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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻4号

2002年04月発行

雑誌目次

特集 学卒看護師の課題

看護大学の展望

著者: 新道幸惠

ページ範囲:P.278 - P.282

 看護教育を行っている大学は,1952年高知女子大学の家政学部において看護教育が開始されて以来,1991年までは11校にとどまり,看護関係者の「看護教育は大学において」という熱い思いからの努力もなかなか実を結ばなかった.しかし,1992年以降今日までの約10年間に看護系の大学は急激に増加し,2002年4月の新設校を加えると100校を超えることとなる(図1).
 この急増には,少子高齢化,医療・医学の進歩,量から質への価値観の転換などの社会状況が,高度で質の高い看護への需要を高めてきたという背景が考えられる.また,大学全入時代が間近といわれるほどに大学進学率が上昇したことも影響しているであろう.

新卒看護師の学校教育の評価と将来—学卒者と学卒者以外の比較を中心に

著者: 新田章子 ,   池上直己

ページ範囲:P.284 - P.287

 1991年まで,看護婦・士(現看護師)免許受験資格の得られる大学(以下,看護大学とする)は日本に10校前後であった.しかしそれ以降,看護師教育を量と質の両面から充足する必要性が認識されるようになり,看護大学のブームともいえる開設が相次いだ.2001年に開設された看護大学を含めた数は91校となり,2000年の入学者は6,331人で,看護系学校の入学生の18.4%を占めるまでに至った1)
 大学教育は,一般教養科目や理論教育が重点化されている反面,臨床実習時間は看護専門学校と比べて半分以下となっている.こうした相違を新卒看護師はどのように評価しているか,またどのような将来の方向性や自分の学歴に対する意識を持っているかを明らかにするために調査を行ったので報告する.

看護系大学新卒者の臨床実践能力

著者: 井部俊子

ページ範囲:P.288 - P.295

 聖路加国際病院(病床数520床)では,平成14年度の新採用看護師は126名を予定している.そのうち新卒者は91%を占める.教育背景別にみると,看護系大学卒が75%(大学院修了者も含む),短大卒が11%,養成所卒が14%となっている.ここ数年の傾向として,大卒者の割合が増加し,短大出身者が減少している.
 新人オリエンテーションのための集合研修は4月1日から4日間にわたり行われる.平成14年度の集合研修では,基礎的看護技術訓練を計画している.これまでは各配属部署でプリセプターが技術指導をしていたが,それでは日常業務に支障を来すので,各科共通で基本となる技術を練習してきてほしいという病棟管理者たちの要請が強まった結果,オリエンテーションプログラムに組み込むこととなったのである.さらに新採用者には3月上旬に,当院の「看護手順」を郵送し,所定の項目について事前学習を課すという試みも行っている.これらは,新卒者たちの技術不足を少しでも補強したいという臨床側の企てである.

看護管理者からの学卒看護師の評価

著者: 宗村美江子

ページ範囲:P.296 - P.299

 わが国において,初めて看護師国家試験受験資格を得られる看護大学が指定されたのは1952年(1校,1学年定員20人)であったが,その後40年近くの間は大学数の増加速度が著しく緩徐で1991年まで学校数はわずか11校,卒業者数は500人弱で,看護師国家試験受験者のわずか1.4%程度に過ぎなかった1)
 その後,人口の高齢化の急速な進展,疾病構造の変化,医学の進歩による医療内容の高度化・専門化,国民の健康に対する意識の高まりに伴う保健医療ニーズの増大と多様化に対応し得る資質の高い看護職者の養成が必要となり,急速に看護教育において大学教育が推進された.その結果,2001年には大学数は10年前の8倍以上の91校,入学定員は6,500人以上となり,全看護職養成数の1割強にまで増加した2)

【インタビュー】現場はどうみる学卒看護師―大森赤十字病院/東京都教職員互助会三楽病院/仁愛会海老名総合病院/健和会みさと健和病院/碧水会長谷川病院

著者: 根本とよ子 ,   塚田ひとみ ,   宇津木紀久枝 ,   太田三紀子 ,   和田恵子 ,   石田美恵 ,   粕田孝行 ,   澤村きよみ

ページ範囲:P.300 - P.308

 —最初に学卒看護師の採用開始年と導入の経緯,学卒者に何を期待して採用に至ったかなどをお聞かせ下さい.
 根本 将来の看護の指導者の人材確保のため平成2年より採用を始めました.日本赤十字看護大学が開設されたということもあり,当院でも大卒の看護師を採用していくという方針の下,同大学の委託生という形で受け入れを始めました.

グラフ

リハ病院の21世紀のコンセプトを発信—医療法人共和会小倉リハビリテーション病院

ページ範囲:P.265 - P.270

 南小倉病院(故矢内伸夫院長)は高齢者への包括医療を理念に,老人保健施設の厚生省モデル施設を開設するなど,老人医療を先駆的に展開してきた.浜村明徳現院長は故矢内院長の跡を受けて3年前に,国立療養所長崎病院の副院長から院長に就任,新病院建設の計画を進め,昨年4月,医療法人共和会小倉リハビリテーション病院と名称を変更し新病院が竣工.11月に旧病院跡地にレストランを完成し,リハビリテーション病院としての機能も整備して新たに出発した.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・6

ページ範囲:P.272 - P.272

対談

地域医療の視座と研修医教育・2

著者: 高橋勝貞 ,   清水茂文

ページ範囲:P.310 - P.315

(3号より続く)
 清水 関連診療所への派遣医を1年交代でやりくりした時代から思うと,信じられないような気持ちです.今3年を一つの区切りにして,国保診療所や町村立の診療所に医師を派遣しておりますが,そういう人たちはこの研修システムで育った方々です.そういう人たちが第一線の地域医療を担っているので大きいですね.かつては長期間勤務を住民から要望され期待されても「1年交代で勘弁してください」とやっていましたが,今はほとんど3年はクリアしてゆけそうですね.
 高橋 そうですね.

レポート

英国にみるホスピス・緩和ケアプログラム—セント・クリストファー・ホスピス見学から見えてきたもの(下)

著者: 近藤克則 ,   篠田道子 ,   樋口京子 ,   荒尾晴恵 ,   野間口千香穗

ページ範囲:P.316 - P.319

 前回では,見学した三つのホスピスの概要を紹介した.今回は,ホスピス間の違いを超えて共通する点を「ホスピス・緩和ケアプログラム」ととらえ,その特徴を明らかにしたい.三つの視点,1)提供されるケアのメニューなど対人サービス面,2)経営母体や財源面,3)なぜ一つのプログラムとなりえたのか,から全英の状況も交え紹介する.その上で,わが国への導入可能性を検討する際の前提となる医療制度などの日英の違いを考察する.

手術部の建築と運営の調査

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.321 - P.326

 「よい建築」は従来の建築ではできなかった方式が運営可能になり,適正な職員構成で効率的に成果が上げられる建築である.そのために建築設計者は将来運営する人と十分な協議を行う必要があるが,既存の建築がどう使われ,いかなる問題があるかを日頃より調査し,認識しておくことが大切である.特に自らが設計した建築の運営状況は調査しないといけないが,意外にそうした調査例は少ない.そこで筆者自身が基本計画を行った2病院(竣工後5〜10年経過)の調査をご紹介したい.
 今回の調査例は手術部建築平面型で論争の多いクリーンホール型(供給ホール型)であり,第1回病院建築賞(平成4年)を受賞した碧南市民病院と,医療福祉建築賞(平成10年)を受賞した市立岸和田市民病院の手術部である.いずれも増築計画があり,現在工事が進行している.碧南市民病院は平成13年11月12〜13日に,岸和田市民病院は平成13年7月24〜25日に調査を実施した.調査は健康デザイン研究会手術部研究会が担当し,調査員は筆者・棚橋秀行・山本和典・宮原隆志・永田啓・矢永勝美であり,全員の協議で本稿をまとめた.

病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題—急性期病院の立場から・1

今,なぜ病院改革か

著者: 正木義博

ページ範囲:P.327 - P.329

 まず最初に病院など,医療界で働いている皆さんにお聞きしたい.「今,皆さんは目的をしっかり持って仕事をしていますか.そしてまた,仕事をすることによって,やりがいや喜びを感じていますか」このような質問をしたとき,「はい」と自信を持って答えられる人が何人いるのか.今の医療界の状況を見る限りにおいて,そんなに多くはいない.本来,医療界に入ってくる人々は,決して金銭的な満足だけを目的とするのではなく,患者さんを救いたい,患者さんのために尽くしたいという奉仕の心で,情熱を持って飛び込んで来るのであるが,現実は思うようにならず,かえって悲しみと絶望にどっぷりと浸かり,時間が経つほどにしかめっ面や不平不満に溢れかえってしまうのではなかろうか.せっかくの志が曲げられてしまい.
 今,なぜ病院改革をしなければならないか,数多くの理由がある.外部環境の変化もそうである.われわれを取り巻く環境はどんどん変化している.経済的にも精神的にも世の中全体が変化している時,われわれ医療界だけが変わらずに存在できるかというと,答えは否である.その理由はわれわれ医療界も社会を構成する一員であり,社会の中で生き続けている一組織であるからである.したがって,時の流れや社会からの要求をしっかり把握し,時代の流れに適合する必要が大いにある.そして変革をなし得た組織だけが生き残ることとなるのである(図1).

看護管理=病院のDON・16

看護報酬の考え方

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.330 - P.331

⦿診療報酬上の看護の評価
 わが国の医療制度は,ヒトに関しては保健師助産師看護師法,医師法,歯科医師法,薬剤師法などの医療従事者関連制度,モノに関しては医療法などの医療施設関連制度,カネに関しては健康保険各法や介護保険法あるいは各種社会福祉制度によって規定されている.健康保険各法による診療報酬上の評価は,中央社会保険医療協議会(中医協)に厚生労働大臣が諮問し,答申を受けて決定される.これが診療報酬点数表である.
 診療報酬上の看護の評価は,医療経済上の重要事項であるばかりか,看護職の労働条件や看護経営に直接・間接的に影響を与える.逆の見方をすれば,診療報酬上の看護の評価が,わが国の看護の質を決定しているということもできる.以前は看護料と呼ばれていた看護報酬は,診療報酬改定ごとに見直され,変更が加えられてきた.多くの看護職からみれば,めまぐるしく変わる看護報酬に振り回されていると感じることも多いと思う.しかし,それは医療の変革や医療を取り巻く環境が急激に変化しているためであると考えたほうが正確であろう.

IT革命は病院医療をどう変えるか・12

ITを応用したリスクマネジメント—インシデントリポート情報のコード化と登録・分析システムの開発

著者: 山本実佳 ,   田中紘一 ,   金子万里子

ページ範囲:P.332 - P.335

インシデント情報登録システム開発の経緯
 21世紀を迎え,様々な分野における危機管理意識が問われる中,医療分野においても国民の信頼が揺らぐような報道が相次ぎ,各医療施設も組織を上げて意識改革に取り組まねばならない時期に来ている.安全管理の手法の一つとして,インシデントリポート(ヒヤリ・ハットリポート)を収集し,防止策の立案に結びつける方法がある.しかし大量の情報をマクロ分析するには,情報を体系化・コード化し,システム開発するといった基盤整備が必要である.そこで東海大学医学部付属病院では執行部の方針に基づき,付属病院群における安全管理組織が改められ(図1),2000年度の厚生労働省科学研究班活動で開発されたシステムを活用しながらEvidenceに基づいた安全管理活動を行うに至った.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第90回

ヨーロッパの新しい急性期病院の建築

著者: 河口豊

ページ範囲:P.336 - P.340

 2001年の9月15〜29日,社団法人日本医療福祉建築協会の海外医療福祉建築視察団として欧州の4大都市(ベルリン,パリ,ミラノ,ロンドン)を中心に視察した.ニューヨークのテロ事件直後,厳重な空港警護の中の旅行であったが,新しい病院建築を知る機会を得たので報告する.
 まず,特に印象に残ったことを初めに触れよう.1)ヘルスケア・リフォームを目の当たりにした,2)民営化が進んでいる,3) EBMと環境問題への取り組みが進んでいる,また,看護単位の規模や小規模病室化などは改めていうまでもない.

事務長の医療よもやま話・3

医療制度改革バトル,誰がどう動いたか!

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.343 - P.343

小泉首相の固い決意
 2002年2月7日,小泉首相はサラリーマン3割負担をあくまで2003年4月に実施する姿勢を崩さず,躊躇する厚生労働省(以下,厚労省)を「厚労省が抜本改革を嫌っている.厚労省にも痛みを分かち合ってもらう.役人は天下りばかり考えるな」と一喝した.首相は1997年厚生大臣当時,自らが作成した改革案を族議員の抵抗と厚生官僚の怠慢で見送られた苦い思い出があり,決意は固い.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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