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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻10号

2002年10月発行

雑誌目次

特集 徹底検証 診療報酬改定2002

平成14年度診療報酬改定の意義と課題

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.780 - P.785

 平成14年度の診療報酬改定では,「症例数が多ければ多いほど医療の質は高い」という仮説に基づいて,一定の施設基準(年間症例数,医師の経験年数など)を設定する手術の範囲を現行の18項目から110項目に拡大した.さらに施設要件を満たさない施設においては,手術料について既定点数の70%を算定するとしている.この他,①経皮的冠動脈形成術等,②ペースメーカー移植術・交換術,③人工関節置換術,④体外循環を要する心臓血管外科手術等,⑤乳児の外科手術,の5分野については別途施設基準を設定した.
 これは,政府・与党が平成13年11月に発表した医療制度改革大綱を受けたものである.同大綱では,情報開示に基づく患者の選択を尊重した上で,医療の質の向上と効率化を図り,国民の医療に対する安心と信頼を確保すると謳っている.

医療の質の評価と診療報酬改定の流れ

著者: 伊賀六一

ページ範囲:P.786 - P.790

 医療費削減政策により存廃の危機感が高まる中,病院はその対策に苦慮する日々を送っている.一方,医療事故などをめぐって患者の選択性と安全の確保に応えるための診療の質が厳しく問われる社会環境にある.
 こうした時代の流れの中で,本年4月に診療報酬の改定が施行された.財団法人日本医療機能評価機構にとって最大の関心事は,第1に新しく設定された診療報酬改定項目と当機構が問う医療機能の質とのかかわりについて検証すること.第2に,改定に際し緩和ケア病棟の入院料と悪性腫瘍患者の外来化学療法料金加算の適用条件として「日本医療機能評価機構の評価を受けていること」が明記されたことである.これらは病院の質と経営に直接影響を与えると同時に,今後の病院運営対策に示唆を与えることにもつながると思われる.

平成14年度診療報酬改定を検証する—特に手術施設基準をめぐる課題

著者: 比企能樹

ページ範囲:P.791 - P.794

 わが国の医療行政の下で,現実に病院運営が決して容易でないことは今さら改めて述べるまでもない.
 通常の診療を行った場合の病院における財政状況を見ても,その厳しさは明らかである.全国公私病院連盟と日本病院会が共同で行った病院運営実態分析調査によると,調査を行った2001年6月の時点で,両団体に所属する約1,200病院のうち3分の2が既に赤字を示しており,中でも自治体病院の約90%が赤字経営であるという.

今次改定の影響率—緊急レセプト調査結果を中心に

著者: 青柳俊

ページ範囲:P.795 - P.797

 バブル経済崩壊後の深刻な構造不況の煽りを受けて,昨年から今年にかけて政府サイドから発表された一連の医療制度改革案も,おしなべて当面の財政収支均衡策に終始した.このような状況の中で,平成14年4月,薬価と医療材料で△1.4%(医療費ベース),診療報酬本体で△1.3%,計2.7%のマイナスという異例の診療報酬改定が実施された.

今次改定の影響率—平成14年度診療報酬改定と医療制度改革

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.798 - P.799

 平成14年診療報酬改定が行われた.内容は既に明らかにされているように,民間医療機関にとっては極めて厳しいものである.また,今回の改定の影響は,4月ではなく10月により大きく現れると考えられる.全日本病院協会(以下,全日病)は,毎年5月の収支を用いて経営調査を行っているので,集計結果が出るのは11月ごろになる予定である.
 したがって,本稿では今回の改定診療報酬体系の特徴と中小病院を中心とした予想される影響,さらに現在大きく動いている医療制度改革との関連について若干の意見を述べたい.

今次改定の影響率—日本病院会の緊急速報中間報告より

著者: 中後勝

ページ範囲:P.800 - P.801

 平成14年4月に実施された診療報酬改定は公称2.7%のマイナス改定となった.われわれ医療機関側にとっては,診療報酬改定史上初めての経験であり,会員病院はその影響の大きさを深刻に受け止めている.
 今回の改定の特徴は,①効率的な医療提供体制の評価,②患者の特性に応じた医療の評価,③医療技術の適正評価,④薬剤使用の適正化と薬剤関連技術料の見直し,⑤特定療養費制度の見直し,などとなっている.

今次改定の影響率—衝撃—正念場に立たされた精神科病院

著者: 津久江一郎

ページ範囲:P.802 - P.804

 今回の改定は,医療費だけが聖域というわけにはいかないという非常に政策誘導の色濃い改定であり,社会保険診療報酬始まって以来,診療報酬本体の引き下げは歴史的に初めてのことであった.
 厚生労働省保険局医療課長はこの改定後,「改定幅は薬価を入れても−2.7%であるから,それによって全体がひっくり返るようなことは構造的にはあり得ない」と業界誌で論評している(病院経営新事情No.253 2002年4月20日).

【座談会】診療報酬改定と病院経営

著者: 青柳俊 ,   猪口雄二 ,   津久江一郎 ,   中後勝 ,   竹内實

ページ範囲:P.805 - P.812

 竹内(司会)本日は「診療報酬改定と病院経営」というテーマで,4人の先生方をお招きしてお話を伺いたいと思います.平成14年度の診療報酬改定が病院経営にどのような影響を与えたか,また,今後どうあるべきかについて,建設的なご意見をお願いしたいと思います.
 最初に,今回の改定で新たに加わった項目,あるいは評価項目が変わった点について,それぞれコメントをいただきたいと思います.中後さんからお願いします.

グラフ

北海道南地区の救急医療と高度医療の拠点として

ページ範囲:P.767 - P.772

140年の歴史と伝統
 函館市は,函館山から津軽海峡に向って突出してくびれた半島の港町が赤・黄・緑に輝く光の列をなして見える「百万ドルの夜景」で有名である.かつて北洋漁業の拠点として賑わいをみせたこの町は,現在,洋式城郭五稜郭,トラピスチヌ修道院などを擁する観光の町として栄えている.
 市立函館病院の発祥は,万延元(1860)年の箱館医学所の開設(現・函館市弥生町)に遡る.箱館医学所は明治元(1868)年〜翌年5月の間,榎本武揚ら旧幕府軍の脱走兵の占拠を受け,箱館戦争における旧幕府軍の負傷者の治療を行ったという歴史を持つ.当医学所は3度の名称変更後,大正11(1922)年の市政施行に伴い市立函館病院となった.市立函館病院は,建物の狭隘化のため,旧国鉄清算事業団の広大な76,000m2の所有地の委譲を受け,函館山の麓(元町地域)から五稜郭の北東3kmの現在地に平成12(2000)年10月12日,移転新築した.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・12

ページ範囲:P.774 - P.774

特別寄稿

減損会計思考と病院の設備投資

著者: 橋口徹

ページ範囲:P.813 - P.817

 平成14年度社会保険診療報酬改定では,第4次医療法改正(平成13年3月施行)による施設基準の適正化を踏まえた厳しい見直しがなされる一方で,かつて国民皆保険の実施に伴い整備された病院が老朽化による建て替えの時期を迎えるなど,現在,多くの病院事業が施設整備の必要に迫られており,これらの設備投資の負担によって,病院の財務体質が今後さらに悪化していくことが予見される.
 元来,設備投資とは,事業の収益性向上を見込んで実施されるものであるが,当該投資により保有される病院施設などの有形固定資産の収益性が投資意思決定時の将来見込みに比べて著しく低下した場合,財務諸表上その使用価値を病院施設などの固定資産評価額にいかに反映させるかが,病院の倒産やM & A (合併・買収)などが話題にのぼる昨今,会計情報の外部利用者が病院事業の財務状況を適正に判断するうえで重要となろう.

特別座談会

高齢者の医療提供体制はどうあるべきか・2

著者: 天本宏 ,   折茂肇 ,   野中博 ,   浜村明徳 ,   武田俊彦

ページ範囲:P.818 - P.823

(9号より続く)
地域につなげる退院を行うには
 野中 自宅で生活することが最終目標であるとすれば,通所リハにはどうも訓練を感じさせる部分がまだまだあります.また,私たち受け皿の医療者としても,高齢者医療は生活を支援することが大切との認識に至りました.病院を退院された患者さんをどう診るかについて考えると,退院するに当たってケアに関する情報が十分ではないことに気づきます.そこで私たちは,区と福祉関係者,そして台東区の下谷・浅草の両医師会で,「退院時の情報提供書」(図)を作り,本年4月1日から開始しています.これは5月15日の「朝日新聞」の地方版に「退院後介護に情報書」と題して取り上げられました.
 今までは,ほとんど病院の医師が退院を決めていました.多くの患者さんはチーム医療として完成して退院してはいませんでした.そこで私たちは退院を大切にしようという思いから,受け皿の医療者としてケアやリハの情報も必要と考え,患者さんの主治医の意見を含んだ医療情報とともに看護サマリーを書き込める医療情報書を作りました.

病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題—急性期病院の立場から・7

聖路加国際病院の過去・現在・未来(4)

著者: 中村彰吾

ページ範囲:P.824 - P.827

3.人事戦略(七つの実行プラン)
 1)毎年4月の目標面接・育成面接に使用するため,職員は「能力開発カード」にどのような仕事をしているのかを洗い出す.病院としてはこれらの課業を分析し,コア業務とフロー業務に分け,フロー業務は人材派遣もしくは業務委託に切り替えることを進めていく(業務分析).
 2)適正人員配置へ段階的に移行:職員1人当たりの生産性を他の病院とベンチマークして適正人員を策定 結果的に在籍出向,早期退職優遇制度の導入,人材派遣,業務委託に切り替え,正規職員が約70名削減された.

栄養管理・4

糖尿病チーム医療における栄養管理

著者: 平松智子

ページ範囲:P.828 - P.831

⦿概要
 川崎学園は美観地区,大原美術館で知られる岡山県倉敷市東部に位置し,故学園長川崎祐宣先生により「①人間をつくる.②体をつくる.③医学を究める」の建学理念を基に昭和45年に医科大学,付属高校が開学された.同48年には医療短期大学開学,そして「医療は患者のためにある」の信条のもと,附属病院が開院,その後リハビリ学院,医療福祉大学開学と続き,今や学生総数約6,000人,職員総数約2,500人の学園である.
 川崎医科大学附属病院(以下,当院)は許可病床数1,178床の総合病院で特定機能病院,地域基幹病院としてその役割を担っており,昨年開院30周年を迎えた.診療圏は主に岡山県南を中心に東は兵庫県西部,西は広島県東部,瀬戸内海,四国北部地方である.また,日本に数機あるドクターヘリの救急診療にも力を注いでいる.

看護管理=病院のDON・22

情報マネジメント

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.832 - P.833

⦿病院の情報の質
 世界でIT革命が進行している.欧米では,情報通信技術(informa—tion commnication technology;ICT)と呼ばれる分野の革命的な進歩は,多くの人々に大量のデータを提供するとともに,大量の情報を発信することを可能にしている.携帯電話や携帯情報端末からでも,世界中のデータに接触することができるようになったし,インターネットを駆使すれば,大量のデータをダウンロードすることも可能である.
 情報量が急増することは,それはそれで便利になったが,あまりに大量な情報があるために,自らに必要な情報にたどりつくのに手間がかかったり,各種の情報を整理したり,情報を定期的に整理したりすることが必要になる.一般的に考えれば,情報は多ければ多いほどよさそうであるが,あまり役に立たない情報をいくら集めてみても,なんの役にも立たないということが起こっている.それゆえ,情報自体をどうすれば適切にマネジメントできるのかといったことが問題となる.

医療を支えるファシリティマネジメント7話・5

建築規模の計画は経営の要

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.834 - P.835

 病院建築をどれだけの規模で作り,どれくらいの期間使用するかは,ファシリティマネジメント(FM)の最大の課題です.病院を健全な経営体と考えれば,施設投資と施設活用が経営の要なのですから,新築・増築の規模計画が課題となるわけです.一般には資金によって規模が決まるのですが,病院ではその機能や性格によって要求される規模が違ってくるので,両者をうまく調整するのが大切です.どちらか一方を条件として決定せずに,調整しながら両者を決定していくことが望ましいと思います.
 従来の病院計画では病床数を唯一の指標として規模を考えてきました.病床数が決まれば建築面積も職員数も決まったのです.しかし,平均在院日数短縮の流れに伴う病床数の削減や,救急や外来診療から日帰り手術などを行うことを考えると,規模計画を病床数で決定するのは限界がありそうです.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第96回 東京臨海病院

東京臨海病院の建設経過/3看護単位の病棟

著者: 浦良一 ,   島田孝好

ページ範囲:P.836 - P.842

 私立学校共済組合は昭和32年に駐留軍健康保険組合病院を買収して,下谷病院を経営し,加盟組合員の医療,健康診断サービスを行ってきた.建物が老朽化したが,敷地が狭隘のため整備できず,直営医療機関検討委員会,計画委員会(浅田敏雄理事長の下,外部委員は三宅史郎,伊藤誠,以下敬称略)を設置し,移転先の検討を含め整備を検討した.その結果下谷病院を閉鎖し,江戸川区内の東京都有地を平成10年2月に買収し,新病院を開設することとなった.この間下谷病院の建物耐震調査,受療行動調査,移転候補地の医療環境調査などが行われた.
 移転先決定後平成8年には周辺の医療施設分布,患者数の想定,施設規模,必要敷地規模,建築面積,経営推計の調査,と建設基本計画を委託した.次いで,共済組合は平成9年に直営病院の基本構想・基本計画を策定した.

事務長の医療よもやま話・9

温泉は医療費を削減できるか?

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.845 - P.845

●温泉ブーム
 かつて竹下元首相がふるさと創生資金と称して日本全国の各市町村に1億円ずつばらまき,まち興し事業を行った.1億円の金塊を購入し,展示した金塊を町民に直に触らせるようにした町もあったが,日本人の風呂好き,温泉好きに着目し温泉を掘った市町村は数多い.温泉施設建設は,住民で反対する人はまずいない.市町村長の選挙票に確実につながる.
 温泉を掘り当てるには地下500m以上の深さまで掘らなければならず,もし温泉に当たらなければ以前は億単位の事業費がむだとなっていた.掘りたいと思っていても,もし失敗したら億の金をパーにし責任を問われることになるので,市町村長は二の足を踏んでいた.が,ふるさと創生資金の頃から,井戸掘り業者も成功報酬制を取るようになり,市町村長のリスクも減り,一気に温泉掘削ブーム,ここ掘れワンワンブームが湧き起こった.全国3,232市町村のうち温泉施設を持つ市町村は2,184と68%もある.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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