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文献概要
連載 今,なぜ医療経営学を学ぶのか 基本からわかる医療経営学・7
医療専門職のモチベーション
著者: 勝原裕美子1
所属機関: 1兵庫県立大学看護学部
ページ範囲:P.1022 - P.1026
文献購入ページに移動モチベーションとは何か
1.モチベーション理論が扱うこと
モチベーション(motivation)という言葉は,日常的にも時折耳にするようになりました.例えば,「こんなことばかりさせられていたらモチベーション下がるよね」とか,「ちょっとモチベーション上げないと結果が出ないよ」といった使い方です.元々は心理学で発展してきたこの用語は,人の意欲ややる気を指しています.どのようなメカニズムで人は意欲を持つのだろうか,あるいは何があれば人は意欲を高めるのだろうかといったことを扱うモチベーション理論は,動機づけ理論とも呼ばれており,「行為が生起する心理的メカニズムと条件を明らかにすること」が目的とされています1).前者のようにメカニズムを明らかにする考え方は,意欲を持つようになる過程の解明を目指すもので,モチベーション理論の中でも過程説と呼ばれています.また,後者のように意欲を持つための条件や中身を明らかにしようとする考え方は内容説と呼ばれています.
メカニズムや条件を明らかにするには,多方面からのアプローチが必要です.学者によってアプローチは異なり,モチベーションの詳細な定義も様々ですが,共通する関心事が3つあると言われています2).それらは,何が人間の行動を元気づけるのか(エネルギー),何がそのような行動を方向づけているのか(方向づけ),どのようにその行動は維持されているのだろうか(維持)です.
何かがトリガーとなって人の行動が生起し,ある方向に向かい,そのエネルギーが維持される.その全体像の解明がモチベーション理論で期待されていることで,心理学では実験室での実験研究や現場での介入研究が数多く行われてきました.経営学では,モチベーションは仕事意欲と同義であり,働く人のやる気や仕事意欲の解明のために研究がなされています.
1.モチベーション理論が扱うこと
モチベーション(motivation)という言葉は,日常的にも時折耳にするようになりました.例えば,「こんなことばかりさせられていたらモチベーション下がるよね」とか,「ちょっとモチベーション上げないと結果が出ないよ」といった使い方です.元々は心理学で発展してきたこの用語は,人の意欲ややる気を指しています.どのようなメカニズムで人は意欲を持つのだろうか,あるいは何があれば人は意欲を高めるのだろうかといったことを扱うモチベーション理論は,動機づけ理論とも呼ばれており,「行為が生起する心理的メカニズムと条件を明らかにすること」が目的とされています1).前者のようにメカニズムを明らかにする考え方は,意欲を持つようになる過程の解明を目指すもので,モチベーション理論の中でも過程説と呼ばれています.また,後者のように意欲を持つための条件や中身を明らかにしようとする考え方は内容説と呼ばれています.
メカニズムや条件を明らかにするには,多方面からのアプローチが必要です.学者によってアプローチは異なり,モチベーションの詳細な定義も様々ですが,共通する関心事が3つあると言われています2).それらは,何が人間の行動を元気づけるのか(エネルギー),何がそのような行動を方向づけているのか(方向づけ),どのようにその行動は維持されているのだろうか(維持)です.
何かがトリガーとなって人の行動が生起し,ある方向に向かい,そのエネルギーが維持される.その全体像の解明がモチベーション理論で期待されていることで,心理学では実験室での実験研究や現場での介入研究が数多く行われてきました.経営学では,モチベーションは仕事意欲と同義であり,働く人のやる気や仕事意欲の解明のために研究がなされています.
参考文献
1) 上淵 寿:動機づけ研究の最前線,p.2,北大路書房,2004
2) Porter LW, Bigley GA, Steers RM : Motivation in Organizations, Motivation and Work Behavior, p1, MacGraw-Hill, 2003
3) 金井壽宏:働くみんなのモティベーション論,NTT 出版,2006
4) 奈須正裕:やる気はどこから来るのか,北大路書房,2002
5) Deci EL, Flaste R : Why we do what we do : The dynamics of personal autonomy, G.P. Putnam's Sons, NY, 1995(エドワード・デシ & リチャード・フラスト著,桜井茂男監訳:人を伸ばす力,新曜社,1999)
6) Taylor FW : Principles of Scientific Management, 1911 〔テイラー著,上野陽一訳:科学的管理法の原理,テイラー著,上野陽一訳:科学的管理法(新版),第 7 版,産能大学出版部,1995〕
7) 前掲書 5 p.73-75
8) 前掲書 5 p.50
9) Csikszentmihalyi M : Beyond Boredom and Anxiety : Experiencing Flow in Work and Play, Jossey-Bass, 1975(チクセントミハイ著,今村浩明訳,:楽しむということ,思索社,1991)
10) Maslow AH : Motivation and Personality. Harper, New York, 1954
11) Alderfer CP : An empirical test of a new theory of human needs. Organizaional Behavior and Human Performance 4 : 142-175, 1969
12) MacGregor D : The Human side of Enterprise, Leavitt HJ, Pondy LR, Boje DM (eds): Readings in Managerial Psychology, 4th ed, The University of Chicago Press, Chicago, 1989.(マグレガー著,高橋達男訳:企業の人間的側面,新訳 44 版,産能大学出版部,1995)
13) Herzberg F : Work and the Nature of Man, 1966(ハーズバーグ著,北野利信訳:仕事と人間性:動機づけ―衛生理論の新展開,東洋経済新報社,1968)
14) Gouldner AW : Cosmopolitans and Locals : Toward an analysis of Latent Social Roles Ⅰ, Administrative Science Quarterly, pp 281-306, 1957
15) Gouldner AW : Cosmopolitans and Locals : Toward an analysis of Latent Social Roles Ⅱ, Administrative Science Quarterly, pp 444-480, 1958
16) 勝原裕美子,他:プロフェッショナルと組織の相互関係に関する研究―医師・病院・医局をとりまく組織文化,神戸大学経営学部 Working Paper, 9618S, 1996
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