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雑誌目次

雑誌文献

病院63巻10号

2004年10月発行

雑誌目次

特集 検証 平成16年度診療報酬改定

巻頭言

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.805 - P.805

 日本の診療報酬改定は,過去40 年にもわたり2 年に一回改定されてきた.この間,点数表は分厚くなる一方で,内容も複雑化されていった.この点数表をすべて理解している人間は,医事課職員の中にもめったにお目にかかれないほどである.そして点数改定の内容は各医療関係者の力関係で決まる場合が多かった.

 ところが,平成15 年3 月に「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針について」(厚生労働省保険局)が発表され閣議決定された.そこに書かれている診療報酬体系の基本的な考え方として,

・医療技術の適切な評価

・医療機関のコスト等の適切な反映

・患者の視点の重視

 等が挙げられ,運営や施設に関するコスト等を調査・分析すること,疾病の特性・重症度・看護の必要度等を反映・評価すること,が明記された.また,基本方針に沿った形で,中央社会保険医療協議会・基本問題小委員会の下部組織として,診療報酬調査専門組織が構成された.

「診療報酬体系に関する基本方針」と平成16年度改定

著者: 中村健二

ページ範囲:P.806 - P.812

■診療報酬体系に関する基本方針

 医療を取り巻く環境をみると急速な少子高齢化,低迷する経済状況,医療技術の進歩,国民意識の変化など医療制度を構成するすべてのシステムの大きな転換が求められている.

 医療保険を将来にわたり揺るぎないものとしていくために,医療制度改革が進められ,平成14年の健康保険法改正の際に,その附則第二条として,「保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系のあり方」および「新しい高齢者医療制度の創設」と併せて「診療報酬体系の見直し」について,基本方針を策定することとされた.それを受け,平成15年3月28日に,「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」が閣議決定された.

診療報酬調査専門組織のねらいと今後の展開

著者: 堀裕行

ページ範囲:P.813 - P.816

 平成15年3月28日,「健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針(医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針について)」(以下,「基本方針」という)が閣議決定され,その中で診療報酬の体系の見直しについて基本方針が示された.

 具体的には,医療技術の適正な評価,医療機関のコスト等の適切な反映,疾病の特性等に応じた評価等について方向性が示され(表1),この基本方針に基づいて,診療報酬体系の見直しについて中央社会保険医療協議会(以下,中医協)で議論が行われていくこととなった.

【座談会】平成16年度診療報酬改定の影響

著者: 古城資久 ,   白井義隆 ,   西本育夫 ,   猪口雄二

ページ範囲:P.841 - P.847

 前回の大幅マイナス改定に比べて,比較的小規模な改定であった平成16年度診療報酬改定.診療報酬本体は±ゼロ改定,薬価等を含めた全体としては-1%の改定とされたが,果たして現場では影響はどう出ているのか?

 本座談会では,新設のハイケアユニット・亜急性期入院医療算定,拡大された DPC 試行等の影響や運営状況等を含めて,改定の影響について本音を語っていただいた.

改定をどう受け止めたか

日本医療法人協会

著者: 日野頌三

ページ範囲:P.817 - P.819

 日本医療法人協会は病院経営者の集まりである.そこで,本稿においては「経営者としてどう受け止めたか」,すなわち,「今回の改定をどのように収益向上に役立てればよいか」をテーマに,箇所によってはこれからの改定への意見にまで踏み込んでみたい.

 今回の改定はドラスティックなものではなかったので,改定後2か月以上経過した今,少数の病院が「DPC (Diagnosis Procedure Combination)を採用してみたい」という声を出している以外,大きな動きは見られない.

日本病院会

著者: 池澤康郎

ページ範囲:P.820 - P.823

■平成14年からマイナス改定に移行

 まず平成14年4月の改定について述べよう.この時初めて,診療報酬の本体が1.3%引き下げられた.高度の技術を要する手術は前年度の件数実績と施設基準次第で手術点数が70%の減額になることもあるという方式はこの時からである.薬価改定等の1.4%と加えて,2.7%の引き下げとなった.

 次に平成14年10月に高齢患者の窓口負担が原則1割(高額所得者は2割)となり,窓口負担限度額も低所得者を除き,見直しとなった.他にもいろいろとあるが割愛する.そして平成15年度には特定機能病院でのDPC(Diagnosis Procedure Combination)実施が決められ,7月から全面実施となった.そして平成16年度を迎える.

日本精神科病院協会

著者: 平川淳一

ページ範囲:P.824 - P.827

 精神科は,平成11年度の精神保健福祉法の改正によって,精神保健指定医業務の大幅な増加や,精神保健福祉士の国家資格化がなされたが,過去2回の診療報酬改定においては,全く評価されないまま5年間が経過した.そのような中で,今回の改定では精神科医療が重点課題の1つとなり,大きな期待をしたところであった.しかし結果は,指定医業務や退院促進のための新規項目が加わったが,ゼロ改定の中,実際の運営コストを賄うだけの正当な評価には至らなかった.ここにその要旨を示し,当院の影響を加えて報告する.

全日本病院協会

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.828 - P.830

 前回,平成14年の診療報酬改定は史上最悪の改定であった.全体として2.7%下がり,薬剤投与期間の撤廃,高齢者自己負担増,外来総合診療料の廃止,健康保険本人の自己負担増と,矢継ぎ早に繰り出すジャブやパンチが医療機関を痛めつけ続けた.また,わが国の経済不況はこれを増強し,結果として単に診療報酬引き下げだけではなく,受診抑制そして外来患者の激減という現状が訪れたのである.

 平成15年の医療経済実態調査1) や全日病病院経営調査2) 等の結果では,民間病院の経営状態は明らかに悪化しており,今後のこれらの調査結果がどのように変化するか注目しなければならない.

新ユニットの有効性

ハイケアユニットの施設認可と効果

著者: 宮城敏夫

ページ範囲:P.831 - P.834

■当院の概要と機能

 はじめに浦添総合病院の現在の機能を簡単に述べる.表1は浦添総合病院の概要である.当院は地域医療支援病院として機能することを平成10年12月に機関決定した.当時は紹介率9%弱であったため,まずは一般病院紹介率30%を目指した.平成12年6月には紹介率が30%に達したため急性期病院加算の承認を得た.

 引き続き地域医療支援病院紹介率(80%以上)を目指して(紹介率の算式は表2),機能連携を推し進めるために再来患者さんを積極的に逆紹介し,初診で来られた患者さんにはかかりつけ医を紹介した.病院での診療はかかりつけ医が必要と判断した時に来られるように理解と指導をし,さらに終日救急をしてきたことも算式の分母を小さくし,分子が大きくなる結果となり,有利に働くこととなった.また,1日平均外来患者数1,100人を入院病床数の1.5倍とする急性期特定入院加算にも挑戦,積極的な逆紹介を行った結果,現在の1日平均外来患者数は350人となっている.

亜急性期ユニットの取り組みと今後の課題

著者: 島田永和

ページ範囲:P.835 - P.839

 本年4月の診療報酬改定は地味な内容のものであった.しかしその一方で,次回平成18年度の改定においては,診療報酬の中身にとどまらず,医療提供体制と介護保険の制度改革とが同時期に一体的に実施されると予想されており,その前触れとして注目を集めた.

 当院は,その中で新設された「亜急性期ユニット」に取り組んだ.決断に至る背景などの経緯と現在までの実績をまとめ,若干の考察を述べる.

グラフ

樹木とともに成長する病院でありたい―ホスピタル・パークのある病院―独立行政法人 労働者健康福祉機構 関西労災病院

ページ範囲:P.793 - P.798

 関西労災病院は,兵庫県尼崎市の西北部,六甲山を仰ぐ武庫川沿いに位置する.JR立花駅,阪急武庫之荘駅から車で約10分の距離である.

 同院は昭和28年1月に開設され,今年で開院50周年を迎えた.今年4月に母体,労働福祉事業団が独立行政法人化して労働者健康福祉機構へと移行.また,平成3年に開始した増改築工事が,本年3月のホスピタル・パーク完成により終了.新たなる50年に向けて再スタートの年となった.

連載 病院管理フォーラム 薬剤経済評価・4

薬剤経済学の臨床への応用②―ヘパリンロック用ヘパリン生食液の薬剤経済評価

著者: 井上忠夫

ページ範囲:P.848 - P.850

 ヘパリンロックは,高カロリー輸液や末梢輸液の間歇投与時に,血管に留置された針およびカテーテル内の血液凝固を防止する手技で,現在の医療に欠かせないものとなっている.

 具体的には,ヘパリンナトリウム注射液を生理食塩液で希釈調製したもの(以下,ヘパリン生食液)をシリンジで留置針およびカテーテル内に注入し,内部をヘパリン生食液で満たす操作である.この操作により,留置針およびカテーテル内に残った薬剤が血管に流し込まれ,ヘパリン生食液が満たされるため,留置針およびカテーテル内の血液凝固が防止され,次回の輸液ルート確保が可能となり,患者の QOL(Quality of Life) 向上につながる.

事務長の病院マネジメントの課題 急性期病院の立場から・31

病院マネジメントのスタンダードを求めて(3)―マネジメント手法の確立

著者: 山本展夫

ページ範囲:P.851 - P.853

 病院マネジメントを考えるに際し,まずは自院の組織でマネジメントが可能か否かを,見直し・整備しておきたい.そして,整備された組織で,戦略および Vision・Mission を練り上げることが,次のステップになる.本稿では,前回までにここまでのステップを具体的に紹介してきた.最後に残された課題は,これらのステップを経て策定した,戦略および Vision・Mission を実現させる仕掛けをどう作るか,すなわち病院マネジメント手法の構築である.

●マネジメント手法の基本

 一般企業をベースにしたマネジメント手法には,実に様々なものがある.トップダウン型かボトムアップ型から始まり,目標管理やナレッジマネジメント,また最近ではシックスシグマやバランスト・スコアカードがトピックとなっている.そして,これら様々なマネジメント手法の優劣や評価は,時代や人々の意識の変化に伴い,常に変化している.

病院ファイナンスの現状・2

銀行の病院審査の変遷

著者: 福永肇

ページ範囲:P.857 - P.859

●フォローの風が吹き続けた平成の15年間

1.設備投資案件が出てきた病院

 平成時代に入ってバブル経済が崩壊し,わが国の経済は調整を余儀なくされてきました.民間金融機関(以下「民間銀行」または「銀行」と表記)の融資残高で不良債権に分類される貸付債権が増加し,現在まで銀行は不良債権処理に終始しています.

 しかし一方で,このような経済状況・景気から独立して,民間病院では厚生政策の要請もあり設備投資案件が出てきました.設備投資案件とは具体的には消費税を財源としたゴールドプラン(平成2年度,平成7年度からは新ゴールドプラン)などによる老人保健施設(老健),特別養護老人ホーム(特養),療養型病床群などの建設・整備です.平成12年には介護保険制度開始とゴールドプラン21によっても介護サービス施設の設備需要が発生しました.加えて平成12年4月の第4次医療法改正による「その他病床」の「一般病床」または「療養病床」への病床区分届出も病院にとっては大きな設備投資案件となっていきました.

回復期リハビリテーション病棟便り・4

回復期リハビリテーション再考(上)

著者: 大仲功一

ページ範囲:P.860 - P.882

■回復期の前期と後期

 回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟へ入院してくるのは,脳血管障害,脊髄損傷,大腿骨骨折などの発症や受傷から3か月以内の患者である.発症・受傷から1~3か月というこの時期は,まだ原疾患や合併症の病状が安定しないことが多く,障害像の変化も大きい.このような時期を筆者は「回復期前期」と呼んでいる(図1) 1)

 その時期を過ぎてやがて病状が落ち着いてくると,医療的な処置が減り,機能的な回復も一定の軌道に乗ってくる.障害像も明確になり,回復予測やゴール設定はより具体的になる.このような時期には ADL の拡大はもちろんのこと,生活や人生の再構築(職業復帰や社会的役割の再獲得など)に向けての包括的な支援も非常に重要になる.維持期への橋渡しともいえるこの時期を筆者は「回復期後期」と呼んでいる1)

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第120回

昭和大学横浜市北部病院

著者: 上野洋一 ,   岡田世郎 ,   國廣禎男 ,   吉田一博

ページ範囲:P.864 - P.869

 昭和大学横浜市北部病院は平成13年4月に開設以来,4年目を迎えている.病院が立地する港北ニュータウンの開発の進行により,周辺環境がめまぐるしく変貌する中での3年間であった.その過程で平成15年10月にこどもセンターの増築・改修を行い,平成16年6月には人間ドックをリニューアルオープンするなど,新しいニーズへの対応を積極的に行ってきている.

 設計当初より建設期間を通じての5年間,大学・行政・設計者の間で,この病院のあり方から様々なシステムが議論の対象となった.この項では,運営側からみて当病院で特に配慮されていること,またその後の経過について述べてみたい.

リレーエッセイ 事務長の所感・9

医療経営にラグビーの精神を

著者: 正木義博

ページ範囲:P.871 - P.871

 偶然ではあるが,私は2種類の異なった精神的構造を得て医療界に入った.一つは学生時代に培ったラグビースピリット,もう一つは前職での営業マンとしての顧客対応スキルである.

 営業マンは物を売ることが使命であるが,デパートの売り子のような簡単な仕事ではないし,単に売り上げだけが業績評価指標ではない.相手も必死な思いで交渉に望んでくる.こちらも押したり,引いたり,時には全く関係のない話を持ち出したしながらお互いの合致点を見つけだすのである.時には会社対会社の関係で大量に契約できることもあるが,何年通っても全く契約できないケースもあり,肝腎かなめなことは交渉相手との人間関係である.この人間関係構築に失敗すると仕事は決してうまくいかない.相手は今何を考えているか,何を望んでいるか,何をして欲しいと思っているのか,心を読まなければならないのである.すべて相手のペースにはまってしまってもいけないし,こちらの考えだけを相手に押しつけても決してうまくいかない.理解力,説得力など意外といろいろなスキルが必要である.

短期連載 特定医療法人・承認審査の事例・3(最終回)

セカンドオピニオンの必要性―特定医療法人薫会(栃木県)の承認事例をふまえて

著者: 長英一郎

ページ範囲:P.854 - P.856

 医療法人薫会は平成16年3月に特定医療法人の承認を受けた.同法人に特定医療法人化の動機,承認審査で問題とされた事項等について伺った.一問一答を踏まえたうえで,取り消しによる課税とセカンドオピニオンの必要性について検討してみたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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