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特集 病院経営のプロをどう養成するか
アメリカにおけるMBA医療経営専修
著者: 池上直己34
所属機関: 1ペンシルベニア大学ウォートン校法学研究科・医療システム研究科 2ペンシルベニア大学大学院医療経営プログラム 3慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 4ペンシルベニア大学ウォートン校医療システム研究科
ページ範囲:P.654 - P.657
文献購入ページに移動アメリカ医療の概況
アメリカの複雑な医療体系を理解するためには,過去半世紀の発達について簡単に説明する必要がある.アメリカでは,第2次世界大戦中に物価・賃金抑制策がとられ,そのため賃上げをする代わりに,企業が全額負担する民間保険を従業員に用意するようになり,それが1950年代に広く普及した.その後,1965年に連邦政府はメディケア(高齢者と障害者の連邦政府の保険),およびメディケイド(貧困者のための連邦・州政府の合同の保険)を施行し,これら二つで医療費全体の約3分の1を構成している1).したがって,連邦政府はアメリカの医療政策の要であり,また政策の企画・運営において最も重要な役割を果たしている.しかしながら,アメリカの医療は日本と比べて分立しており,非常に多様なシステムとなっている.
アメリカには多様な医療機関,医療保険,診療報酬の形態があり,各々が基本的には市場原理に従って,消費者を獲得するために積極的にマーケティングし,差別化しようとしている.したがって,医療経営者として成功するためには,こうした環境に対応できるような知識と技能を身につける必要があり,またこうした環境に対応できた指導者が逆に医療システムを規定している.市場原理が広まることにより,受け身の立場にある「患者」から,医療サービスを選ぶ「消費者」に変わったが,それは個人のレベルだけではなく,皆保険のないアメリカでは,企業が従業員のための医療保険を「消費者」として選ぶレベルも同様である.
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