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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻5号

2002年05月発行

雑誌目次

特集 病院の外来—増やすか減らすか

外来の現在,未来,過去,そして展望

著者: 長谷川敏彦

ページ範囲:P.358 - P.364

外来の現在
 1.今,全国に広がる「外来連携」,「外来転換」,「外来分離」 今,外来をどのように変えていくかが病院の経営課題として緊急かつ重要となりつつある.
 「診療所との連携」,「外来の機能の転換」,「外来を分離して診療所として独立させるかどうかの決断」,病院の経営者は外来をめぐる課題で,戦略的な決断を迫られている.特に外来分離は,地域中核的な民間病院を中心に全国的な広がりをみせつつある.

診療報酬による病院外来の誘導策

著者: 最勝寺憂佳

ページ範囲:P.365 - P.369

 診療所や中小の病院においてプライマリケアが行われ,必要に応じて,専門病院や大病院などに紹介されて診療が行われることが,患者の診療の面だけでなく,専門医や医療機器,医療施設の効率的配置や活用,ひいては医療経済学的な面から考えても望ましいという点については異論のないところであろう,患者のフリーアクセスが保証されているわが国の医療制度において,診療報酬でこのような患者の流れを作ることは可能であろうか.ここ10年余りに行われた診療報酬改定の中では,そのような患者の流れの評価をはじめとして様々な試みが取り入れられている.本稿ではその内容を時系列的に概観しながら,診療報酬改定への病院外来の対応,さらにこれからの診療報酬の評価と病院外来のあり方について考えてみたい.

診療所から病院外来に望むこと—診療所「かかりつけ医」と地域医療システムの活性化に向けて

著者: 唐澤祥人

ページ範囲:P.370 - P.374

 本特集における大命題,「病院外来について診療所側からの要望事項」についてを幾ばくか論ずるとして,やはり一般的に診療所の医療機能あるいは病院の外来機能について,またでき得れば21世紀の医療全体の将来を見据えた視点をとおしてそれぞれのあるべき医療機能について多くの異論を想定しつつ,拙論を展開し厳しくご批判をいただきたいと思う.
 まず幾つかのキーワードを項立てながら,基本的事項に触れたいと思う.

病院から診療所に望むこと

著者: 田所昌夫 ,   泉哲郎

ページ範囲:P.375 - P.379

 東京のような都市部では,人々の大病院志向が強く病院の外来に患者さんが集中しているという.河北総合病院も外来に毎日患者さんがあふれている.定期的に当院に通院している患者さんには診察予定時刻を記した予定表を渡しているが,診察を希望して臨時に来院された患者さんを既に診察枠がいっぱいであるからとの理由で断ることもできず予定枠の間に入れているので,診察予定時刻が大幅に遅れることがしばしばある.定期的に通院している患者さんはあまり不平も言わずに待っていてくれる.一方で医師たちは短時間のうちに多数の患者さんの診療を済まさなくてはならず,ストレスの多い状態が続いている.
 病院の外来が現在の状況のままでよいわけがない.例えば,内科外来にはわれわれからみれば病院の外来に通院する必要がないと思われる患者さんが多数いるので,これらの患者さんたちに近くの診療所へ通院されるように勧める努力をしたのであるが,患者さんたちは種々の理由から頑として病院に通院し,外来の状況は変わらない.これらの経験をもとに診療所へ望むことをまとめてみたい.

病院の外来—増やすか減らすか—私立医科大学病院である東京女子医科大学付属病院での外来のあり方について

著者: 加藤多津子

ページ範囲:P.380 - P.381

医療政策の近年の動向
 医療法の改正により医療機関の機能分化の必要性が明確になってきており,ますますその傾向には拍車がかかっている.質の高い効率的な医療提供体制の構築のため,今後も医療法の改正が行われていくだろう.急性期病院の医療提供については,2001年9月の医療改革試案にて,医療従事者の手厚い配置と治療の重点・集中化による在院日数の短縮,入院診療計画による院内の治療手順の標準化,専門外来,特殊外来,診療の高度化などの外来の変化,他の病院・診療所との連携の強化,医療機関の専門性,診療録実績などの情報提供,急性期病床の集約化などが盛り込まれた.既に2000年4月の診療報酬改定時には,急性期特定病院加算にて,外来患者数/入院患者数1.5以下という厳しい条件が設けられており1),このような病診連携を推進させる強力な診療報酬による誘導政策により,大病院は入院に特化し,外来はかかりつけ医という方向に流れが向いているようにみえる.

病院の外来—増やすか減らすか—効率的な医療を目指して病院から外来機能を分離

著者: 亀田省吾

ページ範囲:P.382 - P.383

マスタープランの作成
 亀田メディカルセンターは,冬でも菜の花が咲き,温暖で風光明媚な観光地である南房総鴨川市の太平洋に面した海岸沿いに立地しております.救命救急センターを併設した病床数858床の急性期病院である亀田総合病院と,1日外来患者数2,000〜2,500名の高機能大型診療所である亀田クリニックを中心に,社会福祉施設や様々な関連施設と連携し,幅広い医療福祉事業に取り組んでおります.当地域は他に総合医療機関を持たないため,あらゆる疾病に対する365日24時間の対応を求められております.
 当院は,私どもで11代目で,江戸寛永時代より約350年の歴史があります.昭和39年に南房総唯一の総合病院として歩み始め,南房総の基幹病院として発展してまいりました.地域のニーズや,医療の進歩に応える形で継ぎ接ぎ的に拡張してきた結果,施設的にも機能的にも大変非効率が目立ってきました.そこで,1989年に病院の長期基本計画であるマスタープランを米国の病院コンサルタント会社や設計事務所などにも協力をいただき作成しました.

病院の外来—増やすか減らすか—過去の分析より考えた今後の外来診療

著者: 高橋雅明

ページ範囲:P.384 - P.385

 中小病院の外来は,地域の人々に喜ばれ,綿密でしかも患者さんの待ち時間を少なくしようとすれば,限られた時間内での1人に対する診療時間が短縮され,その分1人当たりの売上が減少するという矛盾が生じる(注1).この矛盾を止揚するのは極めて難しい問題である.

病院の外来—増やすか減らすか—小規模急性期病院のとるべき道

著者: 佐田正之

ページ範囲:P.386 - P.387

病院概要(表1)
 「佐田外科」と古くから親しまれてきた佐田病院は,外科手術を多く実施する都市型小規模の急性期病院として専門特化を進めてきました.
 福岡市の天神ビジネス街の中心地にほど近いところに位置し,周囲には九州大学医学部附属病院,福岡大学病院,福岡日赤病院,福岡済生会病院,国家公務員共済浜の町病院といった多くの大病院が取り巻く環境にあります.

病院の外来—増やすか減らすか—地域医療支援病院を目指したある民間病院の挑戦

著者: 川西秀徳

ページ範囲:P.388 - P.393

 浦添総合病院は,昭和56年に開業し浦添市の中核病院として急性期医療中心に診療,また関連施設として健診センター,介護老人保健施設,訪問看護ステーション,在宅介護支援センター,ヘルパーステーションを有し予防・介護・福祉の面でも同様に地域貢献してきた.平成11年より地域医療支援病院を目指し1日1,100〜1,200人いた外来患者さんを開業医を中心に「かかりつけ医」として紹介し,平成13年10月には1日平均外来患者数335人まで減少した.現在入院医療,救急外来,段階的紹介型予約制専門外来の導入,紹介による検査,手術などを中心とした診療を行っている.平成13年3月1日,急性期特定病院ならびに平成13年6月18日,地域医療支援病院の認定を取得した.
 今,外来業務にも医療の質が問われているが,その業務の中での問題点としては,①長い外来待ちと非常に短い診察,すなわち質よりも量をこなすということ,②医師の過剰診察量による疲労困憊と入院患者ケアへの質の低下,③ナースも同じく疲労困憊と退職者増加による質の低下,さらにこれらはいずれも医療過誤の要因にもなる.当院の外来部スタッフは正看護師の外来部長をトップに外来診療スタッフ31名,外来事務職スタッフ47.5名,総計79.5名であり,外来事務職スタッフの80%近くは派遣スタッフで構成されている.

グラフ

台東区の地域医療の充実に民間病院の活力を導入—財団法人ライフ・エクステンション研究所附属永寿総合病院

ページ範囲:P.345 - P.350

 永寿総合病院は昭和31年,財団法人ライフ・エクステンション研究所の附属病院として開設されて以来,「患者の活動年齢を永らしめ,幸福な長寿を提供する」という理念に基づき,台東区の中核的な病院として地域住民に医療を提供してきた.同院は施設の老朽化などに伴い移転新築事業を推進してきたが,このほど400床へと大幅に増床した新病院が平成14年2月に開院した.
 台東区は高齢化率が約23%と,東京都内で最も高齢化が進んだ地域である.その一方で人口10万人当たりの病院病床数は約669床と,23区の平均である約914床を大きく下回っている.また,区内の総合病院は同院と日本私立学校振興・共済事業団の下谷病院(201床)の二つのみであるなど,医療施設の整備が遅れていた.しかし,六つの大学附属病院をはじめ多数の大規模・高機能病院を擁し,病床過剰地域でもある区中央部保健医療圏に属しているため,増床や病院の新設は困難な状況にあった.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・7

ページ範囲:P.352 - P.352

特別寄稿

米国病院界におけるバランスト・スコアカード—1.視点枠組み

著者: 荒井耕

ページ範囲:P.396 - P.401

 米国病院界では,特に1980年代末以降,マネジドケアによる競争の激化に対処するために,競争能力を高めるための戦略的な経営管理システムが必要とされてきていた.また,経営管理者による財務面・効率面中心の経営管理と現場医療職による「医療の質」の管理活動とを統合し,経営管理者および現場医療職が病院の多様な業績側面を包括的・体系的に把握・管理する必要がでてきていた.加えて,対外的にも病院の包括的な業績を公開し,包括的な情報に基づいた医療選択を可能にすることが求められるようになってきていた(注1).
 こうした中,一般産業界でのバランスト・スコアカード(balanced score card;BSC)の議論および実践の活発化の影響を受けて,1990年代後半以降,米国病院界にBSCの導入事例が多く見られるようになってきている.そこでは,医師・医療職員および経営管理者の戦略的方向への統合1),病院業績への医学的・財務的ドライバーの影響の理解・学習1),病院内外の顧客への価値・エネルギー提供の改善2),因果連鎖に基づいた戦略の実行3),重要領域の明確化と焦点を当てた監視3),戦略と目標と業績評価の一貫性のある統合4),品質管理能力の向上5〜8),医療サービスの価値情報に基づいた顧客による医療購入選択とそれを前提とした病院による業績のマーケティング力の向上3,9,10),といった多様な期待がBSCに対して寄せられている(注2).

医療安全政策の国際動向とその方向性—1.総論

著者: 長谷川敏彦 ,   藤澤由和

ページ範囲:P.402 - P.406

これまでの経緯
1.IOM報告書の衝撃とアメリカの医療安全政策の動向
 医療事故・患者安全の問題は国際的な広がりをみせ,今や人類史的な課題となりつつある.アメリカ,イギリス,オーストラリアの三か国は近年,国全体の医療安全政策をまとめている.それには1999年11月にアメリカで出版されたアメリカ医学院(Institute of Medicine:IOM)報告書『人は間違うもの』が大きく影響を及ぼしていると考えられる1)
 このIOM報告書が公表された背景は以下のとおりである.まず1994年に有名な診療施設で医療事故が相次ぎ,多くのジャーナリズムがこの問題を取り上げたのであるが,こうした世論の高まりを受けてクリントン大統領は「医療の質のための諮問委員会」を設けた.この委員会はアメリカ厚生省を介してアメリカ科学アカデミーの一部であるアメリカ医学院(IOM)に医療事故に関する研究を委託し,その研究の成果がこのIOM報告書であったのである.

レポート

診療録管理体制加算の取り組みと診療情報管理士

著者: 福田行弘

ページ範囲:P.407 - P.410

診療情報の全面開示に向けて
 2000年4月に診療録管理体制加算が制定された.この内容は国際的な流れに沿う診療情報全面開示に向けてのインフラ整備やDRG/PPSの対応の一環であり,また今年の診療報酬改定の急性期加算に関連する重要なキーポイントとなっている.2001年4月から始まった中央省庁の情報公開制度(請求手数料では1件300円,コピー代は1枚20円,総務庁)に代表されるように,ここ数年で「個人情報アクセス権」が確立されることから,診療情報の開示は法によって義務づけられる様相である.またDRG/PPS導入に関してはICD-10(国際疾病分類),ICD−9CM (手術および処置の分類)によるコード化(コーディング)をすることが最低限必要であることから,これらの環境を診療報酬上で点数化することにより診療情報管理を整備していくことを診療録管理体制加算は目的としている.
 しかしながらこの診療録管理体制加算に関する施設基準では,早急に望まれる診療情報の全面提供や診療情報の保守管理体制,DRG/PPS導入の環境整備に取り組む進捗のスピードが速まるとは言い難い.国の政策透導はひっ迫した財政で新たな点数の付加は不可能である.こういう状況では環境整備を担う部署の専門家である診療情報管理士の奮起を促さなければならないだろう.

病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題—急性期病院の立場から・2

病院改革への行動開始

著者: 正木義博

ページ範囲:P.411 - P.413

 済生会熊本病院での改革は平成7年10月,現院長の須古博信先生の院長就任をきっかけとして始まった.院長と同時に事務長職に就いた筆者に,これから先の病院経営についてのビジョンを作成するように指示をしたのである.このことが済生会熊本病院を大きく変えていく原点となった.

看護管理=病院のDON・17

平均在院日数と紹介率

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.414 - P.415

⦿平均在院日数短縮化の衝撃
 前回も触れた平成14年4月診療報酬のマイナス改定は,各病院に大きな影響を与える結果となった.夜間看護体制の評価の見直しということで,夜間看護配置10対1に対して新設評価がなされたことは,評価できる.しかし,急性期入院加算の平均在院日数を17日に短縮し,2対1看護の要件を21日以内,2.5対1看護を26日以内に短縮した(実施は平成14年10月以降)ことは,病院の看護経営上の大問題である.平均在院日数が短縮できなければ看護職の増員は行えないばかりか,今まで算定できた加算が算定できなくなれば,病院経営は火の車になる.
 平成6年までの旧特Ⅲ看護基準には,平均在院日数30日以内という制限があった.その後,新看護体系では,2対1看護25日,2.5対1看護28日以内という要件がついた.この要件は,入院基本料に継承された.一方,急性期病院加算は,平成10年改定において,平均在院日数を20日以内,紹介率30%以上の病院に対して入院時医学管理料Ⅱ加算として155点が新設され,12年改定で,急性期特定病院加算と急性期病院加算に再区分されたものである.今回の改定は,これらの平均在院日数要件を短縮したもので,平均在院日数短縮化のための経済誘導策である.注意を要するのは,当初,厚生労働省は急性期を16日,2.5対1看護を24日にするように提案していたという事実である.つまり,今後も在院日数短縮化のための経済誘導策が継続されることは,かなりの確率で確実であろう.

施設管理・3

空間把握をより身近なものに—モックアップルームの製作

著者: 小室克夫

ページ範囲:P.416 - P.417

 病院建築を考える時,最も重要かつ基本的な部屋の一つに病室が挙げられる.病室内の内装・各種設備関係,およびそれら相互の取り合いを検討していく際に,先進事例の各種写真・図面・資料集などを参考にすることは,もちろん必要なことであろう.しかしながら,施主,設計者,施工者などそれぞれ立場の異なる人たちが一堂に会して,その場で使い勝手のよし悪しをはじめ,病室について多角的に検討・議論する手段としては,3次元の実物大模型であるモックアップルーム(以下,MUR)を製作して確認することに勝る方法はないのではなかろうか.

IT革命は病院医療をどう変えるか・13

ITを活用した大阪府医療機関情報システムの運用

著者: 笹井康典

ページ範囲:P.418 - P.420

 厚生労働省の医療制度改革試案では,今後のわが国の医療の目指すべき姿として,患者の選択の尊重と情報提供が提示されている.その具体的なイメージとして,患者が医療に関する客観的情報を活用して医療機関を選択することにより,医療の質や患者サービスの向上に結びつくこと,そのために,患者に対して医療機関の専門性,診療実績や機能について適切に情報提供が行われる必要性が示されている.また,日本医師会の提言においても,正確で客観的な情報の開示が,医療の質の選択を可能にし,医療の質の向上に結びつくとされている.
 このように,より積極的な医療の情報開示,医療の質の管理,医療の機能分担と連携の推進は,わが国の医療の重要な課題であるとともに,患者サイドに立てば,自分自身が主体性を持って医療機関を選択できるための情報開示が期待されるところである.また,医療機関サイドにおいても病病連携や病診連携の推進により,提供される医療の質の向上を図ることが期待できる.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第91回

国立成育医療センター

著者: 辻吉隆

ページ範囲:P.422 - P.429

沿革
 少子化が急激に進む中,次代を担う子どもとその家族の健康は国民的課題となっており,専門分化する医療環境において患者やその家族を中心とした総合的・継続的医療が強く求められてきている.これらのニーズに応え,胎児から小児,思春期を経て出産に至るまでのリプロダクションサイクルを対象として行われる総合的かつ継続的医療が「成育医療」である.これまでの診療科の枠を越え,ライフサイクルという新しい概念に基づいた成育医療の確立を目指してこのたび「国立成育医療センター」は整備された.
 当センターは,患者と家族を主体とする病院として,次の四つの軸から計画を進めてきている.

事務長の医療よもやま話・4

治療費をもらうべきか,もらわざるべきか,それが問題だ!

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.431 - P.431

●インフルエンザ感染の場合は?
 これは実際に一宮温泉病院で起こった事例である.今年1月下旬に53歳の女性の患者さん(Aさん)が,交通事故に遭い頸椎捻挫(むちうち症),腰部打撲のため来院した.X線写真上は骨折など大事には至らなかったが,吐き気が強く食事も取れない状態だったので4人部屋に入院となった.その頃からちょうどインフルエンザが流行りだし,同室の患者さん(Bさん)が40℃近い高熱を出し,検査結果ではA型インフルエンザと判明した.ところが運悪く,体力も弱っていたAさんもインフルエンザにかかってしまった.幸い,即効性のインフルエンザ治療薬でAさんもBさんも2日で回復した.Aさんの治療費は交通事故に関する整形外科領域は損害保険会社へ,インフルエンザに関する内科領域は健康保険扱いで本人へ請求するのが通常の扱いである.入院係の職員がAさんのところへ請求書を持って行って説明した.
 職員:「インフルエンザの治療費は交通事故外ですので,損害保険会社に請求するわけには参りませんで,申し訳ありませんがAさんがお支払い下さい」 するとAさんは少しむっとした表情となり,間をおいて「私はむちうちで入院したんです.インフルエンザにかかったのは,院内感染で病院の責任です.ですからその分の支払いはできません」 職員は唖然として「….そ,そうですか」と言葉を残しその場を退散して,すぐ,筆者のところへ相談にきた.そもそもAさんは内科的には全く問題なく,交通事故に遭い整形外科領域の治療のため入院した.本人にとってみれば,インフルエンザにかかったのはとんだとばっちりだ.Aさんの主張は一理あり,よってAさんへの請求は取り下げた.ただしAさんの了解のもとで,社会保険へは残りの8割を請求した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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