文献詳細
文献概要
連載 病院改革 患者さんの期待を超越せよ!・5
Accountability(情報開示) ブリストル王立小児病院の事例から学ぶ
著者: 浦島充佳12
所属機関: 1東京慈恵会医科大学臨床研究開発室 2東京慈恵会医科大学小児科学講座
ページ範囲:P.666 - P.670
文献購入ページに移動1995年までの数年間に,イギリス・ブリストル王立小児病院において,53人の小児が複雑心奇形のため心臓手術を受け,29人が死亡しました.これは他施設に比べると多かったのです.この心臓手術後の過剰死亡の問題は,院内麻酔科医の内部告発に始まり,やがてイギリスの社会問題へと発展しました.しかし,多くの点で改革が成され,現在ブリストル病院の死亡率も国の水準に落ち着いたところです.
しかし,医療の質に関しての情報開示は遅々として進んでいません.その障壁は,1)データミックスの問題:病院ごとに同じ病名の患者さんでも予後が異なっている可能性,2)データの質の問題:バイアスのない正確なデータが収集できない,3)手術成績は外科医個人によらない問題:手術は多くの医療従事者の手を介して行われるため,必ずしも外科医個人の問題ではないこともあり得る,の三つに集約されます.また,「前向きに情報開示する医療機関は,重症患者さんを診てくれない」という声も聞かれます.
今回は,ブリストルのケースを通じて情報開示のあり方について考えてみたいと思います.
掲載誌情報