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雑誌目次

雑誌文献

病院59巻6号

2000年06月発行

雑誌目次

特集 病院としての地球環境問題への取り組み

地球環境と人間

著者: 大久保利晃

ページ範囲:P.470 - P.474

 人類は火を使うことを覚えて以来,生態系の一員から一歩抜きん出ることができた.さらに農耕や牧畜をとおして1万年ほど前から生態系を「支配」し始めた.それが他ならぬ現在における環境問題の原点といえよう.それ以来,道具の使用,文字や言語の発明,大規模社会の組織化などを通じ,独自の文明を形成してきた.近世に至ると,この支配規模がさらに大きくなり,川の流れを変え,海を埋め立てて,大地をも改造する力を持ったのである.
 最初の数千年以上の間は,地球環境は無限であり,これら人類の活動によっていささかの変化も起こらないかに見えた.しかし,ほんのこの数十年間に,資源に限りがあることと,地球環境が有限であり,人類活動の廃棄物が生存そのものを危うくさせているという事実が急に認識されるようになったのである.

【座談会】企業はなぜ地球環境問題に取り組むか

著者: 谷達雄 ,   三橋規宏 ,   和田孝一 ,   河北博文

ページ範囲:P.475 - P.484

 河北(司会) 本日は,環境問題に熱心に取り組まれている企業から株式会社リコー社会環境室長の谷さん,ホテルニューオータニ施設管理部長の和田さん.また,地球環境問題について総括的にコメントいただくということで,前日本経済新聞論説副主幹で,現在は千葉商科大学政策情報学部教授の三橋さんにおいでいただきました.
 病院という立場から,これから地球環境を課題とし,実際にどのように取り組んでいくかの参考になればありがたいので,それぞれのお立場で地球環境をどう考え,どのように実践し,将来的にどのような課題を抱えていらっしゃるのかお話しいただきたいと思います.

ISO 14001導入の効果—マネジメントシステムとして

著者: 冨田信也

ページ範囲:P.485 - P.488

 国際規格となっている環境マネジメントシステム構築を当院が目標に掲げたのは1997年1月である.不備を抱えながらも環境マネジメントシステムを構築して運営開始したのは1997年10月である.この環境マネジメントシステムがISO 14001の規格に合っていると第三者的機関の審査を経て認証登録されたのは1998年5月で,毎年1回の第三者機関のサーベイランスを受けている(本誌第57巻11号1008〜1012頁で紹介).
 この間,毎月定例的に開かれる環境マネジメント運営会議は2000年3月までに27回を数えている.環境マネジメント運営会議は,河北総合病院の病院組織が掲げている環境目的と環境目標に向けて関連の諸活動を企画立案,実施運営,ならびにその見直しを行う.環境マネジメント運営会議ではシステムの構築時点の1997年10月に環境目標を以下のような項目に絞り込み設定した.この2年半あまりに,当院の環境マネジメントシステムはどのような効果をもたらしたかを振り返ってみたい.

地球環境に優しい病院を目指して

著者: 中村定敏 ,   藤井博明

ページ範囲:P.489 - P.491

 「一念,岩をもとおす」というが,当院のケースは,些細なことでも一所懸命に取り組んでいると,世の注目を浴びるようになるという典型的な例かと思われる.今や病膏盲に入り,欧州まで環境保全の視察に出かけた.また当院のホームページ(http://www.sphere.ad.jp/kdh)で広く同好の士を募り,情報交換をしているところである.
 本稿においては,これらのあらましを報告したい.前半を中村が担当し,後半を藤井が担当することにした.ご参考になれば幸甚である.

医療機関における環境管理活動とその評価

著者: 松島肇

ページ範囲:P.492 - P.497

 今日,オゾン層破壊,地球温暖化や廃棄物問題をはじめとして,様々な環境問題が深刻化しており,地球環境保全は人類の生存にとって緊急の課題である.その原因は一部の企業にあるのではなく,すべての事業活動や生活活動に起因しているといえる.その対策としては,政府による政策的な取り組みと,企業による自主的な環境管理の取り組みがある.
 後者については,1996年9月に国際標準化機構(ISO)の国際規格であるISO 14001(環境マネジメント)などが制定され,国内規格も整備されたことから,積極的にその取得を目指して活動している企業も多い.また,環境庁は1996年8月にすべての企業に対して環境活動評価を実施するように要請している1)

グラフ

新救急医療センターが完成し医療の継続性を確立—医療法人雪ノ聖母会聖マリア病院

ページ範囲:P.457 - P.462

 聖マリア病院では,数年前から超高齢化社会に対応し得る病院のリエンジニアリング,PFFHTM(patient and family focused hospital)を進めてきた.1997年にはその第1期工事として,療養群病棟「聖母病棟」が完成.さらに同年,1968年に建築された救急医療センターを解体した.同センターは2000年1月に竣工・オープン,第1期工事から目標に据えてきた「保健・医療・福祉の継続性」の確立に向けた体制が整った.

HOSPITAL INDEX

エイズ拠点病院・1

ページ範囲:P.464 - P.464

 

特別寄稿 実践から病院情報システムの功罪とそのあり方を考える

4.データ利用は二つの顔を持つ(その1)

著者: 田原孝 ,   日月裕

ページ範囲:P.498 - P.504

今なぜアウトカムなのか—診療録は情報になるか?
 かつて血友病患者のエイズが問題になった時,厚生省より各病院に非加熱凝固因子製剤の過去の使用状況を調べるようにという通達があった.この通達に対して,各病院はどのようにして調べたのであろうか?診療録の保存義務期間を既に過ぎてはいたが,多くの病院では診療録はまだ保存されていた.この診療録から非加熱凝固因子製剤の使用状況を調べた病院はどれほどあったのであろうか? ある病院では,たまたまある医師が非加熱製剤を使用していた患者の名前を覚えていたため患者を特定できたと聞いたことがある.
 実際,10万冊を超えるような診療録を一つずつ調べて,患者を特定する作業は気が遠くなるような話である.ところが,既に承知のように各病院へ納入された製剤の量は各業者のデータにより,日付まで含めてわかっていた.この事実は,病院の情報管理能力が一般企業に比べていかにお粗末かをまざまざと見せつけている.

レポート

「私のカルテ」は医療を変えるか

著者: 田岡輝久

ページ範囲:P.506 - P.509

 最近,カルテ開示の問題が世間で多くの議論を呼んでいる.
 「医療の質と透明性」という時代の要請は,今後ますますインフォームドコンセントと医療情報の開示を進展させ,それらに対応できない病院は淘汰される運命にあるだろう.そこで忘れてならないことは,「患者の視点での医療」である.常に医療者側には「患者が何を望み,何が知りたいか」を認識し,それに応える努力が求められている.一方,患者側も自分の病気や健康管理を医療提供側にすべて任せるのではなく,自らの責任のもと共に考え,歩んでいく姿勢が必要である.

病院管理フォーラム 看護管理・27

中規模病院における質の管理と看護教育

著者: 上山早苗

ページ範囲:P.510 - P.511

 介護保険もいよいよ開始となり,医療ビッグバンといわれる病院間の競争だけでなく,在宅へ向けての環境も整ってきた現在,患者の選択肢は確実に広がっている.
 第4次医療法改正を含め医療情勢が変化していく中,患者の病院選択の基準は医師の治療技術だけにとどまらず,病院の規模,利便性,看護の質,建物,食事,接遇つまりはサービスのよさまでもその対象となり,患者の要求に答えていく過程でそれぞれの病院の特徴が明確になったといえる.反対に患者の要求に答えられない病院や,特徴を明確にできない病院は,患者の選択基準から外れてしまうのである.

Hospital Administratorへの道 part 2・6

hospital administratorとして育ち,また育てる

著者: 川添昇

ページ範囲:P.512 - P.514

 医療業界の専門家を志す
 医療業界に入って早いものでもう四半世紀近くになる.大学を出てからの5年間は,海運会社に勤めていた.先の大戦で潰滅状態であった商船隊を復旧すべく,まさしく護送船団方式で手厚く保護されていた業界であった.そうした脆弱な業界も,石油ショックやドルショックの影響を受けて,勤めていた会社はあえなく倒産してしまった.倒産前後の混乱は今でも鮮明に記憶している.
 尾羽打枯らしての都落ちで故郷に帰ってきたのは28歳の春であった.田舎では勤め先もままならず不遇をかこっていたが,当時臨床検査技師の経験のあった家人から「病院は不況知らずよ.潰れることなんて絶対ない.」と勧められ,病院の事務員に応募した.

病院ボランティアの提案—東札幌病院・12

患者の生活空間を快適に・1—五感にさわやかな空間を

著者: 斉藤悦子 ,   石垣靖子

ページ範囲:P.515 - P.515

ランプシェードで蛍光灯をやさしく覆ってみましょうか
 患者になって入院してみると,病院の生活空間は極めて限定されてしまうものだ.特に臥床を余儀なくされるような状態になると限られたスペース,限られた視野の中で生活せざるを得ない.日常の行動基準が垂直(立位か座位)である医療者と,その基準が水平(臥床)である患者とでは同じ環境でも視野の範囲は全く異なる.例えば臥床している状態で最も日常的な視野は天井か壁であり,夜間はそこからの灯りは安静を妨げる不快なものになってしまうこともある.
 医療者にとっては些細と思えることが患者の日常生活上では大きな障害になることも多いのに気が付く.当院でもある患者がボランティアにもらしたちょっとした不満から,今は病室の飾り気のない蛍光灯が和紙のランプシェードで覆われるようになった.

Principle 病院経営・18

部門別原価計算の必要性(5)

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.516 - P.517

 技術提供関連費用
 前回までは技術提供関連の収益を職種別に扱うことを中心に述べた.次に費用について述べる.
 もともと職種別に技術料収益を集計しているので,それに対応する費用として職種別の給与費を選択することに異論はなかろう.問題となるのは,材料費,減価償却費,エネルギー費用,メンテナンス料や支払利息といった施設関連の費用である.手術料に限らず,様々な技術料収益には,その技術を発揮するのに必要な材料や施設に関連する経費が含まれることとなっている.「所定点数に含まれる」という項目である.

連載 事例による医療監視・指導・6

院内感染が疑われたときの病院の対応

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.518 - P.519

 前回はMRSAの院内感染が疑われる乳児発疹症の多発例について書きましたが,今月号も院内感染の話題を続けます.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第68回

横浜市立脳血管医療センター

著者: 栗木森

ページ範囲:P.524 - P.527

計画の重点
 横浜市立脳血管医療センターは「早期治療と一貫したリハビリテーションによる可能性への挑戦」を理念とした,全国初の脳血管疾患の専門病院である.この理念に基づき,以下のポイントに重点をおき設計をした.

医療の政策評価・5

「効率」の評価方法と考え方

著者: 田村誠

ページ範囲:P.528 - P.532

 前回と前々回は,「効果」の評価方法と考え方について論じた.今回は「効率」の評価方法と考え方について論じる.
 なお,第1回目の連載でも述べたとおり,また広く知られているとおり,「効果」と「効率」は異なるものである.「効果」は政策にどのようなインパクト(影響)があるか否かをみようとするものであるのに対し,「効率」はそのインパクトに要した資源とインパクトの大きさとの関係をみようとするものである.

医療従事者のための医療倫理学入門

6.医療経済と医療倫理

著者: 新保卓郎 ,   浅井篤 ,   永田志津子 ,   大西基喜 ,   福井次矢

ページ範囲:P.520 - P.522

〔ケース〕
 55歳,男性.年余にわたり腸骨に巨大な血友病性偽腫瘍が形成された.増大した偽腫瘍は骨盤腔の大半を占め,右腸骨,仙骨を破壊しており,歩行困難であった.この偽腫瘍が自壊して出血し,ショック状態となった.そのために,第8因子製剤,アルブミン製剤,赤血球輸血3,000mlを必要とし,ショックの軽快後も手術療法などの根治療法は成功せず,毎日少量ずつ出血が続いた.このため毎日第8因子製剤2,000単位の使用が必要であり,また2週に1回の頻度でショックになるため,その都度大量輸血が必要であった.毎月の保険診療報酬請求が100万点を超過した.主治医はこの患者1人に高額の医療費を集中して使い続けることに抵抗感を感じはじめた.

癒しの環境

庭(グリーンホスピタル)

著者: 辻吉隆

ページ範囲:P.523 - P.523

グリーンホスピタル
 毛利衛さんがエンデバー号で2度目の宇宙飛行から帰ってのインタビューの中で「スペースシャトルの中はすべて人工ですよね,帰ってきて自然の大気,自然の湿り気といいますかそういう感じがやっぱり私たちが本来住む場所だという感じがしました.」というコメントをしていたのが印象深い.普段何気なく当たり前のものとしている自然も,そこから隔離されてはじめてそのありがたさが増す.人工環境の中だけでは人は生きていけない.
 また,こんな研究もある.ピッツバーグにあるコリンドーラン.アルツハイマー病院で,庭に出るガラス戸に鍵を掛けたところ,患者さんたちはガラス戸をたたいて外に出してくれるように騒いだそうである.そこで,常時鍵を開けられるようにしたところ,患者さんたちはすぐに外へは出ないのだけれども騒ぐことが収まったとのことである.

ケースレポート

物品管理システム導入とコスト削減策の効果

著者: 武田洋子 ,   川村マサ子

ページ範囲:P.533 - P.536

 当センターは埼玉県北部の農村地帯に位置し,昭和29年に結核を専門にした自治体立の医療機関として開所した.平成6年には循環器系疾患に関する医療の中枢機関が併設され,平成10年4月から循環器・呼吸器病センターと名称を改め,呼吸器系疾患の診療体制をさらに充実して,高度な医療を提供するとともに,地域の医療水準の向上に貢献する役割を担っている.平成10年度の病床数は368床,入院患者数は1日平均266名,外来患者数は1日平均258名,病床利用率は72.3%である.
 循環器系・呼吸器系専門の医療機関で使用する診療材料は,一般的に高品質かつ高価なものが多い.また,院内感染の対策上からディスポーザブルの診療材料が数多く使われている.このため,当センターの診療材料に掛かるコストも一般病院や他の専門医療機関よりも高額となっている.ちなみに,平成10年度の当センターにおける診療材料の医業費用全体における構成比率は12.1%,購入額は約9億2千万円,材料費の対医業収益費比率は42.3%,うち,診療材料費は18.9%となっている.なお,地方公営企業を適用している他県の循環器・呼吸器系医療施設と比較すると,当センターの材料費の対医業収益費比率は平均(43%)を0.7ポイント下回っている1)

データファイル

平成10年老人保健施設調査結果の概要・2

ページ範囲:P.537 - P.542

 利用者の状況
1.都道府県別にみた入所者数と入所者の住所地別割合(表10)
 施設の所在地別にみると「県外」からの入所者の割合が多いのは,埼玉県(19.6%),茨城県(12.6%)で,一方,入所者の住所地別にみると「県外」の施設への入所者が多いのは東京都(29.5%),京都府(17.4%)などとなっている.また入所者の84.8%)は「同一老人保健福祉圏域内」であり,11.0%は「同一老人保健福祉圏域外」となっている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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