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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻8号

2002年08月発行

雑誌目次

特集 年功給は崩せるか

年功給から職務給・業績主義給への転換—年功賃金を支えてきた定昇制度が変わり始めた

著者: 肥後文雄

ページ範囲:P.620 - P.625

年功賃金を支えてきた定昇制度
 昭和35(1960)年経済白書の政府指摘の中に,「年功賃金体系が,賃金原資を次第に増加させること,それは定期昇給制度の普及と労働者構成の高年齢化の2面からひきおこされている.(中略)技術革新の進展とあいまって,現実の作業の中核的役割を演じつつある若年層は,年功賃金の下における彼らの報酬が余りにも少ないという不満が大きくなって来て,この面からの生産性向上の阻害要因になりうる.(中略)年功賃金を改めていくことが重要視されねばならない」とある.これは,まさに今指摘されていることと同じである.つまり,この40年あまりの間,わが国の賃金の体質変革は進んでいなかったと言える.
 わが国の賃金は,戦後の生活給本位の賃金形態を引きずり,属人的要素(学歴,勤続年数,年齢,能力,人物,性別など)を主な決定要素としてきた.それまでの賃金制度に対し,職務給の導入が1950〜60年代に提唱されたが,欧米型職務給は背景が違うわが国の企業風土にはなじまないといわれ,その後はむしろ職能給が主流となり今日まできている.

病院経営と能率給—地方公営企業法一部適用の公立病院の場合

著者: 瀬川昂生

ページ範囲:P.626 - P.629

 これまで民間企業でも安定した終身雇用と年功序列制度が一般的であったわが国の雇用システムは崩れ,現在急速に変わりつつある.多くの企業では従来の年功序列型から欧米で採用されている能力,実力主義へと移行しており,これまで以上に能力や実力が問われる時代になってきている.医療においても効率性と経済性が強く求められるようになった結果,これまでは雇用システムが問題となることが少なかった病院においても能力,実力主義の波は確実に押し寄せている.
 的確な評価による給与システムの体系づくりは,職員の勤労意欲を高める原動力になり病院を活性化することになる.また,この問題を検討することによって最終的には病院の収益管理,部門別原価計算などの経営戦略策定のために有効な資料を得ることができる.

診療実績の評価と能率給

著者: 谷口良康

ページ範囲:P.630 - P.635

 今回,診療実績の評価と能率給についてのテーマをいただいた.すなわち医師の診療実績をどのように評価し給与に反映させていくか.また診療実績の評価を通じて,いかに医師のモチベーションを高め,医療の質の向上につなげていくか.非常に重要な問題であるし,筆者にとって重荷であるが,鹿児島市立病院における能率給の歴史と実績を資料にしながら分析を試みた.ちなみに当院は昭和39年以来,健全経営を続けてきた.ただし平成3年度だけ救命救急センター新築に伴う負債により赤字決算となっている.

職能給導入に向けて

著者: 渡辺明良

ページ範囲:P.636 - P.641

 少子高齢化や経済成長率の低迷,物価の下落など,日本経済や社会構造の変化の中で,一般企業における賃金制度では,「ベースアップ」は既に死語になり,「定期昇給」ですら確保が難しい状況となっている.このため,右肩上がり経済に裏打ちされた「年功序列型賃金」は既に崩壊し,各企業は既成の概念にとらわれずに,独自の経営システムを模索する中で,人事賃金制度の改革が各所で進められている.この流れは成果報酬を重視する方向性と,賃下げの方向性とに大きく二分されていることが各種報道などから読み取れる.
 一方,医療業界では,2年に1度の診療報酬改定によって基本的には右肩上がりの成長が確保されていたことから,多くの医療機関において年功序列型の賃金制度が当然のごとく運用されてきた.しかしながら,平成14年度の診療報酬のマイナス改定によって,その神話も崩壊せざるを得ない状況へ医療業界も突入したことが,一般企業の事例からも示唆されたのである.

年功給は崩せるか—管理職年俸制度の導入と効果

著者: 中井慶子

ページ範囲:P.642 - P.644

 特定医療法人大道会,社会福祉法人山水学園,NPO法人アジア総合リハビリテーションの3法人は,大道会グループとして九つの事業を運営している.特定医療法人大道会が大道病院1施設から,ボバース記念病院を加え2施設の運営を行うようになったのは昭和57年である.それを機に給与体系を賃金管理研究所(弥冨式)の体系に改定した.その後,事業規模の拡大とともに職員の能力向上とそのための教育の充実が求められるようになり,院内資格制度も充実した平成5年に東海総合研究所(現,UFJ総合研究所)の指導を受け職能格制度を導入した.
 医療を取り巻く経営環境が一段と厳しくなった現在,能力開発のみならず仕事の成果が今まで以上に求められるようになった.職員の能力の向上・仕事の成果を公平に反映した処遇をすべく,平成13年度から管理職を対象に「目標管理制度に基づく年俸制度」を導入した.まだ1年の実績なので効果というより,制度の内容と期待したものを述べたい.

年功給は崩せるか—大原記念病院における賃金制度改革の取り組み

著者: 児玉博行

ページ範囲:P.645 - P.647

賃金制度改革の背景
 大原記念病院は1981年に京都洛北の大原の地に74床の内科病院としてスタートして以来,昨年には創立20周年を迎えるに至りました.
 その間,病院も203床に増床し,介護老人保健施設,介護老人福祉施設,診療所,デイケア・デイサービスセンター,訪問看護ステーション,訪問介護ステーションなどを開設し,施設規模も年々拡大してきました.同時に職員数も病院開設当初30名程度であったものが,現在法人全体で700名を超えるまでに急成長を遂げました.

年功給は崩せるか—埼玉成恵会病院の人事・賃金制度の変遷

著者: 長谷川芳男 ,   長谷川文子

ページ範囲:P.648 - P.651

 1970年代,わが国の経済が高度成長から安定成長の時代に入ると,右肩上がりの賃金カーブの年功序列主義はそれを維持することが不可能となってきた.それに代わり,能力主義が能力開発という形で取り入れられた.その能力主義の三種の神器といわれるのが,1)職能等級資格制度,2)職能給体系,3)オープンな育成型絶対考課を取り入れた人事評価制度,であることはよく知られている1)
 その後,経済成長に翳りが見えはじめると,バブルの崩壊に伴って,低成長,高齢化やME革命が進んだ.その中で,人材の育成や活用が最大の経営課題になってきている.さらに,価値観の多様化もあって,180度転換したといってよいほど世の中は変革を遂げた.一方,賃金制度は実力主義,成果主義が入ってきて能力主義とともにその重要性が認識されはじめた.

グラフ

へき地医療の新たな挑戦—西吾妻地域の救急医療を支える中核病院—社団法人地域医療振興協会西吾妻福祉病院

ページ範囲:P.607 - P.612

 群馬県西部,長野県との県境に位置する西吾妻地域は,草津温泉,嬬恋高原,北軽井沢など,わが国でも有数の観光地を抱える地域でもある.年間を通じて多くの観光客が訪れ,その数は年間600万人にも達するという.このように,中規模地方都市なみの潜在的な人口を抱えているにもかかわらず,同地域には救急医療に対応できる医療機関が少なく,患者を長野県上田市や群馬県前橋市などに搬送せざるを得ず,搬送中に患者の容態が急変し,そのまま死亡するという事態がまれではなかった.
 それに加え,それまで地域における医療の一角を担ってきた群馬大学医学部附属病院草津分院が2002年3月をもって閉院することとなり,地域の医療提供体制の再編と,その核となるべき救急にも対応できる病院の設置が急務となっていた.このような要請を受ける形で西吾妻福祉病院は2002年2月に開院した.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・10

ページ範囲:P.614 - P.614

レポート

病院建て替え・改築等に関するアンケート調査結果について

著者: 佐藤眞杉

ページ範囲:P.652 - P.654

 第4次医療法改正により,病院の構造設備基準が引き上げられたのに伴い,病院を建て替える際の建築規制が問題となっている.これらは建築基準法と都市計画法による都市計画制度と,医療法に基づく医療制度が併存して,病院という施設のあり方を規制していることによって生じている.
 現在の都市計画は昭和40年代半ばに制度化されたものが基本となっている.そこでは建築制限により病院の建築が禁止されている用途地域がある他,敷地の容積率,建蔽率の制限や日影規制,斜線制限などにより敷地に対する建物の形態が制限されている.

病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題—急性期病院の立場から・5

聖路加国際病院の過去・現在・未来(2)

著者: 中村彰吾

ページ範囲:P.655 - P.657

 職員の直接的な痛みを伴わない,経費,委託費などの外堀を埋める作戦が終わった.次の段階の改善・改革計画は,内堀を埋める作戦である.この段階で職員は,ルールの厳守,自分の要求する権利を主張したら,それに伴って義務を果たさなければならないなど,組織統制を感じ始める.その大阪城の内堀に当たるのが材料費の削減である.
 ③材料費=物品管理センター,薬剤部,放射線部のタスク 材料費については「購買管理」,「在庫管理」,「供給管理」の三つの切り口において,効率的な運営が要求される.

看護管理=病院のDON・20

看護組織の革新

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.658 - P.659

⦿名称変更と組織再考
 2002年3月1日,改正保助看法が施行され,看護職の名称が看護師,保健師,助産師,および准看護師となった.テレビなどの報道番組でも「看護師」の名称を耳にするようになったが,病院などの現場では,この名称変更はどのような変化をもたらしたのだろうか.まず,正式な文章で「看護婦(士)・准看護婦(士)」と書かなくてよくなったことは,便利である.専門職業で性による区別をしないのは世界的傾向で,評価できる.医師や薬剤師が「師」なので,「士」でなく看護師にしたのだそうだが,筆者の理解では「士」とは学問がある人というニュアンスで,「師」は先生という意味もあるが,むしろあることを職業としている人という意味であると思う.今さら,繰り言になるが「弁護師」とか「詐欺士」などとは絶対書かない.士より師が位が上と思っている人がいるとすれば,全くの誤解で,美しい日本語の論理でもない.看護師という名称に反対しているわけではないが,それは「看護の先生」ではなく「看護を職業としている人」という意味であることを確認したいだけである.
 相変わらず患者さんたちからは「カンゴフさん」と呼ばれていることが多いが,「いいえ,私たちは看護師です」といい返すのも威丈高だし,徐々に呼び方が定着するのであろう.ただ,役職者の名称はなじめないものが多い.総看護師長はまだしも「病棟師長」,「外来師長」,「教育師長」というのはいただけない.極めつけは「総師長」,「副総師長」で「そうしちょう」は「壮士長」,「ふくそうしちょう」は「服装輜重」かと疑いたくなる.パソコンで「しちょう」と入力しても「師長」には変換されないし,辞書にもない.

施設管理・4

保守管理契約・工事発注の工夫

著者: 小室克夫

ページ範囲:P.660 - P.661

⦿保守管理契約上の工夫
 1.昇降機のケース
 昇降機のメンテナンスは,民間施設の場合,竣工引渡し後3か月間は無償で,その後は保守・管理契約を交わし,その契約に基づく料金を支払うことが一般的といわれている.
 しかしながら,わが国の病院は厚生労働省の指導の下に運営されており,真面目な取り組み姿勢であれば大半の病院は赤字か,せいぜいとんとんの状態ではないかと思われる.当院もまた例外ではなく,メーカー側に病院サイドの状況を伝えて十分ご理解願った上で,3か月間の無償期間をさらに延ばしていただいた.

栄養管理・2

年次病状評価および合併症検査—年次評価検査における栄養教育

著者: 渡辺栄吉 ,   鈴木正司

ページ範囲:P.662 - P.663

 わが国における慢性透析療法の歴史は35年を超え,この間ダイアライザーや透析装置は改良を重ね,新しい材料や新薬も加わって透析療法は種々の面で進歩し,初期の多くの合併症が克服されて生存率の著しい向上をもたらした.その結果,透析患者の透析導入後の平均余命は,同年齢の健常者の平均余命の50%に達し,また,患者のQOLも格段に向上し,透析歴25年を超える症例は既にまれではなく,日本透析医学会の資料によれば,2000年末に全国で3,076人とわが国の透析患者数の1.5%存在する.その数は毎年急速に増加している.信楽園病院でも,25年を超える患者は398人中42人の10.5%存在し,わが国の患者平均数に比べ高い生存率を示す.
 しかし,このような長期透析の患者や高齢患者も増加し,これに伴い,慢性腎不全や透析療法に伴う特有の合併症(二次性副甲状腺機能亢進症や後天性腎嚢胞に伴う胃癌など)と偶発する病気(胃潰瘍や胃病など)や栄養障害の患者が多く認められるようになった.

医療を支えるファシリティマネジメント7話・3

医療とサービスの展開

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.664 - P.665

 前回は患者満足度のお話をしました.大多数の患者は病院に「よい医療」を願っています.早く痛みを和らげて病気を治してもらいたい.そのためには少々病室が狭くても,隣の患者の鼾が気になっても,「病院だから仕方がない」と諦めています.しかし,若い世代にとっては我慢の限度を超えているようです.
 雑誌「BRUTUS」では2001年の6月に「どうせならデザイナーズ病院?」という特集を組みました.内容は,スイスのレマン湖畔の病院など世界の魅力的な環境の病院を紹介するなど,読者の世代が病院に何を望んでいるかに敏感な編集でした.医療は最も大切なサービス産業です.そして,医療技術そのものがコアサービスであるとすると,それを支える幅広い支援サービスが必要です.今回は医療とサービスについてお話しします.

IT革命は病院医療をどう変えるか・14

四国4県の電子カルテネットワーク

著者: 原量宏 ,   近藤博史 ,   石原謙 ,   瀬戸山元一

ページ範囲:P.666 - P.670

 最近,医療の領域におけるIT化への関心が急速に高まっている.内閣直属の「IT戦略本部」においては平成13年1月にe-Japan戦略を発表し,平成17年までに世界最先端のIT国家となることを目標に掲げている.それに伴い,各省庁においてIT化に関する実行計画が作成され,経済産業省においては医療のIT化への取り組みとして,昨年度「先進的IT活用による医療を中心としたネットワーク化推進事業—電子カルテを中心とした地域医療情報化」のプロジェクトが進められた.厚生労働省は「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」を発表し,その中で電子カルテ・レセプト電算化などの医療のIT化を積極的に推進するとし,平成16年度までに全国の2次医療圏ごとに少なくとも一施設に電子カルテシステムの普及を図り,平成18年度までに全国の400床以上の病院と全診療所の6割以上に普及させるとしている.国民がIT化を望む分野に関しての調査でも,福祉・医療への関心は非常に高く,医療IT化への積極的な取り組みが待たれている.
 医療ITといった場合その意味するところは広く,当初は大病院を中心としたオーダリングシステムやレセプトコンピュータが中心であったが,その後遠隔医療,電子カルテ,そして最近は電子カルテのネットワーク化に重心が移っている.

医療経営の総合的「質」の検討・15〈最終回〉

リスクマネジメントが目指すもの—「事故防止である」,「改善である」そして「組織変革である」

著者: 鮎澤純子

ページ範囲:P.672 - P.674

 シリーズ『医療経営の総合的「質」の検討』の連載に,リスクマネジメントという視点から考えを述べさせていただく機会をいただいた.本稿はもちろん「リスクマネジメント」そのものについて述べるものではない.シリーズのタイトルにある「医療経営」という視点を踏まえ,そして今,医療経営について考えようとすれば使わざるを得ず,そしてこれまでも連載の中で多くの執筆者が何度も使ってこられた「変化」,そして「組織変革」という言葉をやはり同じく使いながら,リスクマネジメントが「医療経営」,「変化」,「組織変革」とどのように関連しているのか,そして,リスクマネジメントが『医療経営の総合的「質」の検討』にどのように寄与することができるのかについて考えてみたい.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第94回

東大阪市立総合病院

著者: 笠原武志

ページ範囲:P.676 - P.680

 昭和42年に布施,河内,枚岡の3市の合併により誕生した東大阪市は,昭和33年開設の布施市民病院を東大阪市立中央病院と改称し,市民医療の中心として運営を行ってきた.築40年を経て施設の老朽化が進み,新医療への対応が望まれ,今回の新築移転の運びとなった.
 東大阪市立総合病院と改称された新病院の竣工後は,隣接地に同時開設された大阪府立中河内救命救急センターとともに地域医療の核として機能している.同院の計画に当たっては最新の医療を常に提供できる施設づくり,都市型病院での「癒しの環境」づくりが目標とされた.

データファイル

総合規制改革会議「中間とりまとめ—経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革」

ページ範囲:P.681 - P.683

はじめに
 我が国は,1990年代以降,長期経済停滞に陥っており,雇用状況は傾向的に悪化しているが,他方で,財政・金融政策の余地は極めて小さいという深刻な状況にある.この背後には,1980年代までの高い経済成長の時代に確立した様々な社会制度・慣行が,その後大きく変化した経済社会環境に,もはや対応でき難いものとなっていることが大きな要因となっている.
 こうした状況を打開するための構造改革の大きな柱のひとつとして,民間経済の活性化を図る手段である「規制改革」に関する期待が今まで以上に高まってきている.「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)にあるように,経済活性化のポイントは,民間の事業拡大の機会を阻んでいる様々な規制の改革を通じて雇用機会の拡大を図るとともに,情報公開や事業の第三者評価制度の確立により,市場競争を促進することで,消費者・利用者の多様な選択肢が保障された豊かな経済社会を構築することである.当面の短期的な経済環境は徐々に改善の兆しを見せてはいるものの,これを中長期的に持続可能な経済成長につなげていくためには,政府として,本格的な規制改革を推進することが何よりも重要である.
 当会議では,昨年度は,立ち遅れていた医療,福祉,人材などの「生活者向けサービス分野」(いわゆる「社会的規制分野」)の規制改革に重点的に取り組んだが,今年度は,こうした現下の厳しい経済情勢にかんがみ,「経済の活性化」を統一テーマとして審議を行うこととした.
 具体的には,以下の5つの「分野横断的テーマ」について,それぞれのテーマにかかわる制度・施策を分野横断的に比較検討することにより,一層の規制改革を推進するための議論を進めた.本報告は,こうした議論の成果を,「経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革」として,中間的にとりまとめたものである.
 まず,第1章では,新しい事業の創出をテーマとし,起業のハードルを下げ,ヒト・モノ・カネ等の資源が成長する企業や分野に最適配分されるよう,資金供給に関するインフラ整備,起業や事業再編を促進・支援するためのシステム整備,意欲ある人材を育成・供給する仕組みの整備等に係る具体的施策を取り上げている.
 第2章では,民間の参入拡大による官製市場(公的関与の強い市場及び公共サービス分野)の見直しをテーマとし,株式会社の参入・拡大,官民の役割分担の再構築などを検討し,市場参入の制約された分野において多様な主体の参入を実現し,また,公共サービスの提供について民営化,民間委託,PFI等により多様な主体・手法を活用することを求めている.
 第3章では,経済活性化に資するためのビジネス・生活インフラの整備をテーマとし,公益事業分野における市場参入の促進・競争ルールの整備や競争監視体制の構築,司法サービスに関するインフラ整備,都心高度化に係る施策を取り上げている.
 第4章では,事後チェックルールの整備をテーマとしている.事前規制型行政から事後チェック型行政への転換が唱えられる中で,これまでの検討は事前規制の緩和・撤廃に重点が置かれてきたが,今般,事後チェックルールの整備の在り方について検討を行うこととし,特に情報公開,第三者評価,苦情・紛争処理等について取り上げている.
 第5章では,規制改革特区という新たな制度の実現をテーマとし,その基本理念と,制度設計の具体的方向,推進方法,構想例等を提示している.これまでの全国一律の実施ではなく,まず特定地域に限定した規制改革を実施し,その具体的な効果を明らかにすることにより,それを全国的な規制改革につなげ,我が国全体の経済活性化を図ろうとするものである.
 本中間とりまとめに当たっては,上記のテーマごとに設けた5つのWGを計52回開催し,関係団体・有識者からのヒアリングや省庁との折衝などを集中的に行ったが,基本的な合意に至らなかった事項もある.そのようなものについては,当会議の問題意識や考え方を明示し具体的改革施策をとりまとめた本文とは別に,所管府省等の意見を添付し,相違点を明らかにすることとした.
 当会議では,今後,本中間とりまとめについて更に議論を深めるとともに,新たな検討課題も取り上げ,年内の「第2次答申」とりまとめに向けて積極的な調査審議を進める考えである.当会議の活動に対する国民及び関係各界の御支援と御協力を改めてお願いしたい.

病院機能認定証発行病院

ページ範囲:P.684 - P.684

●2002年3月18日,20病院
 〔一般病院A (4病院)〕医療法人社団康喜会東葛辻仲病院(千葉県)/医療法人社団若林会湘南中央病院(神奈川県)/宍粟郡病院事務組合公立宍粟総合病院(兵庫県)/医療法人財団華林会村上華林堂病院(福岡県)
 〔一般病院B (9病院)〕医療法人社団碩心会心臓血管センター北海道大野病院(北海道)/岩手県立胆沢病院(岩手県)/千葉県こども病院(千葉県)/岐阜県立下呂温泉病院(岐阜県)/岐阜県立岐阜病院(岐阜県)/焼津市立総合病院(静岡県)/総合病院岡山赤十字病院(岡山県)/広島県厚生農業協同組合連合会廣島総合病院(広島県)/北九州市立医療センター(福岡県)

事務長の医療よもやま話・7

リスクに付けるクスリ

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.685 - P.685

●食品の安全性
 牛肉のBSE問題から派生して,外国産を国産とした偽装事件が起こったのは記憶に新しい.われわれ消費者は「販売者の表示は正しいだろう」と鵜呑みにして買う.肉を見て外国産か国産かはまず見分けはつかない.表示を信じるしかない.だぶついた国産牛を国が買い上げる制度を悪用し,外国産を国産と偽って申請すると国から補助金が出るから,会社ぐるみで偽装工作をする.BSE問題で牛肉の売り上げが極端に落ち牛肉業者は痛手を被り,なんとか収益を上げようと文字どおり「苦肉」の策を講じた.それも消費者が信頼を寄せていた大手の会社がである.
 大豆などの遺伝子組み換え食品は表示が義務づけられているが,もし偽って表示されていても消費者はわからない.罰則規定があっても車の速度違反と同じで,たまたまパトカーに見つからない限りまかり通る,と疑ってかかるのが安全なのかもしれない.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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