島ともゑ ,   塩山二郎 ,   金子岩和

ページ範囲:P.926 - P.936

 日本臨床衛生検査技師会は毎年,会員の動向を調査するとともに,臨床検査技師養成施設の協力を得て,新卒者の就職状況についてアンケート調査を実施している.この結果から現状と今後について考えたい.
 医療情勢が大きく変革し,医療環境が厳しくなっている昨今,臨床検査技師の需要も例外ではない.これまで臨床検査技師は総合病院,一般病院,大学病院などが主な勤務先であり,平成11年度調査では,当会会員(会員数46,926名)の病院群勤務者は74.0%になる.次いで多い検査所などが12.2%である.

医師の人材市場—流動化しつつある医師のリクルート状況/数量的充足で解決されない医師の供給/メガコンサルタンツにおける医師の需給の変化/医師の人材市場の現況と今後の展望/全国自治体病院協議会における医師斡旋の現状と課題

著者: 井関敏哉 ,   巽裕一朗 ,   田中里沙 ,   宮崎敬二 ,   戸澤一光

ページ範囲:P.937 - P.943

医師の求人状況
 近年,病院などの医師の募集は確実に伸びている.医局人事を主導にしながらも,質・量の両面でニーズを満たしきれない不満から,民間業者などの仲介による医師の独自確保を医師採用の大きな柱の一つにしてきているのだ.(株)日本医療情報センターに寄せられる医師の求人状況を見ても,1990年代後半から伸び始めている.
 中でも,特に注目すべきは地域別の求人状況の変化である(表1).以前は都市部における求人が中心だったが,大都市を中心に売り手市場だった医師の需給関係が逆転しつつあり,今や医師の充足度は地方都市にまで広がりつつある.特に首都圏,東京の求人割合は激減しており,逆にその周辺の関東地方,または東北地方の求人割合が高くなっている.

日本看護協会が認定する専門看護師・認定看護師の現状

著者: 岡美恵子

ページ範囲:P.944 - P.947

 近年のわが国における少子・高齢化や疾病構造の変化などがもたらす健康問題は多様化・複雑化しているが,このような現状にあって,保健・医療・福祉の現場で適切に対応できる看護職が強く望まれている.日本看護協会(以下,本会)は専門職能団体として,このような社会的期待に応え得る方策について討議を重ねてきたが,その一つが専門看護師・認定看護師制度の制定である.
 この制度は,看護職として優れた人材を社会に送り出し,看護ケアの質を向上させることを目的にしており,1987年に検討を開始した.検討に当たっては,その役割,必要と考えられる看護分野,教育水準,教育カリキュラム,認定の仕組みなどが審議され,専門看護師は1996年から,認定看護師は1997年から認定を開始した.制度の検討開始から約10年を要したこととなる.

〈資料〉職員雇用に関する法律と病院

ページ範囲:P.948 - P.949

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部改正に伴う留意事項について
(健政発第1290号,健医発第1634号,医薬発第1331号,平成11年11月30日)

グラフ

公立病院設立の原点に立ち返つた医療を展開—大津市民病院

ページ範囲:P.913 - P.918

 大津市では市制100周年記念事業の一環として,施設・設備の老朽化が進んでいた大津市民病院の全面的な増改築を計画.1992年にマスタープランを作成し,1996年10月の本館の新築工事に着工したのを皮切りに,約4か年にわたり工事が行われ,2000年6月の第3期工事の終了をもって増改築事業は完了した.

HOSPITAL INDEX

エイズ拠点病院・6

ページ範囲:P.920 - P.920

特別寄稿

医療施設複合化の経営的・財務的効果の研究—南カリフォルニアの二つの「複合体」の現地調査を中心に・2

著者: 足立浩

ページ範囲:P.950 - P.959

(10月号より続く)
非営利医療企業の「地域貢献活動」
 シャープおよびCHWSCはいずれも,非営利医療組織に特徴的な地域貢献(コミュニティ・ベネフィット)活動(community benefit activ-ities,以下,原則として「地域貢献活動」と略)に取り組んでおり,それは非営利病院の免税特典の根拠となっている.それは,現在では,1994年9月に署名され制定されたカリフォルニア州上院の法律SB697(California Senate Bill 697 legis-lation)の諸規定に則って実施されている.
 CHWSCの(シスター)キャロル・パデイーラ氏(支部副理事長,ミッション・サービス担当)によれば,SB 697の規定では,民間非営利病院は地域貢献活動に関して,①3年ごとにニーズの評価を行うこと,②毎年,地域貢献プランを作成または更新すること,③毎年,そのプランのコピーを州保健計画開発局(Office of Statewide Health Planning andDevelopment, OSHPD)に提出することが義務づけられている.

患者家族滞在施設設立の経緯と課題・2

著者: 松谷美和子

ページ範囲:P.960 - P.964

(10月号より続く)
 専門の高度な医療を提供できる病院に遠方から治療に来る患児とその家族にとって,宿泊場所探しや,宿泊費,交通費,二重の生活費などの経済的負担や,家庭を離れることによる精神的負担などの問題があり,患者家族滞在施設(以下,ハウス)の構想に結びついていった.前回は,米国におけるハウス設立の経緯と,わが国にも広がったハウス設立活動について述べた.今回はハウス設立・運営の課題などについて述べる.

レポート

米国の病院における資金調達の歴史と現状

著者: 松原由美

ページ範囲:P.965 - P.970

 わが国の病院の内訳をみると,1998年における全国の病院9,333施設のうち,民間病院が7,456施設と全体の約8割を占め,医療供給の中核を担っていることがわかる.
 病院経営が苦しいといわれ始めて久しく,このような中,民間病院の資金調達における選択肢の少なさが問題視され,多様化を望む声も聞かれる.

癒しの環境

地域に開かれた健康情報ライブラリー—自ら求め知る癒し

著者: 西村昭男

ページ範囲:P.971 - P.971

 情報は「癒し」の基本要件
 規制緩和,情報公開,自己責任は現代の重要なキーワードである.わが国における対応の遅れは,決定的な局面に至る危険をはらんでいるが,これは医療の場でも例外ではない.
 ヒポクラテス以来の伝統的なパターナリズムは,全面否定すべきではないとしても,今日の「サービス業」としての医療のあり方に馴染みにくいことは確かである.受療者の知る権利,自己選択権を保障するうえで,医学/医療情報の提供,開示における障害をさらに取り除くことが必要である.

病院管理フォーラム 看護管理・32

ケアマネジャーの役割と現状—居宅介護支援事業所を持つ病院で

著者: 桃井妙子 ,   後関光子 ,   斉藤美知子

ページ範囲:P.972 - P.973

 介護保険のスタート
 介護保険制度が本年4月から施行されて以来,5か月が経過した.ケアプランを作成するだけだったそれ以前の数か月も加えれば,既に10か月を超えていることになる.医療だけがすべてを覆っていた時代から医療と介護の時代に変わるということには大きな意味を見いだしたかったし,3月末まではその期待感が続いていた.
 しかし,実際に介護保険制度が始まってからは暗い話題が次第に増して,まだ半年なのに将来の展望が予測しにくくなっている.ここでは特に,病院に併設された居宅介護支援事業所で仕事をするケアマネジャーの立場から,現場の諸問題を検討してみたい.

Hospital Administratorへの道 part 2・11

競争力あるS & S (システム&サービス)

著者: 徳田憲治

ページ範囲:P.974 - P.976

 礎となっていること
 社会に出て医療畑で勤務を始め,はや四半世紀が経過しようとしている.事務としては患者との接点の多い医事課から勤務スタートができたこと,また最初の病院で現場主義,患者主義を約9年間にわたって徹底して教え込まれたことが,現在の自分の考え方,発想の礎となっていると思う.また,総務,管理部門を経験した次の病院での約10年間では,病院トップの意志および性格がいかに病院経営に大きな影響を及ぼすかという点,また,できるだけ多種多様な人脈(人的ネットワーク)を持ち,活用していくことも管理者としての一つの資質である点を学ぶことができた.

病院ボランティアの提案—東札幌病院・17〔最終回〕

病院の四季・3—「快」の環境を創りだす人々

著者: 斉藤悦子 ,   石垣靖子

ページ範囲:P.977 - P.977

 手作りのクリスマス会
 11月も半ばになると,ボランティアコーディネータからクリスマス委員会結成の案内が各セクションに回ってくる.病院で行われる四季の行事の最後を飾るクリスマス会の準備が始まるのだ.クリスマス会は開院以来継続し,患者さん,ご家族はもとよりボランティア,職員もともに参加し,楽しむ行事の一つとなっている.まず全職員から寄せられた善意のクリスマス基金は,ボランティアがアイデアを凝らして当日のささやかなクリスマスプレゼントとなり,サンタクロースから一人ひとりの患者さんに手渡されることになっている.入院しているすべての患者さんに職員の手づくりのクリスマスカードが準備され,プレゼントに添えられるのも例年のことになった.
 12月22日クリスマス会の当日は,病院全体の空気が朝から華やぎ,なんとなくウキウキしたムードの中で飾り付けが始まる.しばらく前から用意されたクリスマスツリーの電球が点滅する中,ボランティアたちは夕刻から始まるショータイムの準備で忙しそうだ.

Principle 病院経営・23

病診連携の枠組み(4)

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.978 - P.979

 連携スキームの本当の基盤
 都会では,専門性を前面に押し出した医療機関と高機能の医療機関との連携の仕組みができつつあるように思えるが,この現象は,決して行政の意図する政策の効果として現れたものではないように思える.そうではなくて,情報や選択肢を豊富に有し,加えてニーズの多様化した都市住民の厳しい選択の眼に耐えられるよう医療機関が生き残りをかけて自発的に選択した結果である.
 筆者の日頃のコンサルテイング活動や研究活動から経験的に知り得たところであるが,医療機関同士の連携を進めるということは,患者が自らの意志で医療機関を移動するものであり,そこには医師と患者の強い信頼関係が存在し,さらに患者を送る側の医師と患者を受ける側の医師との間にも強い信頼関係が必要条件として存在していなければならない.さらにいうと,医師と医師の間の信頼関係も,単に同業者,同窓,趣味仲間などといったことでは足らず,プロフェッショナルとして双方の技量を認識しあったうえでの信頼関係でなければならないようである.

連載 事例による医療監視・指導・11

医療事故を防止するために

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.980 - P.981

ヒヤリ・ハット体験
 原稿の入ったフロッピーディスクを速達で医学書院へ送るために郵便局へ行って,戻ってみると,原稿の入ったフロッピーディスクがワープロの上に残っていました.そうすると送ったフロッピーディスクは何だったのだろう,ということになります.締め切りが迫っていて,早く送らねばという思いと,ようやく原稿を書き終えた安心感からくる気の緩み.速達の切手を貼って宛て名を書いた封筒を用意し,急ぐあまりそこにあったフロッピーディスクを封筒に入れて封をして郵便局へ急いだのです.原稿の入ったフロッピーディスクには医学書院用と記載していたにもかかわらず,確認を怠り,まさにそこにあった別のフロッピーディスクを医学書院に送るディスクであると疑いもせずに封をしたのです.フロッピーディスクの取り違えならば,医学書院の編集者に迷惑をかけるだけで済むかもしれませんが,薬剤や患者の取り違えは生命にかかわります.
 ヒヤリ・ハット事例といいます.このようなミスがいくつかの病院から報告されています.私も病院を指導する部署にいて,今回のようにフロッピーディスクを間違えたときに,「ああこのような感じでミスが起こるのだな」と,ヒヤリとしました.どんなに急いでいても,いや急ぐときほど,なお念入りに確認行為を行わなければいけないのです.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第73回

都立豊島病院

著者: 岡田新一

ページ範囲:P.985 - P.991

 旧豊島病院は都立の総合病院の一つとして心臓病医療,未熟児医療など高度専門医療を実施するほか,感染症医療,障害者歯科医療などを重点として都民の医療ニーズに応えてきた.しかし,施設全体の老朽化,狭隘化が著しくなったため,都立病院として初めての緩和ケアや精神科医療,リハビリテーション医療の機能を加えての全面改築を行った.
 敷地は板橋区の中央,中山道と川越街道の狭間に位置し,古くからの住宅地,商店街に囲まれている.昭和初期建設の旧病院本館は3階建ての洋館で,白壁に玄関の屋根はコバルトブルーのスペイン瓦,プロポーションのよい窓,うっそうと茂る木々の緑,その住宅的スケールが周辺の町並みに溶け込み,周辺地域の発展の核として地域住民の生活に深くかかわってきたといえる.このことが設計の発想の原点となっている.

医療従事者のための医療倫理学入門

11.Quality of Lifeに関する倫理的考察:使用上の注意

著者: 浅井篤 ,   大西基喜 ,   永田志津子 ,   新保卓郎 ,   福井次矢

ページ範囲:P.982 - P.984

〔ケース〕
 研修医Xがある日,2人の新入院患者を受け持った.ひとりは意識清明だが全身衰弱が激しく寝たきりになっている高齢末期がん患者,もうひとりは全身状態には大きな問題のない中年の細菌性肺炎患者であった.Xは2人の患者のquality of life (QOL)を自分なりに比較し,末期癌患者のQOLは肺炎患者のそれよりも著しく低いと感じた.
 研修医の日常業務は厳しく,どうしても個々の患者にかける労力に差が出やすい.Xは肺炎患者の診療により多くの精力を傾けることにした.そのほうが時間の価値ある使い方だと思った.なぜなら,QOLの高い患者により多くの労力を費やすほうが効率的だと感じたからである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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