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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻2号

2002年02月発行

雑誌目次

特集 病院の増改築

病床種別の選択と増改築のポイント

著者: 河口豊

ページ範囲:P.102 - P.106

 コンピュータの発達とともにそれを利用した生命技術や医療技術が飛躍的進歩をみせている.一方,病院の建物については40年くらいは使用しなければ経営的にも成り立たず,地球環境の保護という視点からも,よいものを長く使うことが求められている.ここでは医療技術の進歩の予測,医療提供体制の変化,利用者への配慮を概観し,そのための病床選択を述べ,それに対応する病院建築と増改築のポイントを整理したい.

病院の増改築と病院経営

著者: 伊藤一章

ページ範囲:P.107 - P.110

人口動態と医療の社会的背景
 わが国の総人口が2025年頃を境にして減少傾向に入り,しかも高齢人口の占める割合が大幅に増加するということがいわれます.
 医療の分野に関して言えば,年間30兆円に及ぶ医療費の中に占める高齢者医療部分の比率が拡大します.その結果,わが国の医療の特色である国民皆保険という制度の中で,若年層の不足から医療費を支える医療保険の収入が不足となり,マクロ経済的に成り立たなくなることが懸念されます.

病院の増改築における融資審査のポイント

著者: 野山暉男

ページ範囲:P.111 - P.116

第4次医療法改正などによる医療環境の変化
1.第4次医療法改正の概要
 平成12年に第4次医療法改正が行われ,改正の柱の一つに「入院医療を提供する体制の整備」として,患者の病態にふさわしい医療を提供するための「病床区分の見直し」がある.その概要は,「その他の病床」を有しているすべての病院の開設者は,「一般病床」と「療養病床」のいずれかを選択することとし,平成15年8月31日まで(中小病院やへき地,離島などの病院については,平成18年2月28日まで)に届け出ることとされている.また,一般病床に係る人員配置基準については,入院患者4人に対し看護婦1人の基準を入院患者3人に対し1人に引き上げ,構造設備基準については,病床面積について患者1人当たり4.3m2を6.4m2に引き上げるなどの改正が行われたところである.

増改築を行う際の病院の取り組み

著者: 石黒彩

ページ範囲:P.117 - P.120

 第4次医療法改正による構造設備基準の改正や,「療養環境・アメニティの向上」を求める声の高まりなど,病床面積拡張への圧力が高まりつつある.よって今後,多くの医療機関にとって増改築が大きな課題となることが予想される.
 しかし,元々他用途の建物と比べると,病院の建築単価は非常に高い.さらに現在の診療報酬には,投資費用は含まれていないため,建て替え費用の捻出が困難であり,建て替えが進められない病院もある.

病院の増改築—選ばれる病院づくり—現地建て替えと21世紀型病院

著者: 広瀬周平 ,   田渕正登

ページ範囲:P.121 - P.123

 岡山市の中心部,JR岡山駅からは徒歩5分に位置する当院は,昭和13年現在地での診療所開設に始まる.現在は様々な拠点病院・指定病院としての使命を担った地域の中核的な病院であると自負している.
 特筆すべきは,診療や収入を維持しながらの現地建て替えという,困難で特殊な工事にある.平成4年の遺跡調査に始まった一連の工事は平成11年完成まで足掛け8年,計画段階からは約10年の歳月を要した.

病院の増改築—選ばれる病院づくり—利用者のニーズを把握し必要に応じて増改築を

著者: 堺常雄

ページ範囲:P.124 - P.125

 当院の設立母体である聖隷福祉事業団は1930年に当時は不治の病といわれた結核に病んだ青年の世話をしたことに始まり,一般の病院とは設立基盤を異にしている.しかし,抗生物質のおかげで結核も不治の病ではなくなり,それに代わって心臓病,頭部外傷などに対する高度医療の必要性が高まってきた.そのニーズに応えるべく当院は1962年に開設された.その意味では開設時から急性期・高機能病院を目指してきたといえる.
 当初は114床の小さな病院であったが先駆的な医療を心がけ,利用者のニーズを先取りしようとする先達の努力と,利用者の信頼により,現在の744床の総合病院となった.その間数次の建築は増床を伴った形で行われ,1987年に行われた前回の建築は約2万m2の敷地面積に744床という規模としてはぎりぎりの選択であった.

病院の増改築—選ばれる病院づくり—「ホスピタリティの追求」を基本的コンセプトに

著者: 相良吉厚

ページ範囲:P.126 - P.127

当院の増改築と専門特化へのビジョンの確立
 当院は鹿児島市の中心地に位置し,婦人科,内科,緩和ケア科を併科する乳がん専門病院である.戦後間もない1949年,一般外科病院として開設された.1973年には乳がん診療を加え,九州で初めて乳房X線撮影装置マンモグラフィを導入,さらに1978年,西日本で第一号機の電子写真法X線撮影装置ゼロラジオグラフィを設置して,次第に乳腺専門へと診療体制を変容させていった.同時に女性を対象とした医療に特化するため,他疾病患者や男性患者の制限,疾病構造の割合を順次見直した.併せて環境整備においては,女性専門病院にふさわしいアメニティのあり方を心がけて,数回の増改築を行った.まさに専門特化への方向性を模索していた頃である.
 1995年には,建物の一部老朽化とスプリンクラーの設置義務から全面的なリニユーアルを決定,医療施設近代化施設整備事業の補助金の支援を契機に,病床の100床を81床に,量から質へと診療機能を優先したダウンサイジングを実行することになった.1997年4月から乳がんを中心とする専門病棟60床,県下初の緩和ケア病棟21床の病棟編成で新たなスタートを切ったのである.

病院の増改築—選ばれる病院づくり—マスタープランによる効果的なリニューアル

著者: 相澤孝夫

ページ範囲:P.128 - P.131

 病院の建築は経営方針を建物という目に見える形で示すものであり,病院における技術的要素という医療の質の一要素を発揮する場を提供すると考えられる.また医療の質におけるもう一つの要素であるアメニティについては,建築にかかわる部分が多い.人間関係的要素もまた医療の質の一要素であるが,これも建築とは無縁ではない.働きやすくきれいな建物は働く人に働きがいを与え,人間関係が良好になる.当院は医療が量から質の時代に変わりつつある1990年より赤字経営であったが,1994年より断行した経営改革の一環として行った病院の増改築により医療の質を向上させることに成功し,患者に選ばれる病院づくりもできたと思われる.
 マスタープランを持たずに行う増改築は機能的に支障を来すことが多く,有効な投資をするには,マスタープランをつくり,これに沿って増改築を行うことが,質の高い骨格のしっかりした建築を長く使う時代には重要である1)

【資料】医療施設近代化施設整備事業の現状

ページ範囲:P.132 - P.135

?医療施設近代化施設整備事業実施要綱
1.目的
 この事業は,医療資源の効率的な再編及び地域医療の確保に配慮しつつ,療養病床への転換整備を進めるとともに,病院における患者の療養環境,医療従事者の職場環境,衛生環境等の改善及びへき地や都市部の診療所の円滑な継承のための整備等を促進し,もって医療施設の経営の確保を図ることを目的とする.2.補助対象
 次に掲げる者が開設する医療施設の患者療養環境,医療従事者職場環境,衛生環境等の改善のための施設整備事業

グラフ

21世紀型の医療サービスの提供を目指す—医療法人社団勝木会やわたメデイカルセンター

ページ範囲:P.89 - P.94

 小松空港より車で20分,白山連峰から日本海,そして加賀平野までを見渡す丘陵地に加賀八幡温泉はある.この閑静な温泉地に「温泉を中心とした本格的な健康保養地をつくる」という「こまつ健康の里計画」を掲げた勝木道夫氏(現,医療法人社団勝木会理事長)が,当時はまだ珍しかったリハビリテーション専門病院,リハビリテーション加賀八幡温泉病院を開院したのは今から35年前の1968年のことである.
 1984年には隣地に健康増進施設「スポーツコミュニティ・ダイナミック」(財団法人北陸体力科学研究所)を開設.これらに整形外科の専門病院である芦城病院(1966年開設)などを加えた勝木グループを形成,地域において医療・健康増進・在宅ケアなどのサービスを総合的,かつ一体的に提供してきた.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・4

ページ範囲:P.96 - P.96

特別企画 病院機能と医師評価・3

医師の人事考課について

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.136 - P.142

 人事考課に関する病院での実際の取り組みをお話しいたします.といいましても,必ずしもうまくいっているわけではありません.苦労しながら独自にいろいろなことを考えて行っています.
 これまでの成果を,1998年に『病院における人事考課制度—理論と実践』,1999年に『病院における職能資格制度—理論と実践』,2000年に『病院における退職金制度—理論と実践』の3部作としてまとめ(いずれも医療文化社発行),本年『病院における人事考課制度—理論と実践』を改定しました.

大学病院における医師の人事管理について

著者: 安田信彦

ページ範囲:P.143 - P.146

 東京慈恵会医科大学には数年前,創立100周年記念事業委員会がありました.その委員会は学長の諮問委員会で,将来への提言をすることが目的でした.その答申に,附属病院における診療体制の強化がうたわれ,「まずは講座から診療という機能を分離したほうがうまくいくのではないか」という趣旨の提言が含まれていました.そして,それが実現されました.
 旧来の診療体制では,講座というきっちりとした組織が担い手で,各講座がほとんど独立国家のように存在し,附属病院は組織として十分に機能しているとはいえない状況でした.医師たちは,病院という一つの組織の構成員というよりも,各国家の国民のようでした.本来ならば,医師以外の職種も含めて病院としてまとまってチーム医療を行うべきことはいうまでもありません.

レポート

医療事故防止の学際的アプローチ—医療チームのコミュニケーション改善を中心に

著者: 山内隆久 ,   島田康弘 ,   垣本由紀子 ,   嶋森好子 ,   松尾太加志 ,   福留はるみ ,   山内桂子

ページ範囲:P.147 - P.151

 本論文では,筆者らが参加した平成12年度厚生科学研究の成果を,心理学的知見や理論から検討し,医療事故防止における心理学の利用について考察する.そして,今後の施策への提言を行う.さらにそれらの提言の一部を実現するものとして実施中の,平成13年度厚生科学研究について紹介する.

病院管理フォーラム 看護管理=病院のDON・14

看護単位

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.152 - P.153

⦿看護単位の考え方
 看護界で,看護単位という用語は広く使われている.「看護単位」が米語のnursing unitの訳語であることは,間違いない.これに対して「病棟」という言葉も,日常的に使用されている.こちらは英語のwardの訳語で,本来は建築構造物の物理的な一区画を示す用語である.では,看護単位と病棟の相違は何であろう.「ナイチンゲール病棟」といえば,ナイチンゲールが設計した病棟であり,看護単位であるともいえる.小児科病棟とか,産科病棟とかいう場合も同様であろう.しかし,外科病棟の中に複数の看護単位が存在する病院もあり,どうも両者は別の意味であることがわかる.看護単位とは,いったい何なのかということについては,これまで各種の定義があり,調べてみると歴史的な変遷や考え方の差があり,このことだけで論文になるほどの資料が散在している.
 日本看護協会の『看護婦業務指針1995』では,看護単位を病院における看護の機能としてとらえ,患者数,看護要員数を決定する要因を含めて次のように4項目の規定をしている.

IT革命は病院医療をどう変えるか・10

【てい談】ITは日本の医療をどう変えるか・2

著者: 佐味祐介 ,   村上陽一郎 ,   開原成允

ページ範囲:P.154 - P.157

(第61巻1号より続く)
一般市民の情報化
レイ・エクスパティーズ
 開原(司会) それでは,第2部の話に入りたいと思います.第1部では医療側がITでどのように変わるかについてお話ししましたが,今度は医療を受ける側,つまり一般市民の側の話をしようと思います.現在,わが国でも情報化が着々と進んでおりますが,国民のインターネット普及率はどれくらいだったでしょうか.
 佐味 実は意外に低く,3〜4割だったと思います.

医療経営の総合的「質」の検討・14

顧客志向のための品質機能展開

著者: 赤尾洋二

ページ範囲:P.158 - P.161

 最近,医療事故問題がクローズアップされ,社会の関心も高まっているが,一般企業においても品質問題が多発しており,もう一度原点に戻って品質そのものを見直していかねばならない.品質管理運動の一貫として,古くからQC (quality cont rol)サークル活動が医療においても一部では導入されていたが,本格的活動には至っていなかった.先駆的な病院では既にTQM (total quality management)の導入による「医療の質の改善活動」が推進されており,戦後一般製造業が品質管理を導入し,品質向上を目指した熱意を彷彿させるものがある.この活動により医療事故が撲滅され,安心して適切な医療サービスが受けられるようになることを期待したい.
 品質管理の原点は顧客志向である.初期の品質管理の著書をひもといても,その定義として「顧客の満足する製品を経済的に生産すること」が謳われている.昨今CS (customer sa—tisfaction;顧客満足)経営が叫ばれているが,それは日本の製造業が上記をまじめに実践し,一時日本が欧米を凌駕して,その技術移転や日本のデミング賞からマルコム・ボルドリッジ賞が生まれ,さらにそれが逆移転されたものによるといってよい.ここで紹介する品質機能展開(quali—ty function deployment;QFD)1)は顧客志向のアプローチである.製造業と医療にはそれぞれ特徴があり,その性格は異なるが,顧客志向に立つべきことは共通であり,このような観点から「医療の質と質管理」の考え方を述べる.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第88回 精神病院の新しい流れ

精神病院の新しい流れ/浅香山病院A館―使ってみてひと言/あさかホスピタルA棟―使ってみてひと言

著者: 河口豊 ,   辻野純徳 ,   髙橋明 ,   鈴木慶治 ,   佐久間啓

ページ範囲:P.162 - P.168

 主として若手病院長や医師の間で危機感が満ち始めたのはここ10年くらいであろうか.特に精神病院医療が一部の患者をともすれば治療できなくてもともと,治療できたら幸運と考えるような風潮から,患者全員を治療対象者として受け止め,精神病院に新しい治療主義を次第に展開し始めた,といっては言い過ぎかもしれない.しかし,治療すべき対象者として患者を診る,患者から医療サービスの利用者(consumer)へと認識を変えるということが確かに起こりつつあり,全国的に広がっているといってよい.ここで精神医療体制を整えなければ一般医療と決定的な差が生じてしまう,との危機感である.
 一般医療よりもさらに濃いパターナリズムに覆われていたが,法改正などとともに,また患者中心の声の高まりとともに,インフォームド・コンセントに戸惑いながらも患者の個々人に向き合いつつある.財団法人日本医療機能評価機構の領域別調査項目をクリアした認定施設が増加していることが何よりの証拠であろう.

データファイル

総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第1次答申」

ページ範囲:P.170 - P.173

はじめに(略)
1.「システム全体の変革」の重要性 規制改革を推進するため,政府は従来から,例えば個々の事業者又は事業者団体からの要望に積極的に対応すること等により,「個別の規制改革」を重点的に進め,大きな成果を上げてきた.また,規制改革を分野別に進めるという手法も採ってきた.
 規制改革をより効率的に進め改革の実を上げていくためには,これらの手法に加えて,それぞれの分野の「あるべき姿」を念頭に置き,政策目標・理念を明確にした上で,競争促進のためのルール作りや予算措置等関連制度の見直しも含めた「体系的・包括的な規制改革」,すなわち,「システム全体の変革」についての取組を,意識的に強化していくことが効果的である.

事務長の医療よもやま話・1

のるか,そるか,オルカ(ORCA)

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.175 - P.175

●全国統一規格の診療報酬制度
 診療報酬制度は言うまでもなく全国共通の統一規格である.医師の技術料は上手い下手は関係なく,例えば開腹による虫垂切除の手術料金は北海道の診療所であろうが,沖縄の大病院であろうが,74,700円(K718虫垂切除術)で値段は同じである.傷病名に関しても,主として虫垂を切除したのであればどんな医療機関でも急性虫垂炎(ICD-10ではコードK35)と付けるであろう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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