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雑誌目次

雑誌文献

病院61巻9号

2002年09月発行

雑誌目次

特集 女性医師と病院

女性医師と医療

著者: 橋本葉子

ページ範囲:P.700 - P.703

 近代医学校を卒業した世界で最初の女性医師はエリザベス・ブラックウエルであります.ブラックウエル医師は1821年イギリスのブリストルに生まれておりますが,両親のアメリカ移住により,アメリカの小さな医学校を1849年に卒業,1910年にイギリスのヘイスティングスで亡くなりました.エリザベスが晩年にしばしば散歩したキルマン村の墓地に静かに眠っております.石の墓碑には「女性医師エリザベス・ブラックウエル,1821年2月3日ブリストル生まれ.1910年5月31日ヘイステイングスにて逝去.近代医学校を卒業した最初の女性(1849年).イギリスにおいて医師登録した最初の女性医師(1859年)」と刻まれております1)
 日本における公許女医第1号の荻野吟子が医師免許を取得しましたのは1885年ですから,その26年前に世界で最初の女性医師が誕生していることになります.以下,日本女医会の歴史を含めて,日本における女性医師の歩んできた道をご紹介いたします.

【座談会】女性医師の可能性と限界

著者: 奥川幸子 ,   竹股喜代子 ,   名越澄子 ,   河北博文

ページ範囲:P.704 - P.711

 河北(司会) 2000年の医師国家試験で女性の合格率が30%を超え,確実に女性医師が定着してきました.本日は「女性医師の可能性と限界」というテーマで,奥川さん,竹股さん,名越さんにおいでいただきました.初めに,今までのご経歴,あるいは現在何をなさっていらっしゃるのか,簡単にご紹介いただけますか.
 奥川 私は大学を卒業した1947年から24年近く,東京都の老人医療センターで医療ソーシャルワーカーとして相談援助を行ってきました.その後,フリーランスで対人援助職者に対する教育・訓練を実践して6年目になります.対象はソーシャルワーカー,看護職,介護支援専門員が多く,保育士や医師,リハビリテーションのスタッフなど,人が人を支援する職業に就いている方たちです.訓練内容は,初めて出会うクライアント(患者)を職業的に理解するためのアセスメント面接を中心に,対人援助における視点,知識・技術,態度です.方法は個人や小集団のスーパービジョンや都道府県単位の研修が主で,熟練した実践家がスーパーヴァイザーになるための訓練もしています.

日本の女性医師の現状と動向

著者: 中谷祐貴子 ,   中島正治

ページ範囲:P.712 - P.715

 医師という職場への女性の進出は現在では一般的になってきているが,その歴史は必ずしもそれほど古いものではない.わが国では,1885年に初めて近代的な女性医師が誕生したが,これは欧米に比べて26年ほど後のことである.
 その後もしばらくは,わが国での女性医師の増加は必ずしも順調とは言えず,1975年においても新規医師数の約12%に過ぎなかったが,次第に増加し,2000年には約30%までになり,近年も増加傾向が続いている.

医学部女子学生と大学医局における女性医師—東京女子医科大学を中心に

著者: 大澤真木子 ,   西蔭美和 ,   伊藤万由里 ,   加藤郁子

ページ範囲:P.716 - P.721

医学部女子学生数と女性医師数(表1)
 女性医師数は,平成12年には34,848名となり,医師総数に占める割合は14.3%で,医師7人中1人が女性となった1).昭和40年代後半に約10%であった女子医学生の割合は,平成5年度には入学者の30%を占めている.表1に示すように卒業生の割合でみると,平成4年以降には,女性が医学科卒業者の2割以上を占め,平成12年には,3割に達した2).毎年の新医師数は約8千人であり,その3割,約2,400人が女性医師である.すなわち今や卒後3年までの若手医師,すなわち研修医や常勤若手医師の3人に1人は女性であり,日本の医療のあり方を考える上で,女性医師の存在は無視できない数に達した.
 筆者に与えられた課題は,大学医局との関連で東京女子医大生の動向を中心に述べるというものである.毎年約2,400人の女性医師が生まれる中で,本学卒業生は約100人であるので,その5%にも満たない.東京女子医大生の動向をもって大学における女性医師像を代表することは不可能であるが,その限界を意識した上で記述を試みる.

医師会と女性医師

著者: 青井禮子

ページ範囲:P.722 - P.725

女性医師の増加
 女性医師数が年々増加し,新しく国家試験に合格した女性医師の割合が3割に到達しようという平成10年,日本医師会は第1回女性会員懇談会を持ち,女性医師の自由な意見交換の場とした.初回の委員は大学関係2名,日本女医会より2名,会内委員会関係3名と都道府県医師会からは当時東京都医師会理事であった筆者ただ1人の計8名であった.余談ではあるが,当時,関東甲信越医師会の懇談会で女性役員の顔合わせをしたい旨を申し入れたところ,残念ながら筆者ただ1人で成立しなかったのを思い出す.
 しかしながら第2回以降は,各県から役員をしている女性医師が委員として推薦され始め,各地域で急激に女性医師が医師会活動に積極的に進出し始めている状況がうかがえた.年々新規参入する女性医師の急激な増加という後押しと,各地域で見え始めた女性医師の役員への登用が自信へとつながり,進出に拍車をかける形になったものと思われた.実際全国都道府県医師会役員に占める女性医師の比率は平成10年0.6%,平成12年1.1%,平成14年1.8%となったのである.

病院経営と女性医師

著者: 黒島淳子 ,   村岡光恵 ,   川真田美和子

ページ範囲:P.726 - P.729

 今や新規医師の約30%が女性である現状を踏まえ,東京女子医科大学附属第二病院でも,特に大学が女子学生だけであるため,他の附属病院より女性医師が多いのは当然であり,結婚し出産や育児に頭を悩ませている後輩をたくさん目にしている.
 今,厚生労働省が様々な体制作りに着手しようとしていることは大変喜ばしいことではあるが,現実問題としてどのようにしていくべきか,どんなことができるのかは非常に難題である.

グラフ

医療機能を分化・拡充し住民とともに歩み続ける—特定医療法人社団三思会東名厚木病院

ページ範囲:P.687 - P.692

 東名厚木病院(199床)は,東名高速道路厚木インターチェンジにほど近い田園地帯に位置する.病院周辺の風景は,今や人口22万を超え,東京のベッドタウンとして有名な厚木市内であることを忘れさせる.当院から一番近い駅は小田急線本厚木駅で,駅からは車で5〜10分かかる.病院の立地条件としては恵まれているとはいいがたい.それでも外来患者は1日500名訪れていると聞いて素朴な疑問を抱いた.
 開設以来20年の月日をかけて,一歩一歩着実に地域住民の信頼を得て,地域医療を担う病院としての地位を確立してきた秘密に迫ってみたい.

HOSPITAL INDEX

臨床研修指定病院・11

ページ範囲:P.694 - P.694

特別座談会

高齢者の医療提供体制はどうあるべきか・1

著者: 天本宏 ,   折茂肇 ,   野中博 ,   浜村明徳 ,   武田俊彦

ページ範囲:P.730 - P.734

 武田(司会) 昨年から今年にかけて,医療のあるべき姿を踏まえた医療改革が言われています.高齢者医療については,将来高齢者医療制度を創設すべきだということで,今年の健康保険法の付則にも基本方針を示すように書かれています.高齢者医療については,これまで財源問題が中心に議論されており,そもそも高齢者医療はどうあるべきかという論点が欠けているのではないかと常々感じていました.
 去年,厚生労働省として「医療提供の将来像」を出し,その中で,全国9,300の病院がそれぞれ機能を分担して,患者の状態にふさわしいところで医療を提供するという理念を打ち出しました.本日は,病院や診療所で高齢者の急性期,リハビリテーション(以下,リハ),慢性期医療に携っているそれぞれの分野の専門家にお集まりいただきました.まず,高齢者の急性期医療を中心に行っている折茂先生から,どういう医療が望ましいかについてお話いただければと思います.

特別寄稿

医療安全政策の国際動向とその方向性—3.報告システム

著者: 藤澤由和 ,   長谷川敏彦

ページ範囲:P.736 - P.741

 前回(第61巻7号)および前々回(同5号),医療安全における国際的な動向と新たな方向性を紹介した.こうした国際的な動向において,最も重要な課題として各国が様々な試みを行っている重要なテーマが,医療事故に関連する報告システムおよび報告改善システムである.そこで今回は,こうした医療安全の新たな方向性の中核をなす報告システムに関する海外での動向を紹介し,今後の日本における報告改善システムの方向性を議論することとする.

病院管理者が知っておきたい緊急被ばく医療

著者: 林寛之

ページ範囲:P.742 - P.746

病院管理者として何を知っておくべきかⅠ.緊急被ばく医療の大枠組みを知っておくⅡ.現場の医療を支える
 1999年の東海村の臨界事故を受けて文部科学省が予算を整備し,原子力発電所立地県の地元でもある程度きちんとした放射線被ばく医療を提供できるように,全国17県18か所に緊急被ばく医療施設が整備され,除染施設も15か所作られた.設備の整備はほぼ完了するも,現実には放射線被ばく事故の事象は頻度が少なく,日常臨床で経験できるものではない.したがって,あらかじめ実際起こり得る事象を想定しての訓練が必要になり,当面のところ,放射線医学研究所,原子力安全研究協会,原子力安全技術センターなどにより,様々な教育訓練プログラムが紹介されている.当該病院はいざという時に備えて,実際に動ける人間を育てておかなければならない.
 では,原子力発電所立地県にある1次被ばく医療機関,および全国18か所にできた2次被ばく医療機関のみが緊急被ばく医療について備えておけばよいのか?答えは否である.事故は必ずしも原子力発電所で起きるとは限らず,また世界的に見ても原子力発電所での事故はまれであるということを知っておく必要があろう.本稿では,病院管理者の視点から見た緊急被ばく医療を簡単に解説したいと思う.

病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題—急性期病院の立場から・6

聖路加国際病院の過去・現在・未来(3)

著者: 中村彰吾

ページ範囲:P.747 - P.749

⦿健全経営を目指して−1999,2000,2001年の戦略
 1.増収戦略(七つの実行プラン)
 前号で記述したが,1997年の決算状況は償却前でも単年度は赤字であり,当院にとって危機的様相を呈していた.1998年度の予算においても,増収策,費用削減を実施しても4億円の赤字スタートを切っていた.上半期を過ぎた頃突然,日野原理事長,三上常務理事に呼び出しを受け,健全経営実現のため抜本的に経営改革を遂行するよう諮問を受け,同時に事務長職に再任するようにとの拝命を受けた(私事であるが,約3年間JICAのベトナムプロジェクトに参加し事務長職を辞任していたので再復帰になる).すぐに改革,改善計画を立案すると共に,Doプラン=実行プランにおいて,それぞれのプランは誰が・どのセクションが担当し,いつまでに達成するのか,どのようなチーム・プロジェクトを組むのか,5W1Hの法則に則って詳細計画を割り当てた.
 1)紹介率を30%以上にし,加算取得を目指す 当時,当院の紹介率は14%と低い率であったので,病診連携室を強化することになった.具体策として
 ①返信率を高める 紹介をした医療機関の医師に,紹介された患者様にどのような検査をし,どのような治療を行おうとしているのか情報を提供することである.これによって「聖路加へ患者様を紹介すると2度と戻ってはこないのでは」という不安をなくせる.この返信率が低かったので,各科別,医師別の返信率のリストを作成し,何科のどの医師が低いのかを公表することで,紹介医に対するマナーの徹底を励行するよう喚起した.現在の返信率は95%に上り,紹介医師が気持ちよく患者様を紹介できる院内システムを整備することにより,紹介率も40%を超すことができた.

看護管理=病院のDON・21

キャリア・ディベロップメント

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.750 - P.751

?キャリア・ディベロップメント
 組織にとって職員の能力開発は,永遠の課題である.能力開発には,職務遂行上必要な能力を育成・向上させるという側面と,中長期的に組織が必要とするであろう人材像と職員が将来の目標とする人材像を統合するキャリア形成・開発を図るという側面がある.
 一般的にキャリアとは,業務に対する知識や技能を積み重ね,職業的アイデンティティ,あるいは良好な人間関係を作り,仕事をスムーズに進めるコツやノウハウを積み重ねることである.ただし,組織におけるキャリアは,その能力だけではなく,組織への貢献,コミットメント,経済性をも加味した考え方である.

栄養管理・3

糖尿病患者の民間療法

著者: 佐藤美代子

ページ範囲:P.752 - P.753

 民間療法の最近の話題は,本年7月から報じられている中国製ダイエット食品で死亡者や肝障害が発症した事件である.日を追うごとに被害は広がりをみせて,大変な驚きである.手っ取り早くダイエットができるとか,漢方薬のようだから体に優しいみたいとか,心をくすぐられるキャッチフレーズが前面に出て,健康被害を及ぼすものが入っていることが隠されて販売されていることが恐怖である.口コミやマスメディアを介して様々な健康法や健康食品も紹介されている.信楽園病院の糖尿病患者でも,民間療法を行っているケースが多くみられ,「〜を飲んだら(食べたら)血糖が改善した(体調がよくなった)」などの体験談を耳にする.しかし,反面,指示された食事を守らないとか,薬を中断したりして病状を悪化させてしまう例も少なくない.
 当院で平成10年にアンケート調査を実施したところ,民間療法経験者は約4割もみられたため,民間療法は医療スタッフとしては無視できない問題であった.ここではアンケートの結果を紹介して問題点を明らかにするとともに,チーム医療の中の管理栄養士としての取り組みを紹介する.

医療を支えるファシリティマネジメント7話・4

プロへの業務委託—PFIの成功を願って

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.754 - P.755

 前回,医療経営はまさしくサービス業であり,医療そのもののコアサービスと,それを支える支援サービスに区分して考えるべきであること,ホテル的なサービスの質を高めないと患者(特に若者)に納得してもらえないことなどに触れました.支援サービスの質を高めるには外部の専門家(プロ)の協力を得ないと無理があるでしょう.病院で業務の外部委託(外注)というと経費を安くする面だけが強調されますが,プロの支援を受けることで医療の質の向上を図るという側面を忘れてはなりません.
 現在,高知医療センターで進められているPFI (private finance initia—tive)事業は,まさにこの支援サービスを民間企業に参画するように求める取り組みであり,プロ集団に対する高い期待が持たれていると思います.従来の病院業務の一部外注といったレベルではなく,医療コアサービス以外の経営をすべて任すことのできるパートナー選びが始まったと認識すべきでしょう.医療経営は医療者だけではできないという意識改革がゆっくりと進んでいます.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第95回

米国のヘルスケア建築の現状と今後の動向

著者: ヴァーダパーステイーブン ,   長澤泰 ,   吉田真由美

ページ範囲:P.756 - P.762

 患者と,その家族を心から支える建築環境への需要は絶大である.国を越えて,新しい技術や管理手法が世界中の医療の様相を変えつつある.
 これらの米国での変化は,1983年に導入されたDRGs (Diagnostic Related Groups:疾患群別定額支払制)として知られる連邦政府のコスト押さえ込みの法律,そして過剰な医療費の削減を目指した関連法に多くの源を発している.それ以前の米国の病院では,入院治療を前提にして,収容し得る限り多くの患者の面倒をみる,という考え方が広く受け入れられていた.DRGs導入後すぐに入院期間が最大の関心事として顕在化した.昔は患者が医師から2週間の入院を言い渡されれば,病院に2週間滞在できた.しかし1983年以降は状況が変わり,ますます非医療職(保険会社や連邦政府)が患者の入院許可期間をきっちりと決定し押し付けるようになった.かつてはベッド数は多ければ多いほうがよかったのである.

事務長の医療よもやま話・8

都会の病院と田舎の病院

著者: 岩﨑公平

ページ範囲:P.765 - P.765

 医療法や療養担当規則などの全国統一規格の法制度のもとで,われわれ病院は日々医療活動を行っている.が,病院の規模,診療内容などの違いで,同じ「病院」と言えども実際の内容は大きく異なる.都会か田舎にあるかでも,病院の形態や患者さんへの接し方は,相反する点が多い.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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