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雑誌目次

雑誌文献

病院62巻12号

2003年12月発行

雑誌目次

特集 亜急性医療は存在し得るか

巻頭言

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.981 - P.981

 平成15(2003)年9 月は,日本の入院医療制度改革の「幕開け」といえる.同年8月末までに,全病院の病床は「一般病床」か「療養病床」に病床区分の届出を行った.医療法の分類によれば,「療養病床」は「長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床」であり,「一般病床」は「精神病床・結核病床・感染症病床・療養病床以外の病床」となっている.

 それでは「一般病床」の取り扱う疾患は「急性期医療」だけかというと,そのようなことはない.疾患には(特に高齢者においては),併存症・合併症が多く存在しており,急性期対応だけでは治癒もしくは日常生活可能な状況での退院とはならないことは周知の事実である.その典型は回復期リハビリテーションとなろうが,その他にも神経難病への対応,在宅医療への移行準備期間,悪性腫瘍など病状の増悪期への対応など,様々な病状が存在する.

「医療提供体制の改革のビジョン」と第4次医療法改正による病床区分

著者: 土生栄二

ページ範囲:P.982 - P.987

医療提供体制の改革のビジョン

 厚生労働省では,本年4月に「医療提供体制の改革のビジョン案」を公表した.より質の高い効率的な医療サービスを提供するための医療提供体制の改革を推進するに当たっては,医療提供体制の将来像について国民的な合意を得ていくことが重要であることから,昨年3月に設置された厚生労働大臣を本部長とする「医療制度改革推進本部」の下に「医療提供体制の改革に関する検討チーム」(主査:医政局長)を設置して検討を行い,同年8月に「医療提供体制の改革の基本的方向」(中間まとめ)を公表したところである.ビジョン案は,その後も,様々な検討会等において,それぞれの課題について検討を進めるとともに,有識者や関係団体からのヒアリングの実施も含めて国民各層の幅広いご意見をいただきながら,さらに検討を進め,取りまとめに至った(その後,国会審議等を経て,本年8月には,「医療提供体制の改革のビジョン」として,関連する検討会等の資料とまとめて公表されているので,以下,単に「ビジョン」とする).

 ビジョンでは,今後の医療提供体制の改革は,「患者と医療人との信頼関係の下に,患者が健康に対する自覚を高め,医療への参加意識をもつとともに,予防から治療までのニーズに応じた医療サービスが提供される患者本位の医療を確立する」ことを基本として進めるべきとして,「患者の視点の尊重」,「質が高く効率的な医療の提供」,「医療の基盤整備」の三つの視点に沿って,各分野で改革を推進するものとし,法令改正による措置のみならず,公的補助,公的融資,税制による支援,診療報酬等による経済的評価,関係団体との共同した取り組みなどを組み合わせて総合的に推進していくとされている.

「地域一般病棟」について

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.988 - P.992

 四病院団体協議会(以下,四病協)は,地域医療をより全人的かつ効率的に提供するために「地域一般病棟」という概念が必要である,と提唱してきた.本稿では「地域一般病棟」について解説する.

地域一般病棟の命名

 「地域一般病棟」の名称は,2001(平成13)年9月,四病協に設置された「高齢者医療制度・医療保険制度検討委員会」の報告書『今後の高齢者医療のあり方について』1)の中で初めて作られた名称である.

「医療保険療養病床」 と 「介護療養型医療施設」 の役割分担と今後の行方

著者: 木下毅

ページ範囲:P.993 - P.999

はじめに―老人の専門医療を考える

 亜急性医療とは何を指すのか明らかな定義はない.急性期を脱したもの,慢性期で手に負えないものとの考えもあるが,具体的に個々の患者がどこに分類されるのかは定かでない.治療を受ける病院の機能によっても異なってくると考えられる.亜急性医療があるとしても,それは一般病院で診ていくべきという考え方と,療養病床の範疇であるという考えもある.また支払い側は急性期以外の入院患者という表現を使い始めており,これらの考え方次第で守備範囲が変わってくる可能性がある.

 老人病院の改革を目指す医師が集まり,「老人の専門医療を考える会」が発足したのは,1983(昭和58)年秋であった.当時の老人病院は,高齢者を受け入れ,寝かせきりにして床ずれを作り,“薬づけ,検査づけ,点滴づけ”でかせぐ悪徳病院としてのイメージがすっかり社会に定着していた.「老人の専門医療を考える会」は発足以来,活動の中心は常に,これらの悪いイメージを払拭し,わが国における老人病院の果たすべき役割,望ましい形を模索することにあった.

 当会は1987(昭和62)年7月,「老人病院機能評価表」1)を作成し,老人病院の果たすべき役割,望ましい対応についての指針を世に問うに至った.老人病院の実態を少しでも社会に明らかにし,質の向上やイメージの改善を図ることも目的としている.そして「今,老人病院の社会への貢献を正しく認識してもらうためにも,老人病院はその情報公開と,質の向上が不可欠であることを再認識すべきである」と大塚2)は述べている.これはそのまま療養病床すべてに当てはまることである.

 1990(平成2)年4月に介護力強化病院制度が発足し,診療報酬に初めて“老人病棟入院医療管理料”いわゆる“まるめ”が導入された.この定額医療は介護職員を病院職員として認めたこと,ケアプランに基づくチーム医療の導入,薬や不必要な検査の減少,療養環境の整備など老人病院の形を大きく変えることとなった.この定額医療は1998(平成5)年に療養病棟入院医療管理料,2000(平成12)年には入院基本料と変遷していく.

 この制度の実践活動のため,1992(平成4)年9月26日に「老人の専門医療を考える会」のメンバーが中心になって「介護力強化病院連絡協議会」が約100病院で発足し,療養病床の向上発展と老人医療の質の向上を目指すこととなった.その後,介護保険の開始を見込んで,1998(平成10)年4月1日「介護療養型医療施設連絡協議会」と名称変更された.しかし介護保険だけでなく広く医療保険の療養病床も運営している会員が多く,現状に合わせるべく,2003(平成15)年8月22日に「日本療養病床協会」と名称変更された.今後,日本療養病床協会や全日本病院協会が中心となり療養病床のあり方について考えてをまとめていくと思われる.

フランスの中期入院医療施設について

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.1000 - P.1003

疾病構造の変化と施設の機能分化

 人口の高齢化とそれに伴う疾病構造の変化,あるいは医療技術の進歩と国民の医療に対する期待の高まりにより,先進諸国においては医療費の増大が問題となっている.さらに国民の医療の質への関心の高まりにより,単なる医療費増の抑制ではなく,質の高い医療サービスをいかに効率的に提供する体制を構築するか,具体的には地域内において住民のニーズに適切に応えるために医療施設の機能分化をいかに図っていくかが医療政策の課題となっている.2001(平成13)年施行の第四次医療法改正により,従来の「その他病床」は「一般病床」と長期にわたり療養を必要とする患者を入院させる「療養病床」とに区分されることとなった.病床の選択は2003(平成15)年8月31日までに各施設によって行われることとされたが,9月1日現在での病床区分届出状況は一般病床92.3千床(72.7 %),療養病床34.6千床となっている(27.3 %).

 ただし,このような病床区分の再定義は将来のさらなる施設機能の分化に向けての第一ステップにすぎず,現在の病床を一般病床と療養型病床と単純に二分するだけでは不十分であると筆者は考えている.例えば,現在,特別養護老人ホームや老人保健施設における入所待ちが問題となっており,介護保険事業計画の見直しに際しては,その定員数の増加が議論されている.しかしながら,介護保険制度の本来の趣旨である在宅ケアの推進といった視点から考えるとこのような方向性は問題が多い.

【対談】亜急性医療を考える

著者: 池上直己 ,   西澤寛俊

ページ範囲:P.1015 - P.1021

――亜急性医療の概念とは? 日本では医療法上と診療報酬上とでは,亜急性期の扱いが異なっている.亜急性期入院医療が何であるか,きちんとした定義づけがなされてはいない.亜急性期入院医療の支払いは,将来的にはDRG(diagnosis procedure combination),またはDPC(diagnostic related groups)による支払いを適用したらよいのか,それとも,慢性期入院医療への導入が検討されているRUG(resource utilization groups)分類による支払いを適用するほうがよいのか.本対談では,今後の診療報酬の行方とあわせて,亜急性医療をめぐって議論いただいた.

【事例】病床区分・届出

機能区分と地域のプラットホーム作り:一般病床(55床)

著者: 梶原優

ページ範囲:P.1004 - P.1005

病床届出について

 数次にわたる医療法改正により,医療提供体制の機能分化が行われてきたが,第4次医療法改正では,その他病床(126万9,000床)の機能分化が問われ,その結果,一般病床(急性期)と療養病床(慢性期)とに区分されることとなった.その当時の議論では,一般病床の人員配置基準,平均在院日数,療養環境等がどうあるべきかについてであったが,特に急性期・回復期リハビリテーションをどう取り扱うか,また亜急性医療の定義と扱いが問題となった.その結果として,マンパワーの集中と入院期間を考慮して,急性期・回復期リハビリテーションは別建てで扱うこととなり,今日に至っている.

 また,亜急性期に関しては,データ上,2.5:1 看護,16:1 医師,平均在院日数21日の範囲で,ほぼ一般病床で吸収できるということで,今後,医学・医療の進歩を考えれば,平均在院日数が多少,短縮されても収まるとのことで決着したように記憶している.

医療提供の変化を見据えた,地域における高齢者医療戦略創造の1過程:一般病床(72床)

著者: 天本宏

ページ範囲:P.1006 - P.1008

 今般,医療法改正に基づく病床区分の届出が行われた.これで一区切りという方もいようが,これから病床の本格的な整理,淘汰が始まろうとしている.

 厚生労働省の本音は,一般病床については平均在院日数を短縮化し,病床の大幅な削減を図るところにある.一般病床は医療法の基準・看護3対1以上など人員配置の充足を求め,診療報酬の面ではDPC(diagnosis procedure combination)包括評価による一元化を目指すことだろう.療養病床は,現在ある回復期リハビリテーション,特殊疾患療養,緩和という機能を特化した病床に絞られていくだろう.

所沢中央病院:一般病床(80床)・多摩リハビリテーション病院:介護保険病床(119床),療養病床(56床),一般病床(24床)

著者: 石田信彦

ページ範囲:P.1009 - P.1011

 2001年の第4次医療法改正の目的は,①入院医療を提供する体制の整備,②医療における情報提供の推進,③医療従事者の資質の向上といわれており,①の体制整備の一環として必須となった病床区分の届出が8月末日で締め切られた.

 当会に関係するところでは,東京都81%,埼玉県71%,全国72%の病床が一般病床として届出された.東京都の数字は大学病院,国公立病院が多いためと推測できるが,全国をみると思った以上に一般病床申請が多いように感じられる.しかし,この届出は1992年の第2次医療法改正から始めた医療機能の体系化から第3次の整備,そして第4次の総仕上げという流れの中にあるものなので,本質は急性期,療養の大区分よりも機能分化の明確化と受け止めている.病床区分対策は,その点を踏まえて機能の異なった二つの病院で昨年から以下のように行ってきた.

・所沢中央病院

 2002年10月,ケアミックスから全床一般病床へ転換

 2003年4月,3:1 から 2.5:1 への看護基準変更

・多摩リハビリテーション病院

 2002年4月,梅園病院から多摩リハビリテーション病院へ名称変更

 2003年4月,増改築終了.介護病棟,療養型病棟から介護病棟,療養病床+一般病床を申請

 和風会では,機能の明確化をするに当たっては,常に地域で望まれている役割を最重要視してきた.医療機能分化の理想型は,他の機関と連携して,相乗効果を出す地域密着型の医療機能分化であると考えている.

医療法人合併による施設再編─病院:一般病床(40床),療養病床(45床)・クリニック:無床

著者: 江畑浩之

ページ範囲:P.1012 - P.1014

零細病院における病床区分の選択

 第4次医療法改正においては,病院機能に応じた人員基準,施設基準が規定され,医療供給体制の類型化が進められている.本年8月の病床区分の選択に際して,零細病院の選択肢として最も望ましい姿は専門性をもった一般病床との噂であったが,専門性の獲得といわれても一朝一夕には不可能である.病床区分に迷った場合,日本医師会は一般病床の選択を勧めたため,施設基準の緩やかな「とりあえず一般」の届出を出した零細病院は少なくないと思われる.

 一般病床とは「亜急性期医療を含む」という厚生労働省の見解ではあるが,診療報酬体系から「将来は急性期病棟しか生き残れない可能性は高い」という情報も耳にする.経過措置期限までに人員基準の確保ならびに施設整備を行い,平均在院日数を短縮できないと脱落することになる.平均在院日数の短縮のためにはケアミックス,救急医療体制および地域連携が肝要と思われる.現在,療養病床を病室単位で選択することは認められており, 森園病院は2001(平成13)年11月に29床の一般病床と18床の療養病床を選択したが,「2病棟」と見なされ,将来まで47床を2看護単位のまま維持することは経営効率から困難である.

グラフ

理想の地域医療支援病院を目指す―特定医療法人仁愛会 浦添総合病院

ページ範囲:P.969 - P.974

 沖縄本島の南側にある人口10万強の浦添市は,今春プロ野球のヤクルト球団がキャンプに訪れたことで,その名をご存知の方も多いだろう.

 1981年に開院した浦添総合病院は,その浦添市のほぼ中央に位置し,市内に公的病院のないこともあって,開院当初から常に地域の基幹病院として地域医療を支えてきた.

 2001年には,ほぼ同時期に「地域医療支援病院」,「急性期特定入院加算」算定病院,「臨床研修指定病院」の条件をクリアし,また2004年度からスタートする新医師臨床研修制度に向けた臨床研修病院群プロジェクト「群星(むりぶし)沖縄」へ管理型病院として参加したことは,読者の記憶にも新しいだろう.本号では,同院の真の姿に迫ってみたい.

連載 病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題 急性期病院の立場から・21

“選択と集中”に耐え得る組織と戦略とは

著者: 鈴木紀之

ページ範囲:P.1022 - P.1025

将来戦略を睨んだ組織構築と変革に備えた“選択と集中”

 筆者による連載第2回目の今回は,筑波メディカルセンター病院事務部門のこれまでの活動を題材として,課題への挑戦の成果と挫折の試行錯誤について報告する.特に今回は,「病院」という機能が持つ組織の複雑さ,難解さへの挑戦と,それに取り組むことで得られる成果とは何か? について解を求めていきたい.また,地域ニーズの分析,医療システムの変革を踏まえた当院の生き残り戦略を,今後どのように設定していくか,これまでのプロセスを俯瞰しながら検証を加える.

 読者諸兄にとっては,今回の二つのテーマは既に十分情報収集や,ご理解はいただいている内容ではあるが,目的達成の手段として,違う角度からご検討いただければ幸甚である.

看護管理=病院のDON・36・最終回

病院統治力

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.1026 - P.1027

コーポレートガバナンス

 この経済不況下で,営利企業の粉飾決済,会計監査法人の不正,食品の産地や賞味期限の不正表示,脱税などに対して厳しい社会的批判が繰り広げられている.また,政治家や公務員の犯罪,情報の隠蔽や倫理の低下が問題視され続けている.医療の世界では,連日のような医療事故報道と,再び事故を起こさないための医療安全対策が強く要請されている.実際に,組織の内部告発者に対して,いかなる不利益も生じないような法制度が検討されている.さらに,飲酒運転やセクシュアルハラスメントなどに対しても,犯罪として取り扱う方針が明らかになっている.組織の中の一人あるいは複数による不正や重大な過失が,その組織の存続を危うくする時代である.

 最近,医療サービスを提供する組織の健全性を確保するために,いわゆる企業統治(コーポレートガバナンス)あるいは病院統治が求められているように思えてならない.教科書的に言えば,組織が目指す方向に向かってリーダーシップを発揮し,スタッフを率先垂範するためには,組織活動の健全性の確保という要素が重要になる.組織をどのような仕組みのもとに統治していくかを検討する場合,経営幹部(意思決定機関,執行機関)は,組織内が使命・目的の達成のために効率的に機能しているかどうかという観点に加え,組織を構成する従業員,取引相手,患者,利用者,顧客,市場,地域社会を分析し,利害関係者(ステークホルダー)の期待にバランスよく応え,組織運営を組み立てていかねばならない.ステークホルダーとの信頼関係の構築には,経営の健全性を示し,社会的信用を得るための経営システムが問われる.したがって,提供する製品やサービスの安全や質あるいは情報公開,組織の倫理や法令などに対する遵法性の確保が重要である.

事例による医療監視・指導─院内感染・医療事故予防対策・9

セカンドオピニオンに関連して

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.1028 - P.1029

セカンドオピニオンに関する患者からの相談,苦情

 2001年5月に東京都の「患者の声相談窓口」が設置される以前から,都への相談が多かったものの一つに,「セカンドオピニオン」に関連した苦情がありました.

 多くみられる相談・苦情の一つには,ある医療機関で受けた診断内容について,他の医療機関で相談したいと主治医に言ったところ,怒鳴られた,あるいはもうその医療機関では診療しないと言われた,というものがあります.

 またもう一つ多いのは,初めに診断を受けた医療機関から紹介状をもらって,セカンドオピニオンを受けに別の医療機関へ受診したのに,また最初からいろいろな検査を計画された,あるいは検査を拒んだら,セカンドオピニオンはもらえずに,前医に戻るように言われた,といったような相談・苦情です.

 そこで本稿ではこの「セカンドオピニオン」について触れたいと思います.

医療機関のマーケティング戦略─産科の受療行動からみえるもの・8

広告規制緩和後,医療機関の広告は果たして変わったのか?そこで,効果的な媒体とは?

著者: 碇朋子

ページ範囲:P.1030 - P.1036

医療現場からの実感

 1.読者からのメール

 今回は最初に,筆者が本連載を読んだ読者からいただいたメールを紹介させていただく.なお原文の意図を変えない範囲で,よりわかりやすいように,( )書きで,言葉を加えている.

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 産科でも,昔と違って,料理や個室の質を訴える広告を(最近よく)見ます.昔と違って,近所の客(だけ)を抱え込む時代は過ぎ去っていくようです.(一般に)「どうしてこの病院を選びましたか」という(患者)アンケート調査では,「近所だったから」という返事が一番多いのですが,「結婚相手をどうして選びましたか」とか,(通常の商品の)ブランド選択(調査)でも,「手近(だから)」とか実際の欲求とは異なる返答が多くあります.しかし,病院(の領域)ではマーケティング研究が不十分で,いまだに(マーケティングや調査結果の)意味を誤解されているように思います.(通常の商品の)ブランド選択(調査)で「店においていたから」という調査(結果)を納得する企業はないと思います.病院(の領域)では「近所だから」(という回答)で納得して,差別化の(目的を有した)広告(展開)をしない病院が多かったのですが,90年代後半から差別化広告が増えていると感じています.

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病院ボランティア・レポート─ボストン,ロンドン,そして日本・9

患者とその家族のための資料室と情報提供方法

著者: 安達正時

ページ範囲:P.1039 - P.1041

 イギリスでは,Macmillan財団の取り組みにより,イギリス各地のNHS(National Health Service)病院に癌に関する資料センターであるMacmillan Cancer Information Centerが設置されています.各センターには,専門の相談員が常勤しています.

 Macmillan財団によって設立された資料センターの一つであるOxfordのThe Sir Micheal Sobell House(以下,Sobell House)にあるCancer Information Center(写真1)のLiz Mintonによると,これらのセンターでは,患者サポート団体が作る資料やNHSの資料が集められており,資料を収集するのはセンターの相談員の重要な仕事であるとのことでした.どこからどんな資料を取り寄せるか検討することから始め,常に新しい内容の資料をおいておけるように管理します.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第110回

英国におけるPFI:将来の可能性と世界への適応性

著者: ナイチンゲールマイク ,   長澤泰 ,   岩谷純子

ページ範囲:P.1042 - P.1048

歴史的概要

 PFI(Private Finance Initiative)は民間の資金を主だった公共建設事業に活用するための方策として,1994年から1996年にかけて英国の最も最近の保守党によって考案された.

 当然ながら,世の中には全くの新しい発明など存在しないわけで,過去には多くの類似した考えが,かなり世界の数々の地域で適用されてきた.オーストラリアにおけるDBFO(Design Build, Finance and Operate:設計施工・融資・経営)は,その一例である.

 PFIが新しい点は,その構想の規模と対象にある.また,それが英国の大規模事業の建設方法として急速に普及するようになった事実である.

 初期段階の計画は,比較的単純な(しかし大変大規模の)社会資本整備に絞られており,ドーバー海峡トンネルはその一例である.

 初期の成功例は,財政面での厳しい批判を浴びたものの,後には,より複雑で洗練された継続的経営技術が求められる事業―例えば,民間刑務所―に適用する方向へと引き継がれて行った.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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