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文献詳細

雑誌文献

病院66巻11号

2007年11月発行

文献概要

特別寄稿

診療科別損益計算―配賦をやめればすっきりわかる!

著者: 池田吉成1

所属機関: 1監査法人トーマツ ヘルスケアコンサルティング部

ページ範囲:P.938 - P.943

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病院原価計算の目的

 病院における原価計算には,大きく2つの目的があると考えています.1つ目は,医療機関が診療サービスを提供する際にかかったコストを集計するためです.行為別や疾病別などに要した費用を集計し,診療報酬点数への反映や逆に設定された点数への対応を行うために作成します.診療報酬制度という価格統制がある医療業界では,管理できるものはコストしかありません.特に今後拡大が予想されるDPC導入施設では,診断群毎に設定された診療報酬点数と自院でかかった実際のコストとの比較は必須となってくるでしょう.この1つ目の原価計算の性質としては,診療サービスにかかった全ての費用を集計することに特徴があります.

 2つ目には診療科などの部門ごとの損益管理・マネジメントを行うためです.一般的な病院で損益状況を見るものは,病院全体でまとめた損益計算書や貸借対照表などの財務諸表となっています.しかしながら,病院では診療科や中央部門など個々の組織があり,それぞれの損益構造は異なっています.それを考慮しない一括りの財務諸表だけではどこに問題点や改善のカギが隠れているかはわかりません.こういった「どんぶり勘定」を避けるためには,部門ごとの収益と費用を計算し,損益管理を行う必要がでてきます.そういった意味で,用語としても費用集計に重点が置かれた「原価計算」というよりは,収益との比較でマネジメントを行う「損益計算」のほうが合うようです.この2つ目の原価計算(損益計算)では,部門ごとの損益管理,マネジメントが目的ですから,計算される収益,費用とも当該部門が管理できるものに限定できる,というのが特徴になるはずです.

 ところが,後者の原価計算である診療科別損益計算においても,全ての費用を集計し,その費用を各診療科に配賦(配分,按分)しているために様々な問題が起こっているように思えます.そこで,本稿では診療科別損益計算をうまく利用する方法について,特に部門長の責任範囲と費用の配賦を中心に述べていきたいと思います.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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