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特集 勤務医と労働基準法―医療の現実と法
医師の過重労働を考える―日本医師会の立場から
著者: 三上裕司1
所属機関: 1日本医師会
ページ範囲:P.803 - P.806
文献購入ページに移動医師と労働基準法―極めてむずかしい命題である.まず,どこまでが勤務時間かとの問題がある.重症患者をかかえて待機している場合や,患者の治療方針を考えている時間も多く,勤務か否かの区別がつけにくい.
若いころの私はできるだけ長く病院にいてたくさんの患者を診たいと思った.そのほうが研修の成果が上がる.特に夜間は研修医も診療に参加できる機会が増えるので,自主的に居残りをしていた(前掲の松村理司先生流に言えば “好きで医局にいる”)こともある.
私見ではあるが,医師の勤務時間は自主性にまかせられているといってよいのではないだろうか.医師という職業は365日24時間勤務のようなものである.元来,そうした職業倫理やマインドを持った人が医師を志していると信じている.しかし,体力の限界もあることであり,医師自身が健康体でいるためにも,義務的な拘束時間は決められているべきだと思う.これは余談だが,医師は健康診断の受診率が低い.医師会として健康管理を指導する必要性を感じている.
医師はもともと裁量労働が多い職種である.一方で,アウトカム(成果)は患者あってのものであり,医師の技量とは無関係な部分もある.いわゆる成果主義とはなじまず,評価もしにくい.アウトカムの検証法が確立されていない点も,労働問題を複雑にしている.
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