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文献詳細

雑誌文献

病院61巻6号

2002年06月発行

文献概要

特別寄稿

米国病院界におけるバランスト・スコアカード—2・設計対象・事例と評価

著者: 荒井耕1

所属機関: 1大阪市立大学大学院経営学研究科

ページ範囲:P.487 - P.492

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設計対象
 バランスト・スコアカード(BSC)は多様なレベルの組織単位に設計され得る.企業組織全体や部門レベルの組織単位に対して設計されることが多いが,チームレベル,さらには個人レベルの組織単位に対して設計されることもある.病院BSCの設計対象としては,病院全体レベル,病院内の特定部門・センターレベル,医療チームレベル,医師個人レベルなどの組織単位が考えられ得る.しかし2000年代初頭までにおいては,病院全体レベルと特定の部門・センターレベルの組織単位に対するBSC事例が中心であり,チームレベルや医師個人レベルでのBSC事例はあまり見られない.
 病院界においては,特定疾病への医療サービスに対して,患者満足度,臨床的成果,機能的成果,コストといったバランスの取れた視点から評価・管理をするマネジメント手法(クリニカル・バリュー・コンパス)も見られ,これは一見BSCに類似する.しかし,BSCは基本的に責任と権限を有する組織単位(最小単位の場合,個人)に対して設計されるものであり,いわば一般産業界における提供製品・サービス単位である疾病単位に対して設計するクリニカル・バリュー・コンパスはBSCとは異なるマネジメント手法である.つまり,BSCが組織業績を評価・管理するのに対して,基本的にクリニカル・バリュー・コンパスは提供サービスの業績を評価・管理しているのである.また,クリニカル・バリュー・コンパスでは,その設計対象の性格上,BSCに見られる学習と成長の視点は少なくとも前面に出てきておらず,評価の視野の包括性はBSCよりも狭い.ただし,クリニカル・バリュー・コンパスが対象とする特定疾病ごとに責任と権限を有するチームが編成され,そのコンパスの視点枠組みでチームの業績管理がなされているような場合には,クリニカル・バリュー・コンパスはチームを対象に設計されたBSCの一種であるととらえることもできる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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