患者の視点と医療機関情報―けんぽれん病院情報「ぽすぴたる!」
著者:
高橋圭一郎
ページ範囲:P.898 - P.901
健康保険組合連合会(以下,本会)では,「患者中心の医療」の実現に向けた具体的な取り組みの一つとして,会員(健保組合)のみならず,広く一般国民を対象に医療機関情報の提供を行う観点からインターネットを活用して,web site:けんぽれん病院情報「ぽすぴたる!」(http://www.kenporen-hios.com)を開設し,平成15年10月20日より公開を行っている.
事業開始から3年目を迎えた本年秋(10月下旬)には,開設以来,これまでに web 併設の「お問い合わせ窓口」 (tel :03-3403-0554/e-mail : opinion@kenporen.or.jp)に寄せられた,一般利用者をはじめ,病院関係者の意見・要望を踏まえ,情報提供のあり方や掲載内容の改善・見直しを行うとともに,急性期・慢性期等の病院(病棟)機能について理解を深めてもらうため,今年度から厚生労働省の協力を得て,全国の病院にかかわる「施設基準」の情報を加え,リニューアルを図ったところである.
本 web における情報提供の目的は,患者の視点に立脚した医療機関情報の提供を通じ,医師と患者の間に介在する情報の非対称性のギャップ縮減に努め,患者と医師間の十分な対話を通じた “インフォームド・コンセント” を期すことにある.実際にご覧いただければわかるように,本 web は,たとえば,口コミ等の主観的な判断に基づく個別病院の資質的な優劣を求める評価や病院版 “ミシュラン” といったランキング手法などの考え方に基づく仕組みにはなっていない.ここ数年来,医療の現場において「DOS」(Doctor Oriented System) =“医師中心の医療” から, 「POS」(Patient Oriented System)=“患者中心の医療” への意識転換が図られる中,患者中心,患者参加型の医療のあり方を日々模索しながら,その取り組みに努力されている医療機関も増えている.web の愛称 “ぽすぴたる!” は,「POS」と「HOSPITAL」をかけ合わせた造語として,“患者中心の医療に取り組む病院” を意味するものであり,医療機関側との協力のもと,患者中心の医療を実現させてゆきたいという願いを込めたものである.それゆえ本 web は,病院側による情報提供の協力を前提とした仕組みを基本としており,これまでに約3,000近い病院から協力を頂いている.今後も病院の協力を前提とした事業展開に変わりはなく,一つでも多くの病院から協力を得て,情報提供の充実に努めてゆきたいと考えている.
そこで本稿では,本 web を中心とした情報提供事業の趣旨・目的を理解していただくため,①情報提供の基本方針,②患者の視点と医療情報,③今後の展望(情報提供と保険者機能の強化)―の三点から若干の考察を交え,改めて本 web を紹介させていただくこととする.