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雑誌目次

雑誌文献

病院60巻3号

2001年03月発行

雑誌目次

特集 病院と資金調達

変革期における病院の資金調達

著者: 石井孝宜

ページ範囲:P.198 - P.203

 本稿の執筆依頼をいただいた際,20年近い期間,民間の病院,特に医療法人病院の経営に財務・会計の専門家として直接的にかかわってきた公認会計士として,頭の中に相反する二つのイメージが浮かんだことをはっきりと記憶している.
 一つは,「金融機関の貸渋りなどもあり,運転資金を確保することさえ難しい医療機関,特に医療法人病院が多い」といわれるが,どの程度の割合をもって「多い」と考えるのであろうかという点であり,また「医療費の高成長が期待できない現在の状況下では,民間医療機関の資金調達は今後ますます困難となることが予想される」ともいわれているが,「ほんとうに」多くの民間医療機関が資金調達不能に陥るのであろうかという疑問である.

病院における財務諸表と資金調達

著者: 小笠原清忠

ページ範囲:P.204 - P.211

 医療制度改革への取り組みが進み,病院を取り巻く環境は非常に厳しくなってきている.特に50床以下の病院は毎年減少してきており,厚生省(現・厚生労働省)の「医療施設調査」によれば,昭和45年には2,694施設であったものが平成11年では1,403施設と,半減に近い状況となってきている.急性期医療における高度化,重装備化のスピードは速く,一方慢性期疾患を抱える高齢者を対象とした医療施設,介護施設では,平成12年度からの介護保険制度の施行に伴い大きな変化の波にさらされているところである.
 また,平成12年4月からの診療報酬の改定により,200床未満と200床以上の病院とでは診療報酬体系が部分的にではあるが変わってきたこともあり,これからは医療を取り巻く環境の変化に適応する分析も重要となってきている.病床利用率の高まってきている病院は在院日数の短縮に,病床利用率の低い病院は患者の増加増収の対策に取り組み,特色ある病院作りに各病院では努めているところである.そこで,社会福祉・医療事業団では病院の財務諸表についてどのように分析しているか,また今後の病院の財務のあり方,資金調達のあり方について模索していきたい.

わが国の病院における新たな資金調達の可能性

著者: 松原由美

ページ範囲:P.212 - P.218

医療法人の現状
 本稿では,民間病院の中でも,持ち分の定めのある医療法人(個人立病院も含む)の新たな資金調達の可能性について検討する.
 持ち分の定めのある医療法人を対象とする理由は,わが国の病院の大半が持ち分の定めがあり,医療供給の中核を占めているにもかかわらず,公民格差があるだけでなく,民民格差の問題を内包し,競争条件が異なるまま同じ土俵に立たされ,このため資金調達面においても,最も課題を抱えている病院層だからである.

地方公営企業における資金調達について—自治体病院における地方債の現状

著者: 高橋喜代志

ページ範囲:P.219 - P.223

自治体病院の財務会計
 自治体病院は地方公共団体(都道府県,市町村,一部事務組合等)が地域におけるそれぞれの実情により開設し,その立地する条件等に応じて運営されている.また,地方公共団体の事業として地方自治法,地方財政法,地方公営企業法等の下で運営されることとなっている.
 地方公共団体が行う病院事業は,主として一般行政上の目的から経営する大学附属病院等を除き地方公営企業法が適用され,その数は,平成11年度末現在758事業998病院となっている.

金融機関からみた医療機関の格付

著者: 京極孝 ,   川上浩一

ページ範囲:P.224 - P.228

 金融機関が融資を行うに当たって,取引先の返済能力を検討し,信用状態を把握すること,また信用状態や債務履行状況に応じて取引条件などを決定,変更していくことは最も基本的な事柄である.
 信用状態の把握およびこれに基づいた取引先の区分などの具体的方法や内容は,時代とともに変化がみられるが,現在では「信用格付」制度が広く用いられている.この制度は,経済環境や金融の高度化・複雑化に伴う多様なリスクに対応し,併せて金融機関としての健全性や効率性を確保することを目的として成立してきたものである.そして個々の取引先に対する融資取上げの可否,取引方針,取引条件などの決定や事後管理において評価の基本となるとともに,各金融機関が保有する融資ポートフォリオ全体の信用リスクをコントロールするうえでも重要な役割を担っている.

診療報酬請求債権の流動化による資金調達

著者: 武田隆久

ページ範囲:P.229 - P.232

 京都市にある武田病院グループがA銀行と診療報酬請求債権の流動化の取り組みをはじめたのは1998年9月.全国の病院のなかでは最初の取り組みであった.
 武田病院グループは医療法人財団康生会,医療法人医仁会,社会福祉法人青谷福祉会,木津屋橋武田病院(個人)などから構成されている(図1).医療法人財団康生会の中核である武田病院のベッド数は300床,職員数(常勤)は550名,また,医療法人医仁会の中核である武田総合病院は500床,職員数(常勤)は750名である.

グラフ

患者第一主義の最高水準の医療を志す—NTT東日本関東病院

ページ範囲:P.185 - P.190

 東京都心部を環状に走るJR山の手線五反田駅から徒歩約7分の地に,NTT東日本関東病院は2000年12月4日,旧病院に隣接して開設された.老朽化,狭隘化が激しい旧建物では同院の追求する医療を実現し得なくなり,1994年から建て替えを計画,1996年4月に院長に就任した小林寛伊院長は3度の病院新築を経験しており,この実証に基づいた①人にやさしい,②高度医療の提供をサポートする,③効率的運営を可能とする建物が実現した.

HOSPITAL INDEX

地域医療支援病院の承認状況

ページ範囲:P.192 - P.192

データファイル

病院機能認定証発行病院

ページ範囲:P.232 - P.232

●2000年11月20日,10病院
 [一般病院A (4病院)]医療法人社団水生会柴田病院(山口県)/医療法人山田会山田病院(兵庫県)/医療法人祥和会大田記念病院(広島県)/医療法人平成会八戸平和病院(青森県)
 [一般病院B (3病院)]三菱神戸病院(兵庫県)/医療法人財団石心会川崎幸病院(神奈川県)/西日本電信電話株式会社九州病院(熊本県)

特別寄稿

実践から病院情報システムの功罪とそのあり方を考える・8(最終回)—今後のあるべき医療情報システム—カオス・複雑系医療への序章(その2)

著者: 田原孝 ,   日月裕

ページ範囲:P.233 - P.239

(第60巻2号より続く)
医療データの再利用における本質的な問題点(承前)
3.病名頻度と順位の相互作用
 この問題について考える前に,病名がどうしてべき分布になるかについて考えておこう.べき分布は今までに様々な分野で発見されている.表1にいろいろな分野で発見されているべき分布の例を上げている.純粋な物理現象から株価の変動のような経済現象にまでこの分布が認められる.このことは,広い分野にわたって共通のメカニズムが働いている可能性を示唆し,その共通のメカニズムを研究するため,分野を超えた概念が必要であることを示している.このような分野を超えた共通の対象認識としてカオスや複雑系という概念が生まれてきた.
 多くのべき分布の中でも,言語におけるZipfの法則は病名との共通性において重要である.Zipfの法則とは文章中の単語の出現頻度を頻度順に並べた時の順位と,その単語の出現頻度の間にべき法則が成り立つというものである.これは,病名の分布とよく似た法則である.Zipfの法則に関してもその分布の原因についてはっきりした定説はない.しかし,少なくとも各単語の出現が文章におけるその単語の前後の文章(文脈)に依存することが必要であると考えられている.

オンロツク/PACEモデルにみる医療福祉統合・2

著者: 近藤克則

ページ範囲:P.240 - P.247

Ⅱ.オンロック/PACEモデルの成果と課題
 Ⅰ部では,オンロック/PACEモデルの構造とプロセスの側面について紹介した.このオンロック/PACEモデルが公認された1997年の財政調整法は,その名称から明らかなとおり,連邦政府の財政支出を抑制することが目的の法律である.当初の予定では,メディケアだけでも法施行後5年間に100億ドル(1兆円)もの費用を削減しようとするものであった.ケアの質の評価研究が盛んなアメリカで,この法においてメディケア・メディケイド医療サービスの供給体として公認された事実は,オンロック/PACEモデルが,ケアの質を保ちながら強力な費用節減効果を実現したと見なされたことを示唆している.
 しかし,その後のオンロック/PACEモデルの拡大のテンポは,当初1998年までに見込まれた100か所の3分の1にしか達していない.その背景に,拡大を阻むなんらかの課題があるからに違いない.

ボランティア:住民に支えられて—諏訪中央病院・3

季節感をはこぶ風—緩和ケア病棟ボランティアの活動

著者: 田辺庚

ページ範囲:P.248 - P.248

 1998年7月,当院に6床の緩和ケア病棟(以下PCU)が誕生しました.発足当時から,外来・入院・在宅のどこでも同じ緩和ケアチームメンバーがかかわるシステムを特徴とし,PCUが死に場所ではなく,どのようなケアを受けたいかの選択肢の一つとして,普段着のまま,自由に住民が利用できるようになることを願っていました.
 この背景には,1989年から当院において活動をしている「生と死を考える会」があります.同会では,職種を超えた勉強会を続けており,院外のメンバーの参加もありました.さらに,増改築計画の中でPCU開設が決定されたのと同時期に,茅野市の住民参加による福祉のまちづくりのプロジェクトに,当院のPCU開設の後押しをするターミナルケア部会が設置されました.このような形でターミナルケアが取上げられ,幅広い分野の視点から検討されたことは,その後の病棟運営にも力強い支えとなりました.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part3・3

在宅医療に求められる競争力

著者: 白石清隆

ページ範囲:P.249 - P.251

21世紀は誰もが安心して老後を迎えられる時代になる?
 介護保険の理念は高齢者が毎日の生活に,誰かの手助けが必要となった時,家族だけではなく社会全体でその苦労を分かち合い,皆で見守り,皆で負担し合っていこうということである.つまり「人に介護をまかせる時代」が来たのである.現在の国民医療費は約30兆円で,その中から介護保険で4兆円,そして社会的入院費1兆円がこの先,削減されていく計画である反面,医療科学の進歩と技術革新により医療費高騰の要因は増すばかりである.将来の国民医療費の総枠固定の概念からいくと,増える部分があれば,当然減る部分が出てくる.この減る部分の犠牲を病院の規模縮小や機能転換に求めてくる.つまり医療単独では縮小しかなく,なんらかの複合事業の選択になると思われる.どう選択するか?ということになれば,「10兆円市場の介護保険」か,「健康日本21の政策」のいずれかの選択肢となってくる.

看護管理=病院のDON・3

変化への対応力

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.252 - P.253

⦿病院界はドックイヤー
 最近「ドックイヤー」という言葉を聴くことが多い.犬の平均寿命は,人間のおよそ7分の1といわれており,「変化のスピードが速く,従来のルールがすぐに通用しなくなる」ことのたとえだという.
 2000年4月に介護保険制度が施行され,同時に診療報酬の改定があった.2001年1月には健康保険法の改正があり,患者さんの一部負担などが変わった.そして,3月には医療法改正法が施行された.短期間に医療にかかわる大きな制度改正が集中し,その内容を正確に理解し,病院が適切に対応することだけでも大仕事である.

総合相談室—退院計画の課題・3

ソーシャルハイリスクスクリーニング導入の組織への働きかけ

著者: 佐原まち子

ページ範囲:P.254 - P.256

 NTT東日本関東病院は,第2次救急指定の急性期医療機関である.昨年,総合相談室において,ソーシャルワーカー(以下SW)と看護婦でソーシャルハイリスクスクリーニングシートならびにその導入システムを共同開発し,モデル病棟においてプリテストを行うことができた.この実践をとおし,病院の組織の中に新たなシステムを作るプロセスについて今回は考えてみたい.

癒しの環境

神々の国の癒し(ネパール)(1)

著者: 森田仁士

ページ範囲:P.257 - P.257

⦿神々の山ヒマラヤ
 ネパールってどこにあるの?なんてよく聞かれますが,三角形の国土を持つインドの北,ヒマラヤ山脈の南側がネパールで,北側はチベット(中国)です.
 今から1億年以上前にはインドはアフリカ大陸にくっついていたのですが,徐々にアジアのほうへ移動しユーラシア・プレートを持ち上げ,その後もインド・プレートがユーラシア・プレートの下にもぐり込み続けたため,ヒマラヤ山脈とチベット高原が形成されたのです.そのためネパールの山岳地帯ではアンモナイトの化石がよく見つけられ,土産物屋でよく売られています.

連載 事例による医療監視・指導・14

医療法人への立ち入り検査

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.258 - P.259

 前回は医療法人制度の基本的な考え方について解説しました.今回は引き続いて,医療法人への立ち入り検査について解説します.
 医療法人が運営する医療機関は,病院,診療所,介護老人保健施設(以下,老健)の三つです.このうち病院については,入院患者も20人以上になり,診療内容も多岐にわたり,多くの外来患者が受診することも予想されるので,医療法で構造,設備,人員配置などが細かく規定されています.診療所については,入院設備のない診療所も多く,病院に比べれば診療内容も限られる場合が多いと考えられるので,病院ほど細かな規定はありません.老健についての基準は介護保険法に定められています.いわゆる医療監視はこれら三つの施設について行われますが,定例の立ち入り検査が念入りに行われるのは病院になります.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第76回

川崎市立川崎病院

著者: 来野炎

ページ範囲:P.269 - P.274

 市立川崎病院は昭和11年,病床数100床弱の伝染病院として開院し,以来昭和20年の総合病院化後も成長を続け,昭和56年に現在の病床数である733床を持つに至った.この都市型大規模総合病院は川崎市の南部地区一帯を診療圏とし,基本設計の始まった平成5年以降は,1日の平均外来者数が1,500人を超える基幹病院として機能していた.
 改築前の本病院は建設年次の異なる大小の棟に各機能が分散しており,施設の老朽化とともに機能配置のわかりにくさが問題となっていた.現行機能を縮小・中断せずに施設を全面的に建替えるには,部分的に新築・移転・解体を繰り返す段階整備案が一般的である.しかし,本計画では敷地に余裕がないこともあり,工期の短縮と明確な部門構成の実現に向け,既存病棟の上部に新棟を張り出すメガストラクチャー構造を採用した計画を行った.

「ケア」の関係性が変わる・3

特別養護老人ホームにおける福祉と医療を取り巻く現状と課題

著者: 西口守

ページ範囲:P.275 - P.278

 社会福祉施設は日本国憲法制定以来,措置をその制度的基盤にして運営してきた.この措置制度について,簡単に説明をしておきたい.
 措置制度というのは,日本国憲法25条に基づき,国民の生存権を保障するものであると考えられてきた.このことを特別養護老人ホーム(以下,特養)に入所するということで考えてみたい.介護保険が始まる前まで,特養への入所に関して原則として,利用希望者と当該施設との直接的な契約関係は発生しなかった.つまり,利用希望者は,直接に当該施設に対して申し込みの意志表示を行うことはできず,また当該施設も直接に利用者に対して入所の受諾または不受諾を伝えることはできなかった.利用希望者はまず,住民登録を行っている市町村に対して,特養へ入所申し込みを行い,市町村は老人福祉法第11条の特別養護老人ホームの入所要件に適格しているかどうかを調査し,その結果適格性を確保されていると判断した場合には,利用希望者の入所依頼を当該施設に行い,施設が状況を判断し入所を受諾するというシステムになっていた.少々回りくどく書いたが,まさにこの措置制度はある意味「回りくどく」,「複雑」なシステムである.

IT革命は病院医療をどう変えるか・2

遠隔医療—沖縄県における離島医療支援情報ネットワークのかたちで

著者: 崎原永作

ページ範囲:P.260 - P.262

 県民は「いつでも」,「どこでも」,「誰でも」適切な保健医療サービスが受けられるよう総合的な保健医療供給体制の確立を目指すとの掛け声のもとで,沖縄県は早くから離島医療支援の施策に取り組んできた.沖縄の地理的特殊性により,遠隔医療支援はいつでも本県にとって重点施策として位置付けられ,数々の試みがなされてきた.ところがその試みは試行錯誤の連続であり,決してすべての施策が十分な成果を上げられたわけではない.失敗に至った原因としてコンピュータの能力,画像処理技術,大容量の情報を圧縮し伝送する技術,そして情報通信インフラストラクチャの整備など当時の科学技術がまだ成熟していなかったとの見方がある半面,利用する現場の視点が欠けていたことも大きな要因といわれている.
 近年のコンピュータ技術の発達の速度は目を見張るものがあり,数年前までは困難であったことが軽々と実現できるようになった.しかし,技術革新があまりに目覚ましいために,ややもすると遠隔医療の論議が技術論にのみ終始する傾向にあることも否めない.

医療経営の総合的「質」の検討・3

河北総合病院における総合的「質」の向上への取り組み

著者: 冨田信也

ページ範囲:P.263 - P.265

「医療の質」の定義
 当院では2000年9月1日にプロジェクトの一つとして,「質の向上委員会」を発足,医師である委員長と組織を横断的に選ばれた委員,事務局スタッフからなるメンバーが選出され,毎月定例的に委員会を開き今日に至っている.事務局は各委員の発言内容の論点整理を議事録で行い,理事長をはじめ経営幹部に回していく.委員会は当院のあらゆる組織活動の「質の向上」に関して今後,影響力ある役割と機能を担って組織の牽引力となるものと考える.
 委員会のメンバーは,医療界の外の事業やサービス分野においては商品やサービスの「質」がどのように考えられ,また定義されてきたかを学ぶために関係する参考文献を読み,自分たちの考え方をつくることから始めた.そして,最初に委員会メンバーが一致し共有する出発点とした定義とは,「良い品質とは要求によくかなっていること」1)である.医療は,サービスという人間と人間の関係においてつくられるから,医療を受ける側の要望や要求に対して,医療者側の専門的知識や技術が適切に応えることができた時,質のよい医療を提供できたことになる.

医療従事者のための医療倫理学入門

14.終末期医療における倫理的決断(2)—判断能力を有する患者の延命治療に関する判断

著者: 浅井篤 ,   大西基喜 ,   福井次矢

ページ範囲:P.266 - P.268

 本稿以降では個々の事例での医療従事者の判断について論ずる.ここでは筆者らが最も倫理的に適切と考える一つの立場を明確にしていく.議論に当たっては,倫理的立場の提示,医療倫理学・生命倫理学において一般的に受け入れられている諸原則(表11〜3))や権利への言及,倫理的立場の正当化と擁護,判断のより所を明示する.予想される反論に言及することで種々の立場も紹介する.

琉球弧から・3

ピンピンパタイ

著者: 天願勇

ページ範囲:P.279 - P.279

□第3の人生
 受精から今年の誕生日まで,私は2万日生きたことになる.沖縄で生まれ育ち,大阪で学んだ.沖縄県立中部病院での臨床研修(レジデント)を修了したのが1万日(27歳),その後,国立がんセンター,亀田総合病院などを経て沖縄に戻り,300床の総合病院を開設した日が,1万5千日(41歳)に当たる.病院が地域に定着するまでの10年間,寝食を忘れ「特色ある病院づくり」に没頭してきた.
 外科医と理事長の二足の草鞋(わらじ)を履き,医療と経営のバランスを取りながら走ってきた.病院は繁盛し,医師以外の仕事で忙殺されそうになったので,50歳を期にメスを置いた.そのとき,ライフワークに選んだのが予防医であった.これまでは,限られた条件のもとで走ってきたが,これからは肩の重荷を下ろし,歩みを緩めてほんとうに好きなことを実現していきたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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