icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院62巻3号

2003年03月発行

雑誌目次

特集 自立できるか自治体立病院

巻頭言

著者: 池上直己

ページ範囲:P.181 - P.181

 地方財政の悪化に伴い,自治体立病院に対する一般財源からの補填はますます困難になっている.単年度と累積の赤字が問題として取り上げられているが,住民の負担額はそれを大幅に上回り,一般会計からの繰入(経常収益の13%)のほか,民間病院ならば本部経費として負担している本庁経費,および租税公課の免除により失われている税収も考慮しなければならない.

 総務省としては,地方公営企業法の全部適用,あるいは地方独立行政法人制度の活用による病院の自立を促している.いずれも管理者の権限を強化し,病院の組織としての責任と役割を明確にすることを目標としている.しかし,単に管理者に権限を移管させただけでは効果は期待できず,マネジメントのあり方を変える必要があり,その際,キーとなるのは人事管理と地方議会との関係の改善である.

自治体立病院の現状と課題について

著者: 安田充

ページ範囲:P.182 - P.188

 自治体立病院,すなわち地方公共団体が経営する病院には地方公営企業法が適用されるが,同法においては,地方公営企業の経営の原則として,企業の経済性の発揮と公共の福祉の増進を上げ(同法3条),自治体立病院の経営に当たって経済性と公共性の調和を求めている.

 自治体立病院が地方公共団体によって経営されるものである以上,公共の福祉を増進する見地に立つべきことは当然であり,それゆえに法律によって予算,財務などの規制を受け,他方,公共的な側面から行われる不採算事業に対し,一般会計からの繰出しを可能にし,地方交付税,地方債などの地方財政措置が講じられている.

 一方で,自治体立病院などの公営企業は,財貨サービスを提供してその対価を得るという非権力的な事務であり,民間企業と同様の経済合理性に沿った運営を行っていくことが求められる.自治体立病院を取り巻く環境が変化する中で,近年,この経済性の側面が重視されるようになっている.

全部適用による経営刷新を目指す

著者: 大田浩右

ページ範囲:P.189 - P.192

公的病院の役割,地域医療との整合性

 井原市民病院(以下,市民病院)は対象人口4万人強の地域における唯一の総合病院であることを前提に話を進める.

 筆者は長年の医師会活動の経験と医療法人経営者の立場から,民間医療機関がいかに国公立病院を意識しているか,また脅威に感じているか人一倍よく知っている立場にある.人口4万人程度の小さな町では,市民病院のあり方によっては,民間医療機関を圧迫し,脅威となることは容易に理解できる.いかにすれば官は民を圧迫することなく共存できるかの命題について,市民病院は周産期医療,小児育成医療,救急医療,リハビリテーション医療を中心に行い,井原地域の民間医療との競合をできるだけ避ける道を選択すべきことを全員協議会や市議会に説明した.

都立病院から21世紀の医療の創造を―都立病院の再編整備

著者: 押元洋

ページ範囲:P.193 - P.197

 東京都では石原慎太郎知事の提唱により,「開かれた医療」,「安心できる医療」,「むだのない医療」の三つの改革方針に基づく「東京発医療改革」を推進し,「365日24時間の安心を目指す医療」と「患者中心の医療」の実現に取り組んでいる.なかでも「都立病院改革」は,「東京発医療改革」の核と位置づけられている.

 「都立病院改革」については,「都立病院の患者権利章典」の制定や総合的な救急医療サービスを提供する「東京ER」の整備などの施策を積極的に展開してきた.

 また,これと並行して,知事の諮問機関である都立病院改革会議(座長:高久史麿自治医科大学学長)に,都立病院が担うべき医療機能や再編整備の考え方などの検討を依頼し,平成13年7月にその基本的な方向について報告書がまとめられた.

 都は,この報告書を最大限尊重し,安全・安心を支える質の高い「患者中心の医療」の実現と都民に対する総体としての医療サービスの向上を図る具体的な道筋を明らかにするために,平成13年12月,「都立病院改革マスタープラン」(以下「マスタープラン」という)を策定した.マスタープランには,都立病院の基本的な役割,「患者中心の医療」推進のための考え方と具体策,再編整備の考え方およびスケジュール,改革推進体制,財政ルールなどが盛り込まれている.これらの改革を実現していくための期間は,おおむね10年を目途としている.

 マスタープランの内容は多岐にわたるが,本稿では,特に都立病院の再編整備に焦点を当ててご紹介し,読者の参考に供したい.

自治体立病院―自立への動き―埼玉県立病院の場合

著者: 長隆

ページ範囲:P.198 - P.202

 本特集のテーマは「自立できるか自治体立病院」である.長年総務省の地方公営企業(病院)経営アドバイザーの仕事をしてきた筆者は,北は根室市立病院から南は九州の小林市民病院まで,たくさんの病院に赴いて,経営改善のアドバイスをしてきた.その中で最近力を入れたのが,埼玉県立病院の改革である.筆者自身が埼玉県立病院改革推進委員会の委員となり,関係者に必要な助言や指導を行う職務に従事させていただいた.埼玉県立病院改革の成功は,平成13年度決算で,平成12年度と比べ医業収支で15億8千万円の改善をみたことで示されている.

 以下に埼玉県立病院が地方公営企業法の全部を適用した経緯や病院改革の実際の動きを紹介し,最近の埼玉県以外の状況にも触れる.

自治体立病院を民間委譲で改革することの意義と課題―福岡県立病院改革の答申をまとめて

著者: 高木安雄

ページ範囲:P.203 - P.207

はじめに:公的病院改革がなぜ問題となるのか?

 日本経済の変調と高齢化の進行の中で,病院を取り巻く経済環境はますます厳しくなっている.患者負担の引き上げや,診療報酬改定による病院の機能分化の経済的誘導の導入によって,民間・公的を含めた病院間の連携と競争はいよいよ本格化している.

 元来,病院が提供する医療サービスは,医師・看護職などの専門職者の確保と設備構造・人員基準の遵守など様々な規制が働くために,「参入障壁」は他のサービス業と比べてはるかに高いという特徴を持っている.他方,医療サービスの経済環境が厳しいからといって,医療は優れて高度専門的であるため他のサービス業に容易に転換できる業種ではなく,「撤退障壁」もまた非常に高い特徴も兼ね備えている.一度参入したら,撤退できないという医療サービスのこうした特徴は,その「構造転換」が容易でないことを意味する.したがって,医療サービスの市場が縮小・抑制される現状において,それぞれの病院は生き延びるために競争相手のパイを奪ってくるという共食い現象が発生せざるを得ない.

 公的病院の赤字経営はこれまで何度も問題にされてきたが,今日の問題状況は過去の歴史の繰り返しではないことに注目する必要がある.さらに各都道府県・市町村の財政悪化は,自治体立病院の放漫経営をもはや許容できないところまできており,北海道・東京都・神奈川県・大阪府・長崎県など各自治体で病院改革が加速されているのはそのためだ.自由民主党医療基本問題調査会が「公的病院等のあり方に関する小委員会」を設置して,公的病院の見直しを精力的に進めているのもその一つであり,医療保険制度改革と連動して保険料財源の投入によって維持・運営されている社会保険病院のあり方が標的とされた.そして,同小委員会の『今後の公的病院等の在り方について』(平成14年11月20日)では,社会保険病院について,「現行の運営委託方式を見直し,民間病院と同様の自立した健全経営が行われるような効率的なものとし,新しい経営形態への移行等が適切な病院は迅速に対処すべきである」と具体的な改革プランを示している.

 公的病院はこれまで,「住民の暮らしと命を守る」,「地域医療の確保」という目標を掲げて医療サービスを提供してきたが,民間病院を含めた医療供給体制の整備と自治体財政の悪化の中で大きな見直しにさらされている.特に民間病院からは施設整備や人件費などへの公的資金の投入について,不公平な競争と税金のむだ遣いの両面からそのあり方が厳しく問われている.

 そこで本稿では,福岡県の五つの県立病院の改革の検討から明らかとなった自治体立病院の問題を述べるとともに,四つの県立病院の民間委譲と一つの公設民営方式への移行という抜本的な改革案を提示するに至った背景を考えることにする.もちろん,この改革プランは福岡県行政改革審議会の答申にとどまり,具体的な実行は今後の行政次第である.既に五つの県立病院を抱える市町村において,民間委譲による改革プランの説明も兼ねた「地域医療シンポジウム」が始まっているが,労働組合や地域住民からの反発は大きく,改革の実現まで順調でないことが予想できる.本稿は,福岡県行政改革審議会の『福岡県立病院改革に関する答申』(平成14年9月18日)(以下,『答申』)取りまとめに加わった委員による個人的な解説と考察であり,福岡県行政と審議会を代表するものではないことをお断りしておく.

【てい談】自治体立病院の将来展望は開けるか

著者: 岸野文一郎 ,   川合弘毅 ,   池上直己

ページ範囲:P.208 - P.215

 池上(司会) 本日は,てい談「自治体立病院の将来展望は開けるか」に,自治体立病院の立場で岸野先生に,民間病院の立場で川合先生にお越しいただきました.それでは,自己紹介を兼ねて,まず岸野先生に病院長に就任されるまでの経緯,特に管理者としてマネジメントにかかわってきた経緯についてお話いただきたいと思います.

マネジメントとの出合い

 岸野 私は昭和37年に大阪大学医学部を卒業して第二内科に入局しました.昭和56年に内科部長として住友病院に赴任し,平成6年まで務めました.市立泉佐野病院を建て替えるということで,現総長の藤田毅先生に請われて平成6年7月に当院の副院長となり,平成7年の4月に院長に就任しました.このように,医療の現場に長くいたので,経営的な経験があるのは平成6年からです.

グラフ

「患者の視点」を徹底的に追求―自然に融合したガーデンホスピタル 静岡県立静岡がんセンター

ページ範囲:P.169 - P.174

 JR三島駅から車で近づくと,雄大な自然の中に静岡県立静岡がんセンターが次第に浮かび上がる.駅から15分ほどで到着するが,同センターからは北に富士山,南に天城,西に駿河湾,東に箱根を眺めることができる.富士の麓の丘陵に建築された静岡がんセンターは,静岡県は県のがん征圧拠点として2002年9月開院した.

患者の視点を重視する

 構想段階から参画した山口建総長は,設立におけるキーワードを「患者の視点の重視」と強調する.同センターでは患者の視点を重視した医療を展開するため,「がんを上手に治す」,「患者さんと家族を徹底支援する」,「成長,進化を継続する」を運営の基本方針として掲げている.

特別寄稿

21世紀初頭の医療改革と民間病院の役割―幻想の「抜本改革」から着実な部分改革と自己改革へ(中編)

著者: 二木立

ページ範囲:P.216 - P.222

一般病床半減説─医療提供制度の「抜本改革」論(2)3)

 次に,もう一つの医療提供制度「抜本改革」論である「一般病床半減説」について検討する.

 「厚生労働省は現存する120万床の一般病床を50~60万床に減らすと発表した」,「平均在院日数20日を切れない民間中小病院は一般病床として生き残れず,療養病床に転換するしかない」

 厚生労働省が一昨年9月に『医療制度改革試案』を発表して以来,このような「一般病床半減説」が医療ジャーナリズムや医療界をにぎわすようになった.昨年4月の診療報酬改定以降,この主張はほとんど通説化し,一般病床・療養病床の届け出締め切りを本年8月に控えた病院関係者(特に民間中小病院経営者)を浮き足立たせている.

 しかし,私は,「一般病床半減説」は厚生労働省の方針と医療法第4次改正を医療ジャーナリズムが誤解してあおり立てた虚構・幻想であり,わが国の病院医療の現実(国民・患者の嗜好を含む)と旧厚生省(以下,厚生省)の病院病床削減政策がみじめに失敗した歴史を考えると,実現するわけがないと考えている.以下,この問題に関する私の事実認識,「客観的」予測,価値判断を述べる.

イギリス・ブレア政権の高齢者介護・福祉政策(上)

著者: 近藤克則

ページ範囲:P.223 - P.226

 イギリスは,かつて「ゆりかごから墓場まで」のスローガンとともに福祉国家として知られていた.しかし,サッチャーら保守党の18年に及ぶ長期政権の間に行われた改革以降,もはや福祉先進国というイメージを持つ人は少ないであろう.しかし,そのことは日本にとって学ぶ点がなくなったことを意味しない.なぜなら北欧など福祉先進国は,社会保障給付費の水準がわが国のおよそ3倍,人口規模は2けた小さいなど,わが国との違いが大きすぎる.一方,イギリスは日本と同様に,中~低負担で実現可能な効率的な福祉を追求しており,人口も日本のおよそ半分なので,むしろ現実的改革のヒントが学べる可能性があるからである.

 例えば,介護保険制度で導入された介護サービスへの民間企業の参入も,ケアマネジメントも,わが国より早く導入していたイギリスに学んだとも言える.2003年度から導入される障害者支援費制度も,その一つのモデルをイギリスの費用直接支払い(direct payment)方式に求めることができる.

 このように考えると,イギリスにおける高齢者介護・福祉政策の流れを学ぶことは,中~低負担の効率的な福祉制度が直面する問題を知り,わが国においても実現可能性のある介護政策改革のヒントが得られると期待できる.

 そこで,小論では,ブレア政権が取り組んできた高齢者分野を中心とする介護・福祉政策の問題点や改革の取り組みを紹介し,それらから得られるわが国への示唆を考察したい.

治験における CRC の役割と今後への期待

著者: 中野重行

ページ範囲:P.227 - P.231

 医薬品は病気や病態の改善を目的に使用されるが,その有効性と安全性は,患者や健常者を対象にした臨床試験により初めて明らかにされる.医薬品の臨床試験の中で,規制当局(厚生労働省)から承認を得るための申請資料にすることを目的に行われる段階のものを,「治験」と称している.また,医薬品は市販後にも,より長期にわたる価値を明らかにしたり,より良き使い方を研究するためにも臨床試験が必要になる.この段階の臨床試験は治験ではないので,「市販後の臨床試験」という.なお,治験は医薬品には限らず,医療用具でも実施される.

 近年,医薬品開発に要する費用,時間,人的資源などが膨大になってきた.そこで,これらを節約するためにも,臨床試験の実施のための基準を日米欧の間で統一して,データを地球規模で相互利用できるようにしようというグローバリゼーションの動きが,1990年代になって大きく進展した.わが国の「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(good clinical practice ; GCP)」も,このような動向の中で1997年春に改定され,新GCPの時代に入った.

 以来,治験は治験責任医師をチームリーダーとして,治験チームとして実施されるようになった.治験チームの中で,支援スタッフであるCRC(clinical research coordinator)は,治験の実施におけるキーパーソンとしての役割を担うようになっている.本稿では,治験に焦点をあてて,CRCの役割と今後への期待を述べることにする.

レポート

杏林大学医学部付属病院熱傷センターにおける質向上の取り組み

著者: 田中秀治 ,   高見佳宏 ,   後藤英昭 ,   榊聖樹 ,   島崎修次 ,   渡辺淑子 ,   木村雅彦

ページ範囲:P.232 - P.238

 昭和54年,杏林大学医学部付属病院に救命救急センターが開設し,その2年後の昭和56年に,当救命救急センター内に3床の重症熱傷治療ユニットが東京都重症熱傷治療施設として指定された.

 当時,三多摩地区には熱傷専門治療施設はなく,三多摩全域の熱傷患者のみならず,東京都内23区のうち世田谷区,杉並区,練馬区などからも広く患者を受け入れてきた.その後近隣の基幹病院に熱傷ユニットが開設されると,患者数が減少し搬送されてくる地域も三鷹市,武蔵野市,調布市,小金井市,世田谷区,杉並区,練馬区などに限定されてきた.

 しかし,平成3年日本初のスキンバンクを杏林大学救急学教室内に設立し,平成5年当院救命救急センターの新棟オープンとともに熱傷ユニットに水治療室を併設し治療室を4床に増床したところ,再度患者数が増加し始めた(図1).その後,施設の整備と治療スタッフの熟練,知名度の上昇などの因子がかみ合って,治療成績はしだいに向上してきた.

 また,平成12年6月に熱傷ユニットはリニューアルし,新たに熱傷センターとして病院内組織の一つの単独したユニット(看護単位)として改変され再スタートを切った.現在では西東京のみならず,広く関東または日本から受傷患者が搬入されるようになってきており,重症例には患者ごとに医師,看護師,作業療法士,理学療法士,ソーシャルワーカー,薬剤師などを含めたコメディカル参加型の熱傷治療チームを編成し,日々の治療に当たっている.

 本稿では当院熱傷センターができるまでと,熱傷センターにおける様々な質向上の取り組みについて報告する.

連載 病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題 急性期病院の立場から・12

「よりよい医療」のマネジメント

著者: 冨田信也

ページ範囲:P.240 - P.241

医療サービスの特性

 医療はサービスである.サービスは人間と人間の関係である.サービスは常に特定の人間関係の中で展開される動的なものである.つまり,人間と人間に関係する「時間」の中でサービスは展開する.この視点がサービスの質(quality)や,医療の質を考えるときの原点である.

 そして,サービスの質を考えることは人間関係の「時間」の質を考えることである.時間は関係する一人ひとりに固有であるから,しばしば個々人の視点からの見方が原因で大きな食い違いや致命的な誤解が生じることがある.筆者は事務部長として,院長とともに患者・家族の医療への不満やクレームを聴く立場にあり,諸々のホットな問題処理にもかかわってきた.問題となるところは,いつもこの視点の食い違いにある.その渦中にあっていつも考えることは医療サービスの特性である.

看護管理=病院のDON・27

組織フレームワークの再検討

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.242 - P.243

組織上の問題

 病院の組織が,業務を遂行するために円滑に機能していることは重要である.その前提は「組織は戦略に従う」である.院内の問題の多くは,表面上,連絡ミスがあったり,連携が不十分な場合に発生する.単なる連絡ミスなのか,それとも組織上の問題であるか,ケースごとに確認することが必要であろう.

 例えば,医師が薬剤師に服薬指導を依頼したとする.薬剤師は,医師の指示書をもとに,病棟で独自に患者の情報収集を行う.服薬指導を計画・実施する過程では,対象となる患者本人はもちろん,必要に応じて患者の家族の都合も調整する必要があり,また,検査などのスケジュール調整のためには看護師との調整も必要となる.そして,服薬指導の予定が決定されるが,当日薬剤師の都合により服薬指導は中止となってしまったとする.

栄養管理・9

臨床現場のニーズに応じた栄養管理スタッフの育成について

著者: 幣憲一郎

ページ範囲:P.244 - P.246

 前号で紹介したように生活習慣病をはじめとする慢性疾患患者への臨床栄養管理や高齢者管理を含めた褥瘡対策での栄養管理など,チーム医療への参画を目的とし管理栄養士業務の臨床対応を推進しているが,それらに対応する病院栄養士には,栄養評価ならびに栄養治療に基づく高度な専門知識・技能が求められており,これまでの「物(給食)」から「人」を対象とする栄養専門職として位置づけられるためには,今後どのような取り組みが必要であるかを検討している.そこで今回は,京都大学医学部附属病院における,臨床現場のニーズに応じた専門家としての栄養管理スタッフの育成に関する取り組みについて述べてみたい.

救急医療研修─臨床研修必修化に伴う研修医の受け入れ体制をどうするか・5

救急関連研修の現状と必修化に向けた指導体制の強化とプログラムの変更

著者: 郡義明

ページ範囲:P.247 - P.248

天理よろづ相談所病院での卒後臨床研修について

 毎年,全国公募で12名の初期研修医を採用している.卒後臨床研修は総合病棟1年以上,麻酔科4か月,腹部一般外科2か月,小児科2か月,救急部2か月が必修である.本人の希望に応じて3か月の専門科研修が可能である.天理よろづ相談所病院の研修の特徴は,全身的なアプローチや問題解決能力の養成のための約1年間の総合病棟勤務にある.

現在の救急関連研修について

 救急関連研修は,①麻酔科研修,②救急部研修,③救急外来研修の三つからなる.

 麻酔科研修は4か月間で,全身麻酔約130例,硬膜外麻酔約60例を経験する.挿管,人工呼吸器管理,輸液管理,中心静脈確保,腰椎穿刺,硬膜外穿刺などのテクニックが確実に身につき,プログラムに関しての研修医の評価は常に高い.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第101回

静岡県立静岡がんセンター

著者: 高橋敏行

ページ範囲:P.249 - P.255

計画の概要

 2002(平成14)年9月に開院した静岡県立静岡がんセンターは,「最新で適切ながん診療の実践」,「患者の視点を尊重したがん診療の推進」,「がん情報ネットワークなど,がん対策の中枢機能の構築」という基本理念に基づき,県のがん征圧拠点としてわが国最高レベルの高度先進医療を提供すべく設立された病院である.

 日本でまだ数例というがん治療の高度先進技術の一つである陽子線治療施設棟や,終末期医療のための緩和ケア病棟などを併設し,21世紀のがん医療に対して万全の体制で臨むための整備がなされている.

 組織を含めて全く白紙からの病院立ち上げであったため,全国各地の医療関係者を中心としたアドバイザーから広く意見をうかがい,試行錯誤を繰り返しながら運用計画と一体となって設計が進められた.

 また,医療に取り組む姿勢として「がんを上手に治す」,「患者さんと家族を徹底支援する」,「成長,進化を継続する」ことが掲げられ,これらの理念を建築のハード面からも具現化する施設計画が求められた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?