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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻7号

2002年07月発行

雑誌目次

特集 療養病床の行方

慢性期医療における病床のあり方

著者: 武田俊彦

ページ範囲:P.526 - P.532

 長期慢性疾患のための病床の歴史を振り返ってみると,昭和58年に老人保健制度が施行され,老人診療報酬と医療法施行令の改正により特例許可老人病院が制度化されて以来,診療報酬による介護力強化病床の評価,医療法改正による療養型病床群の許可制度化と,より質の高い療養病床を法制度上位置づける方向に発展してきた.しかしながら,療養型病床群制度においては,許可を受けるかどうかは任意であったため,療養環境の改善など,療養型病床群の基準が目指した良質の医療提供はすべての長期療養病床に確保されるわけではなかった.そこで,第4次医療法改正において療養病床を一般病床と並ぶ医療法上の病床類型として位置づけるとともに病院に選択を求めることとし,現在の病院病床は,精神などの病床を除き,必ず一般病床か療養病床かを選択してそれぞれの要件を満たさなければならないこととなった.このように,法制度的には一つの到達点に達したといえるが,社会保障改革の大波の中で,将来方向についてはむしろ不透明感を指摘する声がある.
 この療養病床の今後の方向性については,様々な議論が続いている状況にあり,現時点でこれを明示できる状況にはない.したがって,本稿では,行政の動き,特に医療法の許可基準,医療計画,診療報酬,介護保険制度をめぐるそれぞれの動きについて現時点での整理を試みるとともに,今後の方向性については,あくまで私見として,論点のみを示すこととしたい.

病院将来計画における療養病床の位置付け

著者: 安藤高朗

ページ範囲:P.533 - P.540

 戦後50年が経ち,既に新世紀の幕開けから1年以上を経ようとしている.
 広く世の中に目を向ければ,日本は一昔前に経済的繁栄に終止符を打たれ,いつの日からか人々の間には先の見えない漠然とした不安感や,新世紀とは裏腹な閉塞感が漂っている.

療養病床の機能評価からの視点—病院機能評価における審査方法の変更と評価項目の改定について

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.541 - P.545

 平成12年度の介護保険の導入によって,療養型病床群は「医療保険適用」と「介護保険適用」の二つの種類に分けられることになった.また,昨年の第4次改正医療法の施行に伴い,各病院は従来の「その他病床」を,来年8月31日までに「一般病床」か「療養病床」のいずれかを選択して届け出し直さなければならない.そして,その届け出を怠ると病床の許可が取り消されることになっているので,病院にとっては正に自院の機能をよりいっそう明確に打ち出して,今後の病院経営を考えて行かなければならない事態に直面している.
 新しい病床区分である「一般病床」は,実は「急性期病床」としての機能が期待されていることはよく指摘されているところであるが,それでは「療養病床」にはどのような役割が求められてくるのであろうか.そもそも療養型病床群は,介護保険の適用を視野に入れた,長期の療養を担う病床として整備が図られてきた経緯があるが,医療法の改正による新たな病床区分の導入によって,今度は「療養病床」と名前を変えて医療保険の中での新たな役割が求められている.しかし,それは「一般病床」での医療を,どの程度の期間までを想定しているかに強く影響されることであり,例えば「回復期」の医療を,「一般病床」と「療養病床」のどちらが担うべきなのかは,病院機能評価を行う上での大きな課題となる.また,介護保険との関係も視野に入れる必要があり,「介護保険適用」と「医療保険適用」とでは同じ「療養病床」でも,どのような機能の違いが求められるのかなども考えていかなければならない.

療養病床の経営分析

著者: 栗村幸雄

ページ範囲:P.546 - P.552

医療療養病棟か介護療養病棟か
 第4次医療法の改定で患者の病態に応じた病床区分の見直しを行い,従来の「その他の病床」を,主として長期にわたる療養を必要とする患者を入院させる「療養病床」と,それ以外の「一般病床」に区分した.各病院はそれぞれの療養環境の特性に応じた人的配置や構造設備の基準を定め,平成15年8月31日までに「療養病床」または「一般病床」のどちらかに移行させなければならない.一般病床の基準を満たせない病院は療養病棟か老人保健施設やケア付きマンションに転換するか,病棟閉鎖の選択が迫られているが,大部分は療養病棟に転換するものと予測している.
 平成4年7月に療養型病床群の制度が開始され,平成10年4月から診療所の療養型病床群も新設され,まだ歴史は浅いが平成13年9月には233,962床と大きく数を伸ばしてきた.その背景には,①一般病床においては平均在院日数や看護体制の縛りがきつくなってきたこと,②逓減制が導入され一般病床に長期入院の患者に対する入院時医学管理料が大幅に減額されることになったが,慢性疾患の老人が多く入院している療養病棟においては減額幅が比較的緩やかであったことなどが挙げられる.

療養病床—当院の選択—院内の体制作りと病病連携

著者: 土谷治久

ページ範囲:P.553 - P.555

 慢性期患者の長期入院が常態化しているにもかかわらず,「療養病床」への転換が困難な「一般病床」が転換型老人保健施設へと誘導されながら,平成15年8月末の病床区分の届け出が現実問題として迫ってきた.
 さて,「療養病床」が急性期医療を行う病床ではなく,慢性期医療と介護サービスがミックスした病床であることの異論はないと考える.したがって,「療養病床」の運営は,①併設施設がある場合,当該施設と協力を図りながら,どのような慢性期医療と介護サービスが提供できるか?,②圏域内の他医療施設がどのような医療資源を有し,どの分野での連携が可能で,それぞれの不得手分野をどう補填しあえるか?,などで運営方針は異なるものとなると考える.

療養病床—当院の選択—高齢化地域における中小病院の立場から

著者: 小野剛

ページ範囲:P.556 - P.557

 医療法第4次改正により医療機関の機能分担が推進されることになり,医療の現場では2003年8月末までに「一般病床」か「療養病床」かの選択が迫られています.また,2002年4月の診療報酬改定により療養病床の今後の方向性がある程度見えてきたようにも思われます.町立大森病院は50床の医療型療養型病床を持つケアミックス型の中小規模病院ですが,今回の診療報酬改定を踏まえて「療養病床」の選択と運用の予定について若干の考えを述べさせていただきます.

療養病床—当院の選択—脳神経外科病院の特性を生かした療養病床の展開

著者: 谷寛憲

ページ範囲:P.558 - P.560

 NHKの大河ドラマ「利家とまつ」の影響で今年の金沢はちょっとした観光ブームとなっている.そのため市内の観光名所や三名園の一つである兼六園も連日観光客で賑わっているとのことである.
 金沢脳神経外科病院(図)は,その兼六園の南西約10kmの金沢市に隣接した人口約42,000人の石川郡野々市町にあり,昭和55年に県内で初めての脳神経外科専門病院として開院し,今年5月で22年が経過した.当時は,脳神経外科や神経内科がどんな病気を扱うのかさえ,地域の方々には十分に理解されておらず,精神科の一部か親戚ぐらいに受け止められ説明に困ったこともあった.

療養病床—当院の選択—よりよいリハビリ入院治療のために

著者: 鈴木恒彦

ページ範囲:P.561 - P.563

ボバース記念病院のリハビリテーション事情
 ボバース記念病院は本年で創立20周年を迎えるが,わが国における都市型リハビリテーション(以下,リハ)医療施設の先駆けとして,これまで様々な体験をしてきた.近年の当院への脳卒中の患者の流れは図1のごとく,急性期病院において2週〜6か月間のリハ治療後に紹介されることが多く,急性期におけるリハ治療では機能回復が不十分な約30〜40%(覚醒レベルが不十分,端座位が不可能な段階)の方々が受診される.特に一般病床の平均在院日数の短縮が進む最近の診療報酬改定後は,発症後1か月以内で覚醒レベルと呼吸・摂食管理に問題を有し,合併症を持ったままにリハ医療を求めるより重症な場面が増えており,予測される長期間のリハ治療とこれを制約する医療保険との板挟み状況である.
 入院の紹介率は98%を超えるものの,長期入院を必要とする方々が多く,入院中の移動能力や日常生活動作能力(ADL)は全介助のため,そこにかかわる大勢のセラピストや看護師,ヘルパーを必要とする.したがって,実効的リハ治療を行うためには,医療的看護度が薄い想定の下に設定された現在の療養病床の看護配置基準では,現実には対応ができない.むしろ急性期一般病床並みの,全身管理を含む専門的技術に裏付けられた目を持つ看護・介護が求められている.

グラフ

専門病棟で明るく活気のある高齢者医療を展開—医療法人白十字会耀光病院

ページ範囲:P.513 - P.518

 長崎県北の中核都市,佐世保市は,造船・炭抗の町として栄えてきた.近海には208の島々の連なる九十九島があり,観光業にも力を入れている.この佐世保の地に昭和4年,富永猪佐雄氏が富永内科医院を開設した.昭和26年に医療法人白十字会を設立,昭和49年にはこの傘下に弓張病院(現在の燿光病院)が誕生した.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・9

ページ範囲:P.520 - P.520

特別寄稿

米国病院界におけるバランスト・スコアカード—3.導入・実施上の留意点

著者: 荒井耕

ページ範囲:P.566 - P.570

導入・実施上の留意点
 バランスト・スコアカード(BSC)の導入・実施上の留意点については非常に多くの文献において言及されている.特にデューク小児病院でのBSC導入の経験に基づいたMelion—esらの論文1,2)と,イェール大学医学部麻酔学科でのBSC導入の経験に基づいたRimar and Garstkaの論文3)は,導入・実施上の留意点に詳細に言及している.そこで,まずこの二つの事例における議論を整理し,続いてその他の諸文献において議論されている諸留意点を紹介し整理する.

医療安全政策の国際動向とその方向性—2.医療安全をめぐる新しい考え方

著者: 長谷川敏彦 ,   藤澤由和

ページ範囲:P.572 - P.577

 前回は,医療安全政策に関する国際的な動向に関してアメリカ,イギリス,オーストラリア3か国を中心に紹介を行った.今回はこれまでの調査の概要とこれらの調査結果から導き出された新たな方向性,およびここから今後の日本における医療安全および患者安全において重要と考えられる中心的な概念を概観し,今後の日本における方向性を論じることとする.

死亡高齢者の医療費は本当に高いのか—入院医療費の年齢階層別分析・2

著者: 白木克典 ,   荒岡茂 ,   石井暎禧

ページ範囲:P.578 - P.582

(前号より続く)
死亡高齢者に特有の高額医療など存在しない
 前項では,マスコミなどで一人歩きしている「医療費は死亡直前に急上昇する」という論調について,①従来のデータには集計手法上の限界があり,「死亡前医療費なのか入院後医療費なのか」が不分明,また,②死亡,生存の別なく入院医療費と在院日数には逆相関関係が成立する,という2点を指摘した.そして,そのことを根拠として「死亡前」に特有の高額医療など存在しない可能性が強いことを示唆した.
 以上を前提として,本調査レポートのテーマである「死亡高齢者の医療費分析」を行うこととしたい.まずは,本調査のデータ規模を示す「総件数および医療費総額」の確認と整理から開始する.

病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題—急性期病院の立場から・4

聖路加国際病院の過去・現在・未来(1)

著者: 中村彰吾

ページ範囲:P.584 - P.587

⦿聖路加国際病院の現況と問題点
 1902(明治35)年,米国聖公会から派遣された若き宣教医師ルドルフ・ボリング・トイスラーによって聖路加国際病院は創立された.Drトイスラーは「東京に空家の小さな病院がある」ということを聞かされ,故郷のリッチモンドで若くて人気もあり,医師として輝かしい未来を約束されていたのを振り切って,当時教養のある人でも東京が日本という国にあるのか,中国にあるのか知らない状況の中,ロマンと青雲の志と,何よりも強い信仰心に裏付けられたフロンティアスピリットを持たれ,1899年12月27日にニューヨークを立たれ,約18日の船旅を経て横浜に上陸された.そして早速診療活動を始められたが,当時の病院名は「築地病院」であった.それから病院名をキリストのお弟子で医師であった「ルカ」の名を取られ「聖ルカ=聖路加病院」として今日の基礎を築かれた(聖路加国際病院となったのは大正年間である).
 それから100年の間,多くの先輩によって,関東大震災(病院の木造の建物は崩壊し,フィリピンに駐屯していた米国陸軍からテント・医療品を提供してもらい,医療活動を続けた),戦後の米軍による接収そして解除,などの苦難の時代もあったが,1992年さらに近代化した病院を新築オープンし,今年で早くも10年を経過した.

看護管理=病院のDON・19

院内看護教育力

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.588 - P.589

⦿教育・研修の再検討
 どのような組織でも,その組織を維持発展させるためには,構成員への教育を重要視することが必要である.病院看護部の教育は,組織内教育として長い歴史がある.程度の差があるにせよ,多くの病院で看護部門職員の教育プログラムがあり,担当者が配置されている.一般的には,新人教育・研修,2・3年目教育・研修などの段階別教育・研修,領域やテーマごとの専門教育・研修,管理者教育・研修などがある.
 段階別教育・研修や領域やテーマごとの専門教育・研修は,一人前の看護師としての成長を支援するためのものや,専門領域に特化して看護サービスを提供する看護師を支援するためのもの,そして,管理者のための教育・研修は,組織が提供したいと考える看護サービスを提供するためのマネジメント教育の機能と,DONの後継者となる人材の育成の機能を持つものである.

栄養管理・1

チーム医療での栄養士の役割

著者: 渡辺栄吉

ページ範囲:P.590 - P.592

⦿医療制度改革への対応
 2000年にスタートした「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では,疾病の1次予防や2次予防に関連した分野で肥満,糖尿病,循環器病,がんなどに対して2010年までに到達すべき目標の具体的数値が提示され,医療・福祉・保健機関ならびに専門家の連携などが強く打ち出されている.
 一方,2002年改定に向けて2001年9月25日に厚生労働省から発表された医療制度改革試案の基本方向に「保健医療システムについては,健康づくり・疾病予防の推進を図るとともに,情報の開示,患者の選択の拡大,医療提供体制における機能分化・集約化などを進めることにより国民が安心・信頼できる質の高い医療サービスが効率的に提供される仕組みへと見直す」とある.さらに診療報酬の見直しでは,2002年度改定の課題に「生活習慣病などに対する生活指導の重視」とあり,疾病予防の取り組みの推進とともに,生活の質の向上を実現する健康づくりなど予防面における医療提供体制の改革が示された.

医療を支えるファシリティマネジメント7話・2

患者満足度調査

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.594 - P.595

 前回は「顧客である患者に提供するサービスの品質向上こそ,ファシリティマネジメント(FM)の目標である」と書きました.今回は直接患者がその品質に満足しているか否かを調査する「患者満足度調査」のお話をしたいと思います.
 最近,多くの病院で患者を「○○様」と呼ぶようになり,「患者中心だと病院はどう変わるか?」といった論文が注目され,患者満足度調査も話題になり始めています.これまでは「お医者様に診療していただく」という意識が強かったのを考えると,世の中が随分変わったものだと驚きます.本当に患者が医療施設を選択し,提供されるサービスの品質を評価する時代になったのでしょうか.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第93回 民間病院の増築

財団法人太田綜合病院附属太田西ノ内病院—医療環境の変化と地域ニーズに即応した高機能病院/医療法人近森会近森リハビリテーション病院・近森病院第二分院—質的向上に向けてたゆまぬ病院のリニューアル

著者: 太田健三 ,   深瀬啓智 ,   川添曻

ページ範囲:P.596 - P.603

増改築の四半世紀
 太田西ノ内病院は福島県の中央部,人口約33万人の郡山市にある.3病院1老人保健施設,総病床数1,852床,職員数2,348名を有し,ネットワークによる保健医療福祉を提供する財団法人太田綜合病院の附属病院の一つであり,高度・救急医療を担うとともに臨床研修病院でもある.
 1975年に旧さがの病院とささはら病院を西ノ内(現在の市道の南側敷地)に移転して精神神経科と内科の病院としてスタート,1981年に糖尿病を主とした内科系を充実するために増築して500床の規模の病院となった.さらに1989年,旧本院(現太田記念病院)より救命救急センター・臨床研修病院など,多くの機能を西ノ内(市道を挟む北側の敷地)に移転・増床して計1,000床の総合病院・太田西ノ内病院となり,郡山市を中心とする福島県中地区の中核医療施設としての役割を担ってきた.それから10年余りが経過し,この間,県より「地域災害医療センター」,「エイズ拠点病院」の指定を受けるとともに,ますます増加する救急医療など,医療需要の質と量の変化,変革の激しい医療制度に対応すべく計画されたのが今回の第4期整備計画である.増築工事では,既存の病棟再編による130床の移動と,磐梯熱海にあった附属玉川分院100床の法人内移転による230床を含む増改築で,今年3月末に完成し,西ノ内病院全体で1,100床の規模となった.

事務長の医療よもやま話・6

銀行のシステムトラブルは他人事ではない!

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.605 - P.605

●エープリルフールに起こった銀行のシステムトラブル
 第一勧業銀行,富士銀行,日本興業銀行が合併し,4月1日より新たに「みずほ銀行」,「みずほコーポレート銀行」としてメガバンクがスタートを切った.ところが新銀行が華々しくスタートした初日から,いきなりシステムトラブルが発生した.トラブルの内容は①1〜4日に口座振替で二重引き落としが3万件発生した.この復旧処理が8日午前に終わったと発表された.が8日,再び二重引き落としが約3万件発生.②振り込みで二重に送金するミスなど誤送金が約5,000件.③口座振替の引き落とし遅延約250万件.④現金を引き出せなかったにもかかわらず,預金残高が減るトラブルが147件.
 これらのトラブルはエープリルフールに始まった紛れもない事実であり,ジョークではない.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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