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雑誌目次

雑誌文献

病院59巻4号

2000年04月発行

雑誌目次

特集 介護保険と看護

【座談会】看護と介護の共存共栄

著者: 佐藤寛子 ,   杉田美佐子 ,   山﨑八重子 ,   池上直己

ページ範囲:P.286 - P.293

 池上(司会) 本日は「看護と介護の共存共栄」というテーマで,現場で看護と介護の接点になっておられる方々をお招きして,今後のあり方についての忌憚のないご意見をいただきたいと思います.

看護職養成教育の中の介護

著者: 山田里津

ページ範囲:P.294 - P.300

 医療分野における人材養成に関しては,それぞれに法律があり,その法律の下に業務が定められ,資格,身分(免許)が規定されている.
 たとえ隣接する職種であり,その内容にかなりのオーバーラップがあっても,境界線は互いに譲らず,競争原理のしがらみもあるのが事実である.このようなギクシャクとした人間関係では,相互の信頼関係が保たれず,仕事の効率を下げ,病者へのサービスに満足を与えることが困難となる傾向がある.

急性期病院におけるケアマネジメント

著者: 山田ゆかり

ページ範囲:P.301 - P.303

 介護保険の導入は急性期病院の看護職にとって大きな関心事でないことが多い.しかし急性期病院の現状に目を転ずれば,病院経営上の必要性から在院日数短縮が急務である一方で,入院が長期化しやすい高齢患者が今後も増えていくという課題に直面している.
 高齢者の在院日数が長い原因は,糖尿病や高血圧症などの疾患の有病率が高いため,入院中の併発症を起こしやすいことのほか,病状が回復しても機能障害が残り,介護の必要性のために退院が延びることが上げられる.このように入院が長期化しやすい高齢者に対し,在院日数短縮の圧力の中で質を維持した入院診療を提供するには,クリティカルパスの導入などによる診療の工程管理1)の他に,地域の介護サービス事業者との密接な連携が不可欠である.このようなネットワークを構築することにより,病院側は急性期医療終了時の高齢者の受け皿を確保することができ,同時に介護サービス事業者は急性増悪時の受け入れ先を確保することができる2)

急性期病院における看護と介護

著者: 重松節美

ページ範囲:P.304 - P.308

 介護保険制度が動き始め,「介護」という言葉が一段とクローズアップされる2000年を迎えた.
 その介護の専門職としての介護福祉士が1987年に国家資格となり,老人福祉施設や老人保健施設,訪問看護,医療機関などへと働く分野も広がっている.近年では,医療機関においても,療養型病床群や介護力強化病院などに,医療法や診療報酬上で「介護職員」としての配置基準が示されている.一般病院や特定機能病院などでは看護婦以外で看護補助者の業務内容に条件付きではあるが介護業務をみることができる.

看護・介護の職務と資格

著者: 堀和子

ページ範囲:P.309 - P.310

 従前より医療と看護(ここでは介護はこの言葉に含まれていたとする)に画然とした役割分担があったわけではない.治療・診療・看護・介護など,低下したQOL (ADLも含む)を元に戻す行為を呼ぶ言葉は数多く存在するが,いずれにも定義はない.医療技術革新に伴って,各専門技術職の役割分担が明確になってきた一方で,権限委譲が進み逆に区分が曖昧になってきたものもある.今回のテーマである「看護と介護」について区画線引をしろといわれると「極めて難しい」と答えるしかない.
 2000年4月1日より施行される介護保険では,「人員基準」でもって専門職種の配置義務が課せられたが,それら専門職がいかなる職務をこなすべきかについては,一切語られていない.むしろ,共働という福祉の言葉が導入されたことで象徴されるように,「チームケア」という考え方でもって,線引きをあえて曖昧にしようという方向性がうかがわれる.

看護・介護の職務と資格

著者: 佐藤峰子

ページ範囲:P.311 - P.313

 21世紀の少子高齢化にふさわしい高齢者ケアシステムとして,2000年4月より介護保険制度がスタートする.それに伴い,状況がめまぐるしく変化することが予想される.また介護保険制度については,いまだもって論議されていることも事実であるが,サービスの質が要求されることは間違いない.質の向上のために民間企業の参入を認め,利用者が自己選択できるこの制度を考えると,施設で働く者としても受身の姿勢でいるわけにはいかない.
 当院の看護婦が取り組んできたこと,また看護,介護がどのように連携をとりながら業務をしてきたかを紹介するとともに,今後の課題について考えてみたい.

看護・介護の職務と資格

著者: 中尾幸子 ,   北西瑞花

ページ範囲:P.314 - P.316

 2000年4月から,いよいよ介護保険がスタートする.介護保険は,世界一の速さで訪れようとしている超高齢社会において予想される介護の問題を,誰もが直面する社会問題としてとらえ,介護が必要になった時には誰でも適切な介護を受けることができる社会的システムをつくり,介護が必要な状態になっても自分らしい生活を送り続けることができるようにという目的で制定された.
 保険給付における基本的理念として,1)要介護状態の軽減・予防の重視,2)医療との十分な連携,3)被保険者の自由な選択による,被保険者にふさわしいサービスの総合的・効率的な提供,4)民間活力を生かした多様な事業者・施設によるサービスの提供,5)在宅における自立した日常生活の重視と定められている.

グラフ

自分が受けて満足できるサービスを—医療法人愛の会光風園病院

ページ範囲:P.273 - P.278

 JR下関駅から山陽本線で三つめの長府駅から山側の細い坂道を登ると桜や梅などの植木が溢れんばかりに植えられている光風園病院の入口に導かれる.
 光風園病院は「自分が受けて満足できる高度なサービスの提供」を基本理念に,足下を照らす暖かな「光」で導き,新しい「風」を送り続けようという思いを込めた医療サービスを展開している.その思いを具現するように,瀬戸内海に映える陽光と緑風が一杯の病院である.

HOSPITAL INDEX

感染症指定医療機関・4

ページ範囲:P.280 - P.280

レポート

包括払い導入による財務リスク発生

著者: 真野俊樹

ページ範囲:P.317 - P.319

 日本の医療政策体系は,消費者である患者と医療提供者1)と費用補償者である医療保険者の三者間の関係で考えるとわかりやすい(図)2).この関係に当てはめて考えると,患者と医療提供者間の情報の非対称性による不利益は,一般に患者側に発生し,主として医療提供者側の情報公開により解決策が考えられている.ここで,情報の非対称性とは,ある財の需要側と供給側との間に,保有する情報の質や量に差異がある状態のことである.
 日本では1997年から,DRG/PPSのモデル病院試行が始められ,新しい包括払い方式の導入が話題になっている.包括払いには種々の方法があり,中には医療提供者の財務リスクの回避が難しいものがある.つまり,包括払いの形態によっては,医療の不確実性,および情報の非対称性により,医療提供側が財務リスクを負うことになる.この場合,医療提供側の医療機関経営者のみならず実際の診療に携わる医師が,財務リスクに対する認識を持つことが必要になる.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part 2・4

初心に返って見直す

著者: 大西英正

ページ範囲:P.320 - P.321

 赤穂中央病院の概要(表)
 当院は,兵庫県南西部,忠臣蔵の赤穂浪士や塩作りで有名な赤穂市に所在する急性期一般病院である.昭和37年,古城外科として開設以来,地域医療への貢献を第1として,24時間いつでも患者を受け入れるという基本方針のもと,「医療はすべての患者のために」の理念を実践してきた.現在,一般病床数265床(うち療養型病床40床),平均病床稼働率約96%前後,平均在院日数約22日(療養型病床は除,外来患者数約800人(1日平均),職員数約350人であり,また西播磨西部病院群,循環器科・脳神経外科輪番制の第2次救急指定病院である.
 関連施設として,平成3年4月より,世界一の大型放射光施設の播磨科学公園都市(テクノポリス)に古城診療所(無床)を開設,同6年11月に訪問看護ステーションを,同7年10月に老人保健施設伯鳳会プラザ(入所70床)を,同11年10月に介護保険サービスに対応するため,伯鳳会在宅ケアセンターを設立,指定許可を取得した.また,協力施設として,特別養護老人ホーム(入所50床)がある.

看護管理・25

看護管理者の意識変革とチーム医療—介護保険導入を視野に入れての取り組み(2)

著者: 柴田レイ子 ,   折原威男

ページ範囲:P.322 - P.323

 2.ADL向上のためリハビリカンファレンスを実施
 入院患者のADL向上のための方策としては次のようなことを実施した.
 まず,リハビリカンファレンスのいっそうの活性化を図り,医師,理学療法士(PT),言語療法士(ST),ケースワーカおよび看護婦の参加で週1回実施して看護サイドからの患者情報をより多く提供するようにした.また,患者の状況(あせらず事故を起こさないように注意しながら,歩行・ポータブルトイレ使用の介助・車いすでの移動を行う)を把握し病室での療養状況と結びつけ,ADLの拡大に向けて援助することに努めた.そのことにより1日でも早い退院促進が図られた.

経営管理—職員活性化の歩み・7

「地域密着・患者密着」医療を目指して

著者: 辻まち子

ページ範囲:P.324 - P.325

 当院では,毎年提示される病院年度目標の実現に向けて,すべての職種が「かわらなきゃ」の共通言語の下,ベクトルを合わせて行動するという,全員参加の病院運営を基本方針としています.1999年度の病院目標は,「一点集中! 地域密着・患者密着の医療」と定められ,その一環として「すこやかライフ支援室」が設置されました.
 本稿では,その責任者である婦長の立場から,支援室の運営について述べるとともに,一人の看護婦として看護部活性化の軌跡を振り返ってみます.

リスクマネジメントの実践・9

八尾病院のリスクマネジメントの取り組み(4)—リスクマネージャの位置付けと業務

著者: 杉田恵子 ,   原英樹

ページ範囲:P.326 - P.327

 平成9年10月1日に医療の質調整委員会が発足した.顧問2名(医師2名),委員長1名(医師),委員は医師1名を含む7名の合計10名でスタートした.目的は医療事故を未然に防ぎ,全組織的に対応を検討して全職員に啓発していくことであった.同委員会の発足当初は2か月に1度の会議の開催のみで具体的な対応は実施されなかった.そして,平成11年4月1日,リスクマネジメント部会(以下,RM部会と略す)が設置された.RM部会の目的は医療法人医真会の理念を実現するために,危機管理を総合的に分析,実施プランに取り組み,職場での実行を可能とし,グループ全体から地域レベルまでその活動を拡大することであった.

Principle 病院経営・16

部門別原価計算の必要性(3)

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.328 - P.329

 管理可能性という観点から,部門別原価計算を行ううえでは,職種による部門設定を行うことが多くの病院においては合理的であるということを前号で述べた.次に問題となるのは,それぞれの職種が何について管理可能かということである.つまり,収益について管理可能なものは何で,費用について管理可能なものは何かということである.

連載 事例による医療監視・指導・4

定期の立ち入り検査(2)—実査の留意点

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.330 - P.331

 前号では,医療監視の中でも定例の立ち入り検査の際の書類の検査を中心に解説いたしました.少しは参考になりましたでしょうか.さて医療従事者関係,診療・看護関係,管理関係などについての書類関係のチェック後に,病院内を実際に巡回させていただきます.私どもはこれを実査と呼んでいます.通常,それぞれの部署の責任者の方にご案内いただいて,必要があればその都度ご説明をお願いしています.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第66回

スウェーデン地域中核病院2題

著者: 外山義

ページ範囲:P.338 - P.341

 昨年の9月,北欧の医療福祉施設を視察する機会を得た.今回はその中から,スウェーデンの二つの地域中核病院を紹介したい.一つはバルト海に浮かぶゴットランド島のヴィスビィ市にあるヴィスビィ病院,いま一つは首都ストックホルム市北方にあるノルテリエ市のノルテリエ病院である.ともにスウェーデンにおける病院建築設計では最も優れているetv建築設計事務所が設計・監理を担当した事例である.

医療の政策評価・3

「効果」の評価方法と考え方(1)

著者: 田村誠

ページ範囲:P.342 - P.345

 前回は,医療の政策評価の基本的な枠組みについて論じた.今回から,政策評価の具体的な方法や考え方について論じていく.
 前回の基本的な枠組みで,基本的に三つの評価対象(住民・患者の健康状態,医療サービスの質と量,エンパワーメント)を三つの分析視角(効果,効率,公平)から評価するとした.本連載では,「エンパワーメント」以外の二つの評価対象を一括りにし,その二つの評価について(すなわち,「住民・患者の健康状態」と「医療サービスの質と量」),「効果」,「効率」,「公平」の順に論じていく.そして最後に「エンパワーメント」を論じることにする.

院内感染対策・9

病院感染対策のコンセプトとNTT西日本東海病院での取り組み

著者: 大久保憲

ページ範囲:P.346 - P.350

 病院感染防止の基本は,患者の人権の尊重はもちろんであるが,臨床的もしくは実験的あるいは疫学的な裏付けのある科学的根拠(evidence based medicine)に基づいた感染対策で,かつ経済的にも有効な方法でなくてはならない.非科学的で誤った過剰な予防策の実施は,期待される感染防止効果が出ないばかりか,患者や医療従事者に対して有害となり,経済的にも不合理なものとなる.
 今日までのわが国における病院感染対策の実情は,過剰防衛的なところがあり,例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染患者の画一的な個室隔離法や退室後の病室の消毒,ガウンテクニック,スリッパの履き替え,病室入口の粘着マットや薬液マットの設置,高水準消毒薬(グルタラール)の散布や噴霧およびホルマリン燻蒸などがあげられる.

医療従事者のための医療倫理学入門

4.医療現場におけるプライバシーと守秘義務—守秘の範囲について

著者: 浅井篤 ,   大西基喜 ,   永田志津子 ,   新保卓郎 ,   福井次矢

ページ範囲:P.332 - P.334

〔ケース〕
 ある病院で将来のカルテ制度を検討するための話し合いが持たれた.この病院では長年,各科1カルテ制を取っており,患者が受診している診療科の数のカルテが作られていた.
 このような状況下で,ある診療科長が1患者1カルテ制の導入を提案した.患者をひとりの個人として全人的医療を行い,かつ,効率よく医療情報を収集,把握するためには必須であるという主張である.これに対してある科の医師は,「1患者1カルテ制を導入すると,患者のプライバシーが侵害される.患者は主治医にのみ個人的な情報を提供している.一つのカルテになったら他の科の医師もそれを見ることになる.特に中絶歴など主治医以外に知られたくない秘密が,多くの医師たちの目に触れることになる.これでは守秘義務が守れない」と述べ,従来の各科1カルテ制を擁護した.

病院ボランティアの提案—東札幌病院・10

視覚からの癒し・4—好きな絵で病室の壁を飾ろう

著者: 斉藤悦子 ,   石垣靖子

ページ範囲:P.336 - P.336

 日常,私たちは意識するしないにかかわらず,身の回りに居心地のよさを工夫しているものである.家具や調度品,趣味の小物に至るまでその人らしいくつろぎの空間をデザインしているものだ.しかし,病院となると,病室は療養の場としては治療優先の環境であり,生活をする患者に対しての心配りは極めて少ないのが現状である.入院期間の短い急性期の疾患ならいざ知らず,かなり長期に慢性期を過ごす患者には,住(生活)環境が気分や志気にも大きく影響する.生活(暮らし)の装いのない病室の環境に,地域住民の常識的なセンスを持ったボランティアたちは敏感に違和感を感じとる.

癒しの環境

病院にアート

著者: 河西浩司

ページ範囲:P.337 - P.337

 1999年は「ヒーリングアート」という考え方について多方面の方々と頻繁に意見交換をした年でした.それらの多くは,「ヒーリングアート→自然をテーマとした作品→自然に包まれる→自然治癒力→癒される環境」といった図式になっており,その背景には,医学の進歩に多くを頼って病気を直す社会に生きてきた現代の私たちが,それと引き替えに「自然と共生しながら治癒力を高める」という本来的な特性を失ってしまったという想いがあるようです.
 ヒーリングアートと称されるものすべてがこの図式に当てはまらないことも事実です.私的な体験ですが,米国留学中に体調を崩しMRIを使用した検査を受けることになりました.当時の英語力では状況の把握が完全でなかったことから極度に緊張してしまい,筒の中に体が吸い込まれ定位置についた時には,緊張がピークに達していました.ふと目を開けると,目の前に丸く黄色いスマイルマーク(図)のシールが貼ってあり,それに気が付いた瞬間に張り詰めていた気持ちが一気に楽になったことを覚えています.これもヒーリングオブジェの一つと考えてよいのではないでしょうか.

データファイル

平成10年医療施設(動態)調査・病院報告の概況—2.結果の概要

ページ範囲:P.351 - P.357

 2.病院の患者数
 1)1日平均患者数(病院報告,図1)
 1日平均在院患者数は1,393,069人で前年に比べ2,235人(対前年△0.2%)減少し,1日平均外来患者数は2,198,139人で9,314人(同△0.4%)減少している(図1).

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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