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雑誌目次

雑誌文献

病院60巻5号

2001年05月発行

雑誌目次

特集 病院サービスの新しいメニュー

【てい談】多様化する病院医療

著者: 石井暎禧 ,   細木秀美 ,   大道久

ページ範囲:P.390 - P.396

 大道(司会) 本日は「多様化する病院医療」というテーマで,地域で先駆的な取り組みをされているお二人の先生をお招きし,お話を伺いたいと思います.
 高齢化が進み,また医療が高度化していく中で,病院医療が従来の流れをそのまま継承することは非常に困難になってきました.制度的には病床機能の新たな区分が設けられ,新しい方向が見え始めています.一方,介護保険に代表されるような生活支援のサービス,あるいは在宅での新しい医療の取り組みも本格化しつつあります.そんな中,各病院は,自らの病院に最もなじむ新たな方向性を追求せざるを得ないと思います.

地域リハビリテーション広域支援センター

著者: 石川誠

ページ範囲:P.397 - P.400

 21世紀の超高齢社会において,最大の不安要因となっている介護問題に的確に対応していくため,介護保険制度をはじめとした新たな介護の仕組みが構築されている.この介護保険では,理念の一つに「要介護状態の軽減・予防や在宅における自立した日常生活の重視」と掲げられ,リハビリテーション(以下,リハと略す)重視の原則が打ち立てられている.
 そこで,現在のリハに関する保健・医療制度上のサービスをみると,予防的リハとして老人保健事業における機能訓練事業,治療的リハとして医療保険の診療報酬制度におけるリハ施設により提供されている急性期や回復期リハ,さらに主に介護保険で対応される通所リハおよび訪問リハなどの維持期リハが存在する.しかし,これらのリハサービスを地域ごとに見ると,急性期・回復期・維持期の各ステージにおけるリハの役割が曖昧であったり,質量ともに地域間格差が大きいなど,十分なリハ提供体制が整備されているとは言い難いのが現実である.したがって,介護保険の自立支援,要介護状態の軽減・予防を図るためには,第1に寝たきりなどの発生を可能な限り予防する予防的リハ,第2に障害が発症すれば早期に開始される急性期・回復期リハ,第3に寝たきりなどの進行を阻止する維持期リハを量的にも質的にも充実し,各地域ごとに整備することが緊急かつ重大な課題となっているのである.

「カピオラニ女性センター」—女性の健康のための最良のパートナー

著者: ,   渡辺邦彦

ページ範囲:P.401 - P.403

 米国では,女性に特有のヘルスケア上のニーズを踏まえた女性のためのヘルスケアサービスの重要性が広く社会で認識されるようになり,ここ十数年間,女性を対象とするヘルスケアセンターを設置する都市が急増してきた.ハワイ州のホノルル市でも,1994年,「カピオラニ女性センター」が開設されて,女性の間で非常な好評を博し,多くのクライエントを集めている.

在宅総合ケアセンター

著者: 永野啓輔

ページ範囲:P.404 - P.406

 在宅総合ケアセンター近森(以下,在総センター)は,高齢者および身体障害者の在宅支援を目的として開設された複合型医療介護施設で,その基本方針は①徹底した在宅支援,②リハビリテーション理念の実践,③チームアプローチである.

外来点滴センター

著者: 寺井美峰子 ,   玉橋容子

ページ範囲:P.407 - P.409

 聖路加国際病院では,主に外来の点滴治療を集中的に行う場として,1999年6月に外来点滴センターを開設した.このセンター開設の経過と現状について紹介する.
 数年前から外来点滴センターの必要性が認識され,ニーズ調査や設置可能な空間の模索が行われていた.一方で,1999年4月から土曜日の外来休診が実施されることになり,1日当たりの外来患者数と外来担当医師数が増加することから,診察室と処置室の不足が予測され,対策を考える必要があった.検討の結果,検体検査部門の業務効率化に伴って出現した余剰スペース(約170m2)を利用して,外来点滴センターを開設することが決定した.

日帰り手術

著者: 丹羽英記

ページ範囲:P.410 - P.412

 最近わが国でも日帰り手術を行う施設が増加している.2000年4月の診療報酬改定で短期滞在手術基本料が新設され,さらに注目が集まっている.多根総合病院では,1998年10月に日帰り手術センターを開設し,1,000例を超える日帰り手術症例を経験しているが,センター運営のポイントや現状および今後の展望について述べたい.

東洋医学

著者: 花輪壽彦

ページ範囲:P.413 - P.415

 漢方がブームといわれるようになって久しい.「日経メディカル」の最近の統計によれば,現代医学を専門とする医師でも,4人のうち3人までは漢方薬を使ったことがあるという.そのくらい,今では漢方薬が広く使われているということになる.一方で全医薬品に占める漢方薬の割合は1.5%未満で,漢方治療が十分根付いているとはいえないのが現状である.
 北里研究所・東洋医学総合研究所は,昭和47年に設立された,わが国初の近代的な東洋医学を研究する機関で,来年には創立30周年を迎える.

保健サービス

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.416 - P.418

 20世紀のわが国の保健・医療・福祉政策を振り返ると,特に戦後の高度経済成長による生活環境の改善や国民皆保険制度の充実などにより,国民の健康水準は向上し,平均寿命も世界最高となるなど大きな成果を上げてきた.しかし,経済成長率の鈍化や少子高齢化の進展,疾病構造の変化,先端医療の進歩などにより医療保険や年金制度,医療制度の大きな変革期を迎え,今後,病院が地域に提供するサービスもその内容や質で大きく変化しなければならない.病院が地域に提供するサービスは多岐にわたるが,その中で保健サービスは今後よりいっそう重要な位置を占めると考えられる.
 そこで本稿では最初に聖マリア病院の保健サービスの歩みについて概略的にふれ,次に今回保健指導センターを新設した背景要因などについて述べる.

特定機能病院の退院支援

著者: 田城孝雄 ,   若林浩司 ,   柳澤愛子 ,   大内尉義

ページ範囲:P.419 - P.421

特定機能病院
 医療法第16条に,「特定機能病院は高度の医療を提供すること,高度の医療技術の開発および評価を行うこと,高度の医療に関する研修を行わせること」と規定されている.国公私立大学医学部附属病院本院と,国立がんセンター,国立循環器病センターの二つのナショナルセンターが,特定機能病院の指定を受けている.
 特定機能病院の性格から,難病,重症の患者が多く,診療圏が広いという特徴を持っている.高度先進医療の開発と提供という社会的使命を持っているため,患者は完治して退院するより,障害を抱えたまま退院せざるを得ない場合が多い.また,神経難病,膠原病,慢性心不全,慢性呼吸不全のように在宅医療の必要な患者も多い.さらに救命救急医療の進歩により,脳血管障害や事故を救命した後,長期間のリハビリテーションの必要な患者が多く,在宅医療への移行が困難な事例が多い.

救急医療の特化

著者: 須古博信

ページ範囲:P.422 - P.423

済生会熊本病院の概要
 済生会熊本病院は,熊本市(人口65万人)の南部に位置し,平均在院日数12.7日,紹介率43.9%,職員数864名,1日平均急患数41.7名,外来入院患者比率1.48の急性期特定病院加算が算定できる病院である.病床数400床,診療科目9科の,いわゆる総合病院ではなく,臓器別センター制を打出し,専門特化を進めてきた病院である.
 現在,救急センター,脳卒中センター(脳外科,神経内科),心臓血管センター(心臓外科,循環器内科),消化器病センター(外科,消化器内科),腎センター(泌尿器科,腎内科)など八つのセンターを中心に診療を行っている.

緩和ケアの新しいモデルを目指して—地域社会とともに運営する緩和ケア施設

著者: 加藤恒夫

ページ範囲:P.424 - P.426

かとう内科並木通り病院の沿革
 筆者たちは現在でこそ「病院」という名前を使っていますが,これは「緩和ケア施設を開設するためには病院でなければならない」という,医療法上の規定によりそうせざるを得なかったまでのことです.昭和54年,「医療をできる限り人々の生活に近いところで提供する」ことを目標に,15床のベッドを有する「かとう内科診療所」として出発した筆者たちは,その後昭和62年に訪問看護を開始しました.この時点では,まだそれは診療報酬としては認められておらず,「家庭で生活する患者さまとご家族を総合的に診(看)る」という筆者たちの診療理念に基づいて,いわばボランティアとして開始したものでした.
 その後平成2年,岡山県では初めての訪問看護ステーション「まいんど」を,次いで平成4年には在宅介護支援センターおよび高齢者デイケァを開設し,在宅ケアの体制を整備していきました.

地域貢献をどう実践するか

著者: 清水茂文

ページ範囲:P.427 - P.430

地域から消える老人
 「農村地域から“消える老人”」という演題を発表したのは,1996年の第46回日本病院学会であった.当時筆者は佐久地域の中山間部にある,小さな診療所に勤務していた.診療圏は過疎高齢化が進み,介護問題が大きな地域課題になっていた.地域医療を展開するうえで高齢者介護の問題,とりわけ在宅介護(ケア)に力を入れて取り組んだ.この点で一番困難を感じたのは,独居または老夫婦2人暮らし老人,痴呆性老人のケアであった.
 これらの老人は一定の生活困難が発生すると,住み慣れた地域を離れ都会の子どものところか,老人施設に消えていった.こうして消えた21名の老人を追跡したのが,先の報告である.関係者が協力し全力を尽くしても,支えきれないのである.「…仕方ないよ」といってムラを後にする老人たちを見送るたびに,つらい気持ちになった.

グラフ

救急・周産期医療を軸に地域の医療を支える—京都第一赤十字病院

ページ範囲:P.377 - P.382

 JR京都駅より車で5分.臨済宗の大本山であり,京都五山にも列せられる東福寺の大伽藍の目と鼻の先に京都第一赤十字病院はある.
 同院は昭和9年に日本赤十字社京都支部病院として開設.第二次世界大戦後は建物を進駐軍に一時接収され,移転を余儀なくされていたが,昭和30年に接収が解かれ洛南の地での診療を再開し現在に至っている.開院以来,赤十字社の「人道と奉仕の精神」に則って最先端の高度医療を提供するだけでなく,早くより健診センターを設置(昭和49年)し,2次予防にも努めるなど,文字どおり地域の中核病院として地域住民の健康を支え続けてきた同院だが,建物の老朽化・狭隘化が深刻になり,平成8年より本館の新改築工事に着手することとなった.改築工事は従来の診療業務と併行する形で実施され,平成12年3月,2期4年間にわたる工事は竣工した.

HOSPITAL INDEX

高度先進医療医療機関・2

ページ範囲:P.384 - P.384

特別寄稿

「健やか親子21」と医療者の役割

著者: 藤崎清道

ページ範囲:P.431 - P.437

 2000年11月17日に「健やか親子21検討会報告書」が公表された.本報告書は厚生省「健やか親子21検討会(座長:平山宗宏恩賜財団母子愛育会日本こども家庭総合研究所所長)」により,同年2月3日より10月25日に至る計9回の会議での議論を経て取りまとめられたものである.「健やか親子21」は20世紀中に関係者の努力により達成したわが国の母子保健水準の高みを踏まえて,21世紀初頭に取り組むべき方向を明示したものであり,今後の母子保健行政の指針となるものである.本稿では,その概要を紹介するとともに,医療者に期待される役割について述べる.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part3・5

病院運営における地域ニーズの把握と院内情報活用

著者: 江崎芳弘

ページ範囲:P.438 - P.439

 ⦿変革期の医療
 十数年ぶりに医療現場に戻った時,医療界は激しい荒波にもまれていた.それまで,救急病院勤務を皮切りに公務員・民間企業など様々な職種を経験することができたこともあり,今回,ある意味では多少なりとも客観的な視点で医療界をとらえることができた.
 昨今の医療経営セミナーの案内を見ると,「選ばれる病院になるために!」とか「生き残りをかけて病院の方向性を明確に!」など大見出しで出ている.筆者は,自院の方向性を決定するためのポイントは,①医療行政・地元行政の動向,②地域住民のニーズ,③自院の診療機能の3点を的確に把握・分析することにつきると思う.幸い,医療行政については,医療法改正を含め次々と見通しが打ち出されている.問題は,選ばれる病院になるための一つの指標となる「地域ニーズ」を具体的にどのような形で,われわれ医療機関が把握するかという点にある.

看護管理=病院のDON・5

マネジメント技法への関心度

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.440 - P.441

⦿マネジメント用語の氾濫
 最近の病院運営の流行語は,クリティカルパス,オーダリングシステム,リスクマネジメント,アウトソーシング,SPD (物品流通管理),EBM (Evidence-Based Medicine)などだろう.どれもカタカナか略語であり,聞いたことがあっても正確に説明するのはなかなか難しい.これらは,ほとんどがマネジメントに関する用語である.
 書店の「ビジネス」コーナーの本の背表紙を目で追うと,やたらとカタカナや略語が多い.最近は,「シックスシグマ」とか「バランス・スコアカード」などが目立つ.シックスシグマが,製造業の製造過程で発生するミスやエラーあるいは欠品率を最少化する技法であり,QC (Quali—ty Control)やTQM (Total QualityManagement)と呼ばれる品質向上技法の応用であり,日本生まれの米国育ちの技法であると知る人は,それほど多くはないだろう.

総合相談室—退院計画の課題・5

ソーシャルハイリスクスクリーニングの試行

著者: 原田とも子

ページ範囲:P.442 - P.443

 これまでソーシャルハイリスクスクリーニングの導入の背景,システム開発,スクリーニング基準の開発について述べてきた.今回は,モデル病棟でのスクリーニングの試行結果から,その有効性について考察したい.

ボランティア:住民に支えられて—諏訪中央病院・5

みんなが楽しめる手作りの庭—グリーンボランティアの活動

著者: 田辺庚

ページ範囲:P.444 - P.444

 当院では平成10年の増改築に伴い,建物の裏手に広がる南庭園についての話し合いが持たれました.
 「美しい八ヶ岳山麓が一望できる当院にふさわしい庭とは?」,「地域住民にも自由に楽しんでいただける開放空間にできないか?」という課題に対して,「運動療法ができる直線コースを設置したい」,「作業療法に園芸を取り入れ,車いす利用者もかかわれるように高低を作り,リハビリテーションの要素を加味した庭園にしたい」,「現在ある木々は残し,鳥が集まり,蝶が乱舞する庭がよい」,「一部の人だけではなく,多くの人が自由にかかわり,楽しめる庭にできないか」など,様々な立場からの意見が出されました.

癒しの環境

園芸と癒し—園芸療法

著者: 高砂隆人

ページ範囲:P.445 - P.445

 園芸療法は,疾病の治療に直接薬草のように作用するものでありませんが,植物を育てるという行為が医療,福祉や教育などの現場で,人々が健康を得ることに結びつく一つの手法となることを目的としています.
 病院をはじめとする医療の分野で,この園芸療法がどのように導入されつつあるかをご紹介します.

連載 事例による医療監視・指導・16

診療録などの改ざんが疑われた事例

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.446 - P.447

 医師法の規定では,診療した医師はその内容を遅滞なく診療録(カルテ)に記載することが義務づけられています.私どもが定例の立ち入り検査(医療監視)で病院に伺ったときには,必ず診療録はチェックさせていただきます.医療法には診療録の記載方法について明確な規定はありません.ただし保険診療については健康保険法に基づく療養担当規則に,様式の規定があります.しかし書き方について,細かく定められているわけではありません.
 診療録の他にも,放射線の照射録など,関係する法規に基づいて記録が必要なものもあります.また法に明確な規定はありませんが,通常入院中の患者さんに関しては看護記録が整備されているはずです,診療録以外のこれらの記録についても,診療の諸記録として,医療法に基づいて保存が義務づけられているものもあります.当然のことながら,医療監視の際には,これらの諸記録についても拝見させていただきます.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第79回

米国における新しいヘルスケアの潮流・設計・建設

著者: ロナルドL.スキャッグス

ページ範囲:P.458 - P.465

本論文は米国建築家協会の会長として日本建築家協会から招かれたロナルド・L・スキャッグス氏(写真1)の東京における講演を基にまとめたものである.訳者:長澤 泰(東京大学教授)

「ケア」の関係性が変わる・5

サービスの「提供者—利用者」関係を改めて見直す—専門的対人援助サービス業としての保健・医療・福祉サービス

著者: 本多勇

ページ範囲:P.466 - P.470

 筆者は,今回の「ケアの関係性が変わる」シリーズでは,戦後の社会福祉の制度や政策の流れを簡単に概観しながら,そのなかで利用者をどのような立場の者としてとらえ,これからの介護保険時代における新しい保健・医療・福祉サービスのなかで,利用者(患者)をどうとらえてサービスを提供していくかを論じるつもりであった.しかし,原稿作成中,舌がんが見つかり,急遽入院および手術をすることとなってしまった.本連載コーディネータの島津望助教授や加藤尚子講師,西口守講師にご配慮いただき,筆者は5回目を担当させていただくことになった.
 奇しくも筆者は約2か月間,病院において入院患者として入院生活を送ることとなった.病院という医療機関の中で療養生活・集団生活で,感じたこと考えたことを中心にしながら,筆者の研究領域である社会福祉・高齢者福祉の領域における変化も念頭におきつつ,この論考を書き進めることとしたい.入院生活ではいろいろな示唆を得ることができた.もちろん患者として入院し治療を受けリハビリテーションをしたわけだが,「病」の体験,「入院患者」役割,集団生活,医療者—患者関係など改めて多くの研究課題を見つめ直す時間にもなった.本稿の書き始めも入院中であった.病院という場で,雑誌「病院」の原稿を書く,という妙にリアルな体験をすることができた.

IT革命は病院医療をどう変えるか・4

介護サービスを円滑に進めるための情報の共有化とTV電話の活用

著者: 折茂賢一郎 ,   黛輝雄

ページ範囲:P.448 - P.451

 介護保険制度が開始されてはや1年余が経過した.本制度下でのサービスを円滑に進めるためには,これにかかわるすべての職域が意思疎通を十分に取ることができることである.ケアプラン(介護サービス計画)の作成でも,また,サービスの提供状況の確認においてもケアマネジャー(介護支援専門員)を中心とした情報の共有化は必須事項である.しかし,サービス提供事業者も日常業務に追われ,介護支援事業者も各ケアマネジャーごとに50人にも及ぶケアプランの作成とモニタリングに終始する日々であれば,これらの職種を一堂に集めてのケア会議(サービス担当者会議)を行うことは容易ではない.
 今回,面積は広いがほぼ閉鎖された地域社会である六合村において,介護支援事業者である六合村在宅介護支援センターを拠点とし,村内の福祉・保健の中枢である役場(六合村保健センター)と,サービス提供事業者である六合村社会福祉協議会や六合村診療所,六合村老人保健施設「つつじ荘」とを,ISDN回線を用いたTV電話システムで結び,さらに事業者間の情報伝達や文字での会議を行うためのグループウェアソフトを利用したパソコンのネットワークを構築した.さらにKuni—Careという介護にかかわる情報共有のソフトを開発し,利用者の個人情報のデータベース化を図り,クローズドのネットワークにおいて各パソコンからいつでもどこからも供覧できるようなシステムを開発し実施してきた.本稿では地域包括ケアの現場におけるマルチメディアの利用の実際1,2)と今後の展望について報告する.

医療経営の総合的「質」の検討・5

医科大学附属病院における改革の実践

著者: 松井道彦

ページ範囲:P.452 - P.454

 1993年(平成5年),学長の諮問委員会として若手の教授を集めて「慈恵の将来を考える委員会」が発足した.この委員会は1年間の審議を経て「最高かつ最善の医療を提供し得る附属病院を有する医科大学」というスローガンを掲げ,旧来の講座制の下に行われてきた教育・研究・診療および管理運営のすべてが,新しい時代の教育・研究・診療すべての変化のニーズに対応が難しくなり,新しい体制で臨まなければならないと答申した.
 その骨子は,教育・研究の場としての「大学」と診療を中心として臨床教育・臨床研究を展開する場としての「病院」を分離して,それぞれに独立した管理体制を持つことで,ともに緊張感を持った有機的な組織運営を行い,そして堅実な基礎医科学研究と臨床医科学研究双方に裏打ちされた最先端医療を実践するとともに,世界に伍する良医の養成と臨床研究を進めることを慈恵大学の将来目標とする内容である.

医療従事者のための医療論理学入門

16.終末期医療における倫理的決断(4)—判断能力を有する患者の延命治療に関する判断—自殺の倫理的許容性について

著者: 浅井篤 ,   大西基喜 ,   福井次矢

ページ範囲:P.455 - P.457

 前回は,自殺とは何か,治療拒否は自殺にあたるのかについて考察した.そして,自殺を,人が一義的な意図がなんであれ,1)確実に死ぬとわかっている行為を行うこと,2)行わなければ確実に死ぬとわかっている行為を行わないこと,または,3)行わなければ確実に死ぬとわかっている行為を,他者にやらせないこと,と定義するのが最も適切であり,治療拒否と自殺には倫理的差異は認められないと結論した.本稿では,自殺が倫理的に許容される否かを検討し,O氏の治療拒否の倫理的正当性に関する結論を述べる.

琉球弧から・5

美しのジパング「琉球」

著者: 天願勇

ページ範囲:P.471 - P.471

□「ちゅらさん」
 21世紀のNHK朝ドラ第一弾が放映された.戦争のない平和な新世紀を願ってやまない沖縄と東京を舞台に,沖縄の人と文化と自然の魅力を,沖縄の大家族の力強い絆のなかで描く.太陽のように熱く,元気一杯なドラマ「ちゅらさん」は「美しい」という形容詞で,ヒロイン古波蔵恵里の「心と生き方」にふさわしい言葉である.
 物語は沖縄本土復帰の年から,八重山諸島の小浜島を舞台に始まる.ヒロインは看護婦として波瀾万丈の半生を送るなか,人々の心に「南の島の潤い」を与えていく物語で,医師の夫とともに,心のケアを大切にする医療活動を展開してゆく.ヒロインが生まれた年,1972年,沖縄ではドルは円に,車は右通行から左通行に変わり,佐藤栄作総理大臣(当時)は「沖縄の日本復帰を実現しなければ,日本の戦後は終わらない」と宣言した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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