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雑誌目次

雑誌文献

病院62巻5号

2003年05月発行

雑誌目次

特集 看護師のキャリアアップ

巻頭言

著者: 池上直己

ページ範囲:P.357 - P.357

 経済不況もあって看護師不足はかつてほど深刻でなくなったが,病院に勤務する看護師の年齢は二極化している.それは若年層にキャリアアップの機会が十分与えられていないことの表れであり,また多くの病院は年功給であるゆえ,中高年が多いということは病院経営を圧迫していることを意味する.この二つの問題を解決するためには,専門看護師や認定看護師の上級看護資格制度を整備して若い看護師に専門家として自己実現する道を開き,また給与体系を職能給に改めることである.

 そこで,同制度が発達している米英の状況をみると,米国で広まった背景には,民間保険が中心で効率化の圧力が強く,各職種に対する法的規制が日本と比べて少ない一方で,おのおのの実力が問われている医療環境がある.その結果,養成機関は上級看護資格者に臨床的な実践能力を持たせるように努力し,また上級看護資格者を採用することによる患者満足度への反映や医師と比べての費用対効果などの研究成果が発表されている.一方英国では,効率化という観点からではなく,政府が高齢化社会や看護師不足の対応策として,看護師の自立と業務範囲の拡大に向けて上級看護資格者の育成に力を注ぐようになった.

専門看護師制度・認定看護師制度の期待と展望

著者: 國井治子

ページ範囲:P.358 - P.361

 日本看護協会は,1987年より,看護の専門分化の検討を始めた.その検討の結果,専門看護師制度・認定看護師制度を制定した.制度発足は,専門看護師制度が1995年,認定看護師制度が1996年であるから,それぞれ7年以上が経過した.その間専門領域も増え,認定者の数も増えてきている.認定は教育を前提としていることもあり,増加のスピードは遅いかもしれない.

 実際に活動を開始した専門看護師,認定看護師への臨床現場での評価は高い.現場で効果的に活用されていることの表れであろう.専門看護師・認定看護師の活動の中には,診療報酬上の評価に上げられた領域や,専門病院の指定基準に盛り込まれた領域などがあり,質の高い看護サービスが医療の質へ貢献することの認識が広がってきていると感じている.ますます複雑になる医療現場において,効率的に良質なサービス提供を求められる時代に,今後スペシャリストやエキスパート看護職の活用は有効と考えている.

看護管理者からみた専門看護師・認定看護師

著者: 濱口恵子

ページ範囲:P.362 - P.367

 専門看護師は1996年から,認定看護師は1997年から日本看護協会により認定され,2002年には,表に示すように専門看護師登録者数は全分野で計40名,認定看護師は計753名となった1).しかし,「専門看護師・認定看護師(以下,専門ナース)」といっても,病院組織の中でどこに位置づけられるのか,病院が専門ナースに何を期待するのかによって,その活動内容は大きく異なる.

 筆者は初年度にがん看護専門看護師に認定された4人のうちの1人である.現在,2002年9月にオープンした静岡県立静岡がんセンター(以下,当院)の副看護部長(教育担当・人事兼務)として,病院の立ち上げに携わっている.当院には平成15年度現在,専門看護師1名(がん看護:筆者)とがん看護専門看護師コース〔大学院修士課程のCNS(専門看護師)コース〕を修了して認定試験を受ける前の者3名,および,認定看護師10名(がん化学療法看護1名,ホスピスケア2名,がん性疼痛看護2名,創傷・オストミー・失禁(WOC)看護4名,感染管理1名)とWOC看護認定看護師の認定試験を受ける前の者1名がいる.

専門看護師と医師との協働の実際

著者: 近藤まゆみ

ページ範囲:P.382 - P.386

 筆者は平成6年度に総合相談部という場所を中心に,がん看護専門看護師(Oncology Certified Nurse Specialist:以下OCNS)の活動を開始した.総合相談部とは,患者・家族・医療スタッフから自由に何でも相談を受ける場所であり,SW(ソーシャルワーカー),保健師,看護師,栄養士,事務職がそれぞれの専門性を活かして様々な相談を受けている.

 OCNSの活動の中では患者や家族に直接ケアを提供したり,臨床の現場で悩んでいる看護師のサポートを行うことが多いが,医師といっしょに課題について取り組んだり,悩んでいる医師のサポートを行うこともある.また,患者と医師の間や看護師と医師の間に衝突やすれ違いが起こった場合に調整を行うこともある.

 本稿では,筆者の実践の中から医師とのかかわりに焦点を当て,OCNSの活動と医療の質との関係について述べてみたい.

米国・英国における上級看護資格の現状とその意義

著者: 小林美亜 ,   池上直己

ページ範囲:P.387 - P.393

 米国や英国をはじめとした先進諸国では,専門分化が進んだ医療に対応して上級の看護資格を与える教育プログラムの整備が進んでいる.このような上級看護資格の育成が進んだ理由としては,看護職の自立性の高まりに加え,従来医師が行ってきた業務の一部を看護職に委ねることによりコストを削減するという目的がある.本稿では,日本の専門看護師をはじめとした上級看護師の将来展望を検討する資料を提供するため,米国・英国における上級看護資格者の誕生の背景,教育,活動,評価,処遇について報告する.

米国における上級看護資格誕生の背景

 米国では,1890年代より,病院や看護学校などで単独に開始された麻酔科,産科,手術室領域での専門的な知識と技術を持った看護スペシャリストの育成が,Advanced Practice Nurse(APN:上級看護師)の誕生につながった.APNには,Nurse Practitioner(NP:診療看護師),Clinical Nurse Specialist(CNS: 専門看護師),Certificated Nurse Midwife(CNM:助産師),Certified Registered Nurse Anesthetist(CRNA:麻酔専門看護師)という四つの資格が含まれる.現在,常勤換算のRegistered Nurse(RN:登録看護師,日本の看護師に相当)総数に占めるAPNの割合は約7%である(表1)1)

現場で役割を発揮する視点から

がん専門看護師の場合

著者: 中村めぐみ

ページ範囲:P.368 - P.371

 始めに専門看護師制度に触れておくと,1996年に日本看護協会が発足させた資格認定制度であり,「専門看護師」とは認定試験に合格し,ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有すると認められた者をいい,表の役割を果たすことが期待されている.

 「特定の専門看護分野」は,現在のところがん看護,精神看護,地域看護,老人看護,小児看護,母性看護の六つであるが,これらが専門看護師を必要としている分野であるというより,実績を有する看護職が存在する分野から特定されているのが現状である.

 筆者は,それまでの臨床経験と大学院での学びから,初年度にがん看護専門看護師の認定を受けた者であるが,この機会に活動の実情を振り返り,私見を述べたいと思う.

地域看護専門看護師の場合

著者: 山田雅子

ページ範囲:P.372 - P.374

地域看護専門看護師の枠組み

 まず論点に入る前に,地域看護専門看護師の資格の枠組みについて説明しておきましょう.地域看護とは,地域で生活されている方々を対象として,健康の増進,維持,改善を志向していくことを主眼において看護活動を行うことを言います.地域で生活されている方とはとても広い概念ですので,もう少し小さく分類していくと,産業保健(職場を切り口として健康支援を考える領域),学校保健(学校を切り口として健康支援を考える領域),保健行政(行政区域を切り口として健康支援を考える領域),在宅ケアの4領域に分けられています.現在,地域看護専門看護師の認定を受けているものは筆者を含めて2名ですが,そのどちらも在宅ケアの分野において,その役割が期待されている状況です.

 在宅ケア領域は,この10年のうちに起きた二つの変化によって,大きく様変わりしました.つまり,1992年の老人保健法改正に伴う老人訪問看護ステーションの始動,それに引き続き,2000年の介護保険導入の二つです.筆者が訪問看護の仕事に従事することを始めた1980年代後半では,訪問看護サービスは,限られた病院で行われているボランティア(経費は病院からの持ち出しがほとんど)としての活動が中心になっていました.それが現在は,利用者(患者とは呼びません)と訪問看護師とが契約を結び,看護師はそれに基づいたサービスを提供し,それに対する対価をいただくという関係になっています.もちろん利用者からの苦情も頂戴しますが,なによりも訪問看護師が事業所の長として経営を切り盛りする立場となったことは大きな変化です.

救急看護認定看護師の場合

著者: 西尾治美

ページ範囲:P.375 - P.377

 認定看護師制度は,1995年に本邦初の看護師のスペシャリスト養成制度として発足し,1996年に救急看護,創傷・オストミー・失禁看護(WOC看護)の2分野が認定分野に特定され,教育課程が開始となった(表1).2002年には,11の認定分野が特定され,救急看護領域では,2003年1月現在,96名の救急看護認定看護師が誕生し,様々な領域で活動している.

 筆者は,1999年に教育課程を修了し,2000年9月に救急看護認定看護師(表2)として認定され,現在に至っている.

重症集中ケア認定看護師の場合

著者: 矢吹道子

ページ範囲:P.378 - P.381

 日本看護協会認定看護師制度は,特定の看護分野において,熟練した看護技術と知識を用いて,水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより,看護現場における看護ケアの広がりと質の向上を図ることを目的に発足された.

 認定看護師の役割として,①特定の看護分野において,個人・家族または集団に対して,熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護を実践する(実践),②特定の看護分野において,看護実践を通じて,他の看護職者に対し指導を行う(指導),③特定の看護分野において,看護職者に対し,コンサルテーションを行う(相談),という三つの側面から,活動していくことを求められている.

グラフ

救急医療から予防医学まで,地域に根差した良質な医療サービスを展開―医療法人社団平成記念会国際医療福祉病院

ページ範囲:P.345 - P.350

 栃木県北東部に位置する西那須野町は,かつて不毛の原野であった那須野が原に那珂川の水を引き入れるべく計画された那須疏水(日本三大疏水の一つ)の開削と,それに伴う入植事業によって生まれた開拓の町である.現在は都心から150km圏内にある上に,国道4号線や国道400号線などの幹線道路が縦横に通り,東北自動車道・西那須野塩原ICやJR西那須野駅や那須塩原駅があるなど交通の便のよさから20社近い企業が進出し,四つの工業団地を形成する工業の町となり,44,000人もの人口を数えるまでに発展している.

 西那須野塩原IC・JR那須塩原駅から車で10分ほどの緑溢れる静かな環境の中に医療法人社団平成記念会国際医療福祉病院はある.

特別寄稿

日本版「診断群分類」―医療現場の視点から・2

著者: 桑原一彰 ,   松田晋哉 ,   今中雄一 ,   伏見清秀 ,   橋本英樹 ,   石川光一 ,   掘口裕正 ,   阿南誠 ,   佐々木徳明 ,   上田京子

ページ範囲:P.394 - P.398

特定機能病院対象の試行診断群分類とは

 今回のDPC分類version 3は平成13年度11月の中医協答申に基づいている(表4)12).ここで特定機能病院への包括評価が議論され,カバー率が90%以上となる評価体系の導入の検討を求められた.DPC分類version 1は183分類しかなく,国立病院での該当率は30%程度と低かった.DPC分類version 2(532分類)では分類数は増加したが,前述の民間病院調査での該当率は60%で,分類自体が特定機能病院に不十分で対応できないという批判が当初からあった.実際,現在収集中の特定機能病院データをversion 2に当てはめた場合の該当率は70%弱であった.そこで新たな診断群分類の作成が必要になり,関係学会の保険診療に見識ある部会の協力を求め,平成13年度末から作業に取りかかった.

 診断群分類構築の考え方は,図4 に示すように臨床現場の診療思考過程に基づいている.①傷病名が始めにあり,②それに対する手術・処置の選択が続き,③重症度や合併症,という3層構造を意識している.

特別座談会

看護職専任副院長の役割と機能

著者: 吉田三郎 ,   天野和雄 ,   広瀬チワ子 ,   井部俊子

ページ範囲:P.399 - P.401

 井部 羽島市民病院では,看護職が専任で副院長を務めています.副院長を看護職が務めるケースは,今では,それほど珍しいことではなくなってきましたが,副院長として専任しているケースはあまりなく,しかも自治体立の病院であることに興味を惹かれました.さらに現在は,副院長が1人と聞きました.まずは,広瀬さんを副院長に抜擢した経緯を市長におうかがいしたいと思います.

看護職を専任副院長に

 吉田 当初は院長1人,副院長2人という体制だったのですが,昨年の6月に副院長が1人退職して,結果的に現在の副院長1人体制になったのです.看護職を副院長にした理由は,ただ単に医師の指示の下に働くというかたちではなくて,副院長として経営面に参画したほうが,病院のためになると判断したからです.特にベッドの回転率の向上には,能力を発揮してくれるだろうと思いました.

新連載 医療安全管理の実践・1

医療の安全管理―新しい考え方(1)

著者: 長谷川敏彦

ページ範囲:P.402 - P.406

 このたった数年間に,日本の医療の質安全性をめぐる状況は大きく変化している.もはや今日,医療事故の予防は日本の医療界にとって最も重要な課題の一つになっている.事故を防ぐことは,すべての医療機関にとってこれまでも重要な課題であった.しかし1999年1月の某教育病院におけるあり得べからざる事故をきっかけに,事故の予防が国民的な関心事項となり,これまで積極的に取り組んでこなかった政府を含めて,全国民的な活動が始まっている.「治療を受けに来て逆に病気になるかもしれない」という患者の医療に対する不信感に医療界がどう応えていくかが問われている.

 日本ではその後数年で,医療事故の課題に対し,急速な進展を見た.しかし実は,医療事故予防に関する取り組みは日本に限ったものではない.ちょうどここ数年間に,米英豪国では日本と同様に医療事故が相次ぎ,医療の質の実態が明らかになるにつれ,同様の世論の喚起を見,政府自らが総合的な予防戦略を策定するに至っている1~7).国際的に見て日本は第4番目に総合戦略を策定した国であり,カナダやシンガポールがそれに続いて近日策定予定となっている(表1).

医療機関のマーケティング戦略─産科の受療行動からみえるもの・1

広告規制緩和を活かした医療機関の新たなマーケティングの方向性

著者: 碇朋子

ページ範囲:P.407 - P.411

厳しさが増す医療機関経営への光明―広告規制緩和

 「経済特区」において営利企業による医療機関経営を可としようという提案がなされるほど,現在,国内の医療機関経営をめぐる環境は,激動の中に置かれている.そのような提案の早々の実現には疑問符がつくものの,遅かれ早かれ医療機関も,現在大学をはじめとした教育諸機関が巻き込まれているのと同様な状況,すなわち,もはや国や行政によって特別に「守られる」ことのない状況に追い込まれる日がやってくる可能性は皆無ではない.また近年,いわゆる「医療ミス」が社会問題化するケースが急激に増加する中,患者が自らの身体を託す医療機関を選択する際のその選択眼も,急速に厳しさを増しているように思われる.

 このように昨今,医療機関経営にとっての環境の不確実性が増大する状況ではあるが,一つの光明も見えてきている.2001,2002年に実施された,いわゆる医療機関の広告規制緩和である.医療機関が広告・広報において患者に提供する情報の内容は,上記のように,予測される今後の医療機関経営の競争激化という観点からも,また患者からの医療情報公開への強い要望という観点からも,今後,各医療機関経営にとって,重要なマーケティング上の差別化の一手段となってくることは間違いない.

連載 病院管理フォーラム 事務長の病院マネジメントの課題 急性期病院の立場から・14

地域の中核病院を目指してのたたかい

著者: 伊藤良則

ページ範囲:P.413 - P.415

医療法人橘会東住吉森本病院の概要(表1)と沿革

 当院は,昭和46年大阪市南部に外科系の病院として開設された.その後他の民間病院と同様に規模拡大策を採り,54床から220床,そして382床となった.全病床の6割は内科が占めている.現在に至る経過の中で,大きな病院事業としては,昭和57年の「QC(quality control)サークル活動の導入」があり,組織の活性化と職場の管理改善を図った.昭和60年には「人事考課制度」を導入し,職員の公正な評価と人材育成を目指した.平成2年に「完全週休2日制」を実施し,職員の処遇改善とよい人材確保を狙った.

 その後平成5年に「365日年中無休診療体制」を実施して地域医療に貢献した.さらに同年,いち早く医薬分業を果たし,薬価差益に依存しない経営体質の改革を図った.平成9年の末に「病院機能評価」を受審した.その後再審査の結果,平成11年に念願の認定書を授与された.同年にはコンピュータ2000年問題があり,新システムの導入とドクター入力が実現した.

 これらの事業も一通りの役目を果たしてきて,今まさに新たな変革期に入ろうとしている.

看護管理=病院のDON・29

院内物流

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.416 - P.417

満点がない院内物流

 一度決めたルールでも,状況が変わるとルールと現状がマッチしなくなり,ルールを変更するか,無理は承知でルールに従わせるかといったことが,よく起きる.物品管理に関する院内のシステムは,この典型のように思う.どのような病院でも,必要に迫られて物品の院内流通,物品管理の問題でシステムが構築される.一度作られたシステムは,しばらくそのまま運用されるが,大概,なんらかの問題を含んでいる.その問題が大きくなると,再びシステムの見直しが必要とされる.つまり,一度決めた物流ルールを変更するか,それとも,変更するには多額の費用が必要なのでルールをそのままにするか,ということである.

 一昔前,どこの病院のナースステーションでも,毎年12月27日ごろになると,いつもよりさらにモノがあふれかえるのが年中行事であった.廊下やステーション内の一角には,箱でモノが山積みされる.これは年明けまで続き,なかには1月の中頃まで箱の山がそのまま置いてあったりする.原因は,年末年始に院内物流が停止するからである.

事例による医療監視・指導─院内感染・医療事故予防対策・2

診断の遅れによる結核の院内感染事例

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.418 - P.419

 今年はもう過ぎてしまいましたが,3月24日は「世界結核デー」です.1882年3月24日にベルリンで開かれたドイツ生理学会において,細菌学者のローベルト・コッホ博士が,結核症の原因と考えられる桿菌について発表しました.この菌が後に「結核菌」と呼ばれることになります.このことを記念してWHO(世界保健機関)は3月24日を世界結核デーとしました.毎年,全国で世界結核デーを記念した講演会が開催されています.今年は東京で記念シンポジウムが開催された他,仙台で結核予防全国大会が開かれました.

 結核はかつては国民病と言われたほどに蔓延しており,1950年代には治療を必要とする結核患者が約300万人という調査結果もありましたが,その後結核検診やBCGの普及,抗結核薬による治療法の進歩などにより,1970年代後半までは順調に減少していきました.その結果,社会全体においても,あるいは医療関係者の間でも結核に対する関心は急速に低下しました.しかし,コッホの発見した結核菌の性質が変わったわけではなく,関心の低下とともに1980年代からはわが国の結核患者の減少は鈍化し,最近はほとんど横ばい状態と言えます.

病院ボランティア・レポート─ボストン,ロンドン,そして日本・2

私たちの活動を支えるもの

著者: 安達正時

ページ範囲:P.420 - P.422

学生ボランティア「SMILE」の活動について

 今回は,学生ボランティアグループ「SMILE」の活動について少し紹介させていただきたいと思います.SMILEは,患者さんやそのご家族の方,市民の方の提案をもとに佐賀医科大学医学部附属病院でイベントなどの企画立案,ならびに運営を行っています.患者さん1人のアイディアでも,実現に向けてまっしぐらに企画を立てます.これらはすべて,病院職員の皆様のご協力で実現してきました.

はじまったきっかけ

 このような活動を始めたきっかけは,患者さん対象に行った聞き取り調査で多く聞かれた「退屈している」という声でした.そして,そんな中から出たアイディアがイベントを企画するということでした.最初は,有志の学生数名で小児科病棟のイベントなどをしていましたが,2000年に「佐賀にわか in 佐賀医大病院」というイベントを企画したことがきっかけで,正式にグループとして活動することになりました.その際,佐賀医科大学医学部附属病院の宮崎澄雄院長,吉原久美子看護部長,内科学の藤本一眞教授に顧問になっていただき,ご指導をお願いしました.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第103回

民間中小病院 2 題

著者: 佐々野尚文 ,   安井雅裕

ページ範囲:P.423 - P.427

天心堂へつぎ病院

株式会社木石舎 佐々野 尚文

コンセプトは「病院らしくない病院」

 「これまでの日本の病院は,患者の収容所でしかない」とまで言い切る,特定医療法人天心堂 松本文六理事長は,「日本の医療の流れを変える」という目標のもと,新病院の建設に際し,その具体化を広くコンペに求めた.

 新病院建築に当たって,旧病院を外来センターに変換し,新病院を入院機能のみに特化することで,外来機能と入院機能を分離するといった構想の具体化である.

 要求するコンセプトは,ずばり「病院らしくない病院」.サブコンセプトは,①癒しの環境,②自然にやさしい人にやさしい環境,③医療(時代)の変化に対応できる環境,④地域に開かれた病院(文化の発信基地として)という4点であった.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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