アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第137回
小規模市立病院二題―コミュニティホスピタル
亀岡市立病院
著者:
河崎邦生
,
山田剛
ページ範囲:P.504 - P.507
京都市の西隣に位置する亀岡市は,豊かな緑と美しい水に囲まれ,トロッコ列車や保津川下りなどの文化や,数多く点在する史跡など,自然・文化・歴史が調和した人口約 10 万人の魅力ある都市である.この亀岡の地で市立病院の建設に関する調査分析が始められたのは平成 6 年まで遡る.市民の “いのち” や “健康” に対する強い思いに応え,地域医療のよりいっそうの充実を図るべく,平成 13 年に「救急医療の充実」「高度医療および急性期医療の提供」「地域医療機関との連携」を柱とした病院建設の基本コンセプトがまとめられた.そして平成 16 年 5 月,21 世紀に新設された 100 床の急性期対応型病院としてのスタートを迎えた.
■豊かな自然を活かした癒しの環境づくり
敷地の北側と東側が低層住宅地であり,周囲は都市化が進みつつあるため,病院の敷地そのものが地域住民にとっての憩いのオアシスとなる環境づくりを目指した.敷地内に設けた「交流の庭」「つつじの庭」「出会いの庭」「健康の庭」と名づけた四つの庭を,四季折々の草花が楽しめる散歩道で巡ることは,患者さん・医療スタッフだけでなく,地域住民とのコミュニティや癒しに対する提案でもある.また敷地西側の道路を拡幅し,右折レーンやバス停留所を新たに設け,敷地内への安全なアプローチを確保した.広いロータリーと玄関キャノピーは,雨に濡れることなく来院者を玄関まで導き,透明感のある正面のカーテンウォールは,来院者を優しく迎え入れる.そして,凹凸型の病棟とアール状の低層部という特徴的な外観は,周囲への圧迫感を軽減させるだけでなく,市立病院としての存在感を演出している.建物構成としては,1 階が外来・救急・放射線部門など,2 階が手術・管理部門,3,4 階が各階 50 床ずつの病棟からなり,明確で機能的な断面構成となっている.