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雑誌目次

雑誌文献

病院66巻3号

2007年03月発行

雑誌目次

特集 地域の活性化に病院は貢献するか

巻頭言

著者: 神野正博

ページ範囲:P.197 - P.197

 驚異的なスピードで進む少子高齢化.その中で,病院は過去の成長体験から決別し,新たな発展モデルを模索する必要が出てきた.また,財政再建の視点では,コストとしての医療,介護や福祉にかかる経費の削減が叫ばれている.

 このような背景のもとで,われわれの業態を「削減すべきコスト」という位置付けから,「伸ばすべき産業」という位置付けで発展を図る必要がある.病院と他産業との一番の違いは他に類を見ない地域密着産業であることだといえよう.なぜならば,ユーザー(患者)と病院はあくまでも人と人との繋がりであり,いかに優良なサービスを提供したところでほとんどの病院の90%以上の患者は地域住民に違いなく,ユーザーから離れた海外移転などは考えられないからである.さらに,労働集約型である医療サービスを提供するのに必要な職員もまた,日本語を母国語とする地域の住民であることも忘れてはならない.ならば,病院の発展は地域の発展と運命共同体であり,地域の活性化・発展なくして病院の発展は成り立たないものと考えたい.

地域ケアの展開と活力ある地域づくり

著者: 桑田俊一

ページ範囲:P.198 - P.202

 わが国の少子高齢化は,今後急速なペースで進展することが見込まれている.現在の高齢者人口約 2,500万人は,平成37(2025)年には約 3,500万人に達し,高齢化率も現在の約20%から,30%を超える水準に達するものと予測されている.

 こうした高齢社会について,ともすれば,漠然とした不安感を背景として,活力の低い,暗い社会,といったイメージを抱きがちであるが,21世紀のわが国を活力ある社会とするよう,こうしたイメージを払拭し,いきいきとした高齢社会づくりを進めることが重要な課題となっている.

地域需要の創造と病院マーケティング

著者: 上原征彦

ページ範囲:P.203 - P.207

 私は,産業構造審議会のサービス部会の部会長として,これからのサービス分野の発展について記した中間報告を取り纏める作業をしたが,その時,医療・健康分野に関わるビジネスが重点分野の1つに挙げられていた.編集部がこれに注目して私に原稿依頼してきた経緯を踏まえると,おそらく,本稿での私に期待されていることは,「医療・健康分野等に需要創出・拡大の目はあるのかどうか,産業経済発展において病院にどんなことが期待されるか」という問いへの答えであろうと思われる.私は,こういう時,病院に限らず,あらゆる分野においてこのままでは需要創出・拡大は無理だ,と答えることにしている.現代のような成熟社会にあっては,儲けようとする行動を起こしたとしても,よほどの手を打たない限り,直ちに過剰供給の波に晒されることも多く,また潜在需要の顕在化も困難だからである.

 上記で「よほどの手を打たない限り」と述べたが,それではどんな手を打つべきか.この手こそがマーケティングである.マーケティングとは,単なる販売の拡大を意味するものではなく,組織が生き抜く場を見つけ,その場における需要適合の方法を築こうとする考え方に基づいて展開される科学である,ということを認識すべきであろう.本稿では,最新の理論を踏まえつつ,地域需要を創造していくために病院のマーケティングはどうあるべきか,ということに焦点を当てた議論を展開してみよう.

地域活性化戦略の中で病院に期待すること

著者: 實國慎一

ページ範囲:P.208 - P.211

 わが国経済は,現在,戦後最長だった「いざなぎ景気」を超え,回復基調を続けている.しかし,地域毎に見ると,すべての地域が回復基調にあるわけではない.自動車関連産業等,業績が好調な産業が存在する地域では景気回復が持続している一方,公共事業関連産業や第一次産業が主力産業である地域では依然として回復の動きは弱い.

 また,少子高齢化と人口減少社会の到来,グローバル化と国際競争の激化など,わが国経済を取り巻く環境は大きく変わりつつある.

まちづくりにおける「病院」の意味の変容と多様化

著者: 妹尾堅一郎

ページ範囲:P.212 - P.217

 情報・知識社会,高齢社会,国際社会,環境志向社会等を迎える日本を背景に,われわれは「病院」への期待が変容・多様化していることに気づいている.しかし本論では,その期待とはこれである,と提案することはしない.

 病院の意味は,社会的文脈の変化の中で変わっていくものだ.とすれば,その社会的文脈を押さえなければならない.そこで,まずビジネスの観点から「ニーズ対応」について,次にマネジメントの観点から「リスクマネジメント」について,そして地域の観点から「コミュニティ」について,それぞれの概念の再検討を行うことにしよう.それらを踏まえて,地域活性化における「病院」の意味の再考の必要性を確認する.だが,どうやってその役割を検討していけば良いのだろうか.そこで,最後に今後の病院の「意味」あるいは「コンセプト」を吟味するための方法論について提案を行う.

地域活性化のための健康・医療政策

著者: 三浦大助

ページ範囲:P.218 - P.221

地域の活力は,まず人口の増加から―人口の増加策は,福祉のまちづくりから

 格差社会がやってきた.勝ち組,負け組などという言葉が,全ての分野で広がっている.市町村にとっても例外ではない.政治が自由競走をあおり過ぎたきらいもあると思う.しかし,ことここに至っては市町村としても地域間競走に勝たなければならない.

 人口の減少が進む中で,地方自治体の活力を維持するためには,まず,定住人口の確保が待ったなしの課題である.そのための施策としては,以前は企業誘致が地域活性化の大きな原動力であったが,今はそんな景気のよい時代ではない.今,人口の増加策と言われれば,私の18年間の市政担当の経験から,何といっても福祉のまちづくりではないかと思う.事実,長野県の山の中にある私のまちでは,今,人口が増え,合計特殊出生率も僅かではあるが伸びている.全国的な人口減少傾向の中で,珍しい現象である.高齢者サービスの行き届いたまち,子育て支援の行き届いたまちとして人々が集まってくるのである.

横浜市の発展と「民との協働」による医療施策

著者: 前田正子

ページ範囲:P.222 - P.225

■横浜市の発展と医療資源の不足

 横浜市の人口は,平成18(2006)年8月に360万人を超えた.東京に次ぐ全国第2位の都市.市としては最大の人口規模を誇り,18ある区のうち比較的大きな区の人口は,地方の県庁所在市も匹敵する.

 横浜市の歴史は,古くはおよそ150年前の開港に遡ることができるが,近代における成長の背景には,戦後の高度経済成長を機に,東京のベッドタウンとして急速に発展してきたことが挙げられる.特に昭和30年代から40年代にかけて,市郊外部において多くの大規模住宅団地の開発が進み,新しい街並みが次々と形成されたことに伴い,1年間の人口増加数が10万人を超えるという急激な発展をみた(図1).

【病院が主体となった地域振興事例】南房総のブランディング,医療産業と雇用 亀田メディカルセンター(千葉県鴨川市)

著者: 亀田信介

ページ範囲:P.226 - P.228

 亀田メディカルセンターは,千葉県の南端に近い鴨川市というリゾート地で,太平洋に面して立地している.この地域は,少子高齢化が進み,人口も減少し続けている過疎地で,高齢化率は既に30%を超えている.一方,東京湾を横断する(木更津~川崎)海底トンネルであるアクアラインの開通により,羽田まで約1時間(65km),東京駅まで1時間30分(80km)という距離となった.鴨川市は,昨年合併をしたにもかかわらず,現在,人口約 36,500 人・一般会計予算は約140億円・特別会計と企業会計を合わせた予算総額でも約280億円という,極めて小さな自治体である.この予算額は,一般会計が当院の人件費とほぼ一致し,予算総額でも当院の予算をかなり下回っている.このような地域において,当院は医療サービスの提供という,病院本来の役割と,雇用の場,すなわち地域経済を回転させ,支えていくための中心的役割を果たしてきた.

 さらに,高齢化の進展に伴い,介護・福祉サービスのニーズが増大してきたため,社会福祉法人を設立し,施設および在宅の介護・福祉サービスを,また関連会社において,ヘルパー派遣および,介護機器の販売・レンタルなどのサービスを提供してきた.

【病院が主体となった地域振興事例】子ども未来事業部の取り組み 洛和会ヘルスケアシステム(京都市)

著者: 野田直揮

ページ範囲:P.229 - P.231

はじめに―少子化および待機児童問題の解決

 全国的な傾向である少子化および待機児童問題は,京都市においても同様の現象となっており,ここ数年,市の総人口は146~147万人台で推移しているものの,子どもの人口は,昭和20年代の第一次ベビーブーム直後の半数に過ぎない約18万人(総人口に占める割合は12.4%)近くまで減少している.

 一方,待機児童数は「京(みやこ)子どもいきいきプラン」等を柱とする,行政による様々な施策の実施,例えば「施設整備や保育施設の定員数の拡充,また一時保育や延長保育など,多様で柔軟な保育サービスの提供」の結果,大幅に減少しているものの,依然として200人を超える状況である.

 そのような中,洛和会ヘルスケアシステムでは,表に示すとおり「子どもたちのために,未来へ…」をコーポレート・スローガンとし,「子ども未来事業部」を設けて活動している.本稿では子ども未来事業部の活動のメインである保育施設について紹介する.

 洛和会音羽病院に付属している院内保育所は,子育て中の看護師に少しでも働きやすい職場環境をとの思いで設けた特定施設である.近年看護師の保育ニードが多様化し,夜間保育,休日保育,病後児保育など,臨機応変な対応が可能な施設が必要となった.加えて看護師だけでなく,医療界で昼夜を問わず働く女性医師やコメディカルを支援できる保育施設を必要とする時代となった.

 洛和会では,これら医療現場で働く人々の要望に応えるため,24時間365日の保育サポート機能を持った洛和山科駅前保育園を2006年1月に開園させ,さらに拡大するニードに対応するため,2006年下期までに京都市内に計3か所の保育園を開設した.

【病院が主体となった地域振興事例】病院から発信する地域振興策とその意味

著者: 神野正博

ページ範囲:P.232 - P.234

 日本の高度成長は終わり,縮小経済とともに少子高齢化が世界でも例を見ないスピードで進もうとしている.このような中,病院が直面する数多くの課題の中で,マーケティングの視点では有病率,受診率などを検討する以前に分母としての地域の人口,人口構成は大変大きな問題である.また人材確保の視点からしても,サービス提供者としての地域の人口,人口構成は極めて大きな問題となるのである.ならば,地域は活性しているか,地域に魅力があるか,そしてその結果として地域に人が集まってくるかが病院経営の中で重要な問題となってくるはずである.地域の活力なくして,病院の活力はありえないと考えられるのである.

 私どもが位置する石川県能登半島の七尾市は人口62,000人(合併後),高齢率25.2%であり,確実に人口減少,少子高齢化が進んでいる地域である.また医療圏として設定する能登半島全体を見ても人口 22 万人は減少し続け,既に高齢化率が40%を超える地域も出現しているという危機的といってよい地域なのである.

グラフ

地域の安心と活性化を担う―常陸大宮済生会病院

ページ範囲:P.185 - P.188

 常陸大宮済生会病院が建つ常陸大宮市は茨城県の北西部に位置し,2004年に大宮町,山方町,美和村,緒川村,御前山村が合併してできた新しい市である.当院開設以前,この常陸大宮市を含む常陸太田・大宮サブ保健医療圏は,医師数が1996年時点で人口10万人対65.9人と県平均を大きく下回り,県内で唯一中核的な病院が存在しない医療過疎の地域であった.そのため地域の重症患者や救急患者は,水戸市や日立市の病院に依存せざるを得なかった.そうした状況は住民の声となり,病院誘致活動へと発展していった.具体的な誘致活動は,1998年に1万人を超える署名を集めた「総合病院誘致に関する陳情」の議会提出を発端とし,その後総合病院誘致期成同盟(旧大宮町等12市町村で構成.以下,期成同盟)が設立され本格化していった.市町村合併を前に行われた住民アンケートでも,7割を超える住民が医療の充実(総合病院の誘致)を望んでいるという結果が出て,誘致活動を後押しする形となった.

 期成同盟による誘致活動は当初,不景気や医療費抑制政策などの社会情勢の中で難航したが,茨城県知事の誘致表明を受け加速し,懸案であった建設資金も合併特例債の活用と県からの支援,また期成同盟の各市町村も県と同額を負担することで目処がついた.

連載 ヘルスケア環境の色彩・照明・3

色彩2 心なごむ医療空間の色を求めて

著者: 梅澤ひとみ

ページ範囲:P.190 - P.191

■ゾーニングと全体の調和

 色と光の演出が病院の第一印象を決めるエントランスロビーでは,不安を抱えた患者さんを「温かく」「優しく」「清々しく」迎え,違和感のないスムーズな導入を図りたい.そして「明るく」「和み」,待ち時間を短く感じるような外来待合,過度な恐怖感を軽減させる診療部門,シンプルなホテルの居心地よさを感じる病室,一人静かに考えるサンクチュアリーは落ち着いた空間をつくりたい.このように患者・スタッフの的確な医療行為を促すために病院の様々な機能に対応してそのゾーンに相応しい環境を整えるのはとても大切なことである.

今,なぜ医療経営学を学ぶのか 基本からわかる医療経営学・10

医療サービスと患者満足の本質

著者: 島津望

ページ範囲:P.244 - P.247

医療とサービス

 かなり前の話になりますが,平成7年版の厚生白書で,初めて,医療についてサービスという視点から議論がなされました1).この白書でサービスということを議論した背景には,次のようなことがあると考えられます.

 この頃,消費生活の質の向上に伴って,生活場面では消費者優位あるいは消費者の意見が反映される仕組みが整っていましたし,サービス化の進展によって,国民はサービスとしての商品に接する機会も増えていました.企業では,競争優位のために,サービスの品質を上げることが競って行われていました.国民の多くは,そのようなサービスを利用する環境に慣れ親しんできました.しかし医療に関しては,必ずしもそのような状況になかったという反省が,この白書で医療をサービスとして見ることになったのだと思います.

医療ソーシャルワーカーの働きを検証する・10

専門チーム活動におけるMSWの機能

著者: 石橋京子

ページ範囲:P.248 - P.251

当院では,医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)の所属する総合患者支援センターが,退院支援や地域連携を含む包括的・継続的な患者支援における院内外の窓口・調整機能を担っている.本稿では,縦割り組織で部門間の壁が厚いと評される大学病院にあって,横断的な組織を設置した当院の取り組みとそこでのMSWの機能を紹介すると共に,その活動の軸となっている専門チーム活動における実践を報告する.

病院ファイナンスの現状・31【最終回】

病院の自己資本 “病院株”の検討

著者: 福永肇

ページ範囲:P.252 - P.257

 連載もいよいよ最終回です.今月号では「病院は株式という資金調達手段をもっていない」ことを考察し,連載を締め括りたいと思います.なお,本稿は資金調達の視点から病院の株式制度への参入を模索するものであって,病院への “株式会社参入” や “配当の有無” “営利・非営利” に対する思想的・政治的議論は切り離している,とご理解ください注1)

病院管理フォーラム ■個人情報保護

総合病院岡山協立病院における個人情報保護の取り組み

著者: 栗林悟

ページ範囲:P.259 - P.261

 2005年4月より個人情報保護法が施行され,2年近く経過しようとしている.法施行後も様々な業種で個人情報の漏洩が連日のように報道される一方で,法に対する過剰反応から,安否確認や警察,行政業務などに支障をきたしている例も報告されている.今回,個人情報保護法施行前の準備段階から施行後一年半にわたる岡山協立病院(以下,当院)の個人情報保護委員会の取り組みを紹介する.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第146回 ホスピス二題

組合立国保中央病院緩和ケアホーム『飛鳥』

著者: 河崎邦生

ページ範囲:P.262 - P.265

 国保中央病院は奈良県中部の川西町,三宅町,田原本町,広陵町の4町によって設立された自治体病院である.病床数200床を有する基幹病院として地域医療の充実向上を目指している.当院が緩和ケア病棟を設立するまで,奈良県にはホスピス・緩和ケア病棟がなく,患者の家族やボランティアによる市民団体「ホスピス勉強会」が2000年に設立され,ねばり強い活動が続けられている.

 奈良県で初めての緩和ケア病棟となる『飛鳥』は,治療が困難となったがん等の末期患者の身体的,精神的な苦痛,孤独,不安などを軽減し,最後まで尊厳をもって過ごすことができるように手助けするための施設である.既存の緩和ケア病棟の多くは一般的な病棟に近いしつらえであるが,飛鳥では「住み慣れたわが家のように」をメインテーマにすえ,末期患者さんがわが家にいるような気持ちでご家族と快適に過ごしていただけるように,最適な空間と医療機能の融合を目指した(写真1).

宮城県立がんセンター 緩和ケア病棟

著者: 藤木隆男

ページ範囲:P.265 - P.268

 「ホスピス」あるいは「緩和ケア病棟」は,治療による快癒が見込めない末期がん患者などが,医療的処置を最小限に抑え,家族とともに少しでも人間らしい日々を送ることができる場所,「終末の家」であるとされてきた.しかし現在のそれは,患者が可能な限り長く自宅で終末期を過ごすことを支える(疼痛緩和などの処置のための短期滞在などの可能な)中間施設であり,「家での死」をサポートする地域的な医療拠点であるという考え方に移行しつつあるという.そのいずれにせよ,そこは自分の死と向き合いながらの,静かで充実した生活のための「時間/空間」でなければならない.およそ学校や病院,極端に言えば監獄にいたるまで,近代社会の所産であるあらゆる全制的施設;INSTITUTIONは,その目的のための効率のよい集団行動を前提に計画されてきた.しかしここに来てようやく「施設」であることを脱して,高いQOLを求めることが可能な「より自然な生活空間」としてのあり方が問われ始めているということであろうか.

 2005年1月現在,緩和ケア(ホスピス)病棟を有する病院は,140施設/2,649床にのぼるという.相当な数字のようであるが,年間数十万とも言われるわが国の全がん死者数から言えば,緩和ケア病棟においてよりよいケアを受けることのできる人の割合は未だ余りにも少ない.そのことが,緩和ケア病棟が当面増えつづけ,また,まだまだ必要とされる十分な理由である.

リレーエッセイ 医療の現場から

伝えるテクニック

著者: 朝倉弘恵

ページ範囲:P.271 - P.271

 病院で自分の症状を伝えるのは,とても難しい.どんなに言葉を尽くしても,伝わらないものは伝わらない.そのうえ,せっぱつまった状態では,思いが先走りすぎて,何を言いたいのかよくわからなくなってしまう.

 私は,2歳の時に日本では患者数の少ない難病であることがわかって以来,30年以上にわたり定期的な通院を続けている.骨異形成症を伴う疾患のため,軽度の衝撃でも常に骨折しやすい.19歳の時に交通事故で大腿部骨頭骨折をしてから,今まで10回近く手足の骨折を繰り返してきた.抜き足差し足忍び足で暮らす毎日である.

研究と報告【投稿】

特定機能病院における在宅療養支援 末期乳がん患者の退院支援からの検討

著者: 井上智子 ,   坂藤昌子 ,   東村昌代 ,   福岡富子 ,   阿曽洋子 ,   葉山有香

ページ範囲:P.235 - P.239

 病院の機能分化,在宅医療の推進という医療政策の大きな流れの中,高度先端医療や地域の中核的な医療を担う病院においては,医療連携・地域連携を推進する専門部署を設け,入院患者が円滑に在宅療養へと移行できるように支援を行っている.

 大阪大学医学部附属病院(以下,当院)でも,2002年4月に保健医療福祉ネットワーク部(以下,ネットワーク部)を設置し1),医療福祉相談を開始するとともに,患者が退院後も適切な場で療養が続けられるよう退院支援を行っている.今回,末期乳がん患者の退院支援の実際から,在宅医療を推進するうえでの課題と方策を検討したので紹介する.

レポート

医療ADR(裁判外紛争処理)の方向性 ジョンズ・ホプキンス病院の試みから

著者: 中西淑美

ページ範囲:P.240 - P.243

 現在,厚生労働省のほか,自民党,民主党なども,医療事故裁判外紛争処理制度について検討を行っている.産科領域での無過失補償制度は,医療機能評価機構が担当する形で,詰めが行われているようである.筆者は,現在,文部科学省科研費補助金による調査研究「被害・責任の認知と医療事故ADRの可能性」の一環として,Johns Hopkins Hospital(以下,JHと称す)およびメリーランド州において実践されている新たな医療事故紛争処理モデルの調査を行った.無過失補償制度の問題点と的確な評価,そしてより機能的な医療ADRの制度設計への示唆を得るために,ジョンズ・ホプキンス病院の医療事故紛争処理システムを紹介し,その意義を検討していくことにしたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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