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雑誌目次

雑誌文献

病院59巻5号

2000年05月発行

雑誌目次

特集 中小病院—次世紀への挑戦

中小病院の現況と今後の予測—北海道の中小病院を検証して

著者: 竹内實

ページ範囲:P.374 - P.377

 わが国の病院の始まりは,前北海道医師会長吉田信氏の記述から借用すれば,古く聖徳太子の時代にさかのぼるらしい.その後,徳川時代の「小石川養生所」(1722)が病院らしき施設として歴史に残っているとのことである.北海道においては文久元年(1861)に塩田順庵らが函館に「箱館病院兼医学所」を設立,これは官民協力にて建設したものであり,北海道の病院の嚆矢ということとなろう.その後,開拓史の下に函館の他に官立の病院が札幌,石狩,宗谷,幌泉,三石,根室などに誕生しているのに続き各地で公立病院が作られ,明治12年(1979)の北海道における病院数は官立27,公立14の計41であった.翌1980年,北海道に初の私立病院が誕生する.それから約30年後の1913年当時には,全道で公立10,私立130の140病院となり,その頃の全道の医師数は1,068人であったと記録されている(『北海道医師会史』より).
 さて,戦後制定された医療法で病床20床以上を有する施設が病院と定められ,昭和36年(1961)には国民皆保険制度が施行された.さらには老人医療費無料化などの施策による患者数の急増から病床数不足の時代がしばらく続き,わが国の病院数は1990年頃のピーク時に10,000を超え,病床数も少々過剰気味となってきた.

民間中小病院の歴史的考察

著者: 加藤尚子 ,   長谷川敏彦

ページ範囲:P.402 - P.406

 日本の病院医療の特徴の一つとして上げられるのは,民間病院が数のうえで多数を占めること,またそれらの病院の多くが中小規模なことである(図1).医療関係者にも一般の人々にも,「民間病院=中小病院」1)というイメージがあるのではないだろうか.この民間中小病院のイメージは,歴史的に形成されたものだ.
 本稿ではこのイメージを追って,民間中小病院の歴史的な歩みを再編し,それを福岡県下の民間病院の実証研究によって検証する.そして,民間中小病院の今日までの発展プロセスの特徴と今後の方向性を考察する.本稿のタイトルに示した歴史的考察とは,病院の過去を振り返ることで現在を,ひいては未来までを眺める試みである.

次世紀への試み

魅力ある病院づくり—患者主体の医療から魅力ある病院づくりへ

著者: 大澤和弘

ページ範囲:P.378 - P.379

 大澤病院は神戸市の最西端に位置する垂水区にあり,病床数68床で2次救急指定を受け,1日の外来患者数は約350人である.周囲には新興住宅地が多く,医療圏の人口は年々増加の傾向にある.
 開設は昭和56年で,今年で19年目を迎えることとなる.診療科目は,外科,内科,整形外科,脳神経外科,耳鼻咽喉科,眼科で常勤医8名による担当,他は内分泌内科(糖尿病),皮膚科,放射線科など非常勤医による専門科目を設けている.特に大腸肛門疾患は本院の外来,入院,手術件数において多数を占め,その症例数は年々増えている.

患者満足度を上げる

著者: 飯田和典

ページ範囲:P.380 - P.381

 麻生北見病院は,1997年札幌の耳鼻咽喉科麻生病院の分院として,オホーツク地域の中心に位置する人口約11万の北見市に,病床数50の耳鼻咽喉科単科病院として開院しました.1999年4月から口腔外科を併設しましたが,まだ3年未満の新しい病院です.

プライマリケアを追求

著者: 涌波満

ページ範囲:P.382 - P.383

施設紹介
 当医療法人アガペ会北中城若松病院は,内科,精神科,リハビリテーション科を標榜し,総病床数223床(〈内科〉老人療養病床完全型115床,〈精神科〉老人性痴呆疾患療養病床60床,老人精神病床48床:平成12年1月1日現在)を有する病院である.世界文化遺産登録も間近い中城城址を望む沖縄県北中城村の高台に位置し,その療養環境は抜群といえる.
 創設以来12年余り,地域の高齢者の方々に必要かつ十分な医療を提供すべく,変遷する医療・福祉の動向を踏まえ,努力を重ねてきた.療養型病床群の整備を平成9年4月にいち早く完了し,介護保険導入を見据え,ケアマネジャーの育成も着々と進んでいる.

専門医療の特化—急性期医療を推進する

著者: 栄輝巳

ページ範囲:P.384 - P.386

熊本整形外科病院の概況
 当院は熊本市内のほぼ中心に位置し,中心繁華街より約10分程度の距離にあります.さらに当院から5分〜10分程度の間に熊本大学医学部附属病院,熊本市医師会病院,NTT西日本病院があり,病院密集地域でもあります.
 当院は1966年,熊本整形外科病院として42床でオープンし,1988年に改築・増床を行い,204床の高度医療機器を揃えた高機能病院として生まれ変わりました.現在,医療スタッフは,医師17名(整形外科11名,放射線科2名,麻酔科3名,内科・脳外科各1名,非常勤5名),看護婦総数129名,放射線技師11名,薬剤師5名,臨床検査技師7名,理学療法士9名,作業療法士3名などスタッフ総数254名で構成されています.なお,熊本リウマチセンターとしてリウマチ科を併設しています.

地域在宅ケアを支える小規模病院として

著者: 矢島祥吉

ページ範囲:P.387 - P.388

 障害者やお年寄りが,住み慣れた地域で安心して暮らせることを支えるために,保健・医療・福祉が連携して,その人に必要なケアおよびキュアを提供することを当院では「地域在宅ケア」と呼んでいる.小規模病院である当院は,地域在宅ケアにとってなくてはならない急性期病院として生き残り,存在している.

病院デイケアの介護保険への対応

著者: 平木誠一

ページ範囲:P.389 - P.390

 1984年に福井県で初の老人デイケアを開設した.デイケアIIで車での送迎が認められるようになってから通所者が急速に増え,病院の収益に大いに貢献した.介護保険の導入で,通所リハビリテーションとなるデイケアがどのように変わるのか,予測しがたい面もあるが,当院におけるこれまでのデイケアの年度別の通所者数の変動や経済的効果などの推移をみながら,いかに対応しているかを報告する.

事務部の再編成—「病院病」との戦い

著者: 篠塚一子

ページ範囲:P.391 - P.393

「病院病」の発見
 昨年8月,筆者は,医療法人社団レニア会武谷ピニロピ記念きよせの森総合病院(表1,図)の事務部長に就任しました.就任後,「病院の経営を牽引するものは事務部門である」という信念に基づいて,業務改善や様々な戦略の実行に取り組みました.しかし,これらの取り組みは,職員の中にある病院職員特有ともいえる考え方に阻まれ,思いの外に遅滞してしまいました.こうした中,筆者は,一般企業とは異なる病院という特殊な職場が,必然的に職員たちの間に「後ろ向きな考え方」を生み出すのではないのかという疑問を抱きながら職場を観察しました.
 「外来から医事課の人たちにあいさつをしても知らん振りして仕事をしているのはどうしてなのか?」という苛立ちにも似た筆者の質問に対して,病院経験豊富なK氏(当時の総務課長)はしたり顔でこう答えました.「ここは病院だからあまり明るくてもね.お通夜の時のような暗さ加減でちょうどよいんだよ.」

人を育てる

著者: 土井章弘

ページ範囲:P.394 - P.396

 岡山旭東病院は財団法人操風会(創業昭和28年)の事業として,昭和58年に19床の旭東整形外科医院を開院し,現在162床の脳神経運動器疾患を対象とした総合的専門病院として職員210名で運営されている.診療科は脳神経外科,整形外科,神経内科,リハビリテーション科,内科,麻酔科,放射線科循環器科である.平成9年12月には日本医療機能評価機構により一般病院(B)を認定され,認可された8床のICU施設,臓器提供施設,リハビリテーション総合承認施設を擁している.専門性を特徴とした急性期医療と急性期リハビリテーションを担っている.また,訪問看護ステーション(たんぽぽ)を併設し,関連施設として129床のケアミックス「岡山あさひ病院」がある.

公立中小病院の経営戦略

著者: 高雄清人

ページ範囲:P.397 - P.398

公立神崎病院の概況
 公立神崎総合病院は兵庫県のほぼ中央部,姫路から約30km北方に位置する人口約8,700人の神崎町立の病院である.診療圏の人口は周辺3町を合わせて約40,000人,平均高齢化率は約20%である.
 病院の沿革は昭和21年の県立粟賀診療所の開設に始まり,昭和40年に国保直営町立神崎町病院となった.その後の医療需要の増加により5期にわたる建物の増築を経て,平成2年に大規模な新館の増築と旧館のリニューアルを行い,公立神崎総合病院と名称を改め面目を一新した.

民間中小病院の経営戦略

著者: 佐藤純一

ページ範囲:P.399 - P.401

民間病院の将来予想
 近年,医療を取り巻く環境は厳しさを増し,今や民間中小病院はサバイバルの時代に入ったといわれている.おそらく今後は,地域のニーズや特異性,その病院の存在意義や理念,また近隣の病院間での競争関係など,いくつものファクターを考慮することが必要となろう.あるいは諸般の事情からそれらのファクターを受け入れざるを得なくなり,民間中小病院は好むと好まざるとにかかわらずいろいろな機能に分化していくと予想される.
 例えば,受診対象をある一定の分野にしぼり,その分野では大病院に負けないような設備と技術を備えた専門単科病院に特化していくというのも一つの考え方である.一方,在宅医療に重きを置いて,公的介護保険分野の受け皿としての病院を目指すのも選択肢になり得る.

グラフ

「特徴あるオンリーワン病院」を目指して—財団法人操風会岡山旭東病院岡山あさひ病院

ページ範囲:P.361 - P.366

 JR岡山駅より約5km,その名が示すとおり,岡山市の南北を流れる旭川の東岸に財団法人操風会岡山旭東病院はある.同院は1983年に現副院長の土井基之氏によって旭東整形外科医院として診療を開始,翌1984年に40床に増床し旭東整形外科病院としてスタートを切った.1988年に102床への増床に伴い,香川県立中央病院で脳神経外科主任部長を務めていた土井章弘氏を院長に迎え,岡山旭東病院に改称,整形外科に加えて脳神経外科,神経内科,リハビリテーション科などを備えた新体制を確立.その後,162床まで段階的に増床を行い現在に至っている.

HOSPITAL INDEX

へき地医療支援病院

ページ範囲:P.368 - P.368

レポート

病院消費税の実態と問題点

著者: 池澤康郎

ページ範囲:P.413 - P.417

ゼロ・サム・ゲームなのか
 日本病院会の医療経済・税制委員会は,消費税率3%だった平成6年度において,当時の2,477会員病院が納めた消費税についてアンケート調査を施行した.このうち570病院(23%)から有効回答が寄せられた.その結果は表1のとおりである.
 平成元年4月からの3%消費税制発足に当たり,厚生省は非課税診療行為の報酬に0.76%を上乗せしたと説明した.この比率はその後の診療報酬改定の中で不変であるともいわれた.とすれば,表1に示された570病院(その非課税医業収益2兆5,955億9,800万円余で,国民医療費の1割強)が非課税医業収益の中で上乗せ分として受け取った収益分は195億7千万円余だったはずだが,570病院はこれだけでは足りず,実際には414億2,900万円余を納めた.これは1.6%に当たる.われわれはこの結果が全病院の趨勢を反映していると推測し,病院は平均して 1.6-0.76=0.84%の損税となっている旨を厚生省と自民党その他の政党に説明して,0.76%が適正でないと抗議してきた.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part 2・5

医療環境の展望

著者: 戸根経夫

ページ範囲:P.418 - P.419

 医療も社会の仕組みの一つであるが,人口構造の変化や技術革新,情報革新,顧客の期待の増加など社会の変化に伴ってその変革が迫られている.とりわけわが国の財政状況からしても,医療政策上にも強い影響がもたらされることは避けられそうにもない.
 一般社会の変化は想像を超える速度で変化しているようであるが,医療界では医療保険制度の抜本改革の先送りなどにみられるようにいくぶん時間の流れが違うように感じる.これから先に,診療報酬の支払いにも影響が出そうな切迫した危機感を拭いきれないのは思い過ごしであろうか.

看護管理・26

看護部からみた病院機能評価

著者: 上山早苗

ページ範囲:P.420 - P.421

 近隣に国立,公立,市立の大規模病院が立ち並ぶ地域において,内科単科,総床120床の中規模病院である萩原中央病院は,昭和54年(1980)開院以来,地域密接型の病院を目指すと同時に「患者中心の医療」を展開してきた.
 個別の改善活動に始まり,7期にわたる病院改築工事に伴う業務改善,医療法改正・介護保険導入を受けて余儀なくさせられた医療制度改革など大きな医療環境の変化の中で,独自の基盤作りに病院全体で力を注いできた.しかし,開院20年という節目の年を迎えて,それぞれの部門における創意工夫を,思い込みや自己中心的評価の枠にとどめないよう,その方策を探った.そこで,第三者評価を反省や確信の指標に定め,内からみた病院と外からみた病院の違いだけでなく,専門家の目でみた病院そのものの評価を真摯に受け入れようと考えた.

経営管理—職員活性化の歩み・8

「かわらなきゃ」でも変わらないこと

著者: 塩谷泰一

ページ範囲:P.422 - P.423

 これまで各管理職が職員活性化の過程を,1)「かわらなきゃ」の三つの原則,2)コンピュータネットワークの導入は組織風土を変えたか?,3)当たり前のことを当たり前に,4)看護部がかわったわけ,5)災いを転じて福となった!,6)全員参加の部会活動が生み出したもの,7)「地域密着・患者密着」医療を目指して,と題して報告してきたように,確かに坂出市立病院は変革を遂げた.ひたすら日常性に埋没していた職員が,「かわらなきゃ」と意識を覚醒させ,病院再生に向けてベクトルをあわせた結果,1998年度をもって不良債務は解消し,通常の自治体病院としての医療レベルを回復した.しかし,あらゆる面での健全化が達成されたわけではない.基本理念である「市民が安心して暮らせ,心の支えとなる病院に」の実現にはほど遠く,解決すべき多くの問題を抱えている.
 本稿では,「かわらなきゃ」でも変わらないことをとおして見えてくる自治体病院職員のあるべき姿についての私見を述べ,この連載の終わりとしたい.

リスクマネジメントの実践・10

八尾病院のリスクマネジメントの取り組み(5)—医療の質の監査機構活動

著者: 森功

ページ範囲:P.424 - P.425

リスクマネジメントの歪み
 1952年JCAHO (医療施設評価合同委員会)を設置した米国はその後半世紀にわたって「医療・福祉の品質保証」に取り組んできた.しかし,1970年代後半から始まったマルプラティスクライシス(医事紛争の嵐)は,経済的効果を強調するという歪んだ形での「リスクマネジメント」を進めることとなった.すなわち,リスクマネジメントはコストを削減するための科学であるという定義に基づいて行われてきたのである.結果として,背後要因の分析や対応策の検討などのコストを削減しようとするインセンティブには直接結びつかなかった.
 病院および医療機関,保険会社のコスト削減という面での努力はあっても,それは例えば,コストのかかるような患者の受診の抑制に働いたり,在院日数を短縮させるように医師に圧力をかけることとなった.

病院ボランティアの提案—東札幌病院・11

視覚からの癒し・5—世界でたった1枚のバースデイカード

著者: 斉藤悦子 ,   石垣靖子

ページ範囲:P.426 - P.426

 東札幌病院は17年前の開院準備室の段階からボランティアと一緒に開設準備を進めてきた.まさに地域住民とともに作ってきた病院である.開院後すぐ開始したボランティア活動の一つに,手作りのバースデイカードがある.

Principle 病院経営・17

部門別原価計算の必要性(4)

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.428 - P.429

 病院事業の最大の特色は,医療という極めて専門性の高い技術を提供することにある.その技術は現代科学の最先端であると同時に,現代科学をいっそう発展させる原動力ともなっている.また,収支面においても,技術料による収益は病院収益の最大の要素となっているし,技術を提供する主体となっている職員にかかわる費用,すなわち給与費は費用の最大項目である.荒っぽい言い方をすれば,病院経営を論ずる場合,この技術とそれを提供する主体に焦点を当てさえすればよいといえるかもしれないのである.
 そこで今回は,この技術に関する収支の管理可能性を高める手法として技術関連事業の原価計算(損益計算といったほうがbetterかもしれない)について述べることにする.

連載 事例による医療監視・指導・5

院内感染事例

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.430 - P.431

 前月号まで定例の立ち入り検査について解説してまいりました.今月はやや視点を変えて,病院への苦情などを中心に話題を進めたいと思います.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第67回

蒲郡市民病院

著者: 久米正樹 ,   矢永勝美

ページ範囲:P.436 - P.442

自然治癒力を高める環境づくり
 愛知県蒲郡市は風光明媚な三河湾に面し,海を媒介にした新しい環境,文化,経済の交流基地を目指して,街づくりが進められている.ヨットレースで有名なアメリカズカップの日本チームのキャンプ地がおかれ,市民が一丸となってヨット競技を支える土地柄でもある.
 この地の中核病院である本病院は昭和20年以来地域の医療を支え続けてきたが,旧病院の老朽化と高度医療への対応のため,移転新築されることになった.周囲をミカン畑で囲まれた新たな敷地は,南に三河湾に浮かぶ島々,北に緑豊かな山々を望む恵まれた自然環境にある.全体構想にあたってはこの立地条件を生かし,人の五感に心地よく働きかけ,自然治癒力を高める潤いと温かみのある環境づくりを目指した.

医療の政策評価・4

「効果」の評価方法と考え方(2)

著者: 田村誠

ページ範囲:P.443 - P.447

(第59巻4号より続く)
特定評価(承前)
 2.自然主義的方法(naturalis-tic inquiry)
 効果を測定するには一見最適と思われる実験的方法であるが,上のように様々な問題を抱えている.実験的方法に相対する方法としては,自然主義的方法がある1).以下,それについて論じていく.

院内感染対策・10

院内感染サーベイランスのすすめ

著者: 佐竹幸子

ページ範囲:P.448 - P.452

院内感染サーベイランスの目的および必要性
 感染管理の目的は院内感染による疾病率や死亡率を低くし,その状態を維持することにある.したがって,院内感染対策の評価は院内感染発生率でなされるべきである.このような評価を行うためには患者を対象とした院内感染サーベイランスが必須であり,医療施設におけるケアの質を向上させるためにも院内感染サーベイランスは不可欠なものとされている.しかし,わが国では院内感染サーベイランスを実施している施設は少ない.

医療従事者のための医療倫理学入門

5.死の定義

著者: 浅井篤 ,   大西基喜 ,   永田志津子 ,   新保卓郎 ,   福井次矢

ページ範囲:P.432 - P.434

〔ケース〕
 10年来,高血圧と高コレステロール血症で通院中の男性患者がある日,脳死とドナー・カードについて担当医に質問をした.ちょうど,わが国における第1回目の脳死患者から臓器移植が行われた直後であった.患者は自分の臓器を難病で困っている人々のために使い,社会に貢献したいと考えていた.自分の家族にはまだ相談しておらず,家族の気持ちもわからないという.
 患者は担当医に「ドナー・カードを持つことは良いことか」に関して助言を求めた.担当医はどのような事柄を説明し,ドナー・カードの所持についてどう答えるべきであろうか.

癒しの環境

患者が選ぶアートの基準

著者: 林容子

ページ範囲:P.435 - P.435

 病気の床に臥せている患者は自分の病室のためのアートをどのような基準で選ぶだろうか? アメリカで250以上の病院のアートプロジェクトを手がけたASTHETIC社の調査によると,ほとんどの患者は自らの病気を癒すことに役立つアートを求めるとのことである.アートに実際に病気を治す力があればそれに越したことはないが,「病は気から」といわれているくらいであるから,鑑賞することによって病気が治るような気がするものもこれに含まれよう.例えば,薬草をモチーフにして,それぞれに薬草の効用を書き込んだ作品や,今流行りのいわゆるヒーリングやリラックス効果をもたらすものをモチーフにしたもの,あるいは,宗教の逸話で病が癒される話を描いたものもこれに含まれる.
 一般に自然を描いた作品が患者によい影響を及ぼすといわれる.99歳で亡くなった祖父は,生前入院したとき自分の病室に母の撮ったニッコウキスゲの写った山の写真を掛けていた.退院するときに,「この個室にはこの写真が必要です」といい,躊躇する母を説得して無理やり病室に置いてこさせたほどだった.

データファイル

平成10年老人保健施設調査結果の概要・1

ページ範囲:P.453 - P.455

□施設の状況
 平成11年6月末現在の施設数は2,376施設,入所定員は20万7,331人であり,新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)の目標値である入所定員28万人に対して74.0%である(図1).
 平成10年10月1日午前零時現在開設の許可を受けている老人保健施設は2,184施設で,前年に比べ331施設(増加率17.9%)増加している.以下は2,184施設の状況である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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