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雑誌目次

雑誌文献

病院59巻9号

2000年09月発行

雑誌目次

特集 検証 平成12年診療報酬改定

平成12年診療報酬改定の意味するもの

著者: 新村和哉

ページ範囲:P.750 - P.752

 平成12年診療報酬改定は,去る3月1日の中央社会保険医療協議会(中医協)への諮問,3月3日の答申を経て,4月1日から実施された.今回の改定率は1.9%(医科2.0%,歯科2.0%,調剤0.8%)であるが,薬価および保険医療材料価格の改定▲1.7%があり,実質改定率は0.2%にとどまっている.しかし,小さい改定率の割には,診療報酬体系の見直しを含む大きな改定内容であったことは周知のとおりである.
 改定の主な内容は,大病院の紹介外来の推進,入院基本料の新設,小児医療の充実,急性期入院医療の質の向上,回復期リハビリテーションの充実,長期療養患者への必要な医療の確保,老人の慢性期入院医療における包括化の拡大,手術料の体系的な見直し,診療録管理体制の評価などとなっており,政策的な色彩の濃い改定となった.

平成12年老人診療報酬改定について

著者: 関英一 ,   西山正徳

ページ範囲:P.753 - P.756

 国民医療費が増大し,その3分の1以上を老人医療費が占めるに至り,老人医療への取り組みは,従来にも増して重要な政策課題となっている.高齢者の心身の特性を踏まえたよりよい老人医療を目指すとともに,その効率化・適正化を図っていくことが必要であり,そのためには,高齢者医療制度の見直し,医療提供体制に関する見直しとも相まって,老人診療報酬における取り組みが重要である.また,平成12年4月からの介護保険制度の施行に伴い,今後の診療報酬の検討に際しては,医療保険制度および介護保険制度の双方を視野に入れた検討が必要となる.
 平成12年診療報酬改定は,こうした状況のもとで,中央社会保険医療協議会から平成12年12月に示された診療報酬体系のあり方に関する中間報告の主要課題に沿って行われた.このうち老人診療報酬改定については,社会保険診療報酬改定において基本診療料をはじめとする体系的な見直しが行われたことに呼応して,特に,出来高払いと包括払いの最善の組み合わせを実現するとともに,医療機関の機能分担と連携を促進する観点から,老人医療費の合理化・適正化を推進しつつ,老人の心身の特性にふさわしい良質な医療の効率的な提供を行うという考え方を基本として行われた.

診療報酬改定と一般病院・患者

著者: 二木立

ページ範囲:P.757 - P.760

はじめに—「歴史に残る改定」?
 「歴史に残る改定」,「抜本改革といえる」.厚生省の担当者は,今回の診療報酬改定をこう自讃している.筆者も,今回の改定は,病院医療に関しては,過去数回の改定に比べると大幅な改定だと考える.これにより,21世紀初頭の病院再編成の方向(急性期病院と慢性期病院への機能分化)はより鮮明になり,個々の病院の選択肢はより明確になった.
 しかし冷静に考えれば,今回の改定は,厚生省が1987年の国民医療総合対策本部中間報告で,「病院の体系」を「慢性病院」と「一般病院」とに区分する方向を初めて提起して以来,一貫して進めてきた政策の延長線上の部分改革にすぎない.

入院基本料の分析

著者: 梅津勝男

ページ範囲:P.761 - P.766

 金融ビックバンになぞらえて「医療ビックバン」と呼ばれた医療制度・医療保険制度の抜本改革が,ほとんど頓挫している状態である.医療ビックバンとは,①医療供給体制の整備,②診療報酬体系の改革,③薬価基準制度の改革,④高齢者医療制度の創設,⑤良質で効率的な医療の提供,⑥介護保険の制度化と医療保険の対応,⑦情報化の推進と保険者機能の強化の7項目を掲げて検討が行われてきた.しかし,総選挙や景気の回復遅れなどの政治的配慮もあって,「介護保険がとりあえず見切り発車したこと」と「診療報酬改定で入院料が包括化され‘入院基本料’が誕生したこと」以外は,「医療法の第4次改正案」は仕切り直しで今後の国会審議にゆだねられているし,「薬価制度改革」は白紙撤同されたままであるし,「高齢者医療制度の創設」も,これから本格的議論が始まるところである.
 21世紀におけるわが国の社会保障制度や医療保険制度は,国民すべての最大の願望である「健康で長生きしたい」という思いにどう応えるか,「老後の健康と生活が充実したものとなる社会保障制度の構築」が急がれているのである.

療養型病床群の評価と病院経営

著者: 児玉博行

ページ範囲:P.767 - P.771

診療報酬改定のポイント
 今回の診療報酬改定のポイントを簡単に述べてみる.

【座談会】平成12年診療報酬改定を斬る

著者: 飯田修平 ,   西澤寛俊 ,   池澤康郎 ,   山本修三 ,   竹内實

ページ範囲:P.772 - P.779

 竹内(司会) 本日は,「平成12年診療報酬改定を斬る」というテーマで,忌憚のないご意見をいただきたいと思います.まず今回の診療報酬改定の全般的な印象を,飯田さんからお願いします.

グラフ

東京都区内で医療と福祉を一体化したサービスを提供—医療法人財団厚生会古川橋病院/介護老人保健施設「ルネサンス麻布」

ページ範囲:P.737 - P.742

病院と老人保健施設を合築
 古川橋病院(東京都港区)は港区初の介護老人保健施設「ルネサンス麻布」,健診センターを併設し,平成11年4月に新築された.病院と老人保健施設が同じ建物内にあるケースは東京都内では少なく,鈴木幸雄院長は「老人保健施設の入所者の容態が急変した場合,迅速に治療を開始できる」と合築した利点をあげる.高齢の方ゆえこうした需要は確実にあり,脳梗塞,肺炎,腎盂炎により病院に入院となる方が多い.素早い対応が一命を救った例もある.
 病院の新築に当たっては,病床稼働率の向上と補助金を受ける目的もあり,病床数の削減を計画した.まず旧病院に隣接した鈴木院長の自宅を取り壊し,同敷地内に新病院の一部を建設.当院をかかりつけ病院とする患者さんもあるため完成棟で診療を続けながら,併行して旧病院を新築,この2棟をつなぎ完工した.

HOSPITAL INDEX

エイズ拠点病院・4

ページ範囲:P.744 - P.744

特別寄稿

グローバル化は日本の保健医療をどう変えるか・3

著者: 宮城島一明 ,   中原俊隆

ページ範囲:P.780 - P.784

(59巻8号より続く)
基幹産業としての保健医療
 いわゆる先進工業国の経済において,第三次産業(サービス業)が大きなシェアを占めるようになって久しい.日本もその例外ではない.特に,製造業の海外生産への傾斜が依然として強まる傾向にあることから,中長期的に見て,日本経済の牽引役としてサービス産業が果たす役割はますます重要になると考えられる.
 無論,保健医療以外の分野でも財(モノ)やサービスの生産・供給が行われなくては,一国の経済は立ち行かない.しかしながら,サービス業としての保健医療は,その国内総生産に占める大きさゆえに,単に傷病に対する保護を提供することによって安心して働ける社会を作ることにとどまらず,わが国の経済発展に積極的に寄与することが期待される.つまり,その舵取りいかんでは,日本経済を成長させる要因になる可能性もあれば,その逆の状況となる危険性も大いにあり得るということを意味する.

てい談

医療情報・医療システム・医療評価

著者: 長谷川利典 ,   長谷川友紀 ,   長谷川敏彦

ページ範囲:P.785 - P.794

 敏彦 現在,ミレニアムという世紀の変わり目にあり,医療の質や効率性がこれからますます重要になると考えられます.
 十数年前に,長谷川利典先生に初めてお会いしたころは,医療の質や効率などの系統的研究の重要性があまり指摘されていませんでしたが,先生は,質と効率を含め医療サービスをきちんと評価しなければならない,と力説されておられ,強い印象を受けました.

病院ボランティアの提案—東札幌病院・15

病院の四季・1—夏の風物詩—祭り

著者: 斉藤悦子 ,   石垣靖子

ページ範囲:P.795 - P.795

東札幌病院祭り
 ボランティアが行う当院の行事は参加型と季節の演出型がある.その一つ「東札幌病院祭り」は演出型である.北海道神宮祭の6月15日を中心に前後1週間,病院は祭り一色に彩られる.札幌の初夏を彩る北海道神宮祭は雅やかな伝統の風物詩として,また市民には夏を迎える節目として生活の中に位置づけられている.
 この時期入院される人たちのために始まった「東札幌病院祭り」は,北海道神宮祭の時期に合わせて,人々が集うデイルームや三角コーナーなどに,ボランティアたちによって赤い毛氈に樽御輿が飾られる.御輿には日本の祭りの象徴として神聖な雰囲気と,不思議な勢いがあり元気をもたらすものだ.この時期,病院周囲の路地を練り歩く子ども御輿のお囃子とにぎやかにはしゃぐ声が,祭り気分をいっそう盛り立ててくれる.時にはデイルームの御輿の側に熨斗をつけた日本酒の一升瓶がでんと供えられていて,スタッフを慌てさせることもあった.

病院管理フォーラム 看護管理・30

看護の質を高める—看護理論を土台にして(2)

著者: 根本多喜子

ページ範囲:P.796 - P.797

 前回は,当院が看護理論を導入するに至った経緯となぜロイの適応看護理論に決めたのかについて述べた.今回は導入のステップと導入後の成果について述べたい.

Hospital Administratorへの道 part 2・9

病院経営に携わって(1)

著者: 相田俊夫

ページ範囲:P.798 - P.800

 倉敷中央病院(表)の経営管理業務に従事することになって,ちょうど3年である.当初勉強と思って首をつっこんだいろいろな分野の経常業務に追われ,大変忙しくあっという間に時が経過した.振り返りと今後の方向づけが必要と考えていたところ,編集者よりの原稿依頼があり,未熟をかえりみず期限に縛られてまとめてみることにした.
 素材メーカー在籍35年,人事管理スタッフ,経営管理スタッフ,工場長,事業本部長などを経験し病院経営に転身した.病院とは利潤追求第一ではなくて,ミッションオリエンティッドなサービス事業であり,その顧客は原則特定地域に限定された一社一事業所形態の,統制経済的,知的労働集約産業と考えるとき,今までにない未経験な分野であり,かなりのカルチャーショックを覚悟したが,比較的そのショックは軽度であった.これは感受性が低かったことと,企業的視点をベースに取り組める仕事をメインとしてきたためと考えられるが,今回のまとめも多分に,ホスピタルアドミニストレータ論というより,「コーポレートアドミニストレータ病院経営体験記」になることを恐れつつ筆をすすめることにする.

癒しの環境

ディズニーに学ぶ癒しの環境

著者: 森田仁士

ページ範囲:P.801 - P.801

 東京ディズニーランドは1983年4月の開園から,既に2億人以上の入場者を記録している.しかも驚いたことに,現在90%以上がリピーターである.一度入場した人の心をつかんで離さないディズニーのサービスの秘密から,同じサービス業の一つとして病院サービスを考えてみたい.
 超高齢化社会となった現在,われわれが抱える疾患も様変わりしてきた.急性期疾患が減って,慢性期疾患が多くなってきたのである.言い換えると,長期間にわたり療養生活を余儀なくされる疾患が多くなった.病院のサービスは病気を治すことが一番の目標であるが,ただ病気が治ればよいというような時代ではなくなり,いかに高いQOL (qualityof life)を保ちながら療養生活が送れるかが重要視されてきている.そのためには体も心も癒される環境づくり(ハード面)と,医師,看護婦その他の職員による質の高い医療と心のこもった看護(ソフト面)との両者のグレードを最高のものにしなくてはならないのである.

Principle 病院経営・21

病診連携の枠組み(2)

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.802 - P.803

よく耳にする問題点・その2
 「大事な患者を病院に紹介したのはよいが,患者が自院に帰ってこない」という不満をよく耳にする.「だから確実に患者が帰ってくる医療機関にしか患者を紹介しない」という言葉も聞いたことがある.患者の大病院集中と開業医離れという現象にあって,患者数が減少傾向にある診療所開業医の偽らざる心境であろう.
 また一方では,患者を紹介元の医療機関に返そうにも,患者がそれを受け入れてくれないという意見も聞く.中には,あまりに強く患者を紹介元に返そうとするあまり医師と患者の間がぎくしゃくするといったケースもあるようだ.

連載 事例による医療監視・指導・9

インフォームドコンセントをめぐる指導

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.804 - P.805

 医療法に規定されているインフォームドコンセントについては何度か解説してきましたが,最近経験した例をもとに,説明努力が十分なされておらず,指導したケースをご紹介しましょう.
 患者さんの奥さまが私どもの部署へ訪ねて来られたのは,患者さんご本人のYさんが亡くなられてから2か月ほど過ぎた頃でした.Yさんは3年ほど前にA病院で肺がんの手術を受けたのですが,今年になって再発と診断され,再手術を受けたところ,手術直後に死亡されたそうです.手術の失敗ではないかと疑い,その経緯について病院へ問い合わせても,説明を受けられないという訴えです.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第71回

病院は成長と変化に対応できたか?—ノースウイックパーク病院での検証

著者: ウイークスジョン

ページ範囲:P.806 - P.810

背景
 ノースウイックパーク病院・臨床研究センターは国営医療制度における過去最大のプロジェクトで1961年に計画された.当時,将来の未知の変化に対応できるように意図して計画された二つの病院の一つで,もう一方は保健省の下で設計・建設されたグリニッチ地区病院である.さて,現在30余年を経て病院がどのようにやってきたのか? 成長したのか? 変化したのか? まだ機能しているのか? を見てみることは意義深い.
 1960年代にあっては「変化」が時代の空気に漂っていた.医療やヘルスケアが今後どの方向に発展するかは誰も明言できなかった.当時病院を段階的に整備できるようにしておくことは慣例であり,ノースウイックパーク病院でも完成図は存在しなかったし,事実,最終契約の時点でも将来の発展を許容することができるマスタープランとなっていた.

医療の政策評価・8(最終回)

連載のまとめと課題

著者: 田村誠

ページ範囲:P.814 - P.817

 本年2月号から,医療の政策評価の方法論についての連載をしてきた.そして,8回目の今月号が最終回である.今回は,この連載を通じて特に主張したかった点,言い尽くせなかったこと,今後の課題などを整理する.

医療従事者のための医療倫理学入門

9.医療従事者の警告義務—守秘義務の限界

著者: 浅井篤 ,   大西基喜 ,   永田志津子 ,   新保卓郎 ,   福井次矢

ページ範囲:P.811 - P.813

〔ケース〕
 20歳代後半の既婚男性が数日続く倦怠感と微熱を主訴に来院した.問診上,輸血歴や家族歴に特記すべきことはなかったが,数か月前に配偶者以外の女性とコンドームを用いない性交渉があった.身体診察上頸部リンパ節腫大が認められ,患者の同意の上で行われた抗体検査でHIV感染症と診断された.
 担当医師は患者に診断,病状,予後を説明するとともに性交渉や血液による感染の可能性にも言及し,患者の配偶者も検査を受ける必要があると説明した.しかし,患者はHIV感染の事実を妻に話すのをためらった.担当医師はどうすべきであろうか.

データファイル

川越胃腸病院では消費者(患者)の要望にどう応えているか/病院機能評価認定証発行病院

ページ範囲:P.818 - P.823

病院としては唯一,「消費者志向優良企業」通産大臣表彰を受けた川越胃腸病院では,平成元年から日常業務で,あるいはこ意見箱に寄せられた患者さんやご家族の意見・要望などに対して,どのような改善策を取ったかを院内に掲示している.これまでどのような要望があっただろうか? 平成8年度から11年度までの4年間,患者さんの〔要望〕にどう応えてきたか,その一部を紹介する.(本誌7月号特集「消費者(患者)の声/ニーズの吸収」の資料として掲載の予定でしたが,紙幅の都合で本号に掲載します.7月号558-565頁をご参照ください.)

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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