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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻3号

2002年03月発行

雑誌目次

特集 緩和ケアの検証と今後の課題

緩和ケアを検証する

著者: 高宮有介

ページ範囲:P.190 - P.193

 筆者は1989年より緩和ケアの臨床に携わり,緩和ケア病棟での診療にもかかわりながら,特に一般病棟での緩和ケアを実践してきた.2001年10月1日より緩和ケア病棟立ち上げに参加し,現在に至っている.一般病棟での緩和ケアと緩和ケア病棟の両者を経験した立場より,緩和ケアの問題点と今後の課題について述べる.

ホスピス・緩和ケア病棟を検証する

著者: 恒藤暁

ページ範囲:P.194 - P.197

 わが国では1970年代にホスピスが紹介され,その必要性が言われ始めた.わが国で第1号のホスピスが1981年に聖隷三方原病院に誕生し,続いて院内病棟型ホスピスが1984年に淀川キリスト教病院に開設された.それ以降,医療従事者のみならず,一般の人々も高い関心を示すようになり,ホスピス・緩和ケア病棟が徐々に造られるようになってきた.
 このような状況の中,旧厚生省は1987年7月に末期医療のケアに関する問題点をまとめ,患者と家族の要望に応える方策を検討する「末期医療に関するケアの在り方の検討会」を設置し,1989年には報告書「末期医療のケア」を発表している.1990年4月にホスピス・緩和ケアが医療保険の診療項目として正式に制度化され,「緩和ケア病棟入院料」という診療報酬項目が新設された.2000年度の厚生科学研究の研究事業において「緩和医療提供体制拡充に関する研究」班が発足した.筆者は,その研究班の主任研究者としてホスピス・緩和ケアの現状についてまとめ,報告書を発刊した1).本稿では,その報告書を中心にホスピス・緩和ケアの現状と今後の課題について述べる.

一般病棟における緩和ケア

著者: 岡田定

ページ範囲:P.198 - P.201

聖路加国際病院ではどのような患者に対して,一般病棟で緩和ケアを行つているか
 当院では以下に述べるような患者に対して,緩和ケアが行われる.緩和ケアはPCU (緩和ケア病棟)でも一般病棟でも行われるが,対象の患者数はPCUよりも一般病棟のほうが多い.

緩和ケア—現場からのレポート—国立病院呉医療センター—2年間の運用状況と抱える課題

著者: 本家好文 ,   松浦将浩 ,   石川勝憲

ページ範囲:P.202 - P.204

概要
 国立病院呉医療センター(中国がんセンター)は,平成13年4月に国立呉病院から名称変更しました.平成12年1月に病棟部門が完成し,平成13年9月に外来部門が完成したばかりです.現在,従来の外来診療棟跡地を駐車場へと整備する工事が行われ,平成14年3月にすべての改築工事が終わります.
 国立病院呉医療センター緩和ケア病棟は,国立の施設としては全国で5番目,中国地方では国立療養所山陽病院(山口県宇部市)に次いで2番目の施設です.本院の緩和ケア病棟は病棟部門の最上階である10階部分にあり,病棟から見える瀬戸内海の眺望は大変すばらしいものです.

緩和ケア—現場からのレポート—富山県立中央病院—9年の軌跡と今後の課題

著者: 樋口昭子 ,   薮下和久 ,   里村吉威

ページ範囲:P.205 - P.206

病棟の設備と運営の概要
 富山県立中央病院は病床数810床,うち一般病床710床の総合病院である.緩和ケア病棟は病院の全面改築に伴い1992年6月に開設され,1993年2月25日,旧厚生省の基準をみたす施設として届け出を受理された.施設は院内病棟型で,9階建ての病棟の最上階に位置している.病床数は15床,全室個室で病室内にもミニキッチン,電話,トイレや付添い家族用の簡易ベッドが設備されている.このうち有料室は7床である.
 病棟を担当するスタッフは,病床15床に対し婦長1名,看護師15名,病棟担当医師3名,精神科医,薬剤師,栄養士,理学療法士がいるが,看護師以外のスタッフは現在のところ兼務を余儀なくされている.また,週末や病棟の行事などに際して若干名のボランティアの参加がある.

緩和ケア—現場からのレポート—栄光病院ホスピス——死を見つめ・いのちを支えるホスピスを目指して

著者: 下稲葉康之

ページ範囲:P.207 - P.208

栄光病院ホスピスの目標
 古ぼけた木造2階建の亀山病院(現在の栄光病院)で極めて素朴にホスピスを始めたのは1981年春,当時の地方新聞は一面トップに「西日本初のホスピス」と大々的に報じた.
 1986年には,新築成った栄光病院3階病院で混在型でホスピスケアを展開することとなった.1990年9月には旧厚生省により「緩和ケア病棟を有する病院」として22床の認可を受け,その後増床を重ね,現在ホスピス病棟36床(2病棟単位)で「死を見つめ・いのちを支える」ホスピスを目指し,その充実のために鋭意励んでいる.

緩和ケア—現場からのレポート—慶應義塾大学病院におけるがん疼痛緩和ケアヘの取り組み

著者: 木村理恵子

ページ範囲:P.209 - P.211

がん疼痛ケアチームの役割と活動
 慶應義塾大学病院では1997年4月より「がん疼痛ケアチーム」を結成して,がん疼痛緩和ケアを行つている.このチームの特徴は,緩和ケア病棟を持たずに全病棟,外来を対象として横断的に,多職種コンサルテーション型で,がん疼痛患者だけでなく家族,主治医,プライマリナースに対してケアを提供していることである.
 がん疼痛ケアチーム(以下チームと略す)への依頼方法は二つあり,一つは,麻酔科ペインクリニックへの主治医からの依頼,もう一つは看護相談からチームへ依頼となる場合である.看護相談は,疼痛緩和ケアナースが病棟,外来で主治医,看護職から疼痛緩和不良例や在宅ケアに関する相談を受け,患者,家族と面談を行う.その後は必要に応じ,麻酔科ペインクリニックへ依頼,チームでかかわるケースである.

緩和ケア—現場からのレポート—東北大学医学部附属病院緩和ケアセンターの緩和医療外来の概要・運用状況

著者: 伊藤喜久子 ,   山室誠

ページ範囲:P.212 - P.213

 「緩和医療部門」の開設に当たつて,当院の広報誌である“病院だより”は次のように紹介しました.「本院は,基本構想として,時代の要請に応えつつ,生命科学・医用電子工学や先端技術を積極的に取り入れた高度先進医療を目指すとともに,21世紀の医療を考える時,最も重要なキーワードであるクオリティ・オブ・ライフを高める「全人的医療」の実施を目指しておりますが,この全人的医療の中で,医学・医療界に課せられた最大の課題の一つである,緩和医療の知識と技術の普及,体制の整備,さらには専門医療従事者の育成およびその実践の場としての「緩和医療部」設置を検討してまいりました.平成13年4月1日より緩和医療科病床と緩和医療病棟(緩和ケアセンター)および緩和医療科外来と合わせて,中央診療部門の一つとして認められることになり,終末期がん患者に対するモルヒネ投与・神経ブロックなどを中心とした緩和医療体制の充実を図ることになりました.」1)こうして開始された緩和ケア体制は,外来が2年,ケアセンターが1年2か月を経過しました.

緩和ケア—現場からのレポート—諏訪中央病院—地域医療における緩和ケア

著者: 平方眞

ページ範囲:P.214 - P.216

 諏訪中央病院は,長野県東南の八ケ岳の山裾に位置する,病床数366床の病院である.以前から地域の拠点病院として,「予防からリハビリテーションまでの一貫した医療」,「地域に密着した手作りの医療」,「救急医療,高度医療を担う」を理念に掲げ,地域に住む人のための医療を展開してきた.対象となる地域は茅野市,原村と諏訪市の一部であり,そのうち茅野市の出資比率が85%と最も大きい.諏訪湖を中心とした精密工業地帯と住宅地,農村地帯,別荘地,さらには山岳地帯までを含むため面積としてはかなり広く,対象となる人口は6万人前後である.

緩和ケア—現場からのレポート—ふじ内科クリニック—共通理念のネットワークを求めて

著者: 内藤いづみ

ページ範囲:P.217 - P.219

 本稿を書き始めるに当たり,昨年1年間の筆者の講演の準備メモに目を通してみた.診療の合い間をぬって,30回以上どんな人数に対しても同じテーマで話を進めてきたことがわかった.また,講演の半分以上は,全国の各種市民団体に招かれてのことだった.
 山梨の地で医者として働き始めて10年.飽きもせず頑固に同じことを語り続けてきたわけである.このテーマは医者になろうと決めた中学時代に始まり,医学生の間も,その後イギリスでホスピス・ムーブメントに触れて,いのちの支え方に深く納得したときも変わらなく胸中にあった.「人はなぜ生まれ,そして死なねばならないのか.いのちとは何か?」

グラフ

アメニティの向上と政策医療の拡大を実現—秋田赤十字病院

ページ範囲:P.177 - P.182

 秋田赤十字病院は東北・北海道地方初の赤十字病院として大正3年に開院.以来,秋田県が設立した三つの施設,秋田県交通災害センター(昭和49年当時,多発していた交通事故による外傷患者の治療を専門に行う施設として設置),秋田県神経病センター,周産期医療センターを委託運営するなど,地域の中核病院として発展してきた.平成5年には胃腸センターを開設.当センターは内科と外科の医師が協力し,診断から治療まで一貫して患者さんを診ることを目的とする,当時は画期的な施設であった.平成7年には,秋田市の中心街にあった旧病院の老朽化・狭隘化のため移転新築工事に着手し,平成10年7月,秋田市の郊外に新病院がオープンした.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・5

ページ範囲:P.184 - P.184

対談

地域医療の視座と研修医教育・1

著者: 高橋勝貞 ,   清水茂文

ページ範囲:P.220 - P.225

 編集室 まず,高橋先生のこれまでのお仕事を簡単にご紹介いただくとともに,高橋先生が佐久病院に来られるまでの経緯をお話いただけませんか.
 高橋 私は大学卒業後,2年ほどたって公立病院に赴任し精神科医療に従事しました.私が病院で精神科医療を始めたころは,ちょうど精神科医療自体が精神病院の開放化の波に洗われており,精神障害を持った方たちの処遇をいかに改善していったらよいかと,若手の精神科医を中心にした運動が展開されていました.私はその中で,厳密にいうと15年間,仕事をしておりました.そして,いろいろな問題があって精神科をやめて,別の民間病院で一般内科医に変わり,いわゆるプライマリ・ヘルスケアの仕事をやってきました.

特別企画 病院機能と医師評価・4

医師の評価—質疑応答と全体討論

著者: 寺崎仁 ,   大道久 ,   飯田修平 ,   安田信彦 ,   梅里良正

ページ範囲:P.226 - P.231

 梅里 それぞれのご報告の後に逐次ご質問をお受けしましたが,全般を通しての質疑および討論を始めます.
 寺崎先生には全体的評価の枠組みをお話いただきました.評価方法を含め枠組みはどういうものかという報告でした.

レポート

英国にみるホスピス・緩和ケアプログラム—セント・クリストファー・ホスピス見学から見えてきたもの(上)

著者: 近藤克則 ,   篠田道子 ,   樋口京子 ,   荒尾晴恵 ,   野間口千香穂

ページ範囲:P.232 - P.237

 近代的なホスピス運動は,イギリスの医師シシリー・ソンダース女史を中心に開設されたセント・クリストファー・ホスピス(St Christopher's Hospice)が発祥の地である1,2).現在では,全英で228(2001年1月)3)を数えるホスピスが緩和ケア(palliative care)を提供しており,多くのホスピスに,日本を含め世界中から視察者が訪れている.われわれ(日本福祉大学在宅ターミナルケア研究会のメンバーを中心とする)も,数多いホスピスの中からセント・クリストファー・ホスピスをはじめとする3か所のホスピスを見学する機会に恵まれた.
 それぞれ歴史・特徴の異なる三つのホスピスに見学を申し入れたのは,ホスピスによる違いが相当あると予想していたからであった.しかし,実際にホスピスを見学してみて,強く印象に残ったのは,ホスピス間の違いではなくむしろ共通性であった.「ホスピスは建物や場所よりも,むしろケアの哲学。原理(philosophy)を意味する」1,4)ものとして,まさに共通する「哲学・原理」に支えられていた.

手術部の建築と運営の計画

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.238 - P.243

 2000年8月,バンクーバーで全米建築家協会の健康建築部会(最近病院建築から名称変更)が海外建築家にも呼びかけて開催された.ここでは建築事例の紹介よりも,医療や経営から未来学などの専門家を招いて21世紀医療の予想を聴講して議論する会であった.中でもロボット医学や治療と診断の一体化,戦場での遠隔医療などが注目され,今後の手術部計画に対する関心が高まっていた.その直後にスウェーデンで最新のサンダービー病院を訪問したが,ここでも日帰り手術を目玉の一つに掲げていた.最近のアメリカでは全手術の75%が日帰りだという.めまぐるしい変化の中で手術部をどう計画したらよいのか2回にわたって論じたい.

病院管理フォーラム 看護管理=病院のDON・15

超過勤務手当

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.244 - P.245

?時間外労働の制限
 看護管理者であれば誰でも体験する問題として超過勤務手当がある.ほとんどの国公立病院および多くの公立病院では,超過勤務手当の年間予算がある.また,その他の病院でも,超過勤務手当に対してなんらかの規定が明確になっている.超過勤務手当は,時間外労働の対価として支払われるものであるが,時間外労働自体が労働基準法(以下労基法とする)によって制限されている.あまりに基本的なことではあるが,確認しておきたい.
 使用者が労働者に時間外労働や休日労働をさせることができるのは,①災害その他避けることのできない事由によって,臨時の必要がある場合(労基33条1項),②公務のために臨時の必要がある場合(労基33条3項),③時間外労働に関する労使協定を結んでいる場合(労基36条),に限られている.

施設管理・2

より良い病院づくりを目指して

著者: 小室克夫

ページ範囲:P.246 - P.247

⦿病院側の姿勢
1)病院の主体性 まず,病院自身がどのようなものを造り上げたいのかという建設構想(建設理念)を明確にして,病院内外の関係者に十分知らせることが必要となる.
 次いで,その構想(理念)を各部門(病棟,外来,中央診療,供給など),建築・設備面に当てはめたらどうなるのかというように,より具体的な場面にブレイクダウンさせていくことが求められる.

IT革命は病院医療をどう変えるか・11

テレビ電話を用いた地域リハビリテーションネットワークづくり

著者: 伊佐地隆 ,   安岡利一 ,   栗田英明 ,   大田仁史 ,   大仲功一

ページ範囲:P.248 - P.252

 IT機器の進歩により,在宅ケアなど地域リハビリテーション(以下,リハ)の領域にもそれを取り入れる動きがある.まだ多くはないが医療の領域で先駆的な活動が行われ,保健や介護保険の領域にも広がっている(表1)1〜4)
 茨城県では,地域リハの構築と展開の一つの手段として,平成10年1月からテレビ会議システムを使つて「地域リハビリテーションネットワークシステム推進モデル事業」(以下,本事業)を行っている.全国に先駆けたこの活動を紹介しながら,ITが地域リハにどんな形で入つていけるのかについて考えてみたい.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第89回 東京大学医学部附属病院新入院棟

ヒユーマンホスピタルのソフトとハード/新世紀を担うヒューマンホスピタルの試み

著者: 長澤泰 ,   岡田新一

ページ範囲:P.254 - P.260

 病院の建て替えには時間がかかる.特に大規模な場合には一世代を要する例を今まで西欧の病院でも見てきた.多くの病院はその時代時代の医学・工学技術をしっかりとらえ,社会・経済的さらには文化的傾向の変化に敏感であった.東京大学医学部附属病院(以下,東大病院)の建て替えも同様に長年継続しているが,このような敏感さを常に保つことが必要であると感じている.
 今回めでたく新入院棟が完成したが,従来の「病棟」という表現を「入院棟」と呼んでいることも時代背景の反映の一例である.この名称は院内で公募して決められたが,病院側・設計者側のソフトとハードの一体的協力の表れと考えている.そして日本でもようやく実現した国際的水準の面積と予算確保の大役を果たした東大施設部の存在がある.わが研究室では第三者的な立場で様々な新しい提案の一端を協力させていただいた.新入院棟はこのような様々な関係者のコミュニケーションの賜物である.このような態勢ができ上がるのには今まで紆余曲折の長い期間を要したが,これがなければどのような優れた建築的提案も画餅に帰したろうし,管理的改善案も実現不可能であったと思う.

事務長の医療よもやま話・2

患者様,神様,仏様!

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.263 - P.263

●「患者様」(様付け)ブーム
 最近,医療機関で患者さんのことを「飯島直子様」,「木村拓哉様」と様付けで呼んでいるところが増えている.一見,医療業界も患者さんを顧客とはっきり認識すべく,「患者様」と様付け呼び(以下,単に「患者様」と略す)はよかれと思われがちの風潮がある.が,三波春夫の「お客様は神様です!」のごとく流行のようになってきている「患者様」に一石を投じたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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