特集 医療政策の新しい潮流
医療政策の新しい潮流―財源・配分決定プロセス・パラダイムの見直し
著者:
広井良典1
所属機関:
1千葉大学法経学部総合政策学科
ページ範囲:P.14 - P.19
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先進諸国において様々な形での医療政策が展開されており,1980 年代前後以降,その関心の相当部分は医療費の効率化ないし医療の費用対効果の向上という点に向けられている.こうした政策は,少し距離を置いて全体として眺めると,おおむね,①なんらかの規制的手法(定額制,供給面での計画的手法など),②競争原理の導入 〔医療への(擬似)市場メカニズムの導入,保険者機能の強化や選択制など〕,③医療内容面の評価やコントロール(技術評価や医療の標準化など)その他に分類され得るものであり,個々には新たな方法論や手法が追及・開発されているものの,こうした枠内に収まる限りでは,いわば医療費抑制のためのメニュー自体はほぼ出揃い,議論が一巡してきた感も出ている.
一方,社会保障政策全体でみると,趨勢としては各国の政策は「接近」の傾向にあり,全体として「医療・福祉重点型」とも呼び得る方向(年金については相当なスリム化を図る一方,市場の失敗の起こりやすい医療・福祉分野については,一定以上の公的な保障を維持しつつ,その中で様々な規制や競争原理の導入などを通じ効率化を図る)に向かっている傾向にある.