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雑誌目次

雑誌文献

病院6巻5号

1952年05月発行

雑誌目次

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病院管理學講座創設にあたつて

著者: 篠田糺

ページ範囲:P.2 - P.2

 日本に於ける病院管理學の重要さについては既に4年前から月刊雑誌「病院」が刊行されて居るだけでも明かである。ことに戰後の國民所得の低下,國家財政窠乏,就會保險制度の不健全な發展と物價並に人件費の著しい高騰とに病院運營の危期を招來して,益々管理學の必要性を痛感せしめた。昨年日本病院協會が結成され,日本病院學會が發足したのも,日本の各病院並に院長の要望が切實である證左でもある。この認識を急速に發展させた原動力は終戰後のPHWの指導と經濟状態の急變と,醫療制度の改革とにあることは勿論だが,國立東京第一病院に於ける厚生省病院管理研修所の熱心な活動と努力に負うところが大きい。これによつて全國の大小病院の管理運營は可なりの進歩を來しつゝある。
 但し國立の大學病院はその使命が一般診療機關である上に醫學の研究と教育の面が加わつて居るので,他の國立乃至公私立の病院よりは複雑多岐であり,その管理運營には,この兩面をうまく調和させねばならす色々の困難にぶつかつた。ことに從來の組織と傳統と施設とに思いきつた大變革を來さない限りはなかなか實績はあがらない。特に専任院長を置くことなどは當分は望んでも得られない状態である。

東北大學に「病院管理學」講座が誕生することを祝して

著者:

ページ範囲:P.3 - P.4

 東北大學醫學部に,昭和27年度から「病院管理學」講座が新設せられることになつた。本誌は創刊以來,病院の發展改善に微力を盡して來たが,厚生省が病院管理研修所を創設して日本の病院の進歩に重大な役割をはたしつゝあることに萬腔の敬意を捧げて來た。然るに愈々大學に於ても此問題も取上げるに至つた事はわが國の病院—醫療に與えるその影響力を想像して快哉を叫ばざるを得ない。而も,此の講座が誕生した經緯を考えるとき,その意義の深いものがあることを感ずる。
 從來より,大學病院のあり方については,各方面からいろいろの批判があり,遂に昨春,文部省も大學病院の改善の急務であることを悟り,大學病院改善協議會を發足せしめ,爾來數次の會合による研究の結果,一應大學病院改善要綱なるものを決定發表した事は,既に本誌においても報道した通りである。そしてその内容については,確に從來問題になつていた日本の大學病院の弊風の諸問題を素直に取上げて,その解決策を示したものであつて,委員並に關係者の眞摯な態度については敬意を表すべきものであると信ぜられるが,はたしてその作文通り永年の大學内に横たわる封建的保守性を打破してそれを實行に移せるか何うかについては甚だ疑問視されていた事も事實である。然し乍ら,大學病院に專任院長を置き且つ「病院管理學」講座を擔當させるという。

病院活動の研究會—病院各部門の業務は何れも一人一人の患者に繋りがある

著者: 原素行

ページ範囲:P.5 - P.17

はしがき
 病院の各部門の業務は綜合された病院活動として,恰も一貫作業のような流れ方の必要があることは當然であると云える。然し屡々セクシヨナリズムの排除の聲を聞くのはどうしたわけか。端的に云えば各部門の横の連絡を缺く多年の習慣が「病院の各部門が一人一人の患者に繋りがある」という量要なる事柄を忘れているからではあるまいか。こゝに吾々の反省は,病院業務の偏狹さという長い習慣を捨て去つて,近代社會化した市民生活への貢献者として,はじめて病院の存在意義を明確にし得るものと思う。更に診療部門についても患者という對象を如何に取扱うべきか,顧て反省すべき多くの事柄を見出すことが出來ると思われる。
 科學的なつもりの診療に,意外にも科學性を缺いた不用意はなかつたか,各科の分立は科學的診療に反したら又患者へのヒユーマニテイを忘却したら,又診療と看護の效果が患者の生活環境という科學的條件によつて左右されることを強調する者も極めて少く,却つて之を社會問題のフアクターとして自然科學の分野から斥けられたら等々,遠き過去にさかのぼつて多くの過失に氣がつかざるを得ない。そして之れが我國の病院に於ける眞の姿ではなかつたか。

肢體不自由兒病室の使命

著者: 村田秀雄 ,   遠藤ちさ子

ページ範囲:P.18 - P.26

一、緒言
 國立京都病院整形外科病棟の一隅に,初めて12床1室の肢體不自由兒療育病室が設置されたのは,昭和26年2月下旬のことであるが,はやくも誕生1周年を迎えるに至つた。この療育病室も齢半歳を數えぬうちに,入室希望者の増加のため3室25床に擴張したのであるが,現在既にその收容力の貧しきをかこつほどになつている。
 ここに本誌をかりて敢て私どもが記す所以のものは,本病室管理の過去1年間の經驗をふりかえり,現況をながめ,併せて本病室が京都の肢體不自由兒療育事業に於て占める地位,或は使命ともいうべきものに就て,いささか愚見を述べ,大方諸賢の御批判と御助言と御援助とを得たいと希うからである。

岩手縣の醫療公營

著者: 齋藤俊保

ページ範囲:P.27 - P.31

1.縣立醫療施設の前身とその統合の經緯
 元來原始的産業經濟状態にある本縣には自由企業としての私的醫療機關が發達していなかつた。
 そこへ昭和6年の全國的農村恐慌にあい,單作寒冷地帶の本縣は殊のほかの打撃を受けた事は申すまでもなく,そのためさなきだに醫療費負擔に堪えかねていた農民は,益々醫療に惠まれない状態となり,この事實は農民の協同運動による自衞組織としての産業組合法による醫療利用事業の推進を促したことは見易いことである。

病院關係人事消息

ページ範囲:P.31 - P.31

黑澤 良臣氏 市川市國立國府臺病院長の民は國立精神衞生研究所長を兼務
隈部 英雄氏 結核豫防會附屬清瀬病院長の氏は厚生統計協議會專門委員に任命

その後の研修所と東一

著者: 守屋博

ページ範囲:P.32 - P.33

 二年前,研修所の滿一年,生展記が發表されているが,その後の二年間に於ける,生展や,何如。
 現在行れている,研修コースは次の如し。

Medical Social Case Work—事例研究座談會

著者: 山本武夫

ページ範囲:P.34 - P.39

 いま日本にだいだい400人のMedical social Workerがいで,その110の40人が東京にいる。この40人が團結して最近,東京M.S.ワーカー協會(東京都醫療社會事業家協會)を作つて仕事をはじめ出した。仕事の一つとしてcase workの事例研究をすることになり第一回の試みに私の扱つたcaseを取り上げて本年2月27日中野保健所で20何人かのworkerが集つて,それに厚生省の千種峯藏先生にも出ていたゞいてcase studyのdiscussionをやつた。そのあらましをここに紹介して,今のworkerがどんなことを考え,どんなことをやつているかを,この仕事に關心を持つ皆さんに知つていたゞこうと思う。

百名給食の炊事の計畫

著者: 島尾二

ページ範囲:P.40 - P.43

 醫療法が定められ病院の理想的な設計が屡々本誌に紹介されてあるが,小都市の經營する病院等に於ては豫算に縛られるので既設の建物を改造して可及的整備に努めねばならぬのである。特に給食設備に就ては米國の給食施設の紹介があり,又健康保險の完全給食實施の點から給食に就て非常に關心が持たれる樣になつた。
 私は最近當市民病院附屬病棟の炊事場の改造に當つて市の出口建築技師を煩わし色々と設計をねつて見たのである。又特別食に就ても大病院の其を小規模の病院で其のまま實施出來ないのであるが種々工夫して要を滿し得る樣に努めたので之等の點に就て具體的のことを御參考迄に述べて見る。但し以下述べることは全部實施していると云うわけではない。經費の關係で今年實施の豫定にしていることもある。

看護作業時間の分析的研究(4)

著者: 畑昇 ,   淸長美濃輔

ページ範囲:P.44 - P.52

第五章 主帶作業
1.)外来
 タイムスタデーの資料から主帶作業を第一章(4)の分類に從つて分類し,主帯作業時間及びそれと拘束時間に對する百分率を示すと第7表の通りである。

日本病院協會だより

ページ範囲:P.53 - P.53

A.病院藥劑師會幹事會 日時 3月3日 各幹事出席
 1.報告 日本藥劑師會代議員選出結果を報告す2.公務員の職階制改定に關と薬劑師は一般職中に入れられだ樣であるが醫療職中に入れるを適當と信ずるによる此點理由をあげて,人事院,厚生大臣及び文部大臣に陳情し目的の貫徹に努力することに決定する。

編集後記

著者: 編者

ページ範囲:P.54 - P.54

 櫻花と共に學會シーズンを送つて,はや青葉若葉の緑の季節を迎える。萬物青々,ビロードの如き5月は,生命の息吹きが劇しい。特に今年は,待望の講和が成立し,獨立の祝典もこの期間に於て催されるという。再建日本の將來が,この季節に於ける草木の如く生々溌溂たるものとなることは,國民の齎しく望む處であろう。吾々病院人にとつても一つの慶びに堪えないことは,宿望の病院管理學講座が遂に我が國に於ても實現したことである。全國大學にさきがけて,東北大學醫學部では今年度の新講座として,本講座を發足せしめることになつた。幸いこの講座新設に盡力された篠田附屬病院長より御抱負を伺うことができたが,本誌では社説を掲げ,心からその誕生を祝すると共に,その順調な成長を祈つて止まない。何分にも我が國最初のテストケースであるので,吾吾病院人の温い,理解ある支持と應援が必要であろうと思う。
 本號は,時節柄というか,大分多彩な編集となつた。目下病院として問題になつている諸々の問題がズラリ面を並べた感がする。國立病院の地方移譲問題を含め,地方醫療體制の整備問題が具體的に検討されている今日,齋藤部長による「岩手縣の醫療公營」は他山の石として參考になると思われる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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