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文献詳細

雑誌文献

病院65巻7号

2006年07月発行

文献概要

特集 医療のパフォーマンス評価

救急医療における臨床指標の適用

著者: 有賀徹1 林宗貴1

所属機関: 1昭和大学医学部救急医学講座 2関東労災病院救急部

ページ範囲:P.564 - P.567

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■はじめに―救急医療の標準化

 ER(Emergency Room:救急室)に患者が搬入される時,医療チームは救急隊からの患者情報によって様々な準備を行う.例えば,初療でのバイタルサインの把握について,また呼吸と循環の補助をどのように行うかなどについて,あらかじめ決めておくこととなる.このような基本的な作業は,従来から多くの ER において行われてきた.最近ではこれらに加えて,標準化された診療過程である ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)1) や JATEC (Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)2) などが関連医学会から示されている.

 そのような標準的な診療過程は,“ばらつき” を最小限に止めているという意味で一定の水準を確保している.そして,標準化によって経験されたバリアンスなどを分析して,いわば “バージョンアップ” を図れば,質の向上へと駒を進めることができる.そのようなことから,個々の医療施設においては,パス法の利用が普及しつつあると思われる.それは,医療チームが共同で作り上げた「患者の最良の管理である」と信ずるところを示した仮説である3) という表現からも理解されるように,エビデンスに乏しくともパスによって,それなりに標準的な診療過程を実践できる方法である.後に説明するように,臨床研修医が多数参加する現場においても一定の水準で診療が進められる.ACLS や JATEC も広義には,パス法が実践されているということが可能であり,脳卒中や重症頭部外傷についてのガイドライン4,5) などもやはりそのような意義を有する.

参考文献

1) American Heart Association : ACLS providers manual. Laerdal Medical Cooperation, New York, 2001
2) 日本外傷学会外傷研修コース開発委員会:改訂/外傷初期診療ガイドライン JATEC.へるす出版,東京,2004
3) Spath PL : Clinical paths ; An outcomes management tool. Spath PL(ed): Clinical path ; Tools for outcomes management, American Hospital Publishing, Inc., USA, pp.1-22, 1994
4) 脳卒中合同ガイドライン編集委員会:脳卒中治療ガイドライン 2004.協和企画,2004
5) 日本神経外傷学会ガイドライン作成委員会:重症頭部外傷治療・管理ガイドライン.神経外傷 23:1-51,2000
6) 日本病院管理学会クリニカルインディケーターの開発に関する研究班:クリニカルインディケーターの開発に関する研究.1998 年 1 月
7) 梅里良正・他:救急医療領域におけるクリニカルインディケーターの開発に関する研究.病院管理 38:301-307,2001
8) 益子邦洋・他:三次救急医療機関の機能を評価する指標の開発と今後の課題.日本救急医会誌 13:769-778,2002
9) 有賀 徹:院内の疾病登録を利用した心筋梗塞及び脳卒中の治療法等の向上に関する研究.平成 13 年度厚生科学研究費補助金(21 世紀型医療開拓推進研究事業)総括研究報告書,pp.95-100,2002
10) 伊藤弘人:医療評価.真興交易(株)医書出版部,pp.91-102,2003
11) 益子邦洋・他:Trauma Registry における臨床評価指標.日本外傷学会雑誌 18:403-408,2004
12) 日本外傷学会 trauma Registry 委員会,日本救急医学会診療の質評価指標に関する委員会:日本外傷データバンク 2004 年次報告書(中間報告),pp.26-29,2005 年 10 月
13) 奈良 大,弘重壽一,有賀 徹:中毒診療とクリニカルパス.中毒研究 16:133-138,2003
14) 藤田省吾・他:重症頭部外傷ガイドラインの導入による脳低温療法の質の向上.日本神経救急学会雑誌 19(1):41-45,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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