文献詳細
文献概要
特集 病院のカウンセリング機能
病院における臨床心理士の癒しのはたらき
著者: 菊池浩光1
所属機関: 1医療法人社団カレスアライアンス日鋼記念病院臨床心理科
ページ範囲:P.283 - P.288
文献購入ページに移動 受療者の心理的・社会的サポートは,決して新しいニーズではない.ずっと存在していながら,近代科学を背景にした医学では問題の外に置かれてきたものである.
そもそも人間同士のコミュニケーションの営みである医療現場で,個性と個性の関係を断ち切って考えたり,多面性を抱いた人間の治療に当たって,身体,心,社会の関係を断ち切ること自体に無理があると思うのだが,身体のみに注目し,機械的,操作的に受療者を扱ってしまう言葉や態度は,今も無自覚に医療者から発せられている.
受療者が医療者に対して感じてきた怒りと悲しみというのは,まさにこの部分ではなかっただろうか.名前(個性)を持った個人としてではなく,客観化され無名化されモノとして扱われることへの怒り,反発したくても専門家の前では屈服せざるを得ない悔しさ.こういった医原性の葛藤を,癒す側が与えていたという場面が少なからずあったことは否めないだろう.しかもこのようなコミットメントに,医療者自身はなかなか気づけないものだ.
病院は身体的,心理的,社会的,そして霊的な痛みが集約されたステーションのような場所である.それゆえ病院は,癒しを最たる使命としてきた公共機関であるわけだが,「受療者の癒しのニーズを中心においた医療サービスの提供」という観点に立った時には,スタッフ,システム,そして医療風土の課題が山ほどあるように思える.
本稿では,その一端ではあるが,まだ数としては少ない病院における臨床心理士の取り組みの現状を報告し,臨床心理士による癒しの機能の可能性について考えていきたい.
そもそも人間同士のコミュニケーションの営みである医療現場で,個性と個性の関係を断ち切って考えたり,多面性を抱いた人間の治療に当たって,身体,心,社会の関係を断ち切ること自体に無理があると思うのだが,身体のみに注目し,機械的,操作的に受療者を扱ってしまう言葉や態度は,今も無自覚に医療者から発せられている.
受療者が医療者に対して感じてきた怒りと悲しみというのは,まさにこの部分ではなかっただろうか.名前(個性)を持った個人としてではなく,客観化され無名化されモノとして扱われることへの怒り,反発したくても専門家の前では屈服せざるを得ない悔しさ.こういった医原性の葛藤を,癒す側が与えていたという場面が少なからずあったことは否めないだろう.しかもこのようなコミットメントに,医療者自身はなかなか気づけないものだ.
病院は身体的,心理的,社会的,そして霊的な痛みが集約されたステーションのような場所である.それゆえ病院は,癒しを最たる使命としてきた公共機関であるわけだが,「受療者の癒しのニーズを中心においた医療サービスの提供」という観点に立った時には,スタッフ,システム,そして医療風土の課題が山ほどあるように思える.
本稿では,その一端ではあるが,まだ数としては少ない病院における臨床心理士の取り組みの現状を報告し,臨床心理士による癒しの機能の可能性について考えていきたい.
掲載誌情報