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雑誌目次

雑誌文献

病院60巻9号

2001年09月発行

雑誌目次

特集 検証・変革期の病院経営

検証・病院経営の現況と問題点—社団法人日本病院会

ページ範囲:P.758 - P.765

 日本病院会には会計経理研究会という組織があって,公的・私的病院別に,また地区ごとにアンケートを行い経営分析を集計していた.しかし,現在は行われていない.一方,医療経済・税制委員会は平成7年度から病院経営にまつわる消費税問題を取り上げ,アンケートを行ってその「損税」の現状を広く社会に訴えてきた.それと同時に,病院経営についても関心を払い,経営分析に堪え得るようなデータをアンケートの中に加えて,その集計も報告してきた.
 会計経理研究会の集計表は力作であり,これを資料棚の片隅に埋もらすには余りにも惜しい.偶々,雑誌「病院」からの依頼があったので,その一部を紹介し,併せて医療経済・税制委員会の資料をつないで,最近15年間の病院経営を眺めてみたい.この医療経済・税制委員会の資料は「病院経営分析報告書Ⅰ」で,本年1月にまとめたものである.平成9年より毎年,会員病院にアンケート調査をして500を超える公私の病院から回答を得ている.今回は平成11年度の決算分析を主題としているが,実は平成9,10,11年度の3年間連続して,同じ一般病院が209病院回答している.それゆえ,この209病院について定点調査として分析した.

検証・病院経営の現況と問題点—社団法人全日本病院協会

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.766 - P.768

 全日本病院協会では,平成5年より会員病院を客体に,病院経営調査を行っている.
 民間病院主体の当協会としては,診療報酬改定の影響,病床種別・病床数の変化,収支の変化などをできるだけ早く把握するとともに,会員へのフィードバック,各関係機関への資料提供,各種要望への反映などの資料としている.

検証・病院経営の現況と問題点—社団法人全国自治体病院協議会

著者: 根岸勇夫

ページ範囲:P.769 - P.772

 現在,国・地方合わせて666兆円と見込まれる財政赤字を抱えるなど,非常に厳しい財政状況の中で,経済財政運営の構造改革に関する基本方針(「骨太の方針」)に持続可能な医療制度改革の方向として,医療費総額の伸びの抑制や医療サービスの効率化を図るための診療報酬体系の見直し,株式会社方式による病院経営,保険者と医療機関の直接契約などの取り組み方針が閣議決定された.また,2002年を目標とする高齢者医療制度の見直しのための医療保険制度の改革も急務になっているなど,今後の医療のあり方の根幹にかかわる課題が次々と提起されている.
 このような厳しい経営環境の下,自治体病院は,これまで一般病院の他,地域における医療ニーズに応じ,他の医療機関では果たすことができない不採算医療を担うとともに,近年特に社会的要請の強い救急,がん,周産期などの高度・特殊・先駆的医療,ならびに精神,結核,感染症および老人医療,生活習慣病の予防を積極的に推進している.今後とも自治体立病院としての使命である良質な医療の提供と公共の福祉の増進を図っていくためには,その経営基盤をいっそう強固なものにしていくことが不可欠である.

検証・病院経営の現況と問題点—社団法人日本医療法人協会

著者: 安田順次郎 ,   岡田雅子

ページ範囲:P.773 - P.776

 社団法人日本医療法人協会は,昭和62年(昭和61年度)より医療法人の経営実態調査を実施している.
 当協会としてはじめて実施した昭和62年(昭和61年度)調査の序文に当時の桑名昭治会長は,以下のように記している.

急性期病院の経営—知彼知己 勝乃不殆 知地知天 勝乃可全

著者: 池澤康郎

ページ範囲:P.777 - P.783

問題の設定
 1.急転換しつつある昨今の医療制度の中で,一般(総合)病院がたくましく経営し,単に生き残るだけでなく発展していくにはどうすればよいか? が筆者に与えられたテーマである.
 各病院の生い立ちや歴史はそれぞれ全く別々であって,十把一紮げに一般病院の経営方針を論ずるわけにはいかない.また,最近の医療制度や診療体制の様々な変更や改定のすべてについて対応策を直ちに立てる必要はないし,実際に立てる能力もない.すなわち,ここ数年にわたって厚生労働省(旧厚生省)がしきりに医療法を改定したり,社会保険診療報酬体系をもてあそんだり,最近は厚生労働省が「医療制度改革の課題と視点」を掲げたりしていて,その意図は鮮明に察知できるものの,自分の病院が当面,一所懸命に対応しなければならないのはその一部である.

社会の変革と病院経営

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.784 - P.788

聖域なき構造改革と病院経営
 小泉純一郎内閣の発足に伴い病院経営を取り巻く環境は,大きく変化しようとしている.平成11年度「国民医療費」は,前年度より3.7%増加し30兆9,337億円となり,初めて30兆円台に達し,対国民所得費も8%を超えた.このまま推移すると,平成37年度に国民医療費は81兆円,老人医療費は45兆円に達するという厚生労働省の推計もある.
 このような国民医療費の伸びに対して,経済財政諮問会議(議長:小泉首相)は6月21日,第11回会合を首相官邸で開き,構造改革の方針となる今後の経済財政運営に関する基本方針を正式に決定し,これを6月26日に閣議決定した.「基本方針」は,構造改革(経済社会の活性化,豊かな生活とセーフティネットの充実,政府機能の強化と役割分担の抜本的な見直し)のために,①民営化,規制改革,②チャレンジャー支援,③保険機能強化,④知的資産倍増,⑤生活維新,⑥地方自立・活性化,⑦財政改革の七つの改革プログラムを示した.この中で,医療制度の改革に関しては,医療機関,保険者,国民のそれぞれが痛みを分かち合い,医療サービスの効率化に取り組み,質が高くむだのない医療を実現するため,「医療サービス効率化プログラム(仮称)」の策定を主張するとともに,医療費総額の伸びの抑制方針が示された.特に,「高齢化の進展に伴って増加する老人医療費については,経済の動向と大きく乖離しないよう,目標となる医療費の伸び率を設定し,その伸びを抑制するための新たな枠組みを構築する」とされている.

変革期に求められる病院経営者の資質

著者: 谷田一久

ページ範囲:P.789 - P.792

 病院経営者の資質を論じるには筆者は若すぎるような気がする.学問的に医療経営学の体系を未だに修めているわけでもなく,また,先人たちのように多くの病院経営者と知遇を得ているわけではない.わずかばかりの経験と知識でこのようなテーマに挑戦することの無謀さを最初に断っておくことにしよう.
 現実の経営,あるいは実在の経営者の行動から病院経営担当者の望ましい態度や行動を導き出したいところではあるが,そうもいかない.そこで,病院の経営担当者に求められる基本的な考え方について,日頃,気付いている点を箇条書きにまとめてみることとした(表).組織のリーダーとして,そして,地域のリーダーとして当然身につけていることが望まれる資質というものは数多くあることであろうが,ここに上げる項目は,筆者なりに優先順位が高いと判断した項目である.あるいはまた,これからの環境変化にあって,ぜひとも考えていただきたい問題提起である.

変革期の新たな戦略—「地域包括医療」と「急性期医療と慢性期医療を意識した医療」の実践

著者: 奥田聖介

ページ範囲:P.793 - P.795

久美浜町国民健康保険久美浜病院の概要
 久美浜町は,京都府の最北西部に位置し,西は兵庫県に,北は日本海に面し,人口約12,200人,面積145km2の1郡1町の町である.高齢化率は29.8%と極めて高いが,100歳以上の高齢者が10名も在住される長寿の町でもある.
 久美浜町国民健康保険久美浜病院は町内の唯一の病院で,昭和56年に開院し,まだ歴史の新しい病院である.

変革期の新たな戦略—存在し続けるために

著者: 植松嵒

ページ範囲:P.796 - P.797

変革期の認識
 医療業界が変革期を迎えたといわれて久しいが,21世紀に突入した現在,まさに変革期,激動期というのを肌で感じています.振り返ってみれば,医療業界は医療という特殊性(?)がゆえに永年の間,国家の手厚い庇護を受けてその制度を育んできました.他の産業界においてはずいぶん昔に自らが好むと好まざるとにかかわらず変化や変革の嵐に襲われ,業界の構造や秩序の再構築を迫られたものです.筆者は他業界からこの業界に移って7年になりますが,ようやく他の産業界から20〜30年遅れてこの業界にも本当の意味での変化・変革の波が押し寄せてきたか,という感じです.
 ところで本文に入る前に株式会社麻生飯塚病院の概略を簡単に紹介させていただくと表のとおりです.

変革期の新たな戦略—診療部門の分割と病棟再編成

著者: 青山貞利

ページ範囲:P.798 - P.799

津軽保健生活協同組合の歴史と現勢
 健生病院の経営母体である津軽保健生活協同組合(以下,津軽保健生協)は,1952年2月に創立された.「働く者の健康とくらしを守るため」に,初代理事長となった津川武一医師が開業していた津川医院を健生医院と改称し,青森県内最初の医療生協の誕生となった.創立当時は「組合員数800名,出資金40万円」と小規模ではあったが,半世紀近く経過した本年4月末現在では,「組合員数57,031名,出資金総額8億9千万円以上」にまで拡大してきている.
 現在二つの病院(健生病院282床,藤代健生病院250床)と五つの診療所(うち一つは有床診18床)があり,診療圏はほぼ津軽一円に及んでいる.また訪問看護ステーション(6か所)とヘルパーステーション(1か所)と在宅介護支援センター(1か所)もあり,さらに設立時法人としては分かれたが,社会福祉法人が二つある(一つは精神科関連の生活訓練施設・地域生活支援センター・グループホームなど,もう一つは保育園)(図).健生病院は津軽保健生協の中心であり,現在職員数は412名(うち医師数は37名,ただしパート医は除外),外来患者数は1日平均805名(2000年度)である.現在の診療科は「内科・外科・整形外科・精神科・小児科・産婦人利・眼科・麻酔科・病理科」の9科である.

変革期の新たな戦略—大病院への対抗策としての真の病診連携強化策

著者: 野村秀洋 ,   今村英仁 ,   今村一英

ページ範囲:P.800 - P.802

 2001年3月1日より第4次医療法改正が施行された.21世紀医療改革のスタートである.病床数にかかわらず,病院にとっては今まさに大変革の厳しい時代の真只中にある.ここ4〜5年の問に病院の機能類型化は確実に進められることは容易に想像できる.その中において今や医療経営は保険や福祉を取り込んだ大きな流れの中にあり,中長期的方向性を見据えた経営戦略の策定は不可欠となっている.
 財団法人慈愛会今村病院は内科,外科,産婦人科を主たる診療科とする153床の典型的な都市型中小病院の一つである(表).中小病院が診療所と大病院(国公立病院・地域医療支援病院・200床以上の民間病院)の狭間で,患者自己負担増の時代に,今後その存在意義を確立して生き残ることは極めて厳しいと言わざるを得ない.このような厳しい条件下において本院が21世紀の新しい医療改革を乗り切るために,「病院の機能強化策としての病診連携」を平成10年より積極的に推進してきたので,その実績と新たなる対策について述べる.

変革期の新たな戦略—病院総合力の発揮に向けて

著者: 坂梨壽恵夫

ページ範囲:P.803 - P.805

病院設立から現在までの概要
 父の医業を継ぎ,昭和49年に坂梨内科医院として有床診療所を開設,2年後病院へと改組,阿蘇内牧の温泉地帯にあるという立地条件を生かし,機能回復への効果が期待できる天然温泉利用のリハビリテーション機能を持つ病院として整備,地域の医療ニーズに応える形で,救急医療,老人医療,デイケアなどの在宅部門,人工透析部門,健康診断部門の整備ならびに病床の増床を行ってきました(表1).建物関係については,療養型病床群規格の法整備以前より,療養型病棟の新築工事に着手,このための苦労もありましたが,病棟完成後,外来治療棟,厨房その他病院のすべてのリニューアル工事も竣工し,病室病床は一般病室も療養病室も1床平均8m2以上となるハードウェアの整備を行ったところです.竣工時は,余裕スペースを持つ施設整備という概念での整備でしたが,現在では手狭に感じるようになってしまいました.
 ソフトウェアについては,阿蘇温泉病院では,医療人として,まずなんといっても「よりよき人間性」といったものが必要であり,これなくしては,「よりよき医療の提供」はあり得ないという考えから,あいさつに始まる接遇,基本マナーを重視した取り組みをしてきました.当院では,「よりよき人間性」を具現化する方法の一つとして,その出発点としてオアシス運動(「オはようございます」,「アりがとうございます」,「シつれいします」,「スみませんでした」)の励行,「あいさつ」という形から人っていくことを実行していますが,病院を訪問される方から,「こんにちは,といったあいさつの声をかけられて気持ちがよいですね」といった声をよく耳にします.幼い頃よりあいさつを大切にする当地の風土に育ったという土地柄もあるのだと思いますが,患者さん,あるいは他者に対して思いやりのある従事者が多いことを感謝しています.このようにして全従業員が支え合い,力を合わせることで,病院の業績が順調に伸展してきたのだと思います.現在までのところで,急性期から慢性期,介護への対応,また退院退所後や在宅のニーズに対応するプログラムまで,ひとまず整備できたということになりますが,当院の置かれた地域性から,自己完結型の整備となった感があります.いずれの部門についても,これからも引き続きいっそうの充実強化が必要であると認識しています.

グラフ

地域の健康に寄与する医療・福祉・体制を整備—川崎社会保険院/川崎社会保険介護老人保健施設「サンビュー川崎」/健康管理センター

ページ範囲:P.745 - P.750

 神奈川県川崎市は,北は東京,南は横浜市に接し,東京湾に浮かぶパークエリア「海ほたる」にほど近い地にある.この川崎市東部,羽田空港に発着する飛行機が見える位置に,新装の川崎社会保険病院が平成10年10月竣工.まず旧健康管理センターを取り壊し新病院の敷地に当てることで,病床数を削減せず,診療を継続しながらの建て替えを可能にした.平成13年3月には,病院と同一敷地内に川崎社会保険介護老人保健施設「サンビューかわさき」,健康管理センターが完成した.

HOSPITAL INDEX

高度先進医療医療機関・6

ページ範囲:P.752 - P.752

●2001年2月28日の中医協で承認された高度先進医療
・肝癌に対する高周波焼灼療法〜適応疾患:原発性肝癌,転移性肝癌.治療のポイント:ラジオ波発生装置をもちいて肝臓癌 を焼灼し治療する方法.高度先進医療適用:平成13年3月.特定承認保険医療機関:埼玉医科大学附属病院
・成長障害のDNA診断〜適応疾患:特発性低身長症.治療のポイント:特発性低身長症の患者(成長ホルモンが正常値である 低身長の患者)の血液をもちいて遺伝子を解析し,成長ホルモンとその受容体の異常を診断する.高度先進医療適用:平成13 年3月.特定承認保険医療機関:神戸大学医学部附属病院
・エキシマレーザーによる治療的角膜切除術へ適応疾患:角膜ジストロフィー,帯状角膜変性.治療のポイント:角膜表層の 混濁による視力低ドをきたす上記の疾患に対して,エキシマレーザーをもちいて角膜の一部を切除し,混濁を取り除く治療 法.高度先進医療適用:平成13年3月.特定承認保険医療機関:山梨医科大学附属病院

対論

地域医療の視座をめぐって・2

著者: 増田進 ,   佐藤保生

ページ範囲:P.806 - P.811

(8月号より続く)
 編集部 地域で保健医療を展開するに当たって,公立病院の場合は首長あるいは自治体との関係を無視できないと思います.
 まず,その辺をお話いただきたいと思いますが,佐藤先生は結局,町長選の絡みで,病院長を辞められたのでしょうが,それは首長から辞めるように勧められたわけですか.

ボランティア:住民に支えられて—諏訪中央病院・9

自然体で行う自己実現—介護のボランティア活動

著者: 田辺庚

ページ範囲:P.812 - P.812

 1995年の阪神・淡路大震災以来,わが国のボランティア活動への参加は多岐にわたり,関心度も高まってきたように感じます.ボランティア活動に関心や意欲を持ちながらも,具体的な行動に一歩踏み出すきっかけがつかめないままいる方が意外と多く,グループで声かけ合つて,ボランティア活動を始めることが多いように思います.意欲や時間があるとしても「はじめの一歩をどう踏み出すか」は決して容易なことではないと思います.そのような中で今回は,個人で活動しているAさんをご紹介します.
 Aさんは信州に秋風が吹きはじめた9月16日,履歴書持参でボランティアを申し込みにおみえになりました.当院では申し込み者の意向をうかがい,受け入れの調整を行っておりますので,履歴書までは求めておりません.履歴書をお持ちになったことからも,律儀なお人柄が感じられました.定年退職後ということもあって社会的にも自立されており,予測されたとおり患者様はもとより,スタッフにとってもありがたい存在となっています.実習学生にも人生の先輩として暖かく見守って,気づかれないよう支援して下さることもありがたく思っています.

癒しの環境

サバンナ—極上の癒し空間

著者: 畠山真一

ページ範囲:P.813 - P.813

「一度アフリカの水を飲んだものは,再びアフリカの地に帰ってくる.」(アフリカの諺)
 17年前に初めて東アフリカを訪れてから,私はすっかりその魅力に魅せられてしまった.以来2年に1度は東アフリカに出かけ,のんびりサファリを楽しんでいる.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part3・9

事務長に求められる責務

著者: 手島厚

ページ範囲:P.814 - P.815

 平成12年度は,4月1日から介護保険制度の施行と診療報酬制度改定が同時に実施され,さらに年明けには健康保険法の一部改正と第4次医療法改正が行われるなど,まさに制度改正に翻弄された1年であった.
 これらの制度改正は特に病院の経営環境を大きく変え,規模や診療機能など個々の病院が持つ条件により,進むべき方向をほぼ決定付けることとなったが,制度改正はこれにとどまらず,さらに平成14年度へ向け,老人医療制度の改革を柱とする医療保険制度抜本改革の準備が着々と進められているようである.

看護管理=病院のDON・9

変革期の人材マネジメント

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.816 - P.817

⦿人材育成の課題
 「事業は人なり」という言葉がある.たぶんどのような事業でも,人が成し遂げるものであるということや,事業の成否は人によるということを意味するのであろう.どのような組織でも,自らの組織を維持・発展させるために自らの努力で人材を育成しようとする.
 各組織が業務時間や資源を投入しているにもかかわらず,人材育成に失敗する場合のほうが,成功する場合より多いし,人材育成のための方法論が確立しているわけでもない.

連載 事例による医療監視・指導・20

医業の停止

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.818 - P.819

 医療監視というと「監視」という言葉が入っていますので,きつい感じがします.最近は「監視」とはいわずに「立入検査」ということが多くなってきています.ただ広い意味で医療監視といった場合には,医療法に基づく立入検査だけを指すのではありません.今回は医師法の問題を取り上げてみます.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第83回 民間病院3題

民間病院の現状/刈谷総合病院東分院/日の出ケ丘病院/黒木記念病院

著者: 河口豊 ,   西本博 ,   早川増彦 ,   西田謙 ,   江下素彦

ページ範囲:P.830 - P.838

 3年前に,先駆的活動をし,また建築的にも各種の工夫をしている民間中小病院の事例を調査した(病院建築123号,日本医療福祉建築協会,1999年4月).その時改めて,公的や公立病院ではできない民間ならではの人事や施設管理により,経営的にも成り立たせてきた経営者は,医療などに寄せる熱い想いを職員にも伝えていることを知った.その報告書から民間病院の位置づけを他の開設者との比較で表に示す.
 民間病院は大規模な病院では県立中央病院的機能を持ち,専門病院としては中小規模であるが地域で急性期医療などを担っているといえる.小規模病院は,大都市とともに人口5万未満の小市や町村に多くあり,住民の身近なところで小回りが利く病院としてある.

IT革命は病院医療をどう変えるか・8

伊勢原市の新健康カードシステム

著者: 大櫛陽一 ,   永野綾 ,   山田信夫

ページ範囲:P.820 - P.822

 日本の社会全体で「改革」が叫ばれている.保健・医療・福祉の分野も例外ではない.その背景にあるのは支えきれなくなってきた医療費である.現在までに多くの対策が提案されてきたが,実行に移されているのは結果的には「患者負担増」である.しかし,この自己負担も3割となり,公的介護保険のように高齢者の年金からも徴収しており,限界に達している.しかし,高齢化は都市部に迫ってきており,従来の小手先の対策では医療需要を押さえることは不可能と思われる.本人と社会にとって最も望ましい方法は,「健康な老後」であろう.
 厚生労働省では「健康日本21」をスタートさせており,われわれ研究者もこのプロジェクトを支援し,発展させていく必要がある.高血圧,脳血管疾患,糖尿病といった生活習慣病の多くは,日常生活の中でのライフスタイルが影響している.人ゲノムの解析が進み,遺伝子治療の試みも始まっているが,日本人の糖尿病のうち先天的原因は5%程度といわれ,世界的にも癌の原因の3分の2は生活習慣といわれている.

医療経営の総合的「質」の検討・9

医療の標準化と病院医療・経営の向上

著者: 田村誠

ページ範囲:P.823 - P.826

 医療の「標準化」の必要性がとみに強調される.本誌の昨年12月号で行われた「21世紀への病院医療の遺産」という座談会でも,21世紀には「標準化」が大きなキーワードになると何人もの識者に予測されている1)
 しかし,患者・疾病の多様性を考えると標準化は容易でない,ともいわれる.確かに,診断や治療方針決定の場合に,患者の社会心理的背景までも考慮に入れて行うとすれば,標準化するのは困難な作業となるであろう.ただし一方で,臨床検査の方法など,患者の多様性とは関係なく標準化し得るものもある.

医療従事者のための医療倫理学入門

20.人工妊娠中絶に関する倫理的問題

著者: 浅井篤 ,   大西基喜 ,   福井次矢

ページ範囲:P.827 - P.829

〔ケース〕
 総合診療科レジデントのA医師が内科救急外来の当直をしていた夜,20代前半の女性が腎盂腎炎と診断され緊急入院した.
 翌朝には状態が安定した.A医師との話し合いの中で,彼女はつい最近月経が遅れ,市販の検査キットで尿を調べたところ妊娠していることがわかったと述べた.A医師は使用薬物や発熱が胎児に及ぼす可能性について説明しようとしたが,患者は「自分は妊娠中絶をするつもりである」という.そして,見舞いに来る親にも自分が妊娠している事実や中絶する意図について黙っていて欲しいとA医師に頼んだ.A医師はどうするべきだろうか?

琉球弧から・9

IT (情報技術)とQOM (医療の質)〈その1〉

著者: 天願勇

ページ範囲:P.839 - P.839

□十数年振りの病院同窓会
 今年の6月,伊豆の温泉で埼玉医療生協羽生病院(埼玉県)の同窓会があった.その当日,私は都心の雑踏を避け,羽田空港からバスに乗った.熱海から普通電車に乗り継ぎ,川奈のトンネルを抜けて北川(ほっかわ)駅に降りた.季節はずれの伊豆は混雑もなく,無人の改札口を通り,海沿いの道を一人でぶらぶらと下っていくと,波打ち際に露天風呂が見えた.
 その夜,十数年振りに再会した熟年の男女十余名は,大自然の中で旧交を暖めた.太平洋の波しぶきを浴びて身も心も解放され,夜更けまで話が弾んだ.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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