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雑誌目次

雑誌文献

病院66巻2号

2007年02月発行

雑誌目次

特集 介護保険施設と医療のあり方

巻頭言

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.109 - P.109

 平成18年診療報酬・介護報酬同時改定において,診療報酬は3.16%という史上最大の下げ幅が決定された.それに付随して,医療療養病床の介護保健施設への移行を目的にした奇異な報酬が設定され,介護療養病床は平成23年度末で廃止することを国会が決定した.医療,特に慢性期医療の関係者にとっては,まさに激動の一年であった.

 同時に現時点では,介護保険施設のあり方が議論されている.療養病床が減少し,転換老健が増えると想像される今後,介護保険施設はどのように整備されていくのだろうか.病院でありながら介護報酬で運営されている介護療養型医療施設,老人保健法で規定されている介護老人保健施設,社会福祉法人の事業である介護老人福祉施設,さらに急増する特定施設など,異なる規準で介護保険施設は運営されている.そして医療提供のあり方,特に急性疾患発生時や看取りの対する対応は,まったく異なっている.

療養病床再編成と地域ケア整備構想(仮称)

著者: 榎本健太郎

ページ範囲:P.110 - P.114

療養病床再編成を巡って

 療養病床の再編成については,医療サービスの必要性の高い者,低い者の分布に着目し,必要性が高い方に対応するものとして引き続き医療保険適用の療養病床を存続させる一方,必要性が低い方が入院する療養病床に関しては,時間をかけて介護施設などへの転換を進めることとしているが,平成18年の医療構造改革に当たり一つの柱として打ち出されて以来,関係者の間で様々な議論をいただいている.

 いずれにしても,この問題は30年来の大きな課題であり,地域の様々な関係者の調整も必要であることから,ある程度時間をかけて整理していかなければならないものと考えている.転換しようにも地域の介護施設の整備「枠」に空きがない,老健施設等は既に満床で受け皿がない,先行きが見通せないといったご意見を頂戴するが,厚生労働省としてもできるだけ円滑に進めたいと考えているところであり,今後の地域における道行きを示し得るものとして現在検討を進めているのが地域ケア整備構想(仮称)である.本稿ではその考え方をご紹介し,今後の議論に資することとしたい.

医療施設からみた介護保険施設のあり方

著者: 武久洋三

ページ範囲:P.116 - P.120

 今回の療養病床の再編には,実は医療制度全体をひっくり返すような深い意図が隠されている.それは急性期病床の改革である.急性期病床が「いわゆる一般病床」でないことは実体としては皆わかっているものの,制度上は同一となっている.ここにメスを入れ,「本当の意味での急性期病床」を確立しようとしているのである.これは大変結構なことだと思うし,そこに多くの人的・物的医療資源を投入することに反対する国民はいない.患者の流れの先にある介護保険施設は,川上の病院の状況により大きく対応を変えなければならないことは当然であろう.

 現在約30万床と言われるDPC病院は,疾病別の包括報酬となるため疾病の治療に専念し,“まるめ”の中で利益を上げるために,その疾病の治療に直接関係のない検査や治療は行わず,ひと通りの急性期治療が終れば,直ちに退院してもらうという傾向になってくる.そうなると,それを受ける慢性期病院はDPC制度のあおりを受けることになる.今はDPC病院も入院日数により収入が増える仕組みになっているが,近い将来,本当の意味での診断群別包括支払い制になるといわれている.そうなれば,大腿骨骨折の症例についても,手術して1~2日で他の回復期リハ病院へ転院させたほうがDPC病院は効率がよいわけである.場合によっては,様々な手術の術後フォローまでも慢性期医療の役割となってくる可能性も出てくる.そうなると,急性期病院とそれをフォローする慢性期病院との密接な連携が必要不可欠であり,慢性期病院にもそれだけの能力が備わっていなければならないということになる.

介護老人福祉施設からみた今後の介護保険施設と医療

著者: 本永史郎

ページ範囲:P.121 - P.125

 平成12年の介護保険制度開始から6年が経過し,平成18年4月には改正介護保険法も施行された.その間,「介護サービス」を取り巻く社会環境も大きく変化し,サービス利用者のニーズも多様化していることは,誰しもが認めるところである.また,平成15 から導入された施設入所の必要性の高い方の優先入所指針の導入により,介護老人福祉施設における利用者の重度化は一層進んでおり(図1),それに伴い利用者の持つ医療的ニーズは増大し多様化している.

 一方,介護保険施設と位置づけられている「介護療養型医療施設」は平成 23 年までに廃止されることとなり,同時に医療療養病床の床数も削減されることになっている.これにより,これまで介護・医療療養型施設を利用していた方々も今後,介護老人福祉施設を利用することが想定される.

介護老人保健施設からみた今後の介護保険施設と医療提供

著者: 漆原彰

ページ範囲:P.127 - P.131

 「転換老健の受け入れも含め,これからの老健はどのような機能を持つべきか」という趣旨に沿ってまとめるにあたり,まず最初に,いくつかの前提について整理をしておきたい.


前提1 療養病床の再編にかかる問題は,一義的には老健とは関係がない.

 厚生労働省(以下,厚労省)は平成17年末に突然,「療養病床の再編」と称した医療保険適用療養病床(以下,医療療養病床)の大幅削減,介護保険適用療養病床(以下,介護療養病床)の廃止の方針を打ち出した.現在約38万床ある療養病床(25万床が医療療養病床,13万床が介護療養病床)を,平成24年度には医療療養病床のみ15万床にする.そして削減する23万床については,15万~17万床を老健に,残りの6万~8万床をケアハウスや有料老人ホーム,また 24 時間往診を行える診療所に転換させるという(図1).

 これにより,われわれ老健側には急遽,療養病床からの転換受け入れをどう考えるかという課題が突きつけられることになった.しかし,これはわれわれ老健のあり方が問題にされて起きたものではなく,厚労省の療養病床に対する突然の政策転換により発生した問題である.

わが国の高齢者ケアの展開と医療が果たした役割―社会から見た介護施設と医療のあり方を考える

著者: 高木安雄

ページ範囲:P.132 - P.135

はじめに―高齢者のための医療・介護・福祉の包括的なケアは可能か

 本稿は,高齢者のケアをめぐるわが国の政策の展開を検証して,団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年に向けたサービス提供のあり方を考えるものである.2012年までの介護療養病床の廃止と老人保健施設等への転換という政策誘導は病院にとって大きな経営判断を迫り,国民皆保険や老人医療費無料化制度によって量的な拡大を続けてきた病院は一つの時代の終焉を告げられている.

 かつてのエネルギー革命による石炭から石油への構造転換,日米貿易摩擦後の繊維産業への転換奨励金,米の自由化による農家への補助金など社会のニーズに合わせた構造転換は当然のことであり,サービス提供者は常に市場の期待に応えなければ生き残れないのである.問題は,転換のための社会的な摩擦をいかに小さくするかであろう.

 そのためには,高齢者の医療・介護・福祉をめぐるこれまでの施設サービス体系を検討し,特に介護保険以後の施設サービスの変化を検証する必要がある.1973年の老人医療費無料化制度によって生まれた医療偏重の高齢者ケアがどのように変わろうとしているのか,最後の社会保障制度といわれる介護保険制度の政策効果を評価しなければならない.そして,国民皆保険と高度経済成長の最大の恩恵者である団塊の世代がどのような高齢者ケアを望んで実現していくのか,この2つで今後の介護施設と医療のあり方は決まるはずだ.

 そこで本稿では,療養病床を考えるための歴史的なキーポイントである次の5つの政策転換,すなわち,①1973年の老人医療費無料化制度,②1983年の老人保健法の制定,③ 1986年の老人保健施設の創設,④ 1990年の「介護力強化老人病院」の創設,⑤2000年の介護保険制度の施行を取り上げて,わが国の病院のなかで異端視されてきた「老人病院制度」の歴史と機能を考察する.そして,医療と介護をめぐる歴史的な政策展開の中から,今後の介護施設と医療のあり方を展望する.

【事例】医療施設と介護施設のかかわり 特別・特定医療法人愛仁会の場合

著者: 根岸宏邦 ,   坪茂典

ページ範囲:P.136 - P.138

 平成24年に介護療養病床が廃止となることに伴い,療養病床の再編成計画が当局により策定されている.それによると,現行の医療療養病床25万床と介護療養病床13万床の計38万床を医療療養病床15万床に縮小し,削減された23万床については老人保健施設15~17万床へと転換を図り,その中には,医療機能強化の老健も検討するということである.その他の転換先としては,ケアハウス,特別養護老人ホーム,有料老人ホーム,グループホームなど6万~8万床も視野に入れている.

 このような療養病床の削減は,現在入院中の患者の多くが,かなりの程度医療を受けているという現実(介護型と医療型とで受けている医療程度に差がないと言われている)を踏まえると,そこに医療難民,介護難民が発生してくるのではないかと危惧されている.しかしいずれにしろ,近年老人保健施設の利用者数は増加傾向にあり,平成13年と17年を比較したデータによると,介護療養型医療施設の利用者数が 11.5 %の増加に対して,老健施設の利用者数は23万6千人から29万2千人と23.6%も増加している1).このような状況の中で,老健施設における医療のあり方の問題,言い換えるならば医療施設との連携の問題は重要性を帯びてくる.

【事例】恵仁会における取り組み

著者: 黒澤一也

ページ範囲:P.139 - P.142

 平成17年に療養病床再編問題が噴出し,平成24年には介護療養病床が廃止に追い込まれようとしている.また医療療養病床も削減されようとしている中,療養病床を持つ病院は今後の対応に迫られている.当法人が運営するくろさわ病院も医療・介護療養病床を持つケアミックス型病院であり,今後これらの病床をどのようにするか対応を検討中である.

 その中で,法人全体として各病床と介護保険対応施設のあり方を再度見直し,今後の制度改革に対応していかなければならないと考えている.そこで今回は当法人の概要を紹介しながら,法人全体としての医療・介護への取り組みについて述べたいと思う.

【事例】湖山医療福祉グループ 医療・福祉に関する提言

著者: 湖山泰成

ページ範囲:P.143 - P.145

 湖山医療福祉グループは,銀座で唯一の救急病院,「銀座菊池病院」として始まった.しかし,都心で77床の救急病院では採算が合わず,病床を閉鎖し,医院に転換した.さらに健康管理センター(人間ドック)を併設し,また近年では地域ニーズによりデイサービスも開設した.総合診療+予防医学を核とし,「銀座医院」として生まれ変わったのだ.私どもの最大の強みは,変化を成長の証としているところである.そしてその成長は,この小さな医療機関から始まった.

 77床の病床は閉鎖したが,新たな医療法人を設立し,静岡で療養型の病院を開設した.その後,日本各地で担い手のいない地域に,導かれるまま医療法人や社会福祉法人を設立し,病院(診療所)や施設を開設し続けた.

グラフ

沖縄の健康と未来を守る

ページ範囲:P.97 - P.100

 人口約137万人の沖縄県は北部・中部・南部に分かれ,このうち那覇市を含む南部地域に,県民のほぼ半数が暮らしている.この沖縄最大の医療圏の中核を担うために,2006年4月,沖縄県立南部医療センター・こども医療センターが新設された.南部地域で初めての24時間・365日対応の救命救急センターと,沖縄県で初めての小児専門病院を併設している.

 小児専門病院を求める運動は「全国心臓病の子どもを守る会」を中心に,30年以上前から行われていた.本土で心臓病の手術を行う場合,患者と家族の精神的,経済的負担は大きい.術後のフォローも含めて,なんとか地元で継続した医療を受けられないかという声はやがて市民運動となり,老朽化した県立那覇病院の改築計画が持ち上がった際に「こども医療センター」の併設という形で実現した.

連載 ヘルスケア環境の色彩・照明・2

照明1 照明は人の心を明るくする

著者: 手塚昌宏

ページ範囲:P.102 - P.103

■光は第一印象を与える

 初対面の人と会う時,その時の顔の表情は,その後もその人の印象として大きな影響を与えることになるという.店舗に入った時,ホテルに入った時,美術館に入った時,住宅に入った時,その色彩を含め最初に見た環境のデザイン全体が五感に働き印象を形成する.その空間の表情を創り上げるのが実は光であり,照明の計画なのである.光は空間に明暗をもたらすが,人の心に大きな影響を与え心理生理に働きかける効果があることを医療・福祉施設では忘れてはならない.

 ナイチンゲールは,光が患者に与える影響の重要性を数多く書き残しているが,世界の優れた建築家もそのことを意識し,良い光環境を残している.これからのヘルスケア環境は,精神に与える効果を考えた,人にやさしい環境づくりが主となるといわれている.その中で照明に与えられた役割は決して少なくはない.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・9

生活困窮者(日雇労働者)の生活を支援するMSW

著者: 奥村晴彦

ページ範囲:P.149 - P.153

 当院は男性のベッドのみで,ほとんどが単身日雇労働者である.入院患者の7割強は簡易宿泊所,野宿,仮設避難所,飯場など,住所が一定していない.保険未加入,あるいは保険があっても自己負担が困難なため行旅病人として生活保護法の適用を受けて入院している.この場合原則的に,退院と同時に生活保護を廃止することが慣例的に行われており,退院後の生活に困る患者が多く,1970(昭和45)年開院当時より相談室の MSW4人が全入院患者の入退院調整にあたっている.特に最近では,安定した生活を望む患者が増え,退院援助に関わる時間も増大している.

 高齢化と長引く不況から,失業者が急増し,全国的にも野宿者は大きな問題となり,ホームレス支援法など国の対策もなされてきた.全国一野宿者の多いあいりん地域では,1999(平成11)年頃から地域の労働者,簡易宿泊所組合,NPO など支援者団体による活動の中から,「野宿からアパートでの居宅保護へ」という支援の流れが生まれてきた.時期を同じくして,不況のあおりで簡易宿泊所の利用が減り,経営安定のためアパートへの登録変更がなされるようになり,簡易宿泊所から入居時の敷金・保証人のいらない転用型マンション(福祉マンション)が見られるようになってきた.特に相談員のいるサポーティブハウスの出現で,生活支援が必要な高齢者や傷病者の居宅保護受給が可能となってきた.

今,なぜ医療経営学を学ぶのか 基本からわかる医療経営学・9

医療政策と病院経営

著者: 中島明彦

ページ範囲:P.154 - P.157

制度や政策をマネジメントするために

1.「組織→制度」アプローチの重要性

 医療経営はサービスの公共性や専門性という特性のために,医療制度や政策に依存しています.そのため従来の病院管理論や医療経営戦略は,制度を所与として,それらを十分に理解したうえでその対応策を論ずることが主眼でした.しかし,政策を先取りしたり,政策の方向と異なるサービスを提供して利用者の支持を得ている事業者もいます.また医療経営にとって好ましい医療政策を導いていくという経営戦略も必要です.

 本稿では,医療経営側から医療制度をコントロールすることが必要だと考え,政治学的視座の必要性を説きたいと思います.医療政策の政策過程に着目して,医療政策がどのように形成・決定され,実施されるのかという政策過程を分析します.これにより医療経営としては「いつ,どこで,どのようにボタンを押せば政策の窓(policy window)が開くのか?」が明らかになり,制度のマネジメントが可能になるはずです.

 このような外部環境を積極的にマネジメントしようとする考え方,すなわち「組織→制度」アプローチが必要だと考えるのは,永年にわたり医療経営に携わってきた経験から,内部環境のマネジメントだけでは医療経営をよくすることができないと痛感したからです.

クロストーク医療裁判・12【最終回】

医師法21条―異状死届出義務をめぐる諸問題―最高裁平成16年4月13日判決の事例から

著者: 片野正樹 ,   武市尚子 ,   落合武徳

ページ範囲:P.158 - P.163

増加し続ける医療過誤訴訟.その判決内容や影響力は,医療のあり方を考えるうえで有益な示唆を含んでいる.これまでは,裁判実務・法律・医療分野など領域別に議論されがちであった.本連載では最高裁判決を事例として,全国で最も多くの医療過誤訴訟を扱う東京地裁裁判官らが判決のポイントをわかりやすく解説.若手法学研究者,医師がそれぞれの視点からコメントを加え,多角的な見方を提供する.裁判官の本音コラムも掲載する.最終回の12回目では,医療関係者に衝撃を与えた医師法21条の判決を取り上げる.

病院ファイナンスの現状・30

―病院債(3)―病院債の課題と発展

著者: 福永肇

ページ範囲:P.164 - P.169

 昨年12月号で「地域医療振興債」,1月号では「医療機関債」「社会医療法人債」という医療法人が発行する病院債を見てきました.これらの病院債はいずれも金融市場で発生して発達発展してきた金融商品ではなく,最初に発行スキームが考案され,ガイドラインに従って発行された(される)ものです.

 こういう事情もあり,発行実績のある地域医療振興債と医療機関債については,発行側の医療法人(以下,病院)の論理と利益面が強いことが指摘できます.今月号では,債券発行によって直接金融市場から資金調達をする病院が,投資家や証券市場に考慮しなければならない点の要点を説明します.

病院管理フォーラム ■看護マネジメントの実践

患者の意思決定を組織で支えるために―看護師の専門教育として自己決定支援コースを設立して・後編

著者: 江口恵子

ページ範囲:P.171 - P.174

●自己決定支援コースを受講して,看護師はどのように変化したか

 1年目の研修が終了した段階で,研修生は自身の患者との関わりを物語風に書いたものを利用し,その援助過程を研修で学んだことも踏まえて自己決定支援についてどのように思うか,という点から事例検討を行った.その検討の中で,患者の権利や自己決定権などを意識して援助することができるようになったという意見のほか,できる限り第三者的な立場で中立に関わろうとするが,医療者の立場で話してしまうことが多く,中立的に関わることの難しさを感じたという意見が多く聞かれた.しかし,このことは,これまでは意識しないでいたことが,意識化され,どうすれば患者の意思決定を支援することができるか検討しながら関わることができるようになったということである.日常の看護場面でも,医師との会話の中でも,患者の意向について話し合い相談することが多く行われるようになってきている.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第145回

亀田総合病院 K-Tower

著者: 奥田覚 ,   横山慎

ページ範囲:P.176 - P.181

K-Tower とマスタープラン

 2005年4月にオープンした亀田総合病院 K-Tower(以下,K タワー)は,千葉県鴨川市で最先端の医療を提供している亀田メディカルセンターの新しい病棟であり,全体マスタープランに基づいて建設されたものである.千葉県南房総の救急医療の核となる医療法人として1985年に全国初の第三次救命救急医療施設の指定を受けた救命救急センターを皮切りに,既存の施設を再整備するための全体マスタープランが策定された.看護専門学校の建設を含む全体再整備プロジェクトはパーキング棟(1992年),サービス棟(1994年),クリニック棟(1995年)と続き,今回の「メディカルリゾート」をイメージした斬新なデザインの新病棟(K タワー)の完成でマスタープラン第一段階は完結することになる.

リレーエッセイ 医療の現場から

今,私たち地域住民が求める病院とは

著者: 梨本恵里子

ページ範囲:P.183 - P.183

 近所にN外科胃腸科という個人病院があります.N先生が一人で胃腸,外科はもちろん,子どもを含む内科全般にわたって診察するので,わが家では私,夫,4歳の息子,0歳の娘の全員が事あるごとにこの病院にお世話になっています.友人にこの話をすると,「一人の医師が内科と外科の両方,しかも子どもまで診るなんて…….その病院,大丈夫なの」と,心配されてしまいました.

 N外科胃腸科を知る前は,息子の体に異変が起こるたびに,どの病院へ行こうか毎回頭を悩ませていました.というのも,小児科では中耳炎に気づきにくかったり,長い時間待ち診察された途端,「これは皮膚科だよ」と言われるなど,一つの病院で解決できないことがよくあったからです.

レポート【投稿】

ブータン王国に病院の出自をみる

著者: 木村茲

ページ範囲:P.146 - P.147

 ブータン王国は九州の1.1倍の面積に,約70万人が暮らす.農林業が主要産業で,1人当たり国民所得は日本の1/50程度の660ドル(2003年世銀資料),仏教を国教とするヒマラヤの王国である.

 現国王ジグメ・センゲ・ワンチュックは,1972年に若干16歳で王位についた.先進国の経済発展の歴史をつぶさに研究し,経済発展は南北対立,貧困問題,環境破壊,文化の喪失につながり必ずしも国民を幸福にするものではないとの認識のもと,GNH(国民総幸福量)の概念を生み出した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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