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文献詳細

雑誌文献

病院65巻7号

2006年07月発行

文献概要

連載 クロストーク医療裁判・5

説明義務について―輸血拒否をめぐって―最高裁平成12年2月29日判決の事例から

著者: 水野有子1 永水裕子2

所属機関: 1東京地方裁判所 2桃山学院大学法学部

ページ範囲:P.590 - P.593

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説明義務違反の意義

 医師の診療行為に過失がある場合,つまり,「すべきではない行為をした(しなければならない行為をしなかった)」場合に損害賠償の問題が生じます.医師の説明についても同様です.つまり,医師が患者に対して説明すべきことを説明しなかった場合に,その医師に説明義務違反があるとして損害賠償の問題が生じるのです.

 では,そもそも,なぜ,医師は,患者に説明をしなければならないのでしょうか.そのもっとも重要な根拠は,患者の自分の生命と身体に対する自己決定権です.医師が患者の身体に直接強い影響を与える医療行為を行うためには,原則として,患者側の承諾を必要とします.ここで,患者が,医療行為について十分理解できないまま同意したとしても,それは形だけのもので,真の意味での承諾とは言えません.そこで,真の意味での承諾を得る前提として,医師の説明が必要とされているのです.このような考え方は,医療法において,医師等が,医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るよう務めなければならないとの規定(同法 1 条 2 項)が置かれたことにも表れています.

参考文献

1) 最高裁判所民事判例集 54 巻 2 号,p.582
2) 樋口範雄:「エホバの証人」最高裁判決.法学教室 239:41-44,2000
3) 飯塚和之:患者の自己決定権と司法判断―近時の最高裁・説明義務判決をめぐって.湯沢雍彦,宇都木伸(編),人の法と医の倫理,信山社,東京,2004 ,p.275, pp.263-289

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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