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雑誌目次

雑誌文献

病院63巻8号

2004年08月発行

雑誌目次

特集 急性期入院はDPC適用になるのか

巻頭言

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.637 - P.637

 2002 年診療報酬改定で決定した特定機能病院へのDPC(Diagnosis Procedure Combination)適用は,2003 年7 月から本格的に稼働し始めた.そして2004 年診療報酬改定において最後に議論されたのがDPC の拡大である.結論としては十分な検証を行うことを前提に拡大方向となった.その結果を受けて,2004 年4 月から7 月にかけて新たに62 病院に拡大されることとなった.対象は昨年7 月から10 月のDPC 調査に協力した92 医療機関のうちの62 病院である.

 一方,中医協(中央社会保険医療協議会)の下に設置された診療報酬専門組織にはDPC 分科会が設けられ,検証を行っていくことになる.また,コストに関することもDPC 分科会やコスト分科会で議論されることになるであろう.

DPC開発の経緯と各国の比較,今後の診断群分類の展望

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.638 - P.642

 人口構造および疾病構造の変化と医療技術の進歩,そして国民の医療に対する要求水準の高まりによって増大し続ける医療費をいかに適正化するかは,先進国共通の課題である.しかしながら,支払い者,患者,サービス提供者間の種々の利害が複雑に関連する医療の領域において,万人の合意を得られるような改革を行うことは難しい.このような状況下で,関係者間で納得のいく合意形成がなされるためには,その根拠となる情報が不可欠である.そして,議論の焦点が医療の財政と質の両方にまたがる以上,そのような情報は経済的側面と医療技術的側面の二つを反映するものでなければならない.

 アメリカで開発された診断群分類DRG(Diagnosis Related Group)は本来この情報標準化のためのツールであり,当初から支払いを目的として開発されたものではない.また,DRGの基本は診断名と行われた医療行為の組み合わせによって患者を分類していくことであるが,これはわが国独自の診断群分類であるDPC(Diagnosis Procedure Combination)においても同様であり,両者の考え方に基本的な差はない.

DPC開始に当たっての経過と今後の拡大について

著者: 中村健二

ページ範囲:P.643 - P.647

 医療を取り巻く環境をみると,急速な少子高齢化,低迷する経済状況,医療技術の進歩,国民の意識の変化が,大きな動きとしてある.この変化に対応するためには,医療制度を構成する全てのシステムの転換が求められており,医療提供体制の改革,診療報酬体系の改革,医療保険制度の改革が必要となっている.

 わが国の医療制度の課題については,医療提供体制をみると,病床数が多いこと,医療従事者が少ないこと,平均在院日数が長いこと,機能分化が進んでいないことから効率化,重点化の不足が指摘されている.また,医療情報について比較可能で客観的な情報が不足しているため,競争が働きにくい医療提供体制と指摘されている.さらに,医療安全,小児救急などの救急医療の確保など安心できる医療の確保や,IT化,標準化,医業経営の近代化など,情報基盤などの近代化が課題となっている.

患者別・診断群分類別の原価計算と医療経営

著者: 今中雄一

ページ範囲:P.648 - P.652

■医療の制度改革と原価計算

 医療の質と安全に対する要求は強まり一層のコスト高を強いられる一方で,医療費の抑制政策はますます厳しく,医療経営の難しい制度,環境となってきている.経営システムと医療の質の保証と効率化が求められている現在,医療の原価の把握は,国レベルの政策のうえでも,医療機関レベルの経営のうえでも,極めて重要となってきた.診断群分類ごとの包括評価,包括的な支払制度はその流れに拍車をかけることになる.

 ところが,医療費といった場合に,医療の現場ではその「医療費」が,「診療報酬」を指すのか,医療のために消費された資源を貨幣価値に換算した「原価」を指すのか,不明確な位置付けで使われがちな実態があった.病院で,診療報酬のことを指してコストと呼ぶ場合も散見される.経済学あるいは会計学上は,医療機関にとって,「診療報酬=請求額(Charge, Fee)=収入(収益, Revenue)」と,「原価=コスト(Cost)=支出」とは,全く異なるものである.

診療情報管理からみたDPC

著者: 阿南誠

ページ範囲:P.653 - P.657

■なぜ DPC 導入なのか

 昨年,平成15年4月1日から,特定機能病院等を対象に「特定機能病院等の急性期入院の包括評価(以下,DPC)」方式による,診断群別の一日定額支払い制度が導入された.この事実が,わが国の保険制度に一石を投じたことに異論はなかろう.しかし,後述するようにそれ以前にも包括支払い制度のはしりともいうべきいくつかの試みが実施されていたことはあまり大きな話題にはならなかったものの,現在の DPC 導入の基礎を作ったという意味で忘れてはならない事実である.

 まず,特定機能病院の導入に遡ること4年半前,平成10年11月から,国立医療機関等(国立8施設,社会保険2施設)で,「急性期入院医療の定額支払い方式」〔DPC と区別するために DRG(/PPS)としておく〕 の「試行」が開始された.この試行が開始されるに当たり,診断群分類の開発や診療報酬の額の決定を行うための「基礎調査」をはじめとして制度の大枠が確立した.

【資料】DPC導入の影響評価に係る基礎調査提出データ―厚生労働省保険局医療課資料より作成(平成16年7月5日時点)

ページ範囲:P.674 - P.679

 DPC 導入の影響評価に係る調査の全体像を図に示す.現在,平成16年7~10月までの退院患者に係る調査が行われているが,本調査で提出するデータはどのようなものなのか――厚生労働省保険局医療課の資料より,提出データの概要をまとめた.

 本調査結果を基に,診療報酬調査専門組織 DPC 評価分科会において,11月より評価が行われる予定となっている.

 なお,本調査のほか,DPC 導入の影響評価を適切に行う観点から,医療機関の機能評価のための調査,患者満足度に関する調査の実施を検討中である.

DPCへの対応の実際

鹿児島大学病院の事例―コストコントロールを支援するシステムの開発

著者: 宇都由美子 ,   熊本一朗

ページ範囲:P.658 - P.661

 2003年度より全国82特定機能病院に,診断群分類による包括評価(DPC : Diagnosis Procedure Combination) 制度が導入された.DPC は一定のばらつきを許容しつつ,できるだけ医療資源の投入パターンが均一な診断群分類に患者を振り分けることで,病院間ならびに病院内での診療内容の比較評価を可能とする標準化の一手法である1).鹿児島大学病院においては,病院職員の急速かつ大胆な意識改革を行い,院内における体制確保,さらに院内 IT 化の充実,推進により,制度開始の2003年4月から対応することができた.

 DPC は医療の標準化と効率化を目指す管理ツールとして有用であるが,一方で制度開始後間もないため,1年ごとに見直しが行われ,その都度大幅な改定が予測されている.また,日額包括払いという特定の支払い方式と結びついたことで,1日当たりの収入の上限が決められるようになったため,コストコントロールが極めて重要な課題となった.このコストコントロールの実現については,2004年度から移行した国立大学法人化に伴う財務会計の導入でさらに重要性が増した.すなわち,地域医療の中核をなす大学病院においては,これまで以上に地域に密着しながら大学病院としてのミッションを果たすと同時に,管理会計の導入による経営の健全化に努める必然性が高まった.

東海大学医学部付属病院の事例

著者: 堺秀人

ページ範囲:P.662 - P.664

 DPC(Diagnosis Procedure Combination) 制度が導入されてから1年が経過したが,新しい状況へ対応するために当院では様々な工夫を重ねてきた.ここではそれらの工夫とその成果を示し,患者さんからの評価と今後の課題について記す.

■病院における対応

 1.医師は診療に専念させる

 当院の基本方針として,医師は診療に専念させ,事務的作業は可能な限り事務部門が支援することとした.DPC に関連して医師が行うものは,入院指示票に「最も治療を必要とする疾患名およびその他の疾患名」と入院経路・目的・重症度などを記入することと,入院後に診断名が変化した場合の届出,および退院時できるだけ速やかに退院サマリーを提出することである.これらの作業を支援するために,DPC14桁コードのツリー図と日数別点数表,主病名・副傷病名・手術・処置等関連項目が同一頁で一覧できる表を病棟で印刷可能とし,医師は該当するボックスにチェックをするだけで良いようにした.

DPC対象病院の拡大

DRG/PPSからDPCへ―国立病院の立場から

著者: 鈴木一郎

ページ範囲:P.665 - P.667

 日本の医療の現実を分析するために,共通の尺度が必要である.その尺度として診断群分類という概念が導入された.診断群分類は疾患名とそれに対する診療行為(手術,処置),重症度などにより決定される.日本版診断群分類は第1版が平成10年に決定され,183分類であった.第2版は平成13年に改定され532分類(包括払い対象は267分類)であり,平成15年の第3版では診断群分類575疾患,2,552分類(包括払い対象は1,860分類)である.傷病名に1版では国際疾病分類 ICD-9を用い2版以降は ICD-10が用いられている.第3版の診断群分類を DPC (Diagnosis Procedure Combination) と称する.現在この DPC を用いた急性期入院医療の定額払い方式が大学病院など特定機能病院を中心に導入され,さらに平成16年から一般の病院にも拡大された.

 国立病院である当院は,当初より日本版診断群分類を用いた急性期入院医療の定額払い
(DRG/PPS: Diagnosis Related Groups / Prospective Payment System) の試行病院として新たな制度改革のための基礎資料を提供してきた.そして引き続き平成16年7月から DPC の試行施設になった.本稿では DRG/PPS の試行の影響と,DPC へと移っていった流れ,今後の行方について述べたい.

中小規模民間病院の立場から

著者: 徳田禎久

ページ範囲:P.668 - P.670

 筆者は,全日本病院協会(全日病)において「病院のあり方委員会」委員長を5年間務め,委員会活動の中で今後の診療報酬のあり方について提言し,入院診療に対する包括払い方式についても考えてきた.本稿では,この立場と,中小病院を運営する一人としての立場とを合わせて,今回のDPC (Diagnosis Procedure Combination) 対象施設の拡大に対して考察する.

■全日病の診療報酬体系に関する考え方とこれまでの活動

 全日病は民間病院がほとんどを占める病院団体で,200床未満の中小病院が約8割を占めている.地域に密着した医療を展開しているこれらの施設の存在を常に念頭において種々の活動をしてきている.

DPCへの取り組みと期待:大規模民間病院として―フィードフォアワードの視点から

著者: 西村昭男

ページ範囲:P.671 - P.673

 わが国の医療費支払いに関する制度改革として2003年4月から特定機能病院など82施設を対象に独自のケースミックス診断群分類である DPC (Diagnosis Procedure Combination) を用いた急性期入院医療の包括支払いが開始された.この DRG (1968年), DRG/PPS (Diagnosis Related Group/ Prospective Payment System)(1983年)の源流から DPC の開発・適用に至る経緯については詳述する立場ではないが,多岐にわたって興味深く,画期的な展開であった.その一面は行政官僚と大学研究者とが一致協力して新制度の導入に尽力したことである.語弊を恐れず端的に表現すれば,同床異夢でそれぞれの目標に相互で協力した成果と言うことができる.すなわち,医療行政当局としては,医療保険制度や診療報酬制度の抜本改革への基本戦略が現政権で既に閣議決定されていることから2006年までに関係法の改正を含めた諸施策を固めていくべき重要な達成目標が目前に迫っている.

 一方,医療経営や医療情報にかかわる新進気鋭の研究者の永年にわたる悩みの一つは,いくら多量の診療情報を現場から収集したとしても,その個別情報のラベルに相当する疾病分類が標準化されていなければ,有意義な解析や施設間ベンチマーキングが一歩も前に進まないという現実であった.

グラフ

病院を中心とした医療文化圏の創設に向けて―北原脳神経外科病院 北原リハビリテーション病院

ページ範囲:P.625 - P.630

 東京都八王子市にある北原脳神経外科病院は,1995年に脳神経外科専門病院として設立.周辺は約100万の人口を持つベッドタウンの中心に位置する.2004年6月には,医療サービス設計および提供においてISO9001:2000認証を取得した.関連施設には脳ドック「北原RDクリニック」とリハビリテーション専門の「北原リハビリテーション病院」, デイケアセンター「オリーブ」がある.

 病院の理念に基づいて,予防・検査に始まり,救急医療からリハ,在宅まで一人の患者をトータルに一貫してケアすることができる仕組みを作り上げている.

ケースレポート

現在の医療規制を乗り越えた医療と介護のビジネスモデル―ホスピス・ナーシングホーム“クリーム”の取り組み

著者: 西山美香 ,   作田裕美 ,   松本晴美 ,   土井龍一 ,   重松靖久 ,   森脇睦子 ,   村上正哲 ,   野間文次郎 ,   森山美知子 ,   梯正之

ページ範囲:P.680 - P.683

 2001年に,国民のための「規制改革推進3か年計画」が発表され,その規制改革が進み,さらに第四次医療法改正に伴う病床区分の見直しと病床分類の申請から病院の淘汰が加速すると予測される.また「2015年の高齢者介護」には,高齢者介護の現状と尊厳を支えるケアの確立への方策が示され,小規模・多機能サービス拠点による切れ目のない在宅サービスの提供,選択肢の1つである住み替え等,自宅・施設以外の多様な「住まい方」の実現が進んでいる1)

 今回紹介する「ホスピス・ナーシングホーム (2003年11月現在,商標登録申請中)」は,病院の全病床を返還後クリニックに転換し,病棟部分を増改築して開設した「終末期および高齢者賃貸住宅」である.「この住宅が,利用者の 〔新しい住まい〕 である」という考えに基づき,同建物内の医療機関等と提携協力し,非常に近距離の在宅サービスを提供するしくみをとる.これは医療法の規制を乗り越え,自由な発想から生まれた「医療と介護の仕組み」と言える.この新しい取り組みを以下に紹介する.

レポート

手術室関連医療事故防止のためのシステムアプローチへの取り組み・3(最終回)―FMEA 手法活用の考察

著者: 太田祐子 ,   佐藤紀子 ,   眞嶋朋子

ページ範囲:P.684 - P.687

 前号までで報告したように,われわれは手術室関連医療事故防止のための取り組みを行ってきた.その内容は,製造業を中心に広く用いられてきた FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:失敗モード影響解析手法)1) による手術工程の流れに即した各失敗ケアの相対的定量評価である.解析モデルは,該当施設での手術工程を想定した胃切除術についてである.これを術前(手術室入室から執刀前まで)・術中・術後に分け,それぞれ分析を行ってきた.本連載は,その術前部分について具体的な報告を続けてきている.

 FMEA の結果として,術前で取り組むべき重要失敗ケア47項目を摘出することができた.本号では,これまでのプロジェクト活動による解析過程をふり返るとともに,FMEA を用いた今後の安全管理について考察する.

特別座談会

戦略的人事・労務政策への取り組み(後編)

著者: 佐合茂樹 ,   鈴木紀之 ,   中村彰吾 ,   鳴川一彦 ,   林茂

ページ範囲:P.688 - P.692

 (前号から続く)

 医療を取り巻く厳しい状況下にあって,病院事務部門を率いるリーダーの力量が大きく問われている.医療の質や患者サービスを向上し,同時に健全経営を図る.病院長を補佐し,各職種の連携を図り,職員が業務を円滑に行える体制を整える――医療を側面から支援する事務部門の果たす役割は極めて大きい.本座談会では5病院の事務長に,病院経営戦略の最も重要なテーマの一つである病院事務部門における「人事・労務戦略」についてお話しいただいた.

連載 病院管理フォーラム 薬剤経済評価・2

薬剤経済評価の原理

著者: 井上忠夫

ページ範囲:P.693 - P.695

 薬剤経済評価は,臨床現場における医療システムと社会に対して,薬物治療のコストと価値を提供するサイエンスである.薬剤経済評価が臨床の現場で使われる時,薬剤師は,結果とコストに対して,どのような選択が最適な結果を得るかを決定しなければならない.

 コストと結果を評価する前に,評価を行う立場が決定されなければならない.薬剤経済評価において可能性のある立場とは,患者,所属部署,病院,政府,第三者である支払機関,または社会に対しての立場である.例えば,病院側の立場から見た抗がん剤の価値は,患者側の立場から見るこの薬剤の価値とは大きく異なることがあり得る.なぜなら,病院側の立場から見た価値は奏効率や生存率当たりに要した金額の値で表現されるかもしれないが,患者にとっては生活の質,すなわち快適度で評価した余命の年数に対して支払う金額の値によって表現される.

事務長の病院マネジメントの課題 急性期病院の立場から・29

病院マネジメントのスタンダードを求めて(1)―組織の整備

著者: 山本展夫

ページ範囲:P.696 - P.697

 1996年に業務部長という聞き慣れない現職に就いてから,8年が過ぎた.これから3回にわたり本稿を担当するにあたり,職名からは理解し難い職務は後に紹介するとして,まずは当院のことを説明しておこう.

 北摂総合病院は,大阪府北東部,人口77万人の三島二次医療圏に位置する,標榜診療科目13,看護2:1,平均在院日数13日の急性期病院である.認可病床数は217床で,何とか200床以上の区分に入れていただいている.ただし,実のところ稼働病床は180床程度しかない.これは,築後30年を超えた建物を,できる範囲で患者のアメニティへ配慮してきた結果だが,早くから許可病床を取り下げ200床以下になっていれば,診療報酬上でのメリットは多大であった.幾度か院内で議論したものの,将来を見据え,あえて200床以上のいばらの道を歩んできた.それも,ケアミックスなどには振り向きもせず,当初から急性期一筋である.さらに,近隣を見渡せば,ほんの3~4kmの距離に特定機能病院や日赤,済生会など,当院の規模をはるかに超える大規模病院群をはじめ,その他多数の病院や診療所が乱立する都市部特有の競合下にある.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第118回

特別養護老人ホーム2題

著者: 大井幸次 ,   永野一生

ページ範囲:P.700 - P.707

 「せんねん村」は,2001年春に愛知県西尾市にオープンした特別養護老人ホーム(以下特養)(80名)・ショートステイ(30名)・デイサービス(30名)・ケアハウス(15名)からなる複合型の高齢者施設である.「せんねん村」の設計コンセプトは,住みたくなる,利用したくなる環境・ケアづくり.ユーザーの立場で考えようという単純明快なものであるが,管理・機能面を重視する施設作りにおいては後回しにされる問題.中澤明子施設長は,あえてそこにこだわることに特養の未来を考えた.

●自分たちで決める

 建設の2年前からスタートした設計会議には,施設長他看護師・寮母・厨房・総務・OT・PT 等各スタッフが参加して進められた.建物・運営におけるメリット・デメリットを各専門家がわかりやすく説明し,みんなで意見を出し合った.このスタイルにより誰もが他分野の考え方や気持ちを理解することができた.どの問題に対しても自分の意思を表わすことができた.「せんねん村」は,一般論に流されることなく,自己決定に基づいてつくられていった.それ故他施設と異なり,偏りもあり,ちょっと個性的な楽しい場所になっている.

回復期リハビリテーション病棟便り・2

「即席のリハ医」の活躍に期待

著者: 大仲功一

ページ範囲:P.708 - P.710

 前回,全国の回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟において医師(特に専従医)が不足している状況をご紹介した.そしてリハを専門としてきた医師だけでその不足をまかなうことは当分の間は困難であり,本来は他科を専門とする医師に「即席のリハ医」あるいは「急造のリハ医」として活躍していただくしかないと述べた.「即席」とか「急造」などという言葉は,現場で不慣れな仕事に挑戦されている専従医の先生方に対していささか失礼かもしれないが,直感的に理解しやすい表現だと思い,あえて使わせていただいた.決してその先生方を見下しているわけではないのでどうかお許しいただきたい.以下,本稿では「即席」という言葉を用いることにする.

 さて,黒沢1) は,回復期リハ病棟の医師の役割として,表の11項目を挙げている.しかし,短期間でリハ科医師へ転身して即戦力となることを求められる「即席のリハ医」は,数年間にわたる研修プログラムや試験を経て認定された学会専門医やベテランのリハ医と同等の知識や能力を有してはいないだろう.始めからそれらのすべてを彼らに期待しては気の毒である.そこで今回は,他科の医師が回復期リハ病棟の「即席のリハ医」として円滑に着任し,生き生きと働いていただくために知恵を絞ってみたい.

リレーエッセイ 事務長の所感・7

事務長とは…地方の事務長会を主催して

著者: 島森万二

ページ範囲:P.711 - P.711

 筆者はこの6月1日で病院に就職をして18年目となっている.就職後2年半で事務長職につき今日に至っているが,最近想うことを書き留めてみた.

 本誌2月号 林茂氏の『子どもにわかり難い「病院事務長」という仕事』というエッセイは筆者も同感で頷かせるものであった.まず事務長という役職があるのは企業では病院・学校・各種団体くらいである.一般企業では事務長という役職はなく,役員から部長職くらいの責任と業務がそれに当たるのではないかと思う.筆者も17年前に当院に入職した時には事務長という名称が何か古臭く感じ,自分がその任務についた時に事務長職の名称を管理部長にして今までやってきた.しかし社会ではやはり「事務長」という役職のほうが「通り」が良いようで,管理部長の名刺を出しても「事務長さんはどなた様で?」という問いが返ってきたものである.

短期連載 特定医療法人・承認審査の事例・1

国税局 承認審査のポイント

著者: 長英一郎

ページ範囲:P.698 - P.699

 平成15年度の税制改正により特定医療法人制度は大幅に改正され,平成15年度は全国で20件が改正新基準による特定医療法人として承認され,特定医療法人は362件となった(平成16年3月末現在).

 改正により承認主務官庁は財務大臣から国税庁長官に移管され,実際の審査は各国税局が行うことになった.各国税局の承認審査における指摘事項と承認を得るためのポイントを東日本税理士法人関与の10件の事例からご紹介することとする.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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