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文献詳細

雑誌文献

病院65巻7号

2006年07月発行

文献概要

特集 医療のパフォーマンス評価

病院パフォーマンス評価指標―わが国における現況と課題

著者: 武澤純1

所属機関: 1名古屋大学大学院医学系研究科生体管理医学講座救急・集中治療医学

ページ範囲:P.526 - P.531

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■「病院パフォーマンス」の定義

 病院の診療機能は患者や社会にとって,安全で質の高い医療を受けるために最も知りたい情報の一つである.雑誌や新聞では様々な病院ランキングが企画され,その多くはベストセラーとなるほど社会の関心は高い.しかしながら,病院評価の根拠となる材料としてはアメニティ,患者サービス,患者満足度,一部死亡率を含む症例数しかなく,これらのデータから「病院パフォーマンス」(この場合は治療成績)の全容を的確に把握することは困難である.しかし,よく考えると,「病院パフォーマンス」の定義自体が曖昧であることがわかる.そもそも病院は何を目的として業務を行う社会組織であるのかが,立場によって異なっている.持続可能な経営性であったり,地域に対する安定した医療の供給であったり,時には収益性にこだわらない高次医療であったり,救急医療など緊急時の地域住民への安心の提供であったり,期待される病院機能は地域特性によっても異なる.また,病院が急性期の疾患を対象とした病院か,あるいは療養型の病院かによっても期待される病院機能は異なってくる.急性期病院と療養型病院で期待される病院機能の違いを表 1 に示した.

 病院のミッション(社会的使命)は,患者やその家族に対しては,生命予後の改善,ADL の改善,苦痛(不安)の緩和があり,社会的あるいはシステム的には社会生活における安全・安心を含む医療供給体制に対する信頼がある.また,少子高齢化社会では,生産人口の労働力維持を含めた社会負担の軽減を図ることも挙げられる.このような病院のミッションを達成する場合に,収益性が確保されるか否かは診療報酬体系の合理性の問題であり,逆に収益性から病院機能が評価されてはならない.病院機能と収益性が一致するのは,選択可能な複数の病院の存在とそれらの病院機能情報がすべて開示され,消費者(患者)が十分な知識と判断力を持って,医療サービスを評価・選択することができる機会が存在する場合においてのみである.つまり,「病院パフォーマンス」評価は,言い換えれば,市場とは関係なく,社会システムとしての病院のミッション達成の行程がどれだけ確実に実行されているかとも言うことができる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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