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雑誌目次

雑誌文献

病院65巻5号

2006年05月発行

雑誌目次

特集 外来機能はどうあるべきか

巻頭言

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.365 - P.365

 2006 年度は,医療制度改革の年といわれており,実際多くの制度改革が国会で審議される.それは,医療提供の骨格となる医療計画の改革,医療法人制度の改革,慢性期入院医療の再編・病床減,高齢者医療制度の創設等,様々な方面での改革となる.しかし,その中には「外来の機能分化」については描かれていない.一方で,新規開業は近年かなり増加しており,同時に病院勤務医師は臨床研修医制度改革の影響もあり,不足・アンバランスが著しく,それは地域によっては病院の存続にもかかわる問題となっている.

 現在,標榜科は自由であるにもかかわらず,新規開業医は何らかの専門家である.したがって,あまり知識のない科目も標榜できてしまう.また,「かかりつけ医」「家庭医」「プライマリケア医」など様々な呼び名で称される一次医療の担い手は,資格もなければ,教育制度もほとんどない.病院の外来は複数科があり,複数の専門科を受診しても一医療機関の受診として扱われるため(一部平成18 年診療報酬改定で是正されたが),自己負担が診療所より廉価であることを多くの国民が知っている.このことが病院への患者集中となっており,特に200 床以上の病院にはそれが顕著となる.

医療提供体制の改革における外来のあり方

著者: 梶尾雅宏

ページ範囲:P.366 - P.369

■医療提供体制に関する意見

 社会保障審議会医療部会(部会長:鴨下重彦賛育会病院院長)において,平成17年12月8日にとりまとめた「医療提供体制に関する意見」(以下「意見」と略称する)において,「外来」に関係する事項は以下の内容である.通常国会に提出された「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案」に盛り込まれた内容もある一方,新たに検討会を設けて引き続き検討すべきことが指摘されているものもあり,後者については,早急な検討が求められている.

病院の外来機能はどうあるべきか

著者: 濃沼信夫

ページ範囲:P.370 - P.374

■病院と診療所の棲み分け

 「病院は入院,診療所は外来」という棲み分けは,わが国における医療提供体制の基調をなす考え方である.しかし,病院によっては入院患者の数倍にあたる外来患者が毎日訪れてくるし,一方,診療所の15% (14,765施設,平成16年)は入院施設を有しており,病院と診療所の機能には必ずしも明確な区分があるわけでない.歴史的に診療所を起源とする病院が少なくなかったこと,国民皆保険の下で病院も診療所も自由に受診できること,診療報酬は病院も診療所も基本的に共通であること,診療所と病院の連携は不十分であることなどにより,意識上も制度上も両者の機能や役割は渾然としたままである.

病院のあり方から見た外来機能

著者: 徳田禎久

ページ範囲:P.377 - P.381

外来機能のあり方に関しては,本誌においても1986年45巻11号「病院外来の新しい展開」,2002年61巻5号「病院の外来―増やすか減らすか」で取り上げられているが,これらの特集が十数年を隔てて組まれているにもかかわらず,そこで述べられた基本的な論旨に大きな差はない.

 そのキーワードは「機能分担」「病診連携」である.

家庭医と外来機能

著者: 葛西龍樹

ページ範囲:P.382 - P.384

■「家庭医療」と定義

 家庭医の外来機能について語るには,家庭医が専門とする「家庭医療」を定義しなくてはならない.家庭医療に限らず,わが国では「定義」を敬遠する傾向があるのが残念である.定義のための定義や,意味のない定義が,それを知ろうとする人たちを混乱させたり失望させたりしてきたからだろうか.そうではなくて,定義することによって,定義するものが深く理解され,ある成果を目指す行動へと人たちが進んでゆけることが重要である.

情報開示と説明責任―患者が求める外来のあり方

著者: 加藤良平

ページ範囲:P.385 - P.389

■あるフォーラムの様子から

 はじめに,筆者の知人が開催したレーシック(近視矯正手術)フォーラムの様子をご紹介したい. このフォーラムは,これから手術を受けようと考えている人や,レーシックに関心のある一般の人に対して,手術方法や適応範囲,術後管理の方法,安全性やリスク等についてわかりやすく紹介することを目的として,専門の眼科医4名によるシンポジウム形式で開催されたものである.最近ではレーシックに関する情報は雑誌やインターネットでもさかんに紹介されているが,複数の専門医による話を生で聞くことができる機会とあって,200名程度収容できる会場は満員の盛況であった.

外来の機能分化を考える

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.375 - P.376

日本の医療機能分化において,最も未分化な部分は外来だと言っても過言ではない.大病院への外来集中はいつまでも解消されず,病院の医師は外来作業に追われるため,入院作業が疎かになるような事態まで発生している.

事例に見る外来機能

保健・福祉と連携した地域のかかりつけ病院として

著者: 井上陽介

ページ範囲:P.390 - P.391

新潟県南魚沼郡湯沢町は温泉とスキーで有名な観光地である.湯沢町にはもともと有床(19床)の国民健康保健診療所,二つの個人診療所(無床)があるだけであった.入院医療は近隣の六日町や大和町(ともに現南魚沼市)にある病院,もしくは長岡市にある医療機関に頼っていた.救急医療についても十分な対応はなかなか困難な状態であった.

 そのため国保診療所の入院・救急対応機能を拡大・拡充させ,以前からあった総合福祉センターに町の保健・福祉機能を集約し,新病院とリンクさせることとなった.

江戸川区医師会夜間診療所の現況

著者: 西平守夫

ページ範囲:P.392 - P.394

医師会夜間急病診療所(以下,夜間診療所)について現在までの状況,および将来像について述べてみたいと思う.

 夜間診療所は,昭和47年に起きたいわゆる小児タライ回し事件をきっかけに,当時の寺尾悟会長の提言で,100名余りの協力会員の参加を得て,夜9時から夜中12時までの間の区民の急病に対しての初療を行うということで,東京都で初めての医師会立の夜間診療所として開設された.奇しくも,この年は江戸川区が世界で初めての古川親水公園を完成させた年で,当時の環境庁でも「区民の健康は環境から」という江戸川区の中里喜一区長の施策が大変話題になった.区民の健康のための行政の事業と,医師会の事業が偶然にも同じ年に行われたのを見ると,この年は江戸川区の環境元年ともいえる.

“住民立病院”の患者視点を重視した外来分離例

著者: 近藤泰正

ページ範囲:P.395 - P.397

この数年,中規模病院の外来機能を隣接地に移転する例が相次いでいる.各病院ともおのおのの事情があると思うが,基本的には政府の進める医療提供体制の改革(病・診機能分化)と,それを政策誘導するための病院と診療所の診療報酬格差に対応する手段と考えられる.当院も,2004年4月に,在宅医療のみ行っていたクリニックに,堀川病院の外来(婦人科・検診部以外すべて)を移転した.当院の場合,上記の理由以外に,地域の要望や現在の医療制度改革に対応するため,組織全体の改革構想の一環として外来移転を行った.以下にそのプロセス等を記す.

総合クリニックへの展開

著者: 中佳一

ページ範囲:P.398 - P.400

特定医療法人三思会は,神奈川県の県央に位置する厚木市において,保健・医療・福祉の各分野で活動を行っている.施設は表1の通りである.

 1981年開設以来20年余を経過した病院を軸とした増改築を実施 (2000~2002年)するにあたり,外来分離を行い,それと関連し電子カルテを導入した.

外来機能の独自・自立性の確保

著者: 堀内弘雄

ページ範囲:P.401 - P.403

厚生労働省は以前より外来はかかりつけ医の診療所,入院は病院と主張し実践してきた.この趣旨は理解できないことではないが,現実はうまく運んでいないのが実情である.大病院志向は根強く,様々な要因があるが,ここしばらくは,その傾向は続くであろう.

 このような現況の中で,病院の外来分離が果たす役割と位置づけを考えてみたい.

グラフ

主役は患者とその家族―在宅重視のリハビリテーションを実践する

著者: 医療法人財団 健和会柳原リハビリテーション病院

ページ範囲:P.353 - P.357

健和会といえば地域医療と連想する読者も多いだろう.その健和会の歴史は,1951(昭和26)年の柳原診療所の開設に始まる.その後,診療所は柳原病院として規模を拡大し地域住民のための医療を展開してきた.1997(平成9)年には柳原病院が足立区千住曙町に新築移転.しばらく,その旧施設を柳原診療所(無床)として利用していたが,この地域に急性期医療と在宅医療を結ぶリハビリテーション施設が足りないことから,その新設が検討された.二次医療圏内の病床状況を調査したところ,余裕があることがわかり,2003(平成15)年にリハビリテーション病院建設を申請.認可後は急ピッチで準備と建築が進められ,2005(平成17)年4月,旧柳原病院跡地に柳原リハビリテーション病院が開設された.新病院の誕生は,地元商店街の活性化につながるとして,地元住民からも歓迎されたという.

 東京都第1号訪問看護ステーションの開設,また24時間在宅ケアの実施,診療所での訪問診療など,在宅医療の充実に力を入れてきた健和会としては,在宅医療充実の一環として,この柳原リハビリテーション病院を位置づけている.

ホスピタルアート・11

ARTの効用

著者: 高橋雅子

ページ範囲:P.360 - P.360

連載 クロストーク医療裁判・3

医薬品の使用をめぐる医療水準論―最高裁平成14年11月8日判決の事例から

著者: 堀内元城 ,   横野恵

ページ範囲:P.404 - P.407

医師に過失があったか否かについては,医師が医療水準に従った医療行為を行っていたか否かによって判断されます.では,医療水準とはいったい何を基準に決められるのでしょうか.

 前回ご紹介した最高裁判所の判決(平成8年1月23日)は,医師が医薬品を使用するに当たって,医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず,それによって医療事故が発生した場合には,これに従わなかったことについて特段の合理的理由がない限り,医師に過失(注意義務違反)があったと推定されるとしました.これは,医薬品の添付文書の記載が医療水準を判断する際の重要な資料となることを示したといえます.

病院ファイナンスの現状・21

―間接金融(16)―国民生活金融公庫(国金)の活用方法

著者: 福永肇

ページ範囲:P.408 - P.410

■国民生活金融公庫(国金)

 今月号では,病院の資金調達の一つとして国民生活金融公庫注1)を解説します.国民生活金融公庫は一般に「国金」の略称で呼ばれており,本稿でも国金と表記します.国金は,政府全額出資の政府系金融機関の一つで公的金融となります.医療界では “国金は勤務医の診療所開業の際の資金調達手段” と理解されている模様ですが, 病院に加え,MS (Medical Service)法人や調剤薬局などの病院関連企業も利用できます.民間銀行よりも “借りやすく” “固定金利” “長期間借入可能” “超低金利” という病院にとって望み得る最高の借入条件があまり活用されていないのは残念です.確かに調達できる金額は大きくはなく(「普通貸付」で最高4,800万円),病院には魅力が少ないかもしれません.しかし,病院での最も有利な資金調達手段としてご理解ください.

病院管理フォーラム ■事務長の病院マネジメントの課題 海老名総合病院・3

事業の誤算と地域完結型への変革

著者: 小野寺晃

ページ範囲:P.412 - P.413

平成12年に新体制により策定された中期計画に基づき電子カルテの導入,外来分離事業を推進することとなる.

●電子カルテの導入と外来分離

■栄養管理 高知医療センター・3

栄養局の取り組み―フードサービス

著者: 河合洋見

ページ範囲:P.414 - P.416

 病院食は疾病治療を目的とし,患者個々の病態や身体状況に応じた栄養量を提供し,客観的な指標をもとに栄養改善を図る必要がある.一方,患者側からすれば,食事内容に対して,「好き,嫌い」「おいしい,まずい」「食べたい,食べたくない」という主観的な判断がなされている.いいかえれば,前者は患者の病態や栄養状態に適した食事提供で治療食としてのニーズである.また,後者はニーズを満たしたうえで,さらに特定のものが欲しいという要求につながるものであり,患者さんのウォンツといえるが,一般的には両者を患者ニーズととらえている.

 病院のフードサービスは,多様化・高度化する患者ニーズに応えることで患者満足度をいかに高めるかである.また,4月からの診療報酬改定に伴う,栄養部門の減収に対しても,患者さんからの自己負担を求める方向性で考えた場合には,フードサービスの質の向上は避けては通れない課題である.今回は高知医療センターが取り組んでいるフードサービスについて述べる.

■診療放射線部門 刈谷豊田総合病院・2

科内におけるリスクマネジメント高揚のための取り組み

著者: 佐野幹夫

ページ範囲:P.418 - P.421

 病院内における医療事故は,年々メディア等に取り上げられ注目されてきている.放射線業務においても例外ではなく,アクシデント事例が数多く報告されている.医療事故をなくすことは昨今の医療技術の発展と,患者の医療に対する関心の高さから要求も強く不可能に近い状況にある.このような背景の中で,多くの医療機関では患者の安全対策に組織ぐるみで取り組んでいるのが現状であろう.当院も例外でなく安全環境管理室が設置され,院内における医療事故・過誤の発生防止と院内感染および職員の安全衛生確保に努めている.

 今回は院内全体のリスクマネジメント活動から離れ,放射線部門におけるリスクマネジメントへの取り組みとスタッフへの意見の高揚に向けた活動について述べたいと思う.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第136回

医療福祉施設の照明計画・色彩計画

著者: 手塚昌宏 ,   梅澤ひとみ

ページ範囲:P.422 - P.429

 医療施設における照明の扱いについてはその重要性は高まりつつある.特に精神的な配慮を環境として考える際には十分に検討しなければならない要素の一つでもある.

 人間の五感刺激で最も情報量が多いのが視覚情報であるが,その情報を的確に伝えるのが光であるということからも,照明の重要性はわかる.

リレーエッセイ 医療の現場から

患者図書館ノススメ

著者: 桑原文子

ページ範囲:P.431 - P.431

 今頃患者さんのための図書室を病院内に設けるところが増えている.単に読み物や雑誌を診察の合間に読むためではなく,病気について調べ,いろいろな薬や治療法を確認するための図書館である.しかし広さや運営方式などはそれぞれの設立母体によって異なり,いろいろな形が存在している.

 東京女子医科大学の「からだ情報館」の場合は,新しく建設された外来センターに作られた患者用図書室である.図書館司書と現役の看護師が担当者となり,ボランティアの助けも借りて運営している.司書が設立計画の最初から関わり,以後マネジメントを担当し,医療者の看護師と共同で活動しているのが特徴であり,他にあまり例を見ない.院内では地域連携室,医療社会福祉室や栄養相談など他の診療関連患者サービス部門の一部署と位置付けられ,月1回の定期会合を持つなど意思の疎通を図っている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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